5 キュウリ栽培における IPM 対策資材 スワルスキーは 250ml ボトル ( 左図 ) 内に 25,000 頭のスワルスキーカブリダニと 輸送や放飼直後の餌となるサトウダニ ふすま等を含有する天敵製剤です スワルスキーカブリダニの活動温度は 17 ~ 30 相対湿度 60% 以の条件を好み 夜温が 15 を回る作型では十分に定着できず効果が劣ることがあります 本種は野菜類 ( 施設栽培 ) の適用害虫として登録されているアザミウマ類 コナジラミ類 チャノホコリダニに加え ハダニ類やカイガラムシ類 多くの作物の花粉を餌としても生育することが知られています このため対象害虫の密度が低い条件で放飼しても 作物の花粉やホコリダニ類などの微小生物を餌にして定着 繁殖することができますので 害虫の密度が低い時期から放飼し作物に定着させる ( 待ち伏せ型 ) 予防剤的な使用方法が可能です スワルスキープラスはスワルスキーカブリダニ 250 頭が入った吊りげ型パック ( 右図 ) パック入りの製品で カブリダニはパック表面に開けられた脱出口より数週間かけて作物に放出されます 徐放性ですので 害虫発生前から予防的に放飼 ( 枝や茎に吊りげるだけ ) を行い定着させます リモニカ 述のように低温では使いづらかったスワルスキーを補完するため 次世代の捕食性天敵として開発された天敵製剤がリモニカです 1l ボトル ( 左図 ) にリモニカスカブリダニ 12,500 頭と 餌となるサトウダニ 緩衝材としてふすま 粟殻などが含有されています リモニカスカブリダニの活動可能温度は 10 ~ 30 であり スワルスキーの定着が困難であった低温条件でもお使い頂けます 相対湿度が 60% を回ると産卵率が低すること 花粉や微小生物も食餌する広食性の天敵であるため作物での定着性が高いこと等は スワルスキーカブリダニ ミヤコカブリダニと同様です 低温条件への耐性に加え 旺盛な捕食能力も特長といえます スワルスキーカブリダニは捕食しないアザミウマ類の 2 齢幼虫 コナジラミ類の 3 ~ 4 齢幼虫も捕食対象であることから より多くの害虫を捕食します また 1 日当たりの産卵数もスワルスキーを回るため 高い防除効果を発揮します 適用内容は野菜類 ( 施設栽培 ) のアザミウマ類 コナジラミ類 ( 平成 29 年 9 月現在 ) ですが 将来的には他の作物 対象害虫への適用拡大が予定されています スパイカル EX スパイカルプラス スパイカル EX は 250ml ボトル ( 左図 ) に 5,000 頭 または ml ボトルに 2,000 頭のミヤコカブリダニと 餌となるサヤアシニクダニ ふすま等を含有する天敵製剤です ミヤコカブリダニはハダニ類の天敵で 活動温度は 12 ~ 35 と比較的幅が広く 相対湿度 70% 以の条件を好みます 高設 れき耕栽培等 ハウス内の湿度が低い栽培環境では効果が劣ることがありますので注意が必要です ミヤコカブリダニも多くの作物の花粉や微小生物を食餌することができるため 待ち伏せ型の放飼が可能です しかしハダニ類は増殖のスピードが速いため その密度が高まった後ではスパイカル EX を放飼しても十分な防除効果をあげることができません すでにハダニ類の発生が認められる場合には スパイデックス ( チリカブリダニ ) を同時放飼するか 本剤に影響の小さい薬剤でハダニ類の密度をげてから本剤を放飼してください スパイカルプラスはミヤコカブリダニ 50 頭が入った吊りげ型パック ( 右図 ) パック入りの製品で カブリダニはパック表面に開けられた脱出口より数週間かけて作物に放出されます 徐放性ですので害虫発生前から予防的に放飼を行い 定着させます 16
微生物殺虫剤 < 商品のお問合せは アリスタライフサイエンス株式会社 03-3547-4415> 天敵放飼後のレスキュー ( 臨機 ) 防除剤としては 天敵への影響が少ない微生物殺虫剤が効果的です 天敵に悪影響を与えないだけでなく 効果のある化学殺虫剤を 切り札剤 として温存することができますので 化学殺虫剤の連用による薬剤抵抗性の発現を遅らせることにつながります また いずれの剤も使用回数制限がありませんので 栽培期間は何度でも 収穫前日までお使いになれます ボタニガード ES ボーベリアバシアーナ乳剤 ボタニガード水和剤 ボーベリアバシアーナ水和剤 マイコタールジャックポット顆粒水和剤 バーティシリウムレカニ水和剤 BT 水和剤 適用病害虫と使用方法 ( ) 商品名 作物名 適用病害虫名 希釈倍数 ( 倍 ) 使用液量 (l/10a) 使用時期 使用方法 コナジラミ類 コナガ 500 ボタニガードES 野菜類 アザミウマ類 500~0 ~300 発生初期 散布 アブラムシ類 0 コナジラミ類 ボタニガード水和剤 野菜類 ( 施設栽培 ) アザミウマ類 0 ~300 発生初期 散布 アブラムシ類 マイコタール 野菜類 ( 施設栽培 ) コナジラミ類 0 150~300 発生初期 散布 ジャックポット顆粒水和剤 野菜類 コナガ アオムシ オオタバコガ 0 ~300 発生初期但し収穫前日まで 散布 ( ) 平成 29 年 9 月現在 キュウリを含む野菜類での適用内容を抜粋したものです 詳しい使用方法や他作物への適用は お問合せください 粘着板化学農薬 < 商品のお問合せは アリスタライフサイエンス株式会社 03-3547-4415> ホリバー / ホリバーロール 昆虫の色に対する誘引反応を利用した有色粘着資材は 飛翔害虫の予察用資材として IPM プログラムの必須アイテムです 各種資材が市販されていますが 誘引効果と粘着力の持続性が高く マルハナバチ等有用昆虫を誘殺しないホリバー / ホリバーロールを用いることをお薦めします 設置枚数を増やせば大量捕獲 ( 物理的防除 ) が期待できますが 安定した防除効果をあげるには 天敵または薬剤防除との併用が基本となります 1. 粘着板による予察 ( モニタリング ) 誘引される害虫類 定植後 10a 当たり 10 枚程度のホリバーを作物の 10~ 30cm に吊りげます ハウスの出入口付近や暖房機の近く等 例年害虫の初期発生が確認される場所があれば 必ず設置してください こまめに観察を行い 対象害虫の付着状況から天敵の放飼 ( または化学殺虫剤の散布 ) を判断します 黄色 アブラムシ類 コナジラミ類 ハモグリバエ類 アザミウマ類 青色 アザミウマ類 2. 粘着板による大量捕獲 ( 物理的防除 ) 定植後 10a 当たり ~400 枚程度のホリバーを作物の 10~30cm に吊りげます 飛翔害虫の成虫を誘殺することで産卵数を減少させ 次世代の発生を抑制します 大面積であれば ホリバーロールの展張も効果的です 17
化学農薬 プレバソン R フロアブル 5 天敵 ハチに影響なく IPM に適合 殺虫剤 プレバソン フロアブル 5 は きゅうりの害虫であるウリノメイガ ハモグリバエに高い効果を発揮し 安定した品質と収穫をサポートします また 本剤はスワルスキーカブリダニなどの天敵昆虫へ影響がないため IPM 実施圃場に適した殺虫剤です 灌注処理 定植後 3~4 週間の効果 定植前の育苗ポットへの灌注処理で 約 3~4 週間のあいだウリノメイガ およびハモグリバエの防除効果が続きます ハウス内での害虫防除回数が減らせる省力的な技術です 散布処理 生育期に速効的効果 害虫を見つけてからの散布処理でも すばやく効果を発揮し作物を食害から守ります 果実に汚れがつきにくいフロアブル製剤なので 収穫直前の散布でも汚れの心配がありません デュポン TM プリロッソ R 粒剤 < 商品のお問合せは 丸和バイオケミカル株式会社 03-5296-2314> デュポン TM プリロッソ 粒剤は 育苗期後半から定植時に株元散布することで 手軽な作業で薬剤処理ができ 本圃で約 3~4 週間の殺虫効果が期待できる製品です 果菜類ではきゅうり ピーマン なす トマト ミニトマトに作物登録があります 適用害虫は幅広く きゅうりを例にあげますとアザミウマ類 アブラムシ類 コナジラミ類等の広範囲な害虫に卓効を示します 適用作物やハチだけでなく 天敵にも安全性が高いので IPM にも適しています デュポン TM プリロッソ 粒剤の効く仕組み デュポン TM プリロッソ 粒剤は ポットの培土表面に散布された薬剤のから灌水することで 溶出した有効成分サイアジピル ( シアントラニリプロール ) が作物の根から吸収され 作物全体に行き渡り効果が発揮されます このため 定植の前に早めに処理して十分に有効成分を作物に吸収させておくことが重要です また 処理後の十分な灌水が使用のポイントです 18
防虫ネット < 商品のお問合せは 日本ワイドクロス株式会社 072-971-5144> サンサンネットソフライト 強度に優れるポリエチレンの特殊な極細糸を使用することで大幅な通気性アップを実現しました また耐久性も非常に優れています 色々な目合いと豊富な規格巾を準備しておりますので 対象となる害虫に合わせて また使用場面に合わせてお選びさい スリムホワイト タイベック を利用したスリムホワイトは 高い紫外線反射率とともに乱反射による散乱光により 害虫の侵入を大幅に減少させます また通常の防虫ネットより目合いが大きく 高い侵入防止効果を得ながら 通気性も確保されています サンサンネットソフライト規格表 スリムホワイト規格表 品番 SL2200 SL2700 SL3200 SL4200 SL3303 SL6500 目合い 規格巾 (m) 長さ (m) 1mm 0.8mm 0.6mm 0.4mm 0.3mm 0.2 0.4mm 2.3 2.7 2.3 2.7 0.75 2.3 2.7 品番スリムホワイト 30 スリムホワイト 45 遮光率約 30% 約 45% 規格 2m m 2m m サンサンネット e- レッド ( 赤いサンサンネット ) 赤色の特殊糸を採用し ( 色彩効果により ) 防虫効果をさらに向させたネットです 既存のソフライトの通気性 軽さをそのままに アザミウマ等微小害虫の侵入を軽減します 強風に押されての侵入などを更に軽減するために 0.6mm 目合いも発売しました サンサンネットソフライト展張写真スリムホワイト展張写真どちらの商品ともご希望のサイズに加工承ります 循環扇 サンサンネット e- レッド規格表 品番 目合い 規格巾 (m) 長さ (m) SLR2700 SLR3200 0.8mm 0.6mm 神奈川県農業技術センター 日本ワイドクロス ( 株 ) 共同開発商品 < 商品のお問合せは 株式会社山本産業 0538-32-9211> ボルナドファン 循環扇ボルナドファン が全国の IPM 実証調査で使用されています ボルナドファンの特徴他には真似のできない空力設計国際特許取得 PatentNo.4927324 耐湿 耐塵性を重視した全閉型モーターを使用エコを考える製品ならではの省電力設計樹脂ボディにより軽量かつ静音 農薬等にも強い取付がとても容易で床置きも可能 空気が循環するメリット夏場の高温対策空気を循環させることにより温室内の温度ムラを解消し 夏場の局所的な高温状態を改善します 冬場の暖房の効率化温室部にある暖かい空気をの方に循環させることにより 暖房の効率化が図ることができます 梅雨時 冬場における空気の淀みを解消閉めきった温室の空気の淀みを解消し 病害を防ぎます 740HD(V) 循環効果 712(200V) 仕様 型名 740HD 型 712 型 色ブラックグレイ ストーン 電圧単相交流 V 3 相交流 200V 周波数 回転速度 回転調節スイッチオン オフ / 高速 / 低速 羽根径 29cm 29cm 幅 x 奥行 x 高さ (cm) 41.5 38.3 41.5 41.5 38.3 41.5 重量 (kg) 4.5 4.5 電源コード 60Hz 50Hz 60Hz 50Hz 高低高低 消費電力 (W) 55 40 52 37 55 50 回転数 (r.p.m.)1,570 874 1,345 1,005 1,585 1,391 最大風速 (m/s) 6.2 5.4 6.2 5.4 最大風量 (m3/min) 81 73 81 73 0.75 mm2 2 芯 (2P プラグ付 ) 2.4m 0.75 mm2 4 芯 ( プラグ無 ) 1.0m 19
6 キュウリ栽培におけるIPM優良事例 抑制キュウリ 群馬県 館林地区農業指導センターの事例 成果の概要 農家 産地の声 ウイルス病の発生による減収が抑えられるので コ ストをかけても導入する価値があると思う 実証圃場 の農家談 これらの実証の結果を受けて 平成 28 年度の群馬県 全域での施設キュウリにおける天敵普及率は約10 ま で増加している 慣行区と比較して アザミウマ類 コナジラミ類の発 生は低く推移し ウイルス病の発生もごくわずかに抑え ることができた 光反射シート タイベック の敷設に よりアザミウマ成虫の侵入抑制効果が確認できた 殺虫 剤の使用薬剤数は慣行区の5分の1に削減することがで きた 耕種概要 品 種 栽培概要 穂 台 木 超 彩軌 褐斑病耐病性 木 ゆうゆう一輝 黒 定 植 8月6日 収穫期間 9月1日 11月4日 栽植密度 1, 200本 10a 仕 立 て 摘心栽培 施設および IPM 資材の 概要 施 設 面 積 大型鉄骨ハウス 15a 外 張 資 材 シクスライトクリーン 循 環 扇 なし 温 度 管 理 加温 10 月旬 設定温度 15 防 虫 ネ ッ ト サイド 0.6mm サンサンネット 天窓 0.8mm サンサンネット 天 敵 スワルスキーカブリダニ 8 月 19 日 75,000 頭 スワルスキー 3 本 光反射シート タイベック 400WP 幅 1.5m をハウス周囲に敷設 粘 着 板 黄色 枚 ホリバー 青色 枚 ホリバー 天敵 害虫の推移 1葉当たり頭数 15 12 スワルスキーカブリダニ 頭数 葉 アザミウマ類 9 コナジラミ類 6 3 0 8/8 8/19 8/30 9/7 9/20 薬剤の散布履歴 月 8 旬 9 10 作業等 定 植 殺虫剤 スタークル顆粒水溶剤 9/30 10/11 10/24 ポイント 天敵放飼前の薬剤散布等により ゼロ放飼を徹底す る 成虫の飛び込みを防止するため 物理的防除を併 用する 施設開口部への防虫ネット展張等 天敵の対 象外病害虫対策として 影響の少ない薬剤を活用する 病害については予防散布に努め 耐病性品種の利用等 他の防除方法も組み合わせる 展着剤や葉面散布剤等 一部天敵に影響の強いものがあるため 事前に確認し てから使用する 殺菌剤 ダコニール 0 アミスター 20 フロアブル トリフミン水和剤 ホライズンドライフロアブル ベルクート水和剤 収穫開始 プレバソンフロアブル 5 ランマンフロアブル ストロビーフロアブル ダコニール 0 アフェットフロアブル ベルクート水和剤 ボトキラー水和剤 10 月旬まで 天敵放飼 スワルスキー 20
害虫頭数/葉ニカ頭数/葉促成キュウリ 千葉県海匝農業事務所の事例 成果の概要 農家 産地の声 定植約 2 週間後にリモニカスカブリダニを放飼したところ アザミウマ類やコナジラミ類の発生を長期間抑制できた 厳冬期には天敵は低密度であったが 成長点に定着していた 3 月以降 天敵は葉にも見られるようになり アザミウマが媒介するウイルス病の発生は 6 月の作期終了時まで認められなかった 天敵放飼後の殺虫剤散布は 7 回のみであった 殺菌剤を定期的に散布するため 散布の労力は変わらないが 天敵導入により 殺虫剤の散布回数は著しく減少した 天敵が働いている安心感がある 物率の向や作期の延長も可能になり 収量のアップも見込めるようになった 平成 28 年度には 産地の部会員の 3 割が天敵 ( スワルスキーまたはリモニカ ) を使用した 耕種概要 品 種 栽培概要 穂木 :T-603( 褐斑病耐病性 ) 台木 : ゆうゆう一輝 ( 黒 ) 定植日 : 9 月 27 日収穫期間 : 10 月 26 日 ~6 月 21 日栽植密度 : 9 0 0 本 / 10 a 仕立て : つるろし栽培 施設および IPM 資材の概要 施設 面積 : 鉄骨 5 連棟ハウス 15.2a 外張資材 : U V カットフィルム循環扇 : あり温度管理 : 加温 (11 月末 最低温度 11 または 12 ) 防虫ネット : サイド 天窓 0.4mm( サンサンネット ) 天敵 : リモニカスカブリダニ 10 月 14 日 37,500 頭 ( リモニカ 3 本 ) 天敵 害虫の推移 (1 葉当たり頭数 ) 6 0.6 モ5 4 リモニカスカブリダニアザミウマ類コナジラミ類リ0.4 3 2 0.2 1 0 11/10 11/20 12/1 12/10 12/25 1/8 1/18 1/28 2/9 2/18 2/28 3/10 3/17 3/25 0 薬剤の散布履歴 月 旬 作業等 殺虫剤 殺菌剤 8 土壌消毒 D-D 育苗期 アドマイヤー水和剤 ベルクートフロアブル 9 定植前土壌混和ネマキック粒剤育苗期アルバリン顆粒水溶剤カスミンボルドー 定植 アルバリン粒剤 チェス顆粒水和剤 ダコニール 0 トリフミン水和剤 10 天敵放飼 リモニカ 収穫開始 プレオフロアブル オーソサイド水和剤 80 ハーモメイト水溶剤 スターマイトフロアブル ベルクートフロアブル 11 ダコニール 0 ランマンフロアブル ファンタジスタ顆粒水和剤 12 アルバリン顆粒水溶剤ピクシオ DF ライメイフロアブルウララ DF ベトファイター顆粒水和剤アフェットフロアブル ダコニール 0 セイビアーフロアブル 20 1 ピクシオ DF ハーモメイト水和剤 ファンタジスタ顆粒水和剤ダイマジン水和剤 2 オーソサイド水和剤 80 フルピカフロアブルジャストミート顆粒水和剤 ファンタジスタ顆粒水和剤アフェットフロアブル 月 旬 作業等 殺虫剤 殺菌剤 カネマイトフロアブル アフェットフロアブルピクシオ DF ライメイフロアブル 3 ベストガード水溶剤 ダコニール 0 セイビアーフロアブルザンプロ DM フロアブル ジャストフィットフロアブルフルピカフロアブルドーシャスフロアブル 4 ランマンフロアブルエトフィンフロアブルプロパティフロアブル 5 ウララ DF ジャストフィットフロアブル ポイント 天敵を定着させるため 年内放飼は 10 月までに行う リモニカは越冬を要する秋放飼でも長期の効果が期待できる 天敵に影響のある農薬 ( 殺菌剤も含む ) が使えなくなるので 褐斑病耐病性品種を用いる 天敵放飼後は 10 ~14 日間は農薬散布を控えるため 放飼前に 天敵の定着に影響しない薬剤を用いて病害虫防除をしっかり行う 21
数/株促成キュウリ 高知県央西農業振興センター高知農業改良普及所の事例 成果の概要 農家の声 天敵 ( スワルスキーカブリダニ タバコカスミカメ ) と微生物殺虫剤 ( パイレーツ粒剤 ) を組み合わせた防除体系は ミナミキイロアザミウマ及びキュウリ黄化えそ病の発生を 慣行と比べ大幅に抑えることができた さらに 防除経費及び防除にかかる労働時間を大幅に削減することができた ミナミキイロアザミウマに薬剤を散布してもミナミキイロアザミウマを根絶させることは困難である 微生物殺虫剤と天敵を組み合わせた利用法は効果的で 黄化えそ病の発生率も低く抑えることができた 耕種概要 品 種 栽培概要 穂 台 木 : ディソール ( うどんこ病 褐斑病耐病性 ) 木 :GT- Ⅱ 定植 :9 月 25 日収穫期間 :10 月旬 6 月旬栽植密度 :1,200 本 /10a 仕立て : つるし栽培 施設および IPM 資材の概要 施設 面積 : パイプハウス 12a 外張資材 : UVカットビニル (%) 循 環 扇 : あり ( ボルナドファン ) 温度管理 : 加温 (11 月旬 最低気温 12 ) 防虫ネット : サイド 天窓 0.4mm( サンサンネット ) 天 敵 : スワルスキーカブリダニ 9 月 25 日 ( スワルスキー 2 本 /10a) 12 月 4 日 ( スワルスキー 1.3 本 /10a) 2 月 26 日 ( スワルスキー 1.1 本 /10a) タバコカスミカメ 9 月 25 日 5 頭 / 株 以後 10 月末まで随時 微生物殺虫剤 : パイレーツ粒剤 9 月 30 日 5kg/12a 天敵温存植物 : クレオメ (150 株 /12a) 天敵 害虫の推移 (1 株当たり頭数 ) 0.40 0.35 0.30 スワルスキーカブリダニタバコカスミカメミナミキイロアザミウマ頭調査箇所 : 任意の 40 株について各株の生長点および位 2 葉を調査 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 0.00 10/2 10/8 10/13 10/20 10/26 11/2 11/9 11/16 11/24 11/30 12/7 12/15 12/22 12/28 1/4 1/12 1/18 1/25 2/1 2/8 2/15 2/22 3/1 3/7 3/14 3/24 4/4 4/13 4/21 5/1 5/12 5/19 5/26 薬剤の散布履歴 月旬作業等殺虫剤殺菌剤 9 定植天敵放飼 スワルスキータバコカスミカメパイレーツ粒剤 コンフューザー V ダコニール 0( 灌注 ) 10 収穫開始 プレオフロアブル ロブラール水和剤プロポーズ顆粒水和剤 プレバソンフロアブル 5 11 ストロビーフロアブルアミスター 20 フロアブル 12 1 ボトキラー水和剤 12 天敵放飼 スワルスキー ランマンフロアブルランマンフロアブルロブラール水和剤 月旬作業等殺虫剤殺菌剤 12 1 プレオフロアブルラノ 乳剤 アミスター 20 フロアブルプロポーズ顆粒水和剤ダコニール 0 ダコニール 0 プロポーズ顆粒水和剤ダコニール 0 ランマンフロアブルストロビーフロアブルブリザード水和剤 2 天敵放飼スワルスキー 3 ランマンフロアブル 4 ブリザード水和剤 ポイント 定植時にタバコカスミカメを約 5,000 頭 /10a 放飼する必要があるため 事前に天敵温存植物 ( クレオメ ゴマ ) を植栽した天敵温存ハウスでの増殖が必要 また 定植時に天敵温存植物を植栽し 本圃での定着を促す必要がある スワルスキーカブリダニも定植時に放飼する ただし 厳寒期は密度が減少するため 発生状況を確認し 追加放飼が必要な場合は 2 月以降に放飼する 22
リモニカ頭数/葉0.0 数/葉リモニカスカブリダニ 促成栽培 鹿児島県大隅地域振興局農林水産部農政普及課の事例 成果の概要 農家の声 キュウリ黄化えそ病 退緑黄化病等のウイルス病を媒介するアザミウマ類やコナジラミ類について 市販天敵製剤であるスワルスキーカブリダニを利用した防除が行われている しかし 外気温が昇する 3 月から害虫が増殖し 天敵の増殖が追いつかない圃場があるため 安定した防除効果のある天敵が求められていた 今回 増殖率の高いリモニカスカブリダニを導入し 補完防除を組み合わせた新しい防除体系を構築できた 最近 生育初期の黄化えそ病 3 月以降のコナジラミ類をよく見かけるようになり スワルスキーカブリダニによる害虫防除の効果が見られないと思っていた 今回 増殖率のよいリモニカスカブリダニによる防除を試み 放飼 1 ヶ月後から葉にリモニカスカブリダニを見かけ 生育初期の黄化えそ病は見られるものの 3 月のコナジラミ類の増殖を抑え 補完防除を組み合わせることで安定した防除効果が得られた 耕種概要 品 種 栽培概要 穂木 : 兼備 1 号 ( うどんこ病 褐斑病耐病性 ) 台木 :RK-3 定植日 : 10 月 21 日収穫期間 : 11 月 18 日 ~ 6 月 3 日栽植密度 : 1,4 8 0 本 /10 a 仕立て : 摘心栽培 施設および IPM 資材の概要 施設 面積 : パイプハウス 8a 外張資材 : 農ビフイルム循環扇 : なし温度管理 : 加温 (11 月旬 ~4 月旬最低気温 13 ) 防虫ネット : サイド 0.4mm( ライトネット ) 谷部 0.6mm( サンサンネット ) 天敵 : リモニカスカブリダニ 11 月 5 日 ( リモニカ 2 本 /10a) チリカブリダニ 4 月 7 日 ( スパイデックス 1 本 /8a) 40 35 30 25 20 15 10 5 0 天敵 害虫の推移 (1 葉当たり頭数 ) アザミウマ類 ( 成虫 ) コナジラミ類 ( 成虫 ) 10/27 11/27 12/27 1/27 2/27 3/27 4/27 5/27 10.0 9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 害虫頭薬剤の散布履歴 月 旬 作業等 殺虫剤 殺菌剤 10 定植 プリロッソ粒剤 天敵放飼 リモニカスカブリダニ ホライズンドライフロアブル 11 収穫開始アフェットフロアブルスミレックス水和剤 スミブレンド水和剤ダコニール 0 12 コサイド 3000 アプローチ BI プロポーズ顆粒水和剤 コサイド 3000 スミレックス水和剤 1 ロブラール水和剤 チェス顆粒水和剤 セイビアーフロアブル 20 アプローチ BI 2 ダニサラバフロアブル セイビアーフロアブル 20 ポイント 月旬作業等殺虫剤殺菌剤コサイド 3000 プロポーズ顆粒水和剤 2 ベルクート水和剤ダコニール 0 スミレックス水和剤チェス顆粒水和剤アプローチ BI 3 アプロード水和剤スターマイトフロアブル アフェットフロアブルカンタスドライフロアブルブリザード水和剤アプローチ BI ウララ DF ダコニール 0 天敵放飼 スパイデックス ピクシオ DF アミスター 20 フロアブル セイビアーフロアブル 20 4 プロポーズ顆粒水和剤 コルト顆粒水和剤 ピクシオ DF アミスター 20 フロアブルアプローチ BI 5 プレバソンフロアブル 5 アフェットフロアブルカンタスドライフロアブル まず 防虫ネットによる侵入害虫防止 プリロッソ粒剤施用等 放飼前の害虫防除により 害虫ゼロに近い環境を作った 次に 放飼 10 日間以の薬剤防除を避け リモニカスカブリダニの定着を促し 定期的な虫数の寄生数確認を行った 特に成功に結びついたポイントとして 天敵防除に認識度の高い農家であり 農家自らが気温昇とともに害虫の増加に気づき 適期に補完薬剤防除 ( レスキュー防除 ) ができた点があげられる 23