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マンション棟数密度 ( 東京 23 区比較 ) 千代田区中央区港区新宿区文京区台東区墨田区江東区品川区目黒区大田区世田谷区渋谷区中野区杉並区豊島区北区荒川区板橋区練馬区足立区葛飾区江戸川区

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一団地認定の職権取消し手続きの明確化について < 参考 > 建築基準法第 86 条 ( 一団地認定 ) の実績件数 2,200 ( 件 ) 年度別 ( 住宅系のみ ) S29 年度 ~H26 年度 実績件数合計 16,250 件 用途 合計 ( 件 ) 全体 17,764 住宅系用途 16,250

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の割合を言う ) 2013 年 ( 平成 25 年 ) には 政令に指定された災害で 大規模な全部又は一部滅失が生じた区分所有建物についても 区分所有者 議決権及び敷地共有者の 4/5 以上の多数で敷地売却決議が 敷地利用者等の 4/5 以上の多数の賛成により 1 建物取壊決議 ( 現存する建物を取

相続税計算 例 不動産等の評価財産の課税評価額が 4 億 8 千万円 生命保険金の受取額が 2 千万円 現金 預金等が 4 千万円 ローン等の債務及び葬式費用等が 3 千万円である場合の相続税を計算します 相続人は妻と 2 人の子供の 3 人です ( 評価額を計算するには専門知識を要します 必ず概算

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約 6 倍になると予測されており これら高経年マンションが増えていく中 経年による建物 設備の劣化等に対応するための大規模修繕や改修等の資金不足の問題が深刻化している 今後 良質なマンションを維持していくためにも 特にマンション共用部のリフォームについての支援が急務である (4) 賃貸住宅のリフォー

はじめに 研究の背景 既成市街地では木造既存住宅の耐震化のテンポが遅く空き家も増加し巨大地震への備えに懸念が生じている これらには資金問題が深く関わる 地域金融機関は地域密着型金融の機能強化が求められている 研究の目的 意義 地域金融機関の諸課題を踏まえた防災性向上策の検討で実社会に貢献 2013/

マンション建替えの現状 昭和 5 6 年 6 月を境にして, 建築基準法の改正により耐震構造基準が変更され, 耐震基準が厳しくなりました したがって, 以後に建築確認 1 を受けたマンションは, 一応, 耐震上の大きな問題はないと言えますが, 旧耐震基準のマンションでは, 耐震性の不足が問題となりま

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表1-表4-2

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内に 耐火建築物以外の建物についてはその購入の日以前 20 年以内に建築されたものであること 地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合する一定の中古住宅 を 平成 17 年 4 月 1 日以降に取得した場合には 築年数に関係なく適用が受けられます (56ページ 一

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予定建築物等以外の建築等の制限 法 42 条 立地基準編第 5 章 (P127~P131) 法第 42 条で規定されている 予定建築物等以外の建築等の制限 については 次のとおりとする 1 趣旨開発許可処分は 将来その開発区域に建築又は建設される建築物又は特定工作物がそれぞれの許可基準に適合する場合

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

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目次 1. 調査の概要 調査の目的 調査対象 対象地域 調査方法 回収状況 結果の概要 住み替え 建て替え リフォームに関する事項 住み替えに関する意思決定 リフォーム

項への対応が重要となる 4) 関係権利者との調整事業実現に不可欠な区分所有者以外の関係権利者との合意状況をいかにつくり上げるかが検討内容となる 建替え決議の効果は区分所有者以外には及ばないことから 建替えを円滑に実施するためには 区分所有者以外の関係権利者との利害関係の調整が重要となる (2) 各段


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1.UR 都市機構における再開発共同事業者エントリー制度の概要 1 参考資料 1

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西原町 2~4 丁目地区 区域図 西原町 2~4 丁目地区 低密度住宅ゾーン 中密度住宅ゾーン 戸建ての低層住宅地を主体に落ち着いた雰囲気を持った良好な居住環境の形成を誘導します また 都市農地の保全に努め 農地と共存した良好な居住環境の形成を誘導します 低層住宅と中高層住宅が調和した良好な居住環境

住宅の省エネエネ改修改修に伴う固定資産税固定資産税の減額制度減額制度について 平成 20 年 1 月 1 日以前に建てられた住宅 ( 賃貸住宅を除く ) について 平成 20 年 4 月 1 日から平成 32 年 3 月 31 日までの間に 一定の要件を満たす省エネ改修工事を行った場合 120 m2

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名前 第 1 日目 建築基準法 2 用途規制 1. 建築物の敷地が工業地域と工業専用地域にわたる場合において 当該敷地の過半が工業地域内であると きは 共同住宅を建築することができる 2. 第一種低層住居専用地域内においては 高等学校を建築することができるが 高等専門学校を建築する ことはできない

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はじめに 都市再生緊急整備地域及び特定都市再生緊急整備地域は 都市再生特別措置法 ( 平成 14 年 4 月 5 日公布 平成 14 年 6 月 1 日施行 以下 法 という ) に基づき 国が政令で指定するものです 1 都市再生緊急整備地域 趣旨 都市機能の高度化及び都市の居住環境の向上を図るため

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資料 5-1 第 4 回住宅団地の再生のあり方に関する検討会 団地再生の現状の課題 平成 26 年 11 月 19 日 株式会社アークブレイン代表取締役明治大学理工学部特任教授博士 ( 工学 ) 不動産鑑定士 一級建築士田村誠邦

弊社で携わったマンション 団地建替え事例 従前 従後 事例名称 所在 敷地面積 延べ面積 住戸数 構造規模 延べ面積 麻布パインクレス東京都 1129.3m2 3543.41 RC 造免 8697.83 47 戸 15F ト港区m2m2地下 2F 住戸数 69 戸 備考建替え決議によるわが国最初の老朽化マンション建替え例 同潤会江戸川アパートメント 東京都新宿区 6813.7 m2 11400 m2 258 戸 SRC 造 11F 地下 1F 20200 m2 23 2 戸 建替え決議によるわが国 2 番目の建替え事例 売渡請求の時価について初の最高裁判例 還元率 53% 諏訪町住宅 東京都新宿区 3884.45 m2 3045 m2 60 戸 RC 造 5F 地下 1F 6619.94 m2 96 戸 円滑化法の建替組合による全国初の建替え事例 ( 権利変換計画のみ弊社でサポート ) ジードルンク府中 東京都府中市 1063.19 m2 1386 m2 21 戸 SRC 造 13F 地下 1F 5630.42 m2 58 戸 区分所有法改正により建替え決議 コンサルタント参画から 3 年半で建替え完成 大京町住宅 東京都新宿区 1188.76 m2 1322.84 m2 24 戸 RC 造 5F 地下 1F 3426.71 m2 35 戸 円滑化法の建替組合による建替え 住宅金融支援機構の短期事業資金融資を受けて組合運営 下連雀住宅 東京都三鷹市 3993.86 m2 3907.2 m2 79 戸 RC 造 8F 地下 1F 9274.19 m2 108 戸 円滑化法の建替組合による建替え 1

1 麻布パインクレスト < 従前 > < 従後 > 2

2 同潤会江戸川アパートメント < 従前 > < 従後 > 3

3 諏訪町住宅 < 従前 > < 従後 > 4

4 ジードルンク府中 < 従前 > < 従後 > 5

5 大京町住宅 < 従前 > < 従後 > 6

6 下連雀住宅 < 従前 > < 従後 > 7

弊社で携わった集合住宅再生事例 事例所在敷地面積 従前 従後 用途備考構造規模延べ面積住戸数 備考 求道学舎 東京都文京区 845 m2 寄宿舎 ( 学生寮 ) 武田五一設計大正 15 年築 RC 造 3F 768.01 m2面積増無 10 戸 + 事務所 1 コーポラティブ方式 + 定期借地権で事業化 スケルトンインフィル方式を採用 建築確認上は用途変更 任意の耐震改修計画の評定を受けた 2008 年建築学会賞 ( 業績 ) 受賞 8

求道学舎の再生 都指定有形文化財求道会館 道路 求道学舎 既存建物 1 階平面図 全体配置図 コンバージョン後 1 階平面図 9

求道学舎の再生 ( 既存建物の状況 ) 10

求道学舎の再生 ( 工事期間中の状況 ) 11

求道学舎の再生 ( 再生後の状況 ) 12

団地再生 マンション再生の現状の 課題 1 マンション建替えの従来のビジネスモデルの行き詰まり ( 特に 市街地単棟型マンションや マーケットの弱い郊外部のマンション 団地 ) 2 既存不適格マンションでは 耐震改修等の大規模改修が不可避であるが この合意も困難 3 高経年マンション 団地は組合の管理運営機能も低下しており 区分所有者の合意形成が困難 4 合意形成できない高経年マンション 団地は 市場流通性が失われ 将来のスラム化の危険大 5 合意形成を阻む大きな要因として 建替えもしくは再生に要する費用を負担できない 費用負担困難者 の存在がある 6 合意形成の長期化が建替え事業のリスクを増大させている 7 マンション建替えに伴い 周辺地域とのフリクションを誘発するケースも増えつつある 8 大規模団地の再生 建替えには 独自の課題が存在する 9 マンション建替え 団地再生は 地域政策ないしは都市政策として取り組む必要がある 10 実は 分譲マンションという商品自体のライフサイクルに亘るリスクを 販売するディベロッパーも 購入するユーザーも十分に理解していない点に根本的な問題があり 業界 行政を含めた総合的な取り組みが必要 13

1 マンション建替え 団地建替えの従来のビジネスモデルの行き詰まり 建替えを実現できたマンションの条件とは? 図 : 建替え前後の延べ床面積と増床倍率 ( 出典 : マンション建替え促進方策に関する研究報告書 ) 図 : 建替え時期 ( 竣後年 ) と増床倍率 ( 出典 : マンション建替え促進方策に関する研究報告書 ) 14

市街地型マンションの建替えにおける平均還元率 還元率 (%) 90.00 市街地型モデルにおけるマンション建替えの還元率 床面積 3000 m2 4000 m2の例 80.00 70.00 販売単価 ( 千円 / m2 ) 敷地面積 2,000 m2 既存建物延床面積 3,000 m2 60.00 50.00 40.00 30.00 500 525 550 575 600 625 650 675 700 725 750 既存専有面積 2,550 m2 戸数 50 戸 1 戸当たり専有面積 51 m2 容積率 200 % 建替え後延床面積 4,000 m2 20.00 建替え後専有面積 3,680 m2 10.00 0.00 250 260 270 280 290 300 310 320 330 340 350 建設費 ( 千円 / m2 ) 建替え後戸数 60 戸 1 戸当たり専有面積 61 m2 ディベロッパー粗利 22 % 販売単価が高く 建設コストが低い場合でも 100% 還元は困難! 15

郊外型団地の建替えにおける平均還元率算定例 還元率 (%) 150.00 郊外団地モデルにおけるマンション建替えの還元率 床面積 30,000 m2 75,000 m2の例 100.00 50.00 0.00-50.00 250 260 270 280 290 300 310 320 330 340 350 販売単価 ( 千円 / m2 ) 350 375 400 425 450 475 500 525 550 575 600 敷地面積 50,000 m2 既存建物延床面積 30,000 m2 既存専有面積 25,000 m2 戸数 500 戸 1 戸当たり専有面積 50 m2 容積率 150 % 建替え後延床面積 75,000 m2 建替え後専有面積 69,000 m2-100.00 建替え後戸数 1,000 戸 1 戸当たり専有面積 69 m2-150.00 建設費 ( 千円 / m2 ) ディベロッパー粗利 22 % 販売単価が 500 千円 / m2以下では 建設コストが低い場合でも 100% 還元は困難! 16

郊外部における住宅需要の減少 既存住宅ストック数 空き家戸数の増大により新規住宅需要は長期的に減少 とくに通勤時間の長い郊外部の住宅需要は現段階でも大幅に縮小 郊外大規模団地の再生を従来型の一括建替えで行うことは 地域の住宅需要の面から不可能 建て替え事業の担い手であるディベロッパーも事業リスクの大きい郊外団地の建替えには手を出せない可能性が高い 郊外部の大規模団地においては 基本的に戸数を増やさない団地再生の手法が必要 具体的には 大規模修繕による再生を続けるか 敷地分割 ( 保留敷地処分 ) による戸建て住宅の導入 ディベロッパーを導入しない区分所有者による棟別自主建替えなど いずれにせよ 合意形成面と 制度面での課題が残る 17

2 耐震改修等の大規模改修合意の困難性 資産価値の面から耐震診断そのものに反対するような組合員が多い 組合による大規模改修は 基本的には共用部分の改修であり 給排水管の取替等を除くと 専有部分の各住戸の居住性の向上には直結しない 耐震改修の必要は マンションの形状 規模等により異なるが 耐震改修促進法に基づく本格的な改修では 1 戸当たり 300~500 万円程度は必要となるケースが多い 大規模改修を区分所有者及び議決権の各 4 分の 3 以上の賛成による議決で実施する場合 修繕積立金の範囲内であれば それほどの問題はないが 各住戸の追加負担が生じると 非賛成者から追加負担金を徴収することが 現実的にはきわめてやっかいである 耐震改修のコストを下げるためには 住戸専有部分の構造の補強を行うケースも多く 補強の範囲は特定の住戸に集中し その住戸の内部が狭くなったり 工事のための仮住まいが必要になるなど その住戸の区分所有者の理解を得ることが容易ではない 住戸等の専有面積の変更を伴う大規模改修は 区分所有者及び議決権の各 4 分の 3 以上の賛成による議決では対応できず 全員合意が必要となる 建替えと異なり 分譲床がないので ディベロッパー等の参加が期待できず 合意形成を管理組合自ら行う必要がある 改修事業の実効が極めて不確実であるので コンサルタントや設計者も 報酬の確保が困難である 耐震診断に対する補助のほか 一定の基準を満たす耐震改修等の大規模改修についても積極的な行政支援が望ましい 18

耐震診断実施状況 19

耐震性のないマンションの耐震補強状況 アンケート対象 N=388 耐震診断 N=129 耐震診断実施済み N=42 平成 25 年度マンション総合調査より 20

3 高経年マンション 団地は組合の管理運営機能も低下しており 区分所有者の合意形成が困難 区分所有者の高齢化 賃貸住戸の増加 無関心層の増加等により 理事の選任も困難化 世代や所得階層による区分所有者間の考え方の相違が顕著 市街地単棟型マンションでは 郊外団地等に比べると 住民間のコミュニケーションが希薄 郊外団地においても 団地の管理機能は低下 輪番制による区分所有者間の理事構成では 再生や建替えを必要とする高経年マンションの問題は解決困難 本来 管理組合をサポートする立場の管理会社の質も玉石混淆 高経年マンション 団地の管理をサポートする行政施策が求められる 21

4 合意形成できない高経年マンション 団地は 市場流通性が失われ 将来のスラム化の危険性大 新築から建替えまでのマンション 1 戸の財産価値の変化モデル ディベ粗利 ディベ粗利 建設費 建物 建設費 土地 土地 建物 土地 建物 土地 土地 土地 新築時 中古流通時 (~30 年 ) 流通性喪失時 (40 年 ~) 建替え期待による流通性回復 売渡請求の時価 円滑化法の権利変換価格 敷地売却決議の導入は 建て替えが困難なマンションの再生に重要 建替え後マンション 22

5 建替えもしくは再生に要する費用を負担できない 費用負担困難者 の存在 今後は 大半のマンション 団地においては 追加負担の伴わない建替えは困難 追加費用を負担できない 費用負担困難者 の存在が 合意形成上の大きな課題となっている 事業リスクの高まりと 余剰床の減少により 従来 費用負担困難者の問題を解決してきたディベロッパーも 今後はこの問題の解決に積極的に動けない状況 また 外部出資者の導入が困難な大規模改修においては 最も経済的負担力の低い区分所有者が賛成できないだけで 事実上 大規模改修は止まってしまう 耐震改修等を含む大規模改修にも 今後は 再生決議 + 売渡請求 (+ 買取請求 ) 制度が必要か 一定の要件を満たす建替え 大規模改修について 一定の 費用負担困難者 に対する行政的支援が求められる 敷地売却決議の導入は この問題の解決手法として有効 23

6 合意形成の長期化が建替え事業のリスクを増大させている マンション建替え 団地再生には 財産価値の再生という側面と 生活の場の再生という 2 つの側面があり その両面で 大半の区分所有者が合意する必要がある 仮住まいや引越も 建替え合意を阻む大きな要因 マンション 団地の建替えの合意形成は 区分所有者だけでなく 関係権利者 ( 借家人 抵当権者 借地型マンションの場合の地主 ) も必要 現行法の民法 借地借家法 建替え円滑化法等の規定では 区分所有法の枠外にある関係権利者の同意がないと 建替え事業の実施は極めて困難 上記の理由等により マンション 団地の建替えの合意形成が長期化することにより 建設費や販売単価等の数字も確定しづらく それが 合意形成に悪影響を及ぼすという悪循環を生む 総合設計制度や都市計画の変更等も 合意形成が長期化した場合の建替え事業の大きなリスクとなっている 初期段階での検討に対する支援 権利者の仮住まい支援など 建替えの合意形成期間の短縮を支援する施策が求められる 24

7 マンション建替えに伴い 周辺地域とのフリクションを誘発するケースも増えつつある 自治体による都市計画法上の高さ制限の導入や地区計画の導入等により マンション建替えの合意形成が白紙に戻ったり 困難となるケース 総合設計制度等により可能となった高層化の建替え計画が 周辺住民と軋轢を起こすケース 総合設計制度等の運用の見直し等により 区分所有者間で合意を得ていた建替え計画案を見直さざるを得なくなったケース 建替え事業の合意形成を安定させるために 一定の要件を満たす建替え事業について 総合設計 都市計画規制等の要件適用を確定させる仕組みが必要と思われる 例えば円滑化法のマンション建替組合を設立した場合には 設立時点における要綱 都市計画規制を適用する等 25

8 大規模団地の再生 建替えには 独自の課題が存在する 建築基準法の一団地 都市計画法上の一団の住宅施設などによる制約 区分所有法 70 条の一括建替え決議の要件を満たさない団地が数多く存在する 区分所有法 70 条の建替え要件となる管理組合規約を有しているかどうかの問題 ( 有していない場合には 規約の制定から始める必要 ) これまでは 70 条の一括建替え決議による建替えが一般的であったが 今後は 建替え条件に恵まれない限り 70 条の一括建替え決議の合意形成は困難 現状の 69 条の建替え承認決議は合意形成が難しいことを前提にした一部建替えの具体的な手法 or 法制度の創設 大規模団地での段階的建替え手法 or 法制度の創設 テラスハウスを含む団地等における建替え決議要件の問題 敷地売却決議の団地への具体的な展開 26

9 マンション 団地の再生は地域政策ないしは都市政策として総合的に取り組む必要がある 単独の高経年マンション 団地の自主的な再生努力 建替え努力に任せていると マンション 団地の再生 建替えは進まない 合意形成のできない ( 建替え 再生が進まない ) マンション 団地は 市場流通性が失われ スラム化していく危険性が大きい 都市政策 地域政策として 従来の木造密集地域と同様に エリアとしての安全 安心を守る防災的な観点から 高経年マンション 団地の再生 建替え問題に取り組んでいく必要性が高い そのための法制度の枠組みを含めた議論を 産官学の枠を超えて 早急に開始する必要があるものと考えられる たとえば 高経年マンションが集積し 都市計画もしくは防災上 早急な改善が必要と判断されるエリアを マンション建替えを促進すべき地域として指定し 重点的な行政支援や民間事業者の事業参画を促すインセンティブを付与することが効果的と考えられる 郊外団地についても 地域住宅ストック再生計画と団地再生マスタープラン等の都市計画的な枠組みのもとに団地再生を進めることが必要と考えられる 27

10 分譲マンションという商品に内在するリスクの総合的解決を! 分譲マンションは 首都圏で 20% 以上の人が居住する極めて一般的な都市居住形態となっている しかしながら マンション再生や建替えなど 高経年マンションにおいて区分所有者が直面せざるを得ないリスクについては 分譲時に購入者が把握することは困難であるばかりか 大半の分譲業者においても十分な認識がなく販売されている商品である たとえば 10 年前の 20 万 km 走行した自動車のブレーキが利かなくても 販売した自動車メーカーの企業責任は問われる 分譲マンションについても その理屈は同様でないだろうか マンション分譲業界 管理業界 エンドユーザー組織 行政 大学等の研究者等を含めた総合的な取り組みにより こうした課題を解決し 分譲マンションが 住民の生活の場として また 区分所有者の財産として 継続可能な価値をもつものにしていく必要があろう 販売時や中古流通時の重要事項説明に 高経年マンションとなった場合のリスクを明記させることも一案か 28