国語実践 3 小学校 6 年 学級討論会をしよう 話し合う能力能力を身に付けさせるためのけさせるための討論討論の工夫 原小学校 遠藤 俊爾 Ⅰ Ⅱ 実践のポイント 討論会を通して 話し合う能力を身 に付けさせるために 1 話合いの場の設定として 学習形 態を工夫することにより 発言す ることが苦手な児童にも発言する 機会をもたせた 2 話合いのテーマを精選することに より 児童が活動への興味をもち やすくした 3 発言ルールの明確化を図ることに より 自分の考えを発言しやすく した 指導者の願い 本学級は 国語の学習に意欲的に取り組 むことができる児童が多く 活発に自分の 考えを発言することができる しかし 自 分の考えを示すことができずに 一部の発 言力のある児童の考えに従ったり 自分の 考えを率直に述べることができなかったり する児童もいる 話合い活動については 低 中学年段階 から 国語科だけでなく他教科や道徳 学 級活動 総合的な学習の時間においても繰 り返し経験してきている その活動の中で 発言力のある児童については 自分の考え を強い言葉や態度で押し切ろうとすること があることから 自分の考えを言い出せな い児童の発言を引き出して話合いをするこ とはなかなかできない 自分の思いが強く 挙手せずに発言したり 他の児童が発表し ている途中に発言したりと 発言ルールか ら逸脱する場面もある そこで 話合い活動において自分の考え を積極的に発言し 互いの意見交流が深ま ることで 話し合う能力がより身に付いた 姿になることを期待したい Ⅲ 指導の工夫 1 話合いの場の設定の工夫 話合いの場の設定として 学習形態を工 夫することについて考えた 話し合うこと が苦手な児童の抵抗感を取り除くため 話 し合う人数を二人から始めた 話すことが 苦手な児童であっても 自分と相手しかい ない状況に置くことにより 発言する必然 性が生じ 自分の考えを表現する機会を確 保することができると考えた テーマを変えながら 何度か同じ相手で 話合いを繰り返し 徐々に慣れてくること で発言することの負担を減らそうとした 次に相手を変えながら 二人組の話合いを 重ねた その後 三人組 四人組と話し合 う人数を増やすこととした また 学級全体で取り組んだ学級討論会 でも それぞれの立場での話合いの中に 3~4 人の少人数での話合い活動を取り入 れることで 活発な意見交流を図ることが できるであろうと考えた 2 話合いのテーマの精選 話合いのテーマを身近な問題や既に知識 を有している問題を取り上げることによ り 児童が興味をもち 根拠が示しやすく 話合いを深めることができるのではないか -63-
ととらえた その場で考えて話すことを多 く経験させることで 根拠を明らかにする ことや理由をはっきり示すことの大切さに ついても身に付けさせようと考えた 3 発言ルールの明確化 発言のルールについては 集中して あるいは しっかりと 発言することが課 題となっていた ( 図 1) 他のグループが発 言しているときは その考えについてメモ を取ると把握しやすくなることや 自分の 考えとの共通点 相違点をはっきりさせて 話し合うことが大切なことを 確認した また 司会者が進行することにより 発 言しているときは その発言が終わるまで 他の人は発言しないというルールを徹底し た 発言者の考えがはっきりととらえられ るように 自分の考えをまとめるために相 手の意見をしっかりと聞く態度を身に付け させるためである このことにより 話合 いがより深まり伝え合う力が高まるであろ うと考えた Ⅳ 図 1 実践の概要 1 題材名 話合いの課題のワークシート [6 年 ] 学級討論会をしよう 2 指導目標 討論会の進め方や 司会者や発表者の役 割について理解し 互いの立場や意図をは っきりさせて話したり それぞれの発言を しっかり聞いたりして 討論をすることが できる 3 指導計画 ( 全 6 時間 ) 時間 めあて 学級討論会 とは何かを知り ねらいや 準備 進め方について理解する 今までの話合いの学習を振り返り 司会 者や発表者の留意点について考える ま 1 た 学級文庫に まんがを置くことはよ ~ 2 3 ~ 5 ( 本 時 は 4 ) 6 いか を課題として全体で話し合い 討 論会の流れや進行の仕方 発表の仕方に ついて課題を出し合う 司会者の進行の仕方や 発表者の話合い の流れを示したワークシートをもとに 少人数で話合いを行う 課題に対する肯定 否定の考えについて それぞれ資料収集を行い グループで発 表原稿などの準備をし 学級討論会がで きるようにする クラスを二つに別け ディベート形式で 学級討論会を行う 立場ごとに 少人数 のグループで検討し 発表する 討論を 聞き手及び相手側のグループは メモを 取りながら聞く 討論を振り返り 成果を話し合う 各グループの司会者や発表者の仕方につ いて振り返り 今後司会者や発表者の立 場に立ったときに より良い活動ができ るように評価を役立てるようにする 4 実践授業の展開 (1) 話合いの場の設定の工夫 学習形態の工夫として 話し合う人数を 二人から始めた 短時間であるが テーマ を変えながら 何度か同じ相手で話合いを -64-
繰り返した 次に相手を変え 二人組の話 合いを重ねた A さんは 今まで話合い活 動では あまり積極的に自分の考えを発言 することはなかったが どうにかしなけ ればと思った ことから 相手に考えを 伝えることができた その後 三人組 四 人組と話し合う人数を増やした ここでも A さんは ほとんど経験がなかった司会役 にも挑戦し 司会をやって 発言が出な いと困ってしまった それからは 今まで よりも 自分の考えを発言できるようにな った と書いている また 2 回の学級討論会でも それぞれ の立場での話合いの中に 3~4 人の少人 数での話合い活動を取り入れた ( 図 2) 4 人の意見を全部聞いて 判断できた 全 員が考えを出してから話し合ったので そ れぞれの考えがよくわかった との振り 返りから グループの中では全員が発言す ることができ お互いの立場や意図をはっ きりさせながら話合いを進めることに効果 的であったと考える は必要か など 日常生活や学校行事に関 連した話題とすることで 身近に感じ立場 が明確にできるようにした B さんは 何 回かやってみて 携帯電話など自分が考え られることだったので 話合いができてよ かった と感じるなど 9 割の児童が興 味をもって話合いができた (3) 発言ルールの明確化 他の立場の人が発言しているときは そ の考えについてメモを取り 正確に理解さ せることで 共通点 相違点をはっきりさ せることとした また 発言中は 他の人 は発言しないということで 自分の考えを 言い終わるまで発言の機会を保障した C さんは 自分の考えをしっかりと発言する のに時間がかかるが 受容的に発言を聞く ことで 前より すごく長く発表できて よかった と感想をもつなど 全員が今 までより良くできたと感じている 討論会は 司会者及び計時係は 司会進 行用原稿に従って進行した ( 図 3) 司会者 は 時間やルールを守ること や みん なの様子を見て進行する ことに気を付け たとしていた 他の人の発表のじゃまを しないで 意見をしっかり聞いていた たくさんの質問や意見が出て 時間がず れたが 自分もそうだなと思う意見もあり よかった と振り返ることができた こ のことから ルールを事前に明確にしてお くことは 有効であったと考える 図 2 小グループでの話合い活動 (2) 話合いのテーマの精選 話し合うテーマを児童の興味のもてそう な話題 あるいは今までの知識で対応でき るような話題を設定した 宿題を学校で することはよいか 自習の時間に 自由 帳をするのはよいか 小学生に携帯電話 -65- 図 3 司会進行用の原稿
肯定側 否定側 聞き手それぞれの立場 については 個人の考えをしっかり話し 合い 結論が出たことがよかった 発 言を聞き逃さないように静かに聞いた 二つの主張をしっかり聞いて メモを取 ったことで 自分の考えをまとめやすかっ た という感想だった 以上のことから お互いの立場を認め合い 小グループでの 検討も円滑に行うことができたと考える 図 5 話合いの結果を発表する児童 図 4 学級討論会時間の掲示 Ⅴ まとめ本実践では 学級討論会の全体で話し合う場面に 少人数 (3~4 人 ) のグループの話合いを取り入れ 話し合う能力の向上を目指した 成果 二人組から 話し合う経験を重ねたことにより 発言が苦手であった児童も 全体の討論会で進んで発言することができた 聞き手が受容的な態度で発言を聞いたため発言しやすい雰囲気となった 修学旅行のことや携帯電話を話題にしたことで関心が高められ 活発に意見が出やすかった 学級単位の討論会の中で それぞれの立場の中に少人数グループの話合い活動を取り入れたことで 児童一人一人の考えをまとめることができ 討論会に反映させることができた 課題 課題は 論点が曖昧になり 結論を導きにくい二者択一のものより 共通の視点をもたせるためにも 肯定 否定の立場がはっきりするものを設定することが効果的である 自分の考えの根拠を明確に示すところまでは困難であった そのための資料収集に 時間を確保することが大切である 説得力のある話し方について 事前の学習でポイントを確認しておいたが 身に付いているとはいえなかった 言葉そのものはもちろんであるが 顔の表情や動作を含めた説得力についても 追究することが必要である 討論会自体は 司会者を中心に円滑に行われているように感じたが 討論がそのまま流れてしまった 討論の途中であっても 大切なポイントとなる児童の発言は 指導者が取り上げ確認したい 図 6 討論会のワークシート -66-
資料 実践を生かした授業案 第 6 学年題材名 学級討論会をしよう ( 本時は 4/6) 本時のねらい 学級討論会において 互いの立場や主張をはっきりとらえ 話合い活 動をすることができる めあて指導の工夫児童の活動 1 前時に学んだことを確 前時の活動を確認することで 本時の課題 ( 肯 ) 肯定側 認して 本時のめあてを を明確にし 活動に取り組みやすくする ( 否 ) 否定側 つかもう 本時のめあて ( 聞 ) 聞き手 学級討論会で 互いの立場や主張を はっきりとらえ 話合いをしよう 2 グループに分かれて グループの分担 テーマを司会者に確認す 司会 1 計時係 1 肯定 テーマ及び話合いのルーるよう助言し グループ活動にすぐに取り側発表 8( 図 7) 否定側発 ル 時間を確認しよう 組めるようにする 表 8 聞き手 4 グループ 肯定側発表 否定側発表 聞き手質問 回 3~4=15 名 ( 図 8) に 答 肯定側まとめ 否定側まとめを行うこ となど 話合いのルールを掲示した模造紙 やワークシートを振り返らせて確認する ( 図 4) 3 学級討論会をしよう 司会者及び計時係に 学級討論会のテーマ 進め方や時間を確認させ 円滑な進行がで きるように助言する テーマ ペットを飼うなら犬がよい 分かれる テーマについて考えを理 由や根拠とともに グル ープで話し合う 4 肯定側 否定側それぞ それぞれのグループの代表であることを意 小グループ (4 人 ) で話 れの考えについて 意見 識させ はっきりとした声で 考えの根拠 を発表しよう についても話すように助言する また 声 全員に聞こえるようにさせる 図 7 学級討論会 肯定側の話合い -67- 合い 次にそれぞれの立場 (8 人 ) で話し合う が小さすぎたり 大きすぎたりする児童に 代表者を中心に話し合う は 声の大きさの調整をするように伝え 反応例 ( 肯 ) 犬は 盲導犬や警察犬など人の役に立ち たくましくまじめなのでよい ( 否 ) 犬は 散歩しなくてはいけないし ほえてうるさい しつけの手間がかかる 予防接種も必要 ドッグフードなどお金もかかる
5 聞き手 相手側グルー プは 簡単にメモをとり 疑問点や質問したいとこ ろを はっきりさせよう 図 8 学級討論会聞き手の話合い 反応例 ( 肯 聞 ) 手間がかかるとい うことは それだけ犬に 対して気持ちや愛情がこ もっていいと思いますが どうですか 6 聞き手及び相手側グル 聞き手及び相手側グループの質問に回答で 反応例 ( 否 聞 ) 猫などは マイペ ースで生きているので手 間がかからなくてよいの ではないですか ープが質問しよう きない場合には 教師が分かりやすい言葉 ( 肯 ) 犬はしつけをするとよ に置き換え回答しやすくさせる 7 肯定側 否定側が相手 聞き手の話合いが円滑に行えるように 事 や質問を踏まえて まと めの発表しよう 8 聞き手は 自分たちの 考えをまとめるための話 合いをしよう ( 図 8) 前にグループリーダーを設定し 話合いの 進行をさせ 意見をまとめさせる 話合い に参加できない児童には 個別に助言をす る 9 聞き手グループ 4 つの 聞き手グループ 4 つのそれぞれの判断につ 反応例 く覚えなついて 人の役 にも立つ 犬と一緒の散 歩も景色を見られる 代表者は 自分たちの考いて メモをとりながら聞くようにするこ ( 聞 ) 肯定側に賛成です 理 えについて発表しよう とで 自分たちの考えの良かったところや 相手の良かったところなどを確認させる ( 図 6) 10 今日の学習について振 本時の学習につい り返り 次時について確 かめよう て振り返り グル ープ内の話合いに ついて 評価をさ せる また 自己 評価を行い 次時 の学習の意欲をも てるようにする ( 図 9) 図 9 振り返りワークシート 由は 盲導犬など人の役 に立つことや しつけを することは大変ですが それだけなついてくれる からです 反応例 質問に答えられたのが うれしかった たくさんの意見が出てき て 聞くことも楽しかっ た いつもより 落ち着いて できたのがよかった 次 も頑張りたい -68-