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特別区の職員構成について 佐藤義彦 ( 東京自治研究センター研究員 ) 特別区の行政系職員 ( 事務系 福祉系 一般技術系 医療技術系 ) の構成は 表 1のとおりである 各特別区は基礎的自治体であるが 地方自治法によりその事務からは いわゆる 大都市事務 が除かれている 具体的には 通常 市が行う

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道州制基本法案(骨子)

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. 届出方法の案内 自治体において システムを活用した届出を推奨しているが 特に推奨していない自治体が 自治体であった 届出方法の案内 書面を推奨 0 システムを推奨 書面を指定 0 特に推奨していない 一部の事業者より システムによる届出を受け付けない と指

月例速報 Market Watch 2015( 平成 27) 年 10 月度 INDEX Ⅰ. 中古マンションレポート 首都圏 都県別概況 2. 首都圏 都県別価格帯別件数 3. 地域別概況 2 Ⅱ. 中古戸建住宅レポート--

資料 1

3. さいたま市議会の議決すべき事件等に関する条例 ( 目的 ) 第 1 条この条例は さいたま市議会基本条例 ( 平成 21 年さいたま市条例第 55 号 ) 第 25 条の規定の趣旨にのっとり 市行政における基本的な計画の策定等を地方自治法 ( 昭和 22 年法律第 67 号 ) 第 96 条第

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税源配分及び財政調整 < 税源配分 > 特別区と大阪府の事務分担に応じて財源を配分するとともに 特別区間の税源偏在の解消を図るために必要な税財源を大阪府の税源として配分 特別区税 大阪府が賦課徴収する税を除く市町村税( 個人市町村民税 市町村たばこ税 軽自動車税等 ) 大阪府税 市町村税のうち法人市

表 11-9, 及び - 都道府県 ( 平成 17 年,22 年 ) 都道府県 実数 構成比 (%) 平成 22 年 17 年 22 年 17 年 22 年 17 年 22 年 17 年 全 国 128,57 127, ,57 127, 北 海 道 5,54

1 地域主権改革 Q1-6 市町村の人口規模はどのぐらいが適正かについて どういう議論があるのですか A1-6. 市町村の適正な人口規模について 大阪府自治制度研究会 においては 次のような検証 とりまとめがされています 検証 効率的な行政運営 備えるべき組織体制 望ましい行政サービス提供の 3 つ

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市町村合併の推進状況について

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第2章

平成 31 年 3 月 20 日更新 全国女性の参画マップ 平成 30 年 12 月作成 内閣府男女共同参画局

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空き家の現状データ 参考資料 ⑴ 住宅数及び空き家数 表 1 住宅数の内訳 ( 資料 : 平成 25 年住宅 土地統計調査 ) 住宅数 居住世帯居住世帯なしあり総数一時現在者のみ建築中空き家 全国 60,628,600 52,102,200 8,526, ,800 88,100 8,19

資料1 第3回災害救助に関する実務検討会における意見に対する回答

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○ 第1~8表、図1~4(平成25年度公立学校教員採用選考試験の実施状況について)

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推計方法

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一について人口密集地域であり 簡易宿所が密集する地域を抱えていることから 全国的に見てもいわゆるホームレスの数が多い地域であると推測される東京都(特別区の区域に限る ) 川崎市 横浜市 名古屋市及び大阪市における野宿生活者等の数について各地方公共団体に聴取したところ それぞれの地方公共団体で 野宿生

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平成 27 年の救急出動件数等 ( 速報 ) 消防庁

4 合併を選択した理由 合併を選択した理由は 直面する財政危機への対応よりも 将来に向けた行政体制の充実 強化や行政サービスの維持 向上 合併を選択した理由 地方分権時代にふさわしい基礎自治体としての行政体制の充実 強化を図るため 20 市町村 効率的 効果的な行財政運営により 行政サービスを維持

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地域主権改革をめぐる動向 (2012 年 1 月 ~6 月 ; 野田改造内閣 ) 1 13 野田佳彦改造内閣が発足 1 13 森全国市長会長 長岡市長 内閣改造に対するコメント 1 17 第 30 次地方制度調査会第 3 回総会 今後の審議事項について 1 19 民主党大都市制度 WT 会合 大阪都

平成 26 年 3 月 28 日 消防庁 平成 25 年の救急出動件数等 ( 速報 ) の公表 平成 25 年における救急出動件数等の速報を取りまとめましたので公表します 救急出動件数 搬送人員とも過去最多を記録 平成 25 年中の救急自動車による救急出動件数は 591 万 5,956 件 ( 対前

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地域別の一般世帯数における平成 22 年から平成 までの今後 25 年間の増減率をみると 区部では北区を除くすべての地域で増加となり 多摩 島しょにおいては 八王子市をはじめとする 18 地域で増加し 青梅市や福生市などその他の地域では減少することが見込まれる ( 図 1-2) 図 1-2 地域別一

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13【東京都再修正版】平成28年度第2回精神障害者の地域移行担当者等会議【事前課題】シート290222

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11 m2~15 m2 7m2~10 m2 6m2以下 1 級地別記 7 別記 8 別記 9 2 級地別記 7 別記 8 別記 9 3 級地別記 7 別記 8 別記 9 ただし 次に掲げる当該世帯の自立助長の観点から引き続き当該住居等に居住することが必要と認められる場合又は当該地域の住宅事情の状況に

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調査実施概況 小学校 ( 都道府県 ( 指定都市除く )) 教育委員会数 ( 1) 学校数児童数 ( 2) 全体 実施数 調査対象者在籍学校数 実施数国語 A 国語 B 主体的 対話的で深い学びに関する状況 ( 3) 算数 A 算数 B 質問紙 平均正答率 13~15 問 国語

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1 総人口の動き

目 次 1 章策定の趣旨 1 1 これまで経緯 1 2 さらなる行財政改革の必要性 1 2 章行財政改革の基本的な考え方 2 1 推進期間 2 2 基本方針 2 3 重点項目 2 (1) 事務 事業の効率化の推進 3 (2) 定員管理の適正化及び人材育成の推進 4 (3) 民間活力の活用 4 (4)

在人口率1 滞滞在人口率 (1) 滞在人口率の機能と目的 滞在人口率では 当該自治体の実際の人口に対して 月間平均で何倍の滞在人口が来ているかを把握することで 地域活性化の指標として活用することができます 滞在人口率を平日のみの月間平均で見れば おおむね 買い物客や通勤者 通学者などをどれだけ域外か

平成 21 年 7 月 道州制への慎重な対応について 兵庫県知事井戸敏三 各政党においては 究極の分権改革とも言われる 道州制 について マニフェストへの盛り込みが検討されています しかし 道州制は本来国の形のあり方の問題であるにもかかわらず もっぱら地方制度の問題として議論されている最近の状況を鑑

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H28秋_24地方税財源

第二項第五号に掲げる事項には、同項第一号の区域のうち、広場、街灯、並木その他の都市の居住者その他の者(以下「都市居住者等

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2008

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参考 平成28年度 公立学校教員採用選考試験の実施状況調査

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目 次 1 林地台帳の公表 情報提供 1-1 公表 情報提供の範囲 1-2 公表の方法 1-3 情報提供の方法 2 林地台帳の修正 更新 2-1 修正申出の方法 2-2 情報の修正 更新手順 3 林地台帳管理システム 3-1 管理システムの機能 3-2 林地台帳情報と森林資源情報の連携 4. 運用マ

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目次 Ⅰ. 調査概要 2 Ⅱ. 調査結果 3 (1) 条例 要綱等について 3 1 条例 要綱等の有無 3 2 条例 要綱等の制定 改定時期 5 (a) 国の指針策定 基準改訂前の条例 要綱等の有無 5 (b) 国の指針策定 基準改訂後の条例 要綱等の制定 改定の有無 7 (c) 条例 要綱等の制定

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体罰の実態把握について(セット)公表資料250423

平成20年2月

この制度は 2003 年 9 月 2 日から施行され 旧 地方自治法 244 条の2による管理委託を行ってきた 公の施設 の場合は 3 年間 ( 経過措置 ) の間に自治体が指定管理者制度に移行することになっている 現時点で 指定管理者制度導入のため 1 指定の手続きについて一般ルールとして定めた自

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大阪都構想について

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第 40 回 看護総合 2009 年 平成 21 年 2009/7/18-19 京都府京都市 2009 年 2010 年 精神看護 2009/7/23-24 島根県松江市 2009 年 2010 年 母性看護 2009/8/6-7 佐賀県佐賀市 2009 年 2010 年 看護教育 2009/8/2

- 1 - 地方自治法施行令第百七十四条の三十九第三項による土地区画整理法第五十五条の読替え(は読替部分)(は当然読替部分)(は改正に係る読替部分)改正後の地方自治法施行令第百七十四条の三改正前の地方自治法施行令第百七十四条の三十読替前の土地区画整理法第五十五条十九第三項による読替後の土地区画整理法

いる 〇また 障害者の権利に関する条約 においては 障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとされている 〇一方 成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度 ( いわゆる欠格条項 ) については いわゆるノーマライゼーションやソーシャルインクルージョン ( 社会的包摂 ) を基本理念とする成年

老人医療給付費等の国庫負担(補助)について

Transcription:

日本における地方地方自治制度自治制度の動向 大阪都 構想 構想と大都市制度と大都市制度の改革 早稲田大学 政治経済学術院 公共経営大学院教授 片木淳 1 日本の大都市制度 1.1 指定都市制度 表 1 指定都市の人口と移行年月日 都市人口 1 移行年月日 図 1 指定都市の状況 大阪市 2,665,314 1956.9.1. 名古屋市 2,263,894 1956.9.1. 京都市 1,474,015 1956.9.1. 横浜市 3,688,773 1956.9.1. 神戸市 1,544,200 1956.9.1. 北九州市 976,846 1963.4.1. 札幌市 1,913,545 1972.4.1. 川崎市 1,425,512 1972.4.1. 福岡市 1,463,743 1972.4.1. 広島市 1,173,843 1980.4.1 仙台市 1,045,986 1989.4.1. 千葉市 961,749 1992.4.1. さいたま市 1,222,434 2003.4.1 出典 : 指定都市市長会 HP 静岡市 716,197 2005.4.1. 堺市 841,966 2006.4.1. 新潟市 811,901 2007.4.1. ( 表 1) 1 人口は 平成 22 年国勢調査 ( 確定値 ) を基に作成し ている 浜松市 800,866 2007.4.1. 岡山市 709,584 2009.4.1. 相模原市 717,544 2010.4.1. 熊本市 734,474 2012.4.1 出典 : 総務省 HP 政策 > 地方行財政 > 地方自治制度 > 地方公共団体の区分 1

日本の現行地方自治法により 指定都市は 人口 50 万以上の市 の中から政令で指定される ( 自治法第 252 条の 19 第 1 項 ) ただし 運用では 一般的に 100 万人以上 合併特例として 70 万人以上の市が指定されることができる 指定都市は 2012 年 4 月 1 日現在 20 市を数えている ( 図 1 表 1) 指定都市は 都道府県が処理する事務の全部又は一部を 処理することができる ( 同項及び道路法 河川法 地方教育行政法等 ) 指定都市は 市長の権限に属する事務を分掌させるため 条例で その区域を分けて区を設け ( 行政区 同法第 252 条の 20 第 1 項 ) 区の事務所の長は 当該普通地方公共団体の長の補助機関である職員をもつて充てる ( 同条第 3 項 ) 1947 年制定の地方自治法には 特別市 制度が規定されていた 特別市 は 原則として 都道府県及び市に属する事務を処理し 都道府県の区域外とされていた しかし 関係府県が激しく反対したため 1956 年地方自治法が改正され 特別市 制度は一度も実施されることなく廃止され かわって 現行の 指定都市 制度が導入された なお 指定都市のほか 人口 30 万以上の市に適用される中核市 (1995 年施行 2012 年 4 月 1 日現在 41 市 ) 人口 20 万以上ノ市に適用される特例市 (2000 年施行 2012 年 4 月 1 日現在 40 市 ) がある 1.2 都区制度東京都の特別区 ( 図 2 表 2) は 地方自治法により 基礎的な地方公共団体として 位置づけられている ( 第 281 条の 2 第 2 項 ) しかし 人口が高度に集中する大都市地域における行政の一体性及び統一性の確保の観点から当該区域を通じて都が一体的に処理することが必要であると認められる事務 等は 都がこれを処理することとされる ( 同条第 1 項 ) 具体的には 上下水道 消防 などの事務は 都が東京都水道局 東京都下水道局 東京消防庁などを設置して行っている 清掃事業については 2000 年 4 月 1 日施行の同法改正により 特別区に移管された 都及び特別区の事務の処理については 都と特別区及び特別区相互の間の連絡調整を図るため 都区協議会 が設置され ( 自治法第 282 条の 2) 都と各特別区の相互間で調整が図られている 市町村民税 ( 法人分 ) 固定資産税 特別土地保有税等は都税とされ それらの税収の一定割合が 都区財政調整制度 により 特別区の財源不足額に応じて財源調整交付金として各特別区に交付される ( 自治法第 282 条 ) 2

図 2 東京都の 23 区と市町村 出典 : 東京都 HP 都内区市町村マップ 島しょ部を除く 表 2 東京都 23 区の人口一覧 区の人口一覧資料 : 東京都の人口 ( 推計 ) 2011 年 1 月 1 日現在 ( 総務局統計部 ) 特別区名 人口人 特別区名 人口人 千代田区 47,201 渋谷区 204,921 中央区 123,475 中野区 313,980 港区 205,580 杉並区 549,042 新宿区 326,463 豊島区 284,935 文京区 207,227 北区 334,789 台東区 176,569 荒川区 204,815 墨田区 247,702 板橋区 533,890 江東区 461,615 練馬区 715,683 品川区 365,858 足立区 684,537 目黒区 268,375 葛飾区 443,229 大田区 693,012 江戸川区 678,894 世田谷区 878,071 区部計 8,949,863 出典: 東京都 HP 都内区市町村マップ 東京都の総人口は 13,163,332 人 2 大阪都大阪都 構想 2.1 大阪都 構想の概要 2010 年の正月 弁護士出身で 人気タレントでもあった異色の大阪府知事 橋下徹 ( 当時 現大阪市長 ) は 記者会見の場で 大阪府と大阪市の関係を 1 回ぶち壊して新たな 3

大阪をつくっていく 必要があるとして 大阪都 構想 ( 図 3 表 3) を提唱した 同年 4 月には その実現を公約に掲げて 地域政党 大阪維新の会 が発足し その後 2011 年の統一地方選 (4 月 ) 大阪府知事 市長ダブル選挙 (11 月 ) での大阪維新の会の勝利を経て 本年 7 月 30 日には 民主党 自民党 公明党等与野党 7 会派により 東京都以外にも特別区の設置を認める 大都市地域特別区設置法案 が衆院に共同提出されるに至っている ( 次期選挙への思惑から維新の会に配慮を示したものといわれている (8 月 1 日付毎日新聞等 )) 図 3 大阪府と大阪市 堺市 人口人割合 % 面積km2割合 % 大阪府 8,865,245 100.0 1,898.47 100.0 大阪市 2,665,314 30.1 222.47 11.7 堺市 841,966 9.5 149.99 7.9 出典: 総務省統計局 HP 平成 22 年国勢調査 道府 県 市区町村別主要統計表 ( 平成 22 年 ) により作成 ( 地図 : 地方自治情報センター HP 全国自治体 マップ検索 による大阪府の地図を加工 ) 表 3 大阪都 構想の要点 要点 1. 貧困都市脱却のための公務組織等の改革 2. 二元行政 二重行政の打破 3. 大阪都 の新設 概要全国で最高の生活保護率 低い消費支出 高い完全失業率など大阪は貧困都市へと転がり落ちおり この課題に正面から立ち向うためには 徹底した公務員改革と公務組織の経営形態の変換が必須である 大阪の新たな成長のためには 大阪市と大阪府の二元行政 二重行政を打破し 1 人のリーダーが成長戦略を実施できる体制 を整備しなくてはならない 戦略性が必要な事業 ( 成長戦略 広域防災機能 都市計画や拠点開発 交通インフラの整備等 ) および統一性が必要な事業 ( 国民健康保険 生活保護 消防や警察 道路の管理等 ) は 大阪都 を新設して これに一元的に担当させる 4

指定都市である現在の大阪市と堺市を廃止し 人口 30 万人から 50 4. 特別自治区 の万人規模の特別自治区を設置する 特別自治区には 公選制の区長と新設区議会を置き 中核市並みの権限を与える 民間で可能な事業は可能な限り民間で行うべきであり 地下鉄およ 5. 大阪市営事業の民びニュートラム モノレール バス 水道および下水等の経営形態を営化変更すべきである ( 注 ) 大阪維新の会 大阪都構想推進大綱 (2011 年 11 月 1 日 ) により 要点を筆者抽出 2.2 大阪都 と補完性 近接性の原理 大阪都 構想は 大阪府域に 大阪都 を創設し 十分な財源で裏打ちされた強い広域自治体 として 戦略性が必要な事業 ( 成長戦略 広域防災機能 広域に影響がある都市計画や拠点開発 交通インフラの整備 戦略的な街づくり等 ) および統一性が必要な事業 ( 国民健康保険等の運営 介護保険および生活保護の運営 消防や警察 道路の管理等 ) を担当させるというものである ( 図 4) 図 4 大阪都 構想における広域行政と基礎自治行政 出典 : 大阪市 HP 市政改革プラン - 新しい住民自治の実現に向けて - 基本方針編 (2012 年 7 月 30 日 大阪市 ) これについては 大阪の経済浮揚や地域再生の課題を大阪府の区域で考えることは グローバル経済下の厳しい地域間競争の時代においては すでに 狭きに失するのではないかと思われるほか 基礎的自治体である大阪市を解体して 大阪都 というような広域自治体に委ねることについては 補完性の原理 や 近接性の原理 からの疑問もある 5

2.3 特別自治特別自治市 構想指定都市市長会は 2011 年 7 月 27 日の 新たな大都市制度の創設に関する指定都市の提案 ~ あるべき大都市制度度の選択 特別自治市 ~ の中で 道府県制度度が明治以来改革されていないため 効果的的 効率的な行政運営が阻害されており 道道府県制度の見直しを行い 基礎自治体を中中心とした新たな制度を構築することが必要である とし 基礎自治体であるとともに 高度な行政能力を備え 大規模かつ多種多様様な行政課題に対応している大都市は 道府府県と同等の事務を行うことが可能 であり 能力 役割に見合った権限と財源が確保されることが必要だとしている 図 5 特別自治市特別自治市 制度 出典: 指定都市市長会 新新たな大都市制度の創設に関する指定都市の提案 ~ あるべき大都市制度の選択 特別自治市 ~ ( 平成 23 年 7 月 27 日 同 HPによる ) そして 大都市は 全体として 一体的な都市機能を備えた都市を形成成し 市民も一つのまとまりとしての大都市を当然のものと認識しており また 大都市のの一体的な行政運営によるスケールメリットで 住民サービスが効率化 高度化できるなどど 一体的大都市機能強化の必要性を指摘し 新たな大都市制度として 1その市域内の地地方の事務を全て行い 2その市域内における全ての地方税を一元的に賦課徴収し 3 広域域自治体の区域外とする 特別自治市 を提案案した ( 図 5) つまり 大阪都 構想とは反対に 広域自治体による大都市行政の一一体的運営を否定し 大阪都 構想のいう 戦略性が必要な事業 も 統一性が必要な事事業 も含めて すべての事務事業の基礎自治治体による運営をめざしている したがって 論点は 今後 激化する国際的な競争環境の中でそれぞれの地域において 大都市制度ををどのように構築すべきであるのか 大阪都都 構想のいうように大阪市を廃止 分割し より広域の大阪府が戦略的 統一的事務を実実施することとすべきであるのか それとも 特別自治市 構想のように広域自治体である都道府県から独立した大阪市等の地位を認認めて その自立 6

性の向上を図るべきなのか ということになる 2.4 特別自治区 の新設と都区制度都区制度の改革 大阪都 構想は 267 万人の人口を擁する大阪市の組織では住民生活をきめ細やかに守るには組織が大き過ぎ 各行政区役所では全く対応できない これら住民サービスを 住民により近い 特別自治区 が全て担えるような組織体制と仕組みを整備する必要があるとし 指定都市である現在の大阪市と堺市を廃止し 人口 30 万人から 50 万人規模の特別自治区を設置し 公選制の区長と区議会を置き 中核市並みの権限を与えるとする 大阪都 構想は その名から推測すれば 現在の東京都制をモデルにしようとするものであろうが 2007 年 12 月 特別区長会の諮問機関である特別区制度調査会は特別区制度の廃止を提案している ( 第二次特別区制度調査会報告 都の区 の制度廃止と 基礎自治体連合 の構想 ) すなわち 同報告は これまでの 都区制度を支えてきた基本観念である 東京大都市地域における 行政の一体性 から脱却し 都の区 の制度廃止を実現する必要 があるとし その上で 人口 面積 財源など様々な特性を持つ基礎自治体が 自らの意思決定における主体性と行財政運営における自立性を維持しながら 対等 協力 による相互補完を行う仕組みとして 基礎自治体連合 を提案した この点 大阪都 構想は 住民に身近な行政は従来の行政区を独立した基礎自治体として自立させようとしており その限りでは 特別区長会側の東京都制改革案に近い面もあるが 戦略性 統一性が必要な事業など広域自治体である 大阪都 の機能を強化しようともしており その点では このような都区制度の改革の流れに逆行しているとも評し得る 3 今後の展開前述のように 大都市地域における特別区の設置に関する法律案 が 2012 年 7 月 30 日 民主党 自民党 公明党等与野党 7 会派により 国会に提出され 衆議院総務委員会に付託されている 法案は 指定都市と隣接市町村を含む総人口 200 万人以上の大都市区域で 市町村を廃止して特別区の設置を認めるものであり 指定都市のうち 200 万人以上の横浜 大阪 名古屋のほか 隣接市町村を含めて 200 万人を超える札幌 さいたま 千葉 川崎 京都 堺 神戸の 10 市が対象となっている 指定都市等と関係道府県が総務大臣との協議の上で 議会の承認や住民投票などを経て市町村を廃止し 特別区を設置することとされている 大阪都 構想の実現のためには 今後 府 市両議会の議決や住民投票 関係法令の改正など多くの手続きが必要であり 実現までにはなお時間を要すると思われるが これを契機に 日本の統治機構全体の課題について早急に真剣な論議を行っていく必要が生じてきている 今後の展開が注視されるところである 7