CALET プロトタイプの ビーム実験結果と シミュレーションの比較 早大理工研, 神奈川大工 A, 横浜国大工 B, 苅部樹彦, 鳥居祥二, 笠原克昌, 小澤俊介, 清水雄輝, 赤池陽水, 相場俊英, 植山良貴, 奥野祥二 A, 田村忠久 A, 片寄祐作 B
目次 研究目的 実験概要 データ解析方法 解析の流れ 検出器の座標較正, シャワートリガーと混入粒子除去条件 陽電子に関する実験結果とシミュレーションとの比較 シミュレーション条件 データ解析 エネルギー損失分布 遷移曲線 分解能 シャワーの横拡がり まとめ 1
研究目的 シミュレーションにおける粒子相互作用計算精度の検証 電磁相互作用モデル, ハドロン相互作用モデルの一致確認 エネルギー損失分布 遷移曲線 分解能, シャワーの横拡がり この結果をベースに現実的な CALET の性能評価を シミュレーションを用いて行う シミュレーションの整合性確認 EPICS と Geant4 の比較と一致確認 クロスチェックを行うことで評価の整合性を確認 2
実験概要 場所.: 欧州共同原子核研究機構 (CERN) 実験日時.:2010/9/16 ~ 2010/9/25 目的 IMCとTASCのプロトタイプ検出器に関する性能評価 シミュレーションによる粒子相互作用計算の精度検証 照射ビーム μ 粒子 : 150 GeV 電子 陽電子 : 6, 8, 10, 15, 25, 50, 75, 150, 200 GeV ハドロン : 30, 150 GeV CERN 加速器概要 North area SPS LHC SPS 加速器実験サイト 3
データ解析の流れ 実験データ シミュレーション SciFi ベルト及び TASC の座標較正 ビームプロファイル導入 SciFi の MIP 算出 PWO の MIP 算出とレンジ間較正 SciFi の MIP 算出 PWO の MIP 算出 SciFi クロストーク導入 実験時のノイズ導入 SciFi 及び PWO の Dead Channel 導入 トリガー条件及び混入粒子除去条件 実験データとシミュレーション結果の比較 4
検出器の座標較正 SciFi ベルト及び TASC の座標較正 実験で μ 粒子を打ち込んだ結果より, 各層について飛跡と最大発光点の座標の差を基に, 正確な検出器位置を確認 シミュレーション側の構造で再現 ( 下図で見ると,SciFi ベルトの上下や IMC と TASC の位置を較正 ) 例 ) Geant4 での検出器側面構造 TASC の座標較正 粒子の進行方向 IMC TASC SciFi ベルトの座標較正 5
シャワートリガーと混入粒子除去条件 シャワートリガー (High Energy Trigger) CALET で 10GeV 以上の電子シャワーを観測する際に用いる条件 IMC TASC :7+8 層目のエネルギー損失合計 15 MIP :1 層目のエネルギー損失 52 MIP 混入粒子除去のための条件加速器実験で電子ビームに混入したハドロンを除去するための条件 シミュレーションから条件を決定 TASC の全エネルギー損失分布で 大きいものから 99% の電子イベントを 残すようなカット 実験データとシミュレーションデータに同じ条件をかけて比較 陽電子 10GeV 除去 混入粒子 (π+ 等 ) ~99% 6
実験結果とシミュレーションの比較 7
シミュレーション条件 トリガーシンチで制限を受けたビームのプロファイル シミュレーションコード ( ハドロン相互作用モデル ) Geant4 (v9.4 p01) :QGSP-BERT,EPICS (v9.08) :DPMJET-III 生成データ各検出器構成要素でのエネルギー損失値等 ビームプロファイル 構造 実験データの飛跡から得られたビームプロファイルを導入 プロファイルは中央からずれているので, 条件を合わせるため 飛跡から求めた座標較正結果を導入 例 ) 陽電子 10GeV S1, S2 : 10 10 2 mm CHD: 30 450 10 mm アクリル窓 IMC : SciFi 32 本 8 層 W 板 7 枚, アクリル板 8 層 50 TASC : PWO 2 本 8 層 750 60 360 180 34 0 トリガーシンチの大きさ タングステン板の厚み 1 層目 0.80mm 2 層目 0.79mm 3 層目 0.80mm 4 層目 0.76mm 5 層目 0.76mm 6 層目 3.60mm 7 層目 3.64mm ( 1 r.l. = 3.503cm ) 合計 3.18 r.l. 8
データ解析 入射粒子 陽電子 10,15,25,50,75,150 GeV 位置 : トリガーシンチレーター S1,S2(1 1cm) を通過したイベント 方向 : 垂直入射 ( トリガーシンチの中央に入射 ) 解析条件 IMC : 7+8 層目のエネルギー損失合計 15MIP TASC : 1 層目のエネルギー損失 52MIP ( シャワートリガー ) 混入粒子除去条件 MIP 算出 μ 粒子 150 GeV のデータを使用 実データ : ランダウにペデスタルのガウス分布を畳み込んだフィット シミュレーション : ランダウフィット (SciFi,PWO 共 ) 9
IMC でのエネルギー損失 陽電子 10GeV 色分け : 実データ & Geant4 & EPICS 縦軸 : 実験データで規格化したイベント数横軸 : 粒子数換算したエネルギー損失値 ( 横軸は Log スケール ) IMC 各層でのでの比較 Layer 1 各層でのエネルギー損失の合計シャワー発達の様子が6 層目までで確認できる IMC 中の全 SciFi256 本でのエネルギー損失合計 シミュレーションと実データデータで良い一致 シングルイベント Layer 2 シャワーイベント Layer 3 Mean 差 : 0.848% Mean 差 : 1.17% Layer 4 Layer 5 全 SciFi Layer 6 Layer 7 Data : 215 ~70 MIP Layer 8 10
TASC でのエネルギー損失 陽電子 10GeV 各層でのエネルギー損失の合計 1 層目は PMT,2~8 層目は APD で読み出したデータを使用 TASC 各層で一致 (1 層目はこのデータで PMT-MIP をキャリブレーション ) TASC 中の全 PWO16 本でのエネルギー損失の合計 シミュレーションと実データデータで良い一致 縦軸 : 実験データで規格化したイベント数横軸 : 粒子数換算したエネルギー損失値 ( 横軸は Log スケール ) TASC 各層でのでの比較 Layer 1 Layer 2 Layer 3 ~110 MIP Mean 差 : 0.163% Mean 差 : 0.461% Layer 4 Layer 5 全 PWO Layer 6 Layer 7 Data : 215 Layer 8 11
IMC でのエネルギー損失 陽電子 150GeV 各層でのエネルギー損失の合計シャワー発達の様子が5 層目までで確認できる IMC 中の全 SciFi256 本でのエネルギー損失合計 シミュレーションと実データデータで一致 (10GeV ほど一致は良くない ) (Geant4 については値が小さく出る傾向あり ) シングルイベント 縦軸 : 実験データで規格化したイベント数横軸 : 粒子数換算したエネルギー損失値 ( 横軸は Log スケール ) IMC 各層でのでの比較 Layer 1 Layer 2 シャワーイベント Layer 3 Mean 差 : 1.70% Layer 4 全 SciFi Mean 差 : 6.88% Layer 5 Layer 6 Layer 7 Data : 261&449 ~280 MIP Layer 8 12
TASC でのエネルギー損失 陽電子 150GeV 各層でのエネルギー損失の合計 1 層目は PMT,2~8 層目は APD で読み出したデータを使用 TASC 各層で一致 (7 層目は APD 動作不良による不一致 ) TASC 中の全 PWO16 本でのエネルギー損失の合計 平均値は ~1% 程度のずれだが, 分布拡がりに違いが見られる Mean 差 : 0.983% 縦軸 : 実験データで規格化したイベント数横軸 : 粒子数換算したエネルギー損失値 ( 横軸は Log スケール ) TASC 各層でのでの比較 Layer 1 Layer 2 Layer 3 Layer 4 ~1400 MIP Mean 差 : 1.14% Layer 5 全 PWO (7 層目除く ) Layer 6 APD 動作不良 左図ではでは除外 Layer 7 Data : 449 Layer 8 13
エネルギー損失の遷移曲線 陽電子 10GeV 検出器におけるシャワー発達の遷移曲線で良い一致 TASC 1~8 層目において, Geant4 : 3.83% 以内の一致 EPICS : 2.84% 以内の一致 色分け : 実データ & Geant4 & EPICS 左図縦軸 : 実験値を基準としたTASC 各層でのエネルギー損失の比右図縦軸 : IMC 及びTASCの各層でのエネルギー損失の平均値横軸 : 検出器深さ Geant4 : 誤差 3.38% 以内 Epics : 誤差 2.45% 以内 TASC Layer 1 Data : 215 14
エネルギー損失の遷移曲線 陽電子 150GeV 検出器におけるシャワー発達の遷移曲線で良い一致 TASC 1~8 層目において, Geant4 : 5.89% 以内の一致 EPICS : 4.28% 以内の一致 色分け : 実データ & Geant4 & EPICS 左図縦軸 : 実験値を基準としたTASC 各層でのエネルギー損失の比右図縦軸 : IMC 及びTASCの各層でのエネルギー損失の平均値横軸 : 検出器深さ Geant4 : 誤差 5.89% 以内 TASC Layer 1 Epics : 誤差 4.28% 以内 APD 動作不良 Data : 449 15
エネルギー分解能 TASC でのエネルギー分解能 TASC におけるエネルギー損失分布を用いて分解能を定義 エネルギー分解能 : RMS TASC / < E TASC > 色分け : 実データ & Geant4 & EPICS 縦軸 : TASC におけるエネルギー分解能横軸 : 入射粒子のエネルギー 実験データとシミュレーションで傾向がほぼ一致 高エネルギー領域ではシャワーの 漏れ出しにより分解能が落ちる 実験結果の方が分解能が低い preliminary シャワー漏れ等による分解能劣化 除ききれていない混入成分の影響 ( コンタミ除去は今後の検討課題 ) マルチヒットした粒子の影響 ( 同時に複数粒子が入射したイベント ) 16
シャワー横拡がり IMC,TASC でのシャワー横拡がり 電子陽子識別に使うパラメーターの 1つとして比較 ( 例. 陽電子 10GeV ) IMCの横拡がりでは,IMC8 層目でシャワー軸が SciFiベルトの1mm 内側を通過するイベントを使用 IMC SciFi でのエネルギーエネルギーの重みをみを付けたけた横拡横拡がり IMCでは実験結果とシミュレーションで分布はほぼ一致するが, 差は平均値で ~4% 程度あり TASCではよく一致するが,1 層にPWO2 本しかないため,1cmのところでエッジができる [ エネルギーの重みを付けた横拡がり R E の算出式 ] 例. TASC の場合 PWO でのエネルギーエネルギーの重みをみを付けたけた横拡横拡がり TASC Data : 451 17
シャワー横拡がり IMC,TASC でのシャワー横拡がり 電子陽子識別に使うパラメーターの 1つとして比較 ( 例. 陽電子 150GeV ) IMCの横拡がりでは,IMC8 層目でシャワー軸が SciFiベルトの1mm 内側を通過するイベントを使用 IMC SciFi でのエネルギーエネルギーの重みをみを付けたけた横拡横拡がり IMCでは実験結果とシミュレーションで分布はほぼ一致するが, 差は平均値で ~3% 程度あり TASCでは分布に違いが見られるが, 平均値では ~2% 程度の差 [ エネルギーの重みを付けた横拡がり R E の算出式 ] 例. TASC の場合 PWO でのエネルギーエネルギーの重みをみを付けたけた横拡横拡がり TASC Data : 449 18
まとめ 実験結果からシミュレーションに検出器応答特性を導入 座標較正クロストークノイズ 陽電子に関する実験結果とシミュレーションの比較 陽電子 10~150 GeV のデータを使用実験データを基準とした平均値の誤差は以下の通りエネルギー損失エネルギー損失横拡がりの横拡がりの単位 [%] の平均値 (IMC) の平均値 (TASC) 平均値 (IMC) 平均値 (TASC) 10 GeV EPICS 0.85 0.16 4.1 1.9 Geant4 1.2 0.46 3.8 1.9 150 GeV EPICS 1.7 0.99 3.0 2.1 Geant4 6.9 1.1 0.71 2.3 今後の課題 除き切れていない混入粒子を除去する条件の設定 ハドロンのデータ解析 19