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務が他の職種の職務と明確な差異がある場合には 解雇回避努力の内容として 配置転換や職務転換に限られず 退職金の上乗せ 再就職支援等をもって解雇回避努力を尽くしたとされる場合があり 他方 限定された職務が高度な専門性や高い職位を伴わない場合 あるいは当該職務が他の職種の職務と差異が小さい場合には 解雇

( 様式第 1 号 ( 共通 )) 共通事項 1 キャリアアップ管理者 情報 ( 氏名 ): 役職 ( 配置日 ): 年月日 2 キャリアアップ管理者 の業務内容 ( 事業所情報欄 ) 3 事業主名 印 4 事業所住所 ( - ) 5 電話番号 ( ) - 6 担当者 7 企業全体で常時雇用する労働

佐藤委員提出資料

の手支援策の紹介事例の紹介1 ページに記載した法改正の趣旨や内容を十分に理解した上で 以下の手順で制度導入を進めましょう STEP 1 STEP 1 STEP 2 STEP 3 STEP 4 有期社員の就労実態を調べる社内の仕事を整理し 社員区分ごとに任せる仕事を考える適用する労働条件を検討し 就業

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Ⅲ コース等で区分した雇用管理を行うに当たって留意すべき事項 ( 指針 3) コース別雇用管理 とは?? 雇用する労働者について 労働者の職種 資格等に基づき複数のコースを設定し コースごとに異なる配置 昇進 教育訓練等の雇用管理を行うシステムをいいます ( 例 ) 総合職や一般職等のコースを設定し

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3. 無期労働契約への転換後の労働条件無期労働契約に転換した後の職務 勤務地 賃金 労働時間等の労働条件は 労働協約 就業規則または個々の労働契約等に別段の定めがない限り 直前の有期労働契約と同一になるとされており 無期転換に当たって職務の内容などが変更されないにもかかわらず 無期転換後の労働条件を

均衡待遇・正社員化推進奨励金 支給申請の手引き

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第22回規制改革会議 資料3

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短時間 有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針 について ( 同一労働同一賃金ガイドライン ) 厚生労働省雇用環境 均等局有期 短時間労働課職業安定局需給調整事業課

職場環境 回答者数 654 人員構成タイプ % タイプ % タイプ % タイプ % タイプ % % 質問 1_ 採用 回答 /654 中途採用 % 新卒採用 % タ

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2018年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果

Ⅰ 多様な正社員とは? 1. 多様な正社員について知ろう! 一般的に 正社員は 1 労働契約の期間の定めがない 2 所定労働時間がフルタイムである 3 直接雇用である者をいいます 多様な正社員とは いわゆる正社員 ( 従来の正社員 ) と比べ 配置転換や転勤 仕事内容や勤務時間などの範囲が限定されて

限定正社員に関する議論の整理-規制改革会議 雇用ワーキング・グループの提案を受けて

今回の改正によってこの規定が廃止され 労使協定の基準を設けることで対象者を選別することができなくなり 希望者全員を再雇用しなければならなくなりました ただし 今回の改正には 一定の期間の経過措置が設けられております つまり 平成 25 年 4 月 1 日以降であっても直ちに希望者全員を 歳まで再雇用

(2) 労働者人口の減少 一方労働人口は減少しつつあり 推計値では 2025 年には 6300 万人まで減少見込みとなっております 問題点 以下のような状況の中で今後どのように労働者を確保して 企業を活性化させるか? 条件 1 労働者人口が減少する 2 フルタイム労働者が減る 3 未熟練従業員が増え

4 子育てしやすいようにするための制度の導入 仕事内容への配慮子育て中の社員のため以下のような配慮がありますか? 短時間勤務ができる フレックスタイムによる勤務ができる 勤務時間等 始業 終業時刻の繰上げ 繰下げによる勤務ができる 残業などの所定外労働を制限することができる 育児サービスを受けるため

平成 27 年改正の概要 ( サマリー ) 一般労働者派遣事業 ( 許可制 ) 特定労働者派遣事業 ( 届出制 ) 26 業務 期間制限なし 26 業務以外 原則 1 年 意見聴取により最長 3 年まで 規定なし 規定なし 1. 許可制への統一 2. 派遣契約の期間制限について すべての労働者派遣事

等により明示するように努めるものとする ( 就業規則の作成の手続 ) 第 7 条事業主は 短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し 又は変更しようとするときは 当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする ( 短時間労働者の待遇の原

ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)  レベル診断チェックシート

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Ⅱ.1 ワーク ライフ バランス施策の定義と類型 (1) ワーク ライフ バランス施策とは work-life balance 1 (2) ワーク ライフ バランス施策の類型

従業員に占める女性の割合 7 割弱の企業が 40% 未満 と回答 一方 60% 以上 と回答した企業も 1 割以上 ある 66.8% 19.1% 14.1% 40% 未満 40~60% 未満 60% 以上 女性管理職比率 7 割の企業が 5% 未満 と回答 一方 30% 以上 と回答した企業も 1

無期契約職員就業規則

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今後 この政府のガイドライン案をもとに 法改正の立案作業を進め 本ガイドライン案については 関係者の意見や改正法案についての国会審議を踏まえて 最終的に確定する また 本ガイドライン案は 同一の企業 団体における 正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を是正することを目的としているため

「限定正社員制度」は安定的雇用拡大の決め手となりうるか

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法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

平成 31 年 4 月 1 日から平成 34 年 3 月 31 日まで 63 歳平成 34 年 4 月 1 日から平成 37 年 3 月 31 日まで 64 歳 4 定年について 労働者の性別を理由として差別的取扱いをしてはなりません ( 均等法第 6 条 ) ( 退職 ) 第 48 条前条に定める

規定例 ( 育児 介護休業制度 ) 株式会社 と 労働組合は 育児 介護休業制度に関し 次 のとおり協定する ( 対象者 ) 育児休業の対象者は 生後満 歳に達しない子を養育するすべての従業員とする 2 介護休業の対象者は 介護を必要とする家族を持つすべての従業員とする 介護の対象となる家族の範囲は

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非正規労働者 - 正規 無期転換が積極化 労働新聞 8 月 11 日号 厚生労働省が平成 25 年度からスタートさせた非正規雇用労働者を対象とするキャリアアップ助成金が 予定規模を大幅に上回る利用状況となり注目が集まっている 同助成金を利用するための条件である キャリアアップ計画 を作成し認定を受け

申出が遅れた場合は 会社は育児 介護休業法に基づき 休業開始日の指定ができる 第 2 条 ( 介護休業 ) 1 要介護状態にある対象家族を介護する従業員 ( 日雇従業員を除く ) 及び法定要件を全て満たした有期契約従業員は 申出により 介護を必要とする家族 1 人につき のべ 93 日間までの範囲で

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制度名 No. 1 ( 働 1) フレックスタイム制度 対象者: 営業職の正社員 労働時間の清算期間: 毎月 1 日から末日までの1か月 1 日の所定労働時間は 8 時間 清算期間内の総労働時間: 1 日あたり8 時間として 清算期間中の労働日数を乗じて得られた時間数 ただし 清算期間内を平均し1

採用者数の記載にあたっては 機械的に採用日の属する年度とするのではなく 一括 採用を行っている場合等において 次年度新規採用者を一定期間前倒しして雇い入れた 場合は 次年度の採用者数に含めることとしてください 5 新卒者等以外 (35 歳未満 ) の採用実績及び定着状況採用者数は認定申請日の直近の3

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1 なぜ 同一労働同一賃金 が導入されるのか? 総務省統計局労働力調査 ( 詳細集計 ) 平成 30 年 (2018 年 )7~9 月期平均 ( 速報 ) によると 非正規労働者数は 2,118 万人 ( 前年同期比 68 万人増加 ) 正規労働者数は 3,500 万人となっています 役員を除く雇用

(1) はじめに 何故この 3 点のみご案内させていただくのかと申しますと 他の要件と比較し導入がしやすい点にあります 非正規労働者の職業訓練や賃金テーブルの見直し 法定外の健康診断制度は導入する敷居が若干高く また それらは一度制度として導入してしまうと助成金の申請期間が過ぎた後も通常続けざるを得

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あおもり働き方改革推進企業認証制度 Q&A 平成 29 年 12 月 14 日 Vol.1 目次 1 あおもり働き方改革推進企業認証制度全般関係 Q1 県外に本社がある場合はどのように申請できるのか P1 2 あおもり働き方改革宣言企業関係 Q2 次世代法に基づく一般事業主行動計画とはどういうものか

筑紫野市学童保育連絡協議会学童クラブ指導員就業規則

2 継続雇用 の状況 (1) 定年制 の採用状況 定年制を採用している と回答している企業は 95.9% である 主要事業内容別では 飲食店 宿泊業 (75.8%) で 正社員数別では 29 人以下 (86.0%) 高年齢者比率別では 71% 以上 ( 85.6%) で定年制の採用率がやや低い また

内閣府令本文


11月は『職業能力開発促進月間


指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

ただし 日雇従業員 期間契約従業員 ( 法に定める一定の範囲の期間契約従業員を除く ) 労使協定で除外された次のいずれかに該当する従業員についてはこの限りではない (2) 週の所定労働日数が2 日以下の従業員 (3) 申出の日から93 日以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員 2 要介護状態に

4-1 育児関連 育児休業の対象者 ( 第 5 条 第 6 条第 1 項 ) 育児休業は 男女労働者とも事業主に申し出ることにより取得することができます 対象となる労働者から育児休業の申し出があったときには 事業主は これを拒むことはできません ただし 日々雇用される労働者 は対象から除外されます

社内様式 2 育児 介護 休業取扱通知書 あなたが平成年月日にされた 育児 介護 休業の申出について 育児 介護休業等に関する規則 第 3 条 第 7 条 に基づき その取扱いを下のとおり通知します ( ただし 期間の変更の申出があった場合には下の事項の若干の変更があり得ます ) 1 休業の期間等

育児休業制度の概要

目次 問 1 労使合意による適用拡大とはどのようなものか 問 2 労使合意に必要となる働いている方々の 2 分の 1 以上の同意とは具体的にどのようなものか 問 3 事業主の合意は必要か 問 4 短時間労働者が 1 名でも社会保険の加入を希望した場合 合意に向けての労使の協議は必ず行う必要があるのか

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- 調査結果の概要 - 1. 改正高年齢者雇用安定法への対応について a. 定年を迎えた人材の雇用確保措置として 再雇用制度 導入企業は9 割超 定年を迎えた人材の雇用確保措置としては 再雇用制度 と回答した企業が90.3% となっています それに対し 勤務延長制度 と回答した企業は2.0% となっ

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の業務について派遣先が九の 1 に抵触することとなる最初の日 六派遣先への通知 1 派遣元事業主は 労働者派遣をするときは 当該労働者派遣に係る派遣労働者が九の 1の ( 二 ) の厚生労働省令で定める者であるか否かの別についても派遣先に通知しなければならないものとすること ( 第三十五条第一項関係

第41回雇用WG 資料

必要とする家族 1 人につき のべ 93 日間までの範囲内で 3 回を上限として介護休業をすることができる ただし 有期契約従業員にあっては 申出時点において 次のいずれにも該当する者に限り 介護休業をすることができる 一入社 1 年以上であること二介護休業開始予定日から 93 日を経過する日から

23 歳までの育児のための短時間勤務制度の制度普及率について 2012 年度実績の 58.4% に対し 2013 年度は 57.7% と普及率は 0.7 ポイント低下し 目標の 65% を達成することができなかった 事業所規模別では 30 人以上規模では8 割を超える措置率となっているものの 5~2

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厚生労働省発表

第 2 章職階および等級 ( 職 階 ) 第 7 条 職階は 職務遂行に要求される能力の範囲と程度に基づき 一般職 監督職 管理職およ ( 等級 ) 第 8 条等級は 各々の職階における職務遂行能力の成熟度の差に応じ 次の9 等級に区分するものとする 2. 前項の職階および等級の職能資格基準は 別表

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改正労働基準法

契約の終了 更新18 無期労働契約では 解雇は 客観的に合理的な理由を欠き 社会通念上相当であると認められない場合 は 権利濫用として無効である と定められています ( 労働契約法 16 条 ) 解雇権濫用法理 と呼ばれるものです (2) 解雇手続解雇をする場合には 少なくとも30 日前に解雇の予告

2019 年 3 月 経営 Q&A 回答者 Be Ambitious 社会保険労務士法人代表社員飯野正明 働き方改革のポイントと助成金の活用 ~ 働き方改革における助成金の活用 ~ Question 相談者: 製造業 A 社代表取締役 I 氏 当社における人事上の課題は 人手不足 です 最近は 予定

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( イ ) 従業員の配偶者であって育児休業の対象となる子の親であり 1 歳 6か月以降育児に当たる予定であった者が死亡 負傷 疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合 6 育児休業をすることを希望する従業員は 原則として 育児休業を開始しようとする日の1か月前 (4 及び5に基づく1 歳

Transcription:

多様な正社員 の普及 拡大のための有識者懇談会報告書の概要 趣旨 いわゆる正社員 と 非正規雇用の労働者 の働き方の二極化を緩和し 労働者一人ひとりのワーク ライフ バランスと 企業による優秀な人材の確保や定着の実現のため 職務 勤務地又は労働時間を限定した 多様な正社員 を労使双方にとって望ましい形で普及させることが求められている 日本再興戦略 ( 平成 25 年 6 月閣議決定 ) 等を踏まえ 平成 25 年 9 月に有識者を参集し懇談会を設置 同懇談会では計 14 回の議論を重ね 多様な正社員 の雇用管理をめぐる課題について検討 労使等の関係者が参照することができる 雇用管理上の留意事項 や就業規則の規定例を整理するととともに 政策提言をとりまとめ 多様な正社員 の普及 拡大のための有識者懇談会参集者 今野浩一郎神林龍黒田祥子黒澤昌子櫻庭涼子佐藤博樹竹内 ( 奥野 ) 寿野田知彦水町勇一郎 学習院大学経済学部経営学科教授一橋大学経済研究所准教授早稲田大学教育 総合科学学術院准教授政策研究大学院大学教授神戸大学大学院法学研究科教授東京大学社会科学研究所社会調査 データアーカイブ研究センター教授早稲田大学法学学術院准教授大阪府立大学経済学部教授東京大学社会科学研究所教授 山川隆一 東京大学大学院法学政治学研究科教授 座長 1

使用者が留意すべき事項及び政策提言の概要 1 多様な正社員の効果的な活用が期待できるケース (1) 勤務地限定正社員 育児や介護の事情で転勤が難しい者等について 就業機会の付与と継続を可能とする 有期契約労働者の多い業種において 改正労働契約法に基づく有期契約労働者からの無期転換の受け皿として活用できる 安定雇用の下で技能の蓄積 承継が必要な生産現場における非正規雇用からの転換の受け皿として また 多店舗経営するサービス業における地域のニーズにあったサービスの提供や顧客の確保のために それぞれ活用できる (2) 職務限定正社員 金融 IT 等で特定の職能について高度専門的なキャリア形成が必要な職務において プロフェッショナルとしてキャリア展開していく働き方として活用できる 資格が必要とされる職務 同一の企業内で他の職務と明確に区別できる職務で活用できる 高度な専門性を伴わない職務に限定する場合 職務の範囲に一定の幅を持たせた方が円滑な事業運営に資する (3) 勤務時間限定正社員 育児や介護の事情で長時間労働が難しい者等について 就業機会の付与と継続を可能とする 労働者がキャリア アップに必要な能力を習得する際に 自己啓発のための時間を確保できる働き方として活用できる 勤務時間限定の働き方の前提として 職場内の適切な業務配分 長時間労働を前提としない職場づくりの取組が必要である 2

2 労働者に対する限定の内容の明示 転勤 配置転換等の際の紛争の未然防止のため 職務や勤務地に限定がある場合には限定の内容について明示することが重要である これにより 労働者にとってキャリア形成の見通しの明確化やワーク ライフ バランスの実現が容易になり 企業にとっては優秀な人材を確保しやすくなる効果がある 労働契約法第 4 条の書面による労働契約の内容の確認の対象としては 職務や勤務地の限定も含まれることについて 労働契約法の解釈を周知する 労働基準法の改正 ( 限定の明示の義務化 ) については 明示の運用が定着していない段階では企業の実務に混乱を与え 多様な正社員の普及を阻害するおそれもあるため 将来的課題 3 事業所閉鎖や職務の廃止等への対応 (1) 整理解雇 勤務地や職務が限定されていても 事業所閉鎖や職務廃止の際に直ちに解雇が有効となるわけではなく 整理解雇法理 (4 要件 4 要素 ) を否定する裁判例はない 解雇の有効性は 人事権の行使や労働者の期待に応じて判断される傾向がある 勤務地限定や高度な専門性を伴わない職務限定等においては 解雇回避のための措置として配置転換が求められる傾向にある 他方 高度な専門性を伴う職務や他の職務と明確に区別される職務に限定されている場合には 配置転換に代わり 退職金の上乗せや再就職支援によって解雇回避努力を尽くしたとされる場合もみられる (2) 能力不足解雇 多様な正社員についても 能力不足を理由に直ちに解雇することが認められるわけではなく 高度な専門性を伴わない職務限定では 改善の機会を付与するための警告に加え 教育訓練 配置転換 降格等が求められる傾向がみられる 能力不足解雇について 高度な専門性を伴う職務に限定されている場合には 教育訓練 配置転換 降格等が不要とされる場合もあるが 改善の機会を付与するための警告は 必要とされる傾向がみられる 3

4 転換制度非正規雇用の労働者から多様な正社員への転換 非正規雇用の労働者の希望に応じて 雇用の安定を図りつつ勤続に応じた職業能力開発の機会や処遇が得られるよう 多様な正社員への転換制度 ( 社内のルール ) を設けることが望ましい 有期契約労働者の時から契約の更新ごとに職務の範囲を広げ 無期転換後も職務の範囲やレベルを上げていくことは 労働者のキャリア アップと企業としての人材育成の双方に効果的である いわゆる正社員と多様な正社員の間の転換 労働者のワーク ライフ バランスの実現等のため いわゆる正社員から多様な正社員へ転換できることが望ましい 他方 キャリア形成への影響やモチベーション維持のため いわゆる正社員への再転換ができることが望ましい 転換制度の活用促進や紛争の未然防止のため 転換を社内制度として明確にすることが望ましい 職務 勤務地等が限定されていても その範囲や習得することができる能力についていわゆる正社員と差が小さい場合には ( ) キャリアトラックの変更 として いわゆる正社員と多様な正社員の区分をするのではなく 労働条件の変更 として取り扱うことが適切な場合もある そのような場合には 適切な人事評価を前提に 職務の経験 能力開発 昇進 昇格のスピード 上限に差を設けない あるいは できるだけ小さくするといった対応が考えられる また 転換 再転換の要件を緩やかに設定することが考えられる いわゆる正社員から勤務時間限定正社員への転換の内容が所定外労働の免除にとどまる場合や 勤務地限定正社員への転換の内容が職務内容の小さな変更にとどまる場合等 労働契約法第 3 条第 3 項の 仕事と生活の調和への配慮 に 多様な正社員への転換制度も含まれることについて 労働契約法の解釈を周知する 労働契約法の改正 ( 相互転換の義務付け ) については 相互転換の運用が定着していない段階では企業の実務に混乱を与え 多様な正社員の普及を阻害するおそれもあるため 将来的課題 4

5 均衡処遇 多様な正社員といわゆる正社員との双方に不公平感を与えず 又 モチベーションを維持するため 多様な正社員といわゆる正社員の間の処遇の均衡を図ることが望ましい 多様な正社員は限定の仕方や処遇が多様であり また 賃金や昇進は企業の人事政策に当たることから 定型的な人事労務管理の運用が定着していない中で 何をもって不合理とするのか判断が難しい 特に 多様な正社員の処遇についていかなる水準をもって均衡が図られているとするかについては一律に判断することは難しいが 企業ごとに労使で十分に話し合って納得性のある水準とすることが望ましい 多様な正社員の賃金水準については いわゆる正社員の 9 割超ないし 8 割とする場合が多い 勤務地限定正社員や勤務時間限定正社員 ( 所定外労働の免除 ) については いわゆる正社員と賃金テーブルは同一とし いわゆる正社員には転勤や残業の負担の可能性にプレミアムを支給する 勤務時間限定正社員 ( 短時間勤務 ) については いわゆる正社員の賃金の時間比例した水準とする等の制度が考えられる 労働契約法第 3 条第 2 項の 就業の実態に応じた均衡の配慮 には 多様な正社員といわゆる正社員との間の均衡処遇も含まれることについて 労働契約法の解釈を周知する 労働契約法第 20 条 ( 有期契約労働者と無期契約労働者の間の不合理な労働条件の禁止 ) と類似の規定を設けることについては 定型的な人事労務管理の運用が定着していない段階では 何をもって不合理と判断するか難しく 将来的な課題 6 いわゆる正社員の働き方の見直し 多様な正社員の働き方を選びやすくするため 所定外労働 転勤や配置転換の必要性や期間等の見直し等 いわゆる正社員の働き方を見直すことが望ましい 7 人材育成 職業能力評価 非正規雇用から多様な正社員へ 多様な正社員からいわゆる正社員への円滑なキャリア アップを可能とするため 業種 職種共通の職業能力を対象とした評価の ものさし の整備により 職務に必要な職業能力の 見える化 が必要 職業能力の 見える化 により明確にされた目標に即して 職業能力の計画的な習得を可能とするため 職業訓練機会を付与するとともに 中長期的キャリア形成に資する専門的 実践的な能力開発への支援を行うことが考えられる 5

8 制度の設計 導入 運用に当たっての労使コミュニケーション 多様な正社員制度が納得性を得られ 円滑に運用できるようにするため 制度の設計 導入 運用に当たって 労働者に対する十分な情報提供と 労働者との十分な協議が行われることが必要 労働組合との間での協議 また 労働組合がない場合であっても過半数代表との協議を行うなど 様々な労働者の利益が広く代表される形でのコミュニケーションを行うようにすることが重要であると考えられる 就業規則の規定例 労働条件の明示 ( 雇用区分の明確化 ) 地域限定正社員は 勤務する地域を限定し 都道府県を異にし かつ転居を伴う異動をしないものとする 地域限定正社員は 本人の同意なく転居を伴う異動を行わないものとする 職務限定正社員は 一定の職務区分において その職務区分ごとに必要とされる業務に従事する 職務限定正社員は 法人顧客を対象とした営業業務に従事する 短時間正社員は 1 年間の所定労働日数を 150 日以上 250 日以内 所定労働時間数を 1,000 時間以上 1,700 時間以内の範囲で雇用契約により定めるものとする 処遇 ( 賃金水準の設定 ) 1. 全国を Ⅰ~Ⅲ 地域に区分し 各地域に次の賃金係数を設定する Ⅰ 地域 100 Ⅱ 地域 95 Ⅲ 地域 90 2. 勤務地限定のない総合職は 賃金係数 100 を適用する 勤務地が限定された地域限定正社員の基本給 職務手当は 前項の地域区分及び賃金係数を適用する 転換 1. 地域限定正社員から総合職への転換を希望する者は 12 月 31 日までに所定の申請書を会社に提出しなければならない 2. 会社は 登用試験 人事面接等の結果転換を認める場合 合格した者を総合職に認定し 人事通知書により通知するものとする 1. 総合職から地域限定正社員への転換を希望する者は 12 月 31 日までに所定の申請書を会社に提出しなければならない 2. 前項の総合職は 係長級以上であって資格等級 3 級に 2 年以上在任したものであること 3. 会社は 人事面接等の結果転換を認める場合 4 月 1 日付けで地域限定正社員に認定し 人事通知書により通知するものとする 4. 前項の地域限定正社員から総合職への転換については 転換後 3 年以内は行わない また 相互転換の回数は 2 回までとする 経営上の理由等により事業所閉鎖等を行う場合の人事上の取扱 ( 解雇事由 ) 労働者が次のいずれかに該当するときは 解雇することがある 事業の運営上又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事由により 事業の縮小又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ かつ他の職務への転換が困難なとき 6