米国会計関連情報 最近の論点 No.14-49

Similar documents
新収益認識基準に関するFASB及びIASBの改訂案

会計上異なる結果が生じる可能性があるとしていま す イセンス付与に関しても 約定の性質の定義に係る ガイダンス等 IASB がの必要なしと決定した論 点についてを加えています 両審議会は 以下の論点については同じ修正を行っています a. 履行義務の識別 b. 本人か代理人かの検討 c. 売上高ベース

IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の概要

収益認識に関する会計基準

IFRSにおける適用上の論点 第27回

2017年度税制改正 相続税・贈与税国外財産に対する納税義務の範囲の見直し

IFRSにおける適用上の論点 第20回

IFRS News Flash

「収益認識に関する会計基準等」インダストリー別解説シリーズ(1)_第1回_メディア・コンテンツ業界─ライセンスの供与

新収益認識基準が企業経営に与える影響の考察~業種別シリーズ 小売流通業~

IFRS実務トピックニューズレター ~銀行業~

IFRS基礎講座 IAS第11号/18号 収益

IFRS_14_03_12_02const.indd

03-08_会計監査(収益認識に関するインダストリー別③)小売業-ポイント制度、商品券

IASB、IFRS第16号「リース」を公表

従って IFRSにおいては これらの減価償却計算の構成要素について どこまで どのように厳密に見積りを行うかについて下記の 減価償却とIFRS についての説明で述べるような論点が生じます なお 無形固定資産の償却については 日本基準では一般に税法に準拠して定額法によることが多いですが IFRSにおい

2018年度改正 相続税・贈与税外国人納税義務の見直し

IASB、最終版のIFRS第9号「金融商品」を公表

IFRSにおける適用上の論点 第26回

できる 105. 前項の取扱いを適用する場合には 次の事項を注記する (1) その旨及び決算月に実施した計量の日から決算日までに生じた収益の見積りが極めて困難と認められる理由 (2) 当連結会計年度及び当事業年度の決算月の翌月に実施した計量により確認した使用量に基づく収益の額 ( この収益の額が 決

本日の内容 GIPS 基準における公正価値の考え方 (GIPS 評価原則 ) と実務上の留意点および課題 GIPS 2010 年改訂版におけるポートフォリオ評価 ポートフォリオ評価に関する重要な変更 GIPS 評価原則 について 公正価値 と 検証 GIPS 基準と既存の評価方法との差異分析 GIP

念.pwd

ならないとされている (IFRS 第 15 号第 8 項 ) 4. 顧客との契約の一部が IFRS 第 15 号の範囲に含まれ 一部が他の基準の範囲に含まれる場合については 取引価格の測定に関する要求事項を設けている (IFRS 第 15 号第 7 項 ) ( 意見募集文書に寄せられた意見 ) 5.

売上減少か?-「収益認識に関する論点の整理」

新しい収益認識基準が収益以外に及ぼす影響

バーゼル4

タイ子会社管理の基礎知識 第5回 タイの会計基準が大きく変わる~日系タイ子会社のTFRS for SMEs対応~

会計ニュース・フラッシュ

関する IFRS-IC の議論が IASB と FASB により共同で行われている IFRS 第 15 号に関する移行リソースグループ (TRG) における議論と不整合を生じさせる可能性が危惧されたためである 論点の所在 4. 今回 明確化が要請された会計処理に関する主な論点は 銀行がプリペイド カ

Microsoft Word - M&A会計 日本基準とIFRS 第5回.doc

図と設例による解説 IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」

Microsoft Word - 07 資料_3_-4.doc

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

(10) 顧客による検収 80 (11) 返品権付きの販売 工事契約等から損失が見込まれる場合の取扱い 重要性等に関する代替的な取扱い 91 (1) 契約変更 91 (2) 履行義務の識別 92 (3) 一定の期間にわたり充足される履行義務 94 (4) 一時点で充足される履

IFRS 第 15 号の定めの表現の置換え 4. 下表では IFRS 第 15 号の基準本文 ( 適用指針を含む ) の日本語訳を左の列に示し 表現を見直した文案を右の列に示している (1) 表に用いられている色は 以下を表す ( ) は IFRS 第 15 号における項番号を表す 青色 : 企業会

第 1 回知財のビジネス価値評価検討タスクフォース インタンジブルズに関する 情報開示フレームワーク KPMG ジャパン統合報告 Center of Excellence (CoE) 芝坂佳子 ( 本報告は 発表者の個人的な見解であり 所属する組織の見解と必ずしも一致するものではありません )

Microsoft Word - Applying IFRS - Software and cloud services.docx

図と設例による解説 IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」

IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」

IFRSにおける適用上の論点 第17回

(10) 顧客による検収 80 (11) 返品権付きの販売 工事契約等から損失が見込まれる場合の取扱い 重要性等に関する代替的な取扱い 92 (1) 契約変更 92 (2) 履行義務の識別 93 (3) 一定の期間にわたり充足される履行義務 95 (4) 一時点で充足される履

米国会計関連情報 最近の論点 No.15-26

IFRS_2017_sp_01.indd

質問 2 財務諸表作成者の実務負荷及び監査人の監査負荷を必要以上に増大させる契約の分割には反対である その理由は以下のとおりである 当初の取引価格算定時点においては 契約の分割と履行義務の識別という2 段階のステップを経ずとも 履行義務の識別が適正になされれば適正な取引価格が算定可能である 契約の分

IFRS_15-01_02_ls.indd

[ 設例 11] 返品権付きの販売 [ 設例 12] 価格の引下げ [ 設例 12-1] 変動対価の見積りが制限されない場合 [ 設例 12-2] 変動対価の見積りが制限される場合 [ 設例 13] 数量値引きの見積り 7. 顧客に支払われる対価 [ 設例 14] 顧客に支払われる対価 8. 履行義

開発にあたっての基本的な方針 97 Ⅰ. 範囲 102 Ⅱ. 用語の定義 110 Ⅲ. 会計処理等 114 (IFRS 第 15 号の定め及び結論の根拠を基礎としたもの ) 基本となる原則 収益の認識基準 117 (1) 契約の識別 117 (2) 契約の結合 121 (

IFRS Global office 2011 年 11 月 IFRS in Focus 注 : 本資料は Deloitte の IFRS Global Office が作成し 有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです この日本語版は 読者のご理解の参考までに作成したものであり 原文については英語

米国トレッドウェイ委員会支援組織委員会(COSO)による全社的リスクマネジメントフレームワークの改訂

(1) 契約の識別契約の識別にあたって 厳密な法律上の解釈まで必要とするのか あるいは過去の商慣習等で双方の履行が合理的に期待される程度の確認で済むのかが論点となります 基本的に新しい収益認識基準では 原則として法的な権利義務関係の存在を前提とします また 業界によっては 長年の取引慣行のみで双方が

1 本会計基準等の概要以下の概要は 本会計基準等の内容を要約したものです 本会計基準等の理解のために 本会計基準等の基本となる原則である収益を認識するための 5 つのステップについて 別紙 1 に取引例及びフローを含めた説明を示しています また 本会計基準等と従来の日本基準又は日本基準における実務と

CL23 PwCあらた監査法人 平成 28 年 5 月 31 日 企業会計基準委員会御中 PwC あらた監査法人品質管理本部アカウンティング サポート部 収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集 に対するコメント 拝啓時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます さて 貴委員会から

IFRS_15-01_02_re.indd

IFRS第15号 顧客との契約から生じる収益

米国会計関連情報 最近の論点 No.13-35

IFRS基礎講座 IAS第37号 引当金、偶発負債及び偶発資産

IFRS基礎講座 IFRS第1号 初度適用

日本基準基礎講座 収益

アンケート調査の概要 5. 当該アンケートにおいて AASB と KASB は対象者に主に 2 つの質問をしている (1) IFRS における蓋然性の程度を表現する 14 の用語 ( 下の表を参照 ) について それぞれが何パーセントから何パーセントを意味すると解釈しているかを質 問する (2) 同

適用時期 5. 本実務対応報告は 公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用する ただし 平成 28 年 4 月 1 日以後最初に終了する事業年度が本実務対応報告の公表日前に終了している場合には 当該事業年度に本実務対応報告を適用することができる 議決 6. 本実務対応報告は 第 338 回企業会計

IASB Update 2019 年 4 月 IASB Update は 国際会計基準審議会 ( 審議会 ) の予備的決定を示している IFRS 基準 修正及び IFRIC 解釈指針に関する審議会の最終的な決定は IFRS 財団及び IFRS 解釈指針委員会 デュー プロセス ハンドブック に示され

念.pwd

平成30年公認会計士試験

審議_3_収益認識資料.doc

スライド 1

目次 このガイドについて 1 概要 2 範囲およびコア原則 4 収益認識モデルの 5 ステップ 5 さらなるガイダンスの分野 14 追加の検討 16 開示 17 経過措置 19 最終的な考察および広範囲の論点 21

Microsoft Word - JLA comment doc

収益論点整理

ボルカー・ルール

MOTHER BRAIN MONTHLY REPORT 30 SEPTEMBER 2018 ステップ 5 では まず一定期間にわたって売上を計上すべき取引かどうかを判定します 以下 (1)(2)(3) の要件いずれかを満たす場合は 物品またはサービスに対する支配が一定の期間にわたり顧客に移転するもの

「資産除去債務に関する会計基準(案)」及び

審議_5_ 収益認識資料.doc

IFRS基礎講座 IAS第12号 法人所得税

ミャンマーでの建設受注に関わる税務問題

Microsoft Word - M&A会計 日本基準とIFRS 第1回.doc

KPMG Insight Vol.2_会計03

スタジアムの収入源となるネーミングライツ~海外と日本の比較

<4D F736F F D208CDA8B7182C682CC8C5F96F182A982E790B682B682E98EFB897682C98AD682B782E9985F935F82CC90AE979D2E646F6378>

監査に関する品質管理基準の設定に係る意見書

無断複写 転用 転記を禁じます 国際財務報告基準 (IFRS) 連結財務諸表シリーズ シリーズ <5>IAS 第 31 号 ジョイント ベンチャーに対する持分 ( 平成 22 年 7 月 31 日現在 ) 1. ジョイント ベンチャーの対する持分 ( 総論 ) 本シリーズでは ジョイント ベンチャー

に暫定的に合意した 特定の状況 ( 例えば 企業に税務当局との未解決の係争がある状況 ) に範囲を限定しようとすると 恣意的なルールにつながるであろうと考えたからである ただ 2015 年 1 月の委員会の議論で 繰延税金を含まないことに対する懸念が出され 最終的には当期税金及び派生する繰延税金を対

新しい連結基準 IASBは グループの連結に係る問題およびオフバランスシート活動について取り扱っている以下の5 つの新基準を公表しました IFRS 第 10 号 連結財務諸表 IFRS 第 11 号 ジョイント アレンジメント IFRS 第 12 号 他の企業に対する持分の開示 IAS 第 27 号

平成30年3月期決算の留意事項(税務)

2008年6月XX日

第 1 章はじめに ( 本ペーパーの位置付け等について記載であるため 省略 ) 第 2 章キャッシュ フロー情報の有用性 1. 業績についての情報は 主として発生主義による財務諸表によって提供される キャッシュ フローの開示の目的は 業績に関する代替的な測定値を表示することではないが 発生主義ベース

IFRS第3号「企業結合」修正案及びIAS第27号「連結及び個別財務諸表」修正案に対する

参考資料 日本語粗訳 このペーパーは IASB による公開会議での討論のために IFRS 財団のスタッフによって作られたものであり IASB または IASB のメンバー個人の見解を表していているものではありません IFRS の適用に関するコメントは それが受け入れ可能な見解であるか否かを定める目的

ネーミングライツから見る観客増加の重要性

7. 我が国の場合 第 4 項に示される政府が企業に課す賦課金の例としては 固定資産税 特別土地保有税 自動車取得税などが挙げられる 8. 日本基準において諸税金に関する会計処理については 監査 保証委員会実務指針第 63 号 諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取り扱い があるが ここでは

ISO 9001:2015 改定セミナー (JIS Q 9001:2015 準拠 ) 第 4.2 版 株式会社 TBC ソリューションズ プログラム 年版改定の概要 年版の6 大重点ポイントと対策 年版と2008 年版の相違 年版への移行の実務

FinTechの進展への対応~銀行業改正と今後の動向について

IFRS基礎講座 IAS第21号 外貨換算

スポーツの発展と放映権料の関連

085 貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準 新株予約権 少数株主持分を株主資本に計上しない理由重要度 新株予約権を株主資本に計上しない理由 非支配株主持分を株主資本に計上しない理由 Keyword 株主とは異なる新株予約権者 返済義務 新株予約権は 返済義務のある負債ではない したがって

1 今回の会議の概要 2014 年第 2 回目の国際公会計基準審議会 (IPSASB) の会議は 2014 年 6 月 24 日から27 日までの4 日間にわたり カナダのトロントで開催された 今回の会議には19 名のメンバーのうち17 名が出席し テクニカル アドバイザー (TA) オブザーバー

平均株価は 東証が公表する当該企業普通株式の終値の算術平均値を基準とした値とする 調整取引の結果 経済的には自社株を平均株価で取得したのと同様の結果となる 企業は株価上昇時の支払いのために 証券会社に新株予約権を割り当てる ステップ 3 : 株価上昇時は 新株予約権が権利行使され 差額分に相当する株

日台租税協定(通称)の締結

念.pwd

どのような便益があり得るか? より重要な ( ハイリスクの ) プロセス及びそれらのアウトプットに焦点が当たる 相互に依存するプロセスについての理解 定義及び統合が改善される プロセス及びマネジメントシステム全体の計画策定 実施 確認及び改善の体系的なマネジメント 資源の有効利用及び説明責任の強化

ROICの活用による企業価値向上

Transcription:

February 2015, No.15-5 米国会計関連情報最近の論点 FASB/IASB- 収益認識に関する基準書の明確化を提案 FASBは2015 年 2 月の合同会議で 知的財産のライセンスの会計処理及び履行義務の識別に関するガイダンスを明確化するため 収益認識に関する新基準 1 の改訂案を公表することを決定した 他方 IASBは 新基準 2 の明確化を限定的なものとすることを決定した 討議された論点 FASBは 収益に関する合同の移行リソース グループ (Transition Resource Group, TRG) 3 を含む利害関係者から寄せられたフィードバックに基づき 実務で生じ得るばらつきを軽減させることを目的として 公開草案を近々公表する予定である FASBはコメント期間を特定していない IASBは 実質的にすべての論点が審議されてから 新基準の改訂に関する公開草案を公表するとしている IASBの公開草案の公表時期は FASBの公開草案の公表後となる可能性が高い 主な影響 FASBとIASBは それぞれの活動がコンバージェンスに及ぼす影響について討議した ボードメンバーのほとんどは 2つの基準書の文言が相違していても 適用された結果が概ね類似しているならば 基準書のコンバージェンスによる便益の多くを引き続き保持することができることで合意した FASBの決定は 基準書を著しく変更することなく 理解し易さと運用し易さを改善することを目指している 改訂案が最終化された場合 改訂後の両基準書の文言は類似するが 一部の状況においては U.S. GAAPとIFRSのいずれを適用するかにより結果が異なる可能性がある 知的財産のライセンスの性質の決定 新基準には 別個のものである知的財産のライセンスの対価を 一定の期間にわたって認識するか 一時点で認識するかに関する適用指針が含まれている ライセンスにより ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利が提供される場合 収益を一定の期間にわたって認識することになる ライセンスにより それが付与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利が提供される場合 ライセンスの支配が顧客に移転された時点で収益を認識することになる 1 FASB ASU 第 2014-09 号 顧客との契約から生じる収益 www.fasb.org より入手可能 2 IFRS 第 15 号 顧客との契約から生じる収益 3 Defining Issues 第 2015-4 号 FASB/IASB- 収益認識に関する合同の移行リソース グループが 3 回目の会議を開催 Defining Issues 第 2014-49 号 FASB/IASB- 収益認識に関する合同の移行リソース グループが 5 つの新しい論点を討議 Defining Issues 第 2014-33 号 FASB と IASB- 収益認識に関する合同の移行リソース グループが最初の会議を開催 を参照

2 FASBは 知的財産のライセンスのすべてを 以下の2つの区分に分類することにより ライセンスに関する適用指針を明確化することを提案することで合意した 機能的知的財産 : 顧客は知的財産の独立した機能性から便益の大部分を得る 機能的知的財産の対価は 知的財産の支配が顧客に移転された時点で収益として認識する 機能的知的財産には通常 ソフトウェア 生体化合物 薬物構造式 完成したメディア コンテンツ ( 例 : 映画 テレビ番組 音楽 ) が含まれる ライセンス提供者の継続的な活動が 機能的知的財産の顧客にとっての有用性 (utility) に影響を及ぼす可能性があるが 当初の機能性により ライセンス提供者の活動が その有用性に著しい影響を及ぼさないことが示されている 象徴的知的財産 : 重要な独立した機能性を有しておらず 顧客にもたらされる便益の実質的にすべてが ライセンス提供者の過去または現在の活動に関連している 象徴的知的財産の対価は ライセンス提供者の履行のパターンを反映する進捗度を用いて ライセンス期間にわたって収益として認識する 象徴的知的財産には通常 ブランド スポーツチームのロゴ等の商標 フランチャイズ権等が含まれる 独立した機能性がない場合とは通常 ライセンス提供者が 知的財産の使用権を付与することと その知的財産を維持し続けることの両方を約束することを意味している FASBのスタッフ ペーパー 4 には 知的財産が機能的なものか象徴的なものかを判定するためのフローチャートが含まれている 知的財産のライセンスの性質の判定に関するIASBの決定 IASBは以下の事項を明確化するために IFRS 第 15 号の適用指針を改訂し 説明的パラグラフを追加することを提案することで合意した 知的財産に著しい影響を与える活動とは 企業の活動が知的財産の有用性に影響を与える場合をいう 知的財産の有用性は 以下のいずれかの条件を満たす場合に影響を受ける - 企業の活動により 知的財産の形態 ( すなわち デザイン ) または機能性 ( すなわち 機能や作業を履行する能力 ) が変化する - 知的財産が顧客にもたらす便益のほぼすべてが それらの活動からもたらされるか またはそれらの活動に依存している 例えば ブランド名の有用性は通常 企業の継続的な活動からもたらされ かつそれらの活動に依存している 知的財産が重要な独立した機能性を有する場合には 知的財産の有用性の大部分はその機能性からもたらされるものであり 企業の継続的な活動はその機能性を変化させるものではないため 知的財産の有用性は 企業の活動による影響を受けない 両ボードは ガイダンスが相違したとしても ほとんどの状況において 同様の結果が得られると考えている ただし両ボードは 企業が象徴的知的財産のライセンスを付与するが そのライセンスを付与した後に重要な活動を行うことが見込まれていないような 特定の状況において 会計処理が異なる可能性があることを認めている 例えば ブルックリン ドジャースのロゴのライセンスを付与する ( 例 : 映画 42~ 世界を変えた男 ~ に対して) が ライセンス提供者はもととなる知的財産の形式または機能性を変更する活動を行わないとする このケースでは FASBのガイダンス案のもとでは 一定の期間にわたって収益を認識することになるが IASBのガイダンスのもとでは 一時点で収益を認識することになる 4 FASB Memo 1 知的財産のライセンス www.ifrs.org より入手可能

3 知的財産のライセンスとその他の財またはサービスが含まれる契約への 売上高ベース及び使用量ベースのロイヤルティに関する例外規定の適用 新基準には 知的財産のライセンスと交換に約束する売上高ベース及び使用量ベースのロイヤ ルティについて 変動対価の見積りに関するガイダンスの例外規定が設けられている この例外 規定のもとでは 以下のいずれか遅いほうの時点でのみ収益を認識できる (a) その後の売上または使用が発生する時点 (b) 履行義務が充足 ( または部分的に充足 ) される時点 FASB は 取決めに知的財産のライセンスと ライセンス以外の財またはサービスが含まれてい る場合について明確化することを提案することで合意した FASB は ロイヤルティの例外規定の 適用範囲に含めるか否かは ロイヤルティ全体として検討すべきであると考えている FASB はまた 知的財産のライセンスが そのロイヤルティが関連する主要な項目である場合 に ロイヤルティの例外規定が適用されることを明確化しようと考えている FASB は ライセン スが主要な項目であるか否かの判定には判断が要求されることを認めている 新基準では ライセンスが別個のものである場合にロイヤルティの例外規定が適用されるとしているため 明確化により 新基準を限定的に解釈した場合に比べて より多くの契約にロイヤルティの例外規定が適用される可能性がある 顧客が 取決めに含まれるライセンス以外の財またはサービスからよりも ライセンスから著しく多くの価値を見出す場合には 通常 ライセンスが主要な項目とみなされることになるとKPMGは予想している 売上高ベース及び使用量ベースのロイヤルティに関する IASB の決定 IASBは 売上高ベース及び使用量ベースのロイヤルティの例外規定を明確化するという FASBの決定に合意し IFRS 第 15 号について類似の改訂を提案する予定である ライセンスに関するガイダンスのその他の明確化 FASBは知的財産のライセンスについて 上記以外にも以下の2つの事項を明確化することで合意した 知的財産のライセンスの性質をいつ判定するのか知的財産のライセンスが 契約に含まれる他の財またはサービスと別個のものではない場合 履行義務が一定の期間にわたって充足されるのか 一時点で充足されるのかを決定するために ライセンスの性質を決定することが必要となり得る 例えば ライセンスが ライセンス期間よりも短い期間にわたって提供される財またはサービスと組み合わされている場合 企業は取決め全体の収益認識パターンを決定する際に ライセンスの性質及び期間を検討することになる 契約上の制限契約のもととなる知的財産を使用するライセンスの受領者の能力に対する契約上の制限は ライセンスの属性であり 契約に含まれる約束の数には影響を及ぼさない 例えば ライセンス期間内の特定の期間に映画を放送することを放送局に認めるライセンスは 単一の約束である ライセンスのガイダンスに対するその他の明確化に関する IASB の決定 IASBは ライセンスに関するガイダンスをこれ以上明確化しないことを決定した ただし IASBは FASBの改訂により生じる結果について概ね合意した

4 約束した財またはサービスの識別 履行義務を識別する際の最初のステップは 契約で約束した財またはサービスを識別することである 新基準は 約束した財またはサービスは 契約で明示されているものに限定されないとしており 企業の事業慣行 公表した方針 具体的な声明により含意されている約束も含まれる可能性がある ( 契約締結時において 企業が財またはサービスを移転するという顧客の妥当な期待が創出されている場合 ) ただし 顧客に財またはサービスを移転しない 契約を履行するために行わなければならない管理作業は 履行義務ではない FASBは 顧客に移転される財またはサービスが契約の観点において重要ではない場合 それらを識別する必要はないと明確化することを提案することで合意した 一部のFASBメンバーは この提案は 企業の履行義務の性質を識別する目的と整合しているとともに 重要な権利の有無及び重大な金融要素の有無を評価する際の重要性の評価方法とも整合すると述べた 財務諸表レベルでの重要性の概念に優先されることに懸念を表明するFASBメンバーもいた ただし FASBは最終的に 重要ではないとみなされる約束が識別されるコスト及び複雑性を軽減するために 明確化が必要であると結論付けた 約束した財またはサービスの識別に関する IASB の決定 IASBのメンバーは 新基準が十分に理解可能であると考えているため 約束された財またはサービスの識別に関する基準の策定は行わないことを決定した 契約の観点において別個のものである という要件 履行義務を識別するプロセスで 企業はどの財やサービスが別個のものであるかを判定することが要求される 顧客が財またはサービスからの便益を それ単独でまたは顧客にとって容易に利用可能な他の資源と一緒にして得ることができ ( すなわち 別個のものとなり得る ) かつ 財またはサービスを移転する約束を 区分して識別可能である ( すなわち 契約の観点において別個のものである ) ならば その財またはサービスは別個のものである 1つ目の要件は 現行のU.S. GAAPに含まれる独立価値 (stand-alone value) の概念に類似するが 5 3つ目は新規の要件である FASBは契約の観点において別個のものであることに関するガイダンスを明確化するために 以下の改訂を提案することで合意した 別個に識別可能 という原則を明確にするために 説明的な文言を加える 約束した財及び ( または ) サービスを別個に識別できるかを検討する目的が 企業の顧客への約束の性質が 主として (a) 別個の財及び ( または ) サービスのそれぞれ または (b) これらの別個の財及び ( または ) サービスをインプットとして結合した項目 のいずれを移転するかを判定することであるとする文言を含めることを提案する予定である 契約の観点において別個のものであると判定するための要素を明確化する この要素を 上記で明確化した 別個に識別可能 という概念とより整合するように改訂する さらに どのような場合に財またはサービスが互いに著しく影響し合っているかを評価することに焦点を当てるため 契約における財またはサービスを束として考えるケースについて言及する予定である FASBが 履行義務の識別に関するガイダンスをどのように適用することを意図しているかを示すため 設例を追加する 5 FASB ASC paragraph 605-25-25-5(a) www.fasb.org より入手可能

5 契約の観点において別個のものである という要件に関する IASB の決定 IASB は 契約の観点において別個のものである という要件に関するガイダンスを改訂しな いことを決定した ただし IASB は強制力のない設例を追加することを提案する予定である 輸送サービスの会計処理 企業は 財またはサービスの表示価格に加え 輸送サービスにかかる金額を顧客に請求する場合がある 現行のU.S. GAAP 6 と異なり 新基準には 企業が輸送サービスを別個に請求する場合の会計処理に関するガイダンスはない ただし 新基準は取引価格を 約束した財またはサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込んでいる対価の金額と定義している 財の支配が引渡し前に移転される場合 ( 例 : 本船渡し (FOB) による契約 ) 顧客の資産を顧客が指定した場所まで輸送するサービスを提供することになるため 輸送が契約において約束したサービスになり得ると考える利害関係者もいる 他方 輸送は棚卸資産の調達や財の製造といったその他の履行コストと変わらないため 財の輸送が 顧客への財の支配の移転をサポートする活動であると考える利害関係者もいる 現行のU.S. GAAPのもとでは 輸送は構成要素とはみなされないため 特定の取決めにおいて輸送が約束したサービスであると結論付けるられた場合は 一部の企業において実務が著しく変更されることになり得る FASBは 企業が財の輸送前に財の支配が移転する場合 輸送を 履行コストと約束したサービスのいずれかとして会計処理することを認める会計方針の選択を提案することで合意した 例えば 企業が製品を顧客に販売し FOBという条件で製品を出荷するとする 企業は 輸送前に財の支配が移転すると結論付ける その場合 企業は輸送を別個の履行義務として取り扱うことを選択できる その場合 財に配分した収益を船積時に認識し 輸送に配分した収益を輸送が行われた時点で認識する または 企業は輸送を履行コストとして取り扱うことも選択できる その場合 財が船積みされた時点で収益をすべて認識する いずれの場合も 顧客が財の支配を獲得する前に発生した輸送コストは履行コストとすることでFASBは合意している 輸送サービスに関する IASB の決定 IASB は 輸送の会計処理が IFRS の利害関係者にとって重要な適用上の論点か否かを決定 するためのアウトリーチ活動を実施する予定である 次のステップ FASBの知的財産のライセンスの会計処理及び履行義務の識別に関する公開草案のコメントの締切りは 2015 年第 2 四半期中に設定される可能性が高い IASBはアウトリーチ活動を引き続き実施し 実質的にすべての論点が審議されてから 2015 年下半期に新基準を改訂する公開草案を公表する予定である 両ボードは新基準の適用日を延期するか否かを2015 年第 2 四半期のはじめに検討する予定である 両ボードは 財またはサービスの売上を純額と総額のいずれで表示するかについて 引き続き調査及びアウトリーチ活動を実施している また 将来のTRG 会議において追加的に検討すべき論点が発生した場合は 両ボードによる検討が必要となる可能性がある 6 FASB ASC paragraph 605-45-45-19-45-21 www.fasb.org より入手可能

6 編集 発行 有限責任あずさ監査法人会計 審査統括部 AZSA-USGAAP@jp.kpmg.com ここに記載されている情報はあくまで一般的なものであり 特定の個人や組織が置かれている状況に対応するものではありません 私たちは 的確な情報をタイムリーに提供するよう努めておりますが 情報を受け取られた時点及びそれ以降においての正確さは保証の限りではありません 何らかの行動を取られる場合は ここにある情報のみを根拠とせず プロフェッショナルが特定の状況を綿密に調査した上で提案する適切なアドバイスをもとにご判断ください 2015 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative( KPMG International ), a Swiss entity. All rights reserved. The KPMG name, logo and cutting through complexity are registered trademarks or trademarks of KPMG International. この文書は KPMG LLP が発行している Defining Issues February 2015 No. 15-5 をベースに作成したものです 上記の記述及び要約を SEC レギュレーション及び潜在的または現行の規定の代用として取り扱わないようにご注意願います U.S. GAAP を適用する企業または SEC へのファイリングを行う企業は 関連する法規制及び会計規定の原文を参照するとともに 自社の特定の状況を検討し 会計及び法律顧問に相談されることをお勧めいたします 本ニューズレターの内容に関しご質問等がございましたら エンゲージメント チームの担当者までご連絡ください