平成 29 年度研究協議会 現代社会の諸課題に対応した 小学校社会科の教材 実践開発 - 社会に対する認識を深め, 選択 判断する力を育成する授業を通して - 徳島県鳴門教育大学附属小佐藤章浩中尾梓 1
1 研究主題設定の理由 2
少子高齢化 過疎化 自然災害 情報化の波 etc 現代社会の諸課題 認識 選択 判断 する力 3
2 研究内容 4
研究内容 1 現代社会の諸課題に対応した内容を扱う単元開発 ア, 第 3 学年における 市の様子の移り変わり の単元開発及び実践 イ, 第 4 学年における 県の自然災害 の単元開発及び実践 ウ, 第 5 学年における 産業の情報化 の単元開発及び実践 ( 平成 30 年度予定 ) 5
研究内容 2 社会に対する認識の深まりと, 選択 判断する力の高まりを目指す場面設定と手立て ア, 子供の 認識 と 判断 が相互に作用する授業場面の設定 イ, 社会に対する認識を深め, 選択 判断する力を高める具体的手立て 6
研究内容 3 学びや変容を自覚できる自己評価と, 教師の見取りの方略 ア, 授業展開中における自他の考えの可視化 イ, 社会に対する認識と, 選択 判断する力の評価の工夫 7
3 実践事例 Ⅰ 調べよう徳島市の昔と今 ( 第 3 学年市の様子の移り変わり ) 8
単元構成 調べよう徳島市の昔と今 ( 全 17 時間 ) 1 単元の学習問題をつくる (1 時間 ) 2 予想をし, 調べ方を話し合う (1 時間 ) 3 調べる (10 時間 ) 文献資料 統計資料 見学調査など 4 単元のめあてについて話し合う (2 時間 ) 今の徳島市を な市と言うなら? < 認識と判断が相互に作用する授業場面 > 5 本時 1 市のくらしやすさを話し合う (1 時間 ) 6 本時 2 今後の市について話し合う (2 時間 ) 9
研究内容 1 単元開発について 市役所 企画政策課の方 地域の方 ( 公民館の方 ) 市交通局の方 福祉施設の方 10
研究内容 1 単元開発について 文献資料や 過去の 写真資料 地域副読本 統計資料 11
単元の流れ 1~ 単元の学習問題をつくる 単元の学習問題徳島市の様子やくらしがどのようにかわったのか調べよう 12
単元の流れ 2~ 予想をして調べ方を話し合う 調べる観点に分類 交通 公共施設 人の数 ( 人口 ) 土地の使われ方 ( 土地利用 ) くらしの道具 13
単元の流れ 3~ 調べる 14
単元の流れ 4~ 単元のめあてについて話し合う 安心 便利 なども出たけど, さみしい なども出たなあ 徳島市ってくらしやすくなっているのかな? 15
研究内容 2 ア 認識 と 判断 が相互に作用する授業場面の設定 みんなにとって, くらしやすい徳島市にしたいと思っています 市役所企画政策課の方 みんなはどう考えるんだろう? 子どもの中に 問い が芽生える 16
研究内容 2 ア 認識 と 判断 が相互に作用する授業場面の設定 本時 1 市の課題 市の特長 17
研究内容 2 ア 認識 と 判断 が相互に作用する授業場面の設定 本時 2 市に見られる課題を ふまえて選択 判断 18 市役所の方
研究内容 2 イ具体的手立て 見方 考え方が働く資料提示 19
研究内容 2 イ具体的手立て 焦点化する問いかけ さらにくらしやすい市に するにはどうすればいい? 特に 大事なのは? 市役所の方 20
研究内容 3 ア授業展開中における自他の考えの可視化 ワークシート ネームカード 考えの立ち位置の可視化 21
3 実践事例 Ⅱ 防災ブックをつくろう 地震災害から人々を守るために ( 第 4 学年県の自然災害 ) 22
徳島県被害想定 ( 震度分布 ) 23
単元構成防災ブックをつくろう ( 全 14 時間 ) ー地震災害から人々を守るためにー 1 単元の学習問題をつくる (1 時間 ) 2 予想をし, 調べ方を話し合う 3 調べる (7 時間 ) (2 時間 ) 文献資料 統計資料 見学調査など 24
単元構成 防災ブックをつくろう ( 全 14 時間 ) ー地震災害から人々を守るためにー 4 単元のめあてについて話し合う (1 時間 ) 徳島県では地震災害から人々を守るために, どのような取り組みをしているのだろう < 認識と判断が相互に作用する授業場面 > 5 とくしまゼロ作戦課の取り組みのうち, どの取り組みを優先するべきか話し合う (1 時間 ) 課題をふまえて, 今の自分 ( たち ) にできることについて話し合う 6 防災ブックにまとめよう (1 時間 ) 25
研究内容 1 単元開発について 徳島県庁とくしまゼロ作戦課 渭北消防分団 徳島県立防災センター 渭北地区自主防災組織 26
研究内容 1 単元開発について 過去に対処してきた地震災害 について 文献資料 新聞記事 27
研究内容 1 単元開発について 今後, 起こりうるであろう地震災害 について HP や新聞記事 校内や地域の実地調査 28
単元の流れ 1~ 単元の学習問題をつくる 単元の学習問題徳島県では地震災害から人々の命やくらしを守るためにどのような取り組みをしているのだろう 29
単元の流れ 2~ 予想をして調べ方を話し合う 調べる観点に分類 過去に対処してきた地震災害 今後, 起こりうるであろう地震災害 家庭 学校の中 地域 学校周辺 徳島市 徳島県 30
単元の流れ 3~ 調べる 31
単元の流れ 3~ 調べる 32
単元の流れ 3~ 調べる 33
単元の流れ 4 ~ 単元の学習問題について話し合う ~ 34
研究内容 2 ア 認識 と 判断 が相互に作用する授業場面の設定 どの取り組みを優先すべきだろう 子どもの中に 問い が芽生える 35
研究内容 2 ア 認識 と 判断 が相互に作用する授業場面の設定 本時 1 協力 連携 県の課題 36
研究内容 2 ア 認識 と 判断 が相互に作用する授業場面の設定 本時 1 県の課題 今の自分 徳島県の防災に見られる 課題をふまえた選択 判断 37
研究内容 2 イ具体的手立て 見方 考え方が働く資料提示 背面掲示 短冊カード 38
研究内容 2 イ具体的手立て 焦点化する問いかけ 自分 ( たち ) にできることは 39
研究内容 3 ア授業展開中における自他の考えの可視化 ネームカード 短冊カード 40
単元の流れ 5~ 広げ 深める ~ 41
単元の流れ 5~ 広げ 深める ~ 42
43
研究内容 3 学びや変容を自覚できる自己評価と, 教師の見取りの方略 ア, 授業展開中における自他の考えの可視化 イ, 社会に対する認識と, 選択 判断する力の評価の工夫 3 年生 市の様子の移り変わり を例に 44
研究内容 3 イ社会に対する認識と, 選択 判断する力の評価の工夫 45
認識の深まりの分析 ( 抽出児 ) A 児 事前アンケート本時 12 の前単元後 空気がきれいでお店がたくさんあり, 人が多い市 外国の人もたくさんいるので, 外国の人にも人気がある 人口が少ない市 大型スーパーやポッポ街のような大きな店はあるけど, 地域の小さなスーパーは少なくなっているから 人口が少ない市 大型スーパーなどの大きな店はたくさんあるけど, 小さなコンビニエンスストアのような店は人口が少ないから, 少なくなっていると思うから これからは子育ての施設を増やすことをすると, 人口が増えると思った 子育ての施設を増やすと安心して赤ちゃんが産めて, 人口が増えるから 46
認識の深まりの分析 ( 抽出児 ) B 児 事前アンケート本時 12 の前単元後 子どもから大人まで遊べる やさしい市 新町川を守る会の方がみんなのために川がきれいになるまで努力したり, 外国から来た人が困らないようにするバスに外国語で書いたりしているから 単元前の自分の考えを比べてみると, 駅や道など一番心にのこったもの については チュチュチュロス などを書いていたけど, 今は, 子育て安心ステーション, ノンステップバスが心に残った 昔と比べて今の徳島市はみんながくらしやすい市だなと思われていると思う 困っている人のためにつくった子育て安心ステーションなど困ってしまう人がなくなるくらい, いい市になってい ると思う 子どもが少なくなってきて 47 いるので, 子どもがくらしやすい町になるように
選択 判断する力の高まりの分析 ( 抽出児 ) C 児本時 1の学習前本時 1の学習後 判断の視点の増加 自分にとってはあんまりだけど, みんなの気もちを考えると, 暮らしやすくもちょっとなっているのかなと思う 駅前のお店が増えたりしているから 徳島市は自然が減ったり, 水の生き物が減ったりして暮らしにくくなったり, 交通が少なくなったりしているけど, 取り組みや子育て安心ステーションができたりして, 暮らしやすくなったりもしていると思う また, 高齢者のためのこともしている 48
選択 判断する力の高まりの分析 ( 抽出児 ) F 児本時 1の学習前本時 1の学習後 ノンステップバスを取り入れているのはいいと思ったけど, 昔より子どもが少なくなったりしているから, 今からはお年よりの施設などが多くなって, 逆に学校が少なくなっていくと思った 根拠の具体化 私は徳島市はよいところもあるけど, 問題点もあると思う よいところは子どものことを預けることができる施設や, お年よりの方のためにリハビリを手伝ってあげるところがあるから 問題点は, お店などがシャッターが閉まり, どんどん買い物をするところが減っている 49
選択 判断する力の高まりの分析 ( 抽出児 ) B 児本時 2の学習前本時 2の学習後 閉店したお店を使って新しい建物を作るのがいいと思った お金も無駄にしないし, お店を壊した人の気持ちになってみると全部壊してしまったら, それは見れないけど, その建物のまま新しい建物を建てたらその人が少しでも役にたてたら嬉しいと思うから 課題をふまえた判断 私が特に大事だと思ったのは, 閉店したお店を使って新しいお店を作るのがいいなと思ったけど, 地域のバスがいいなと思った なぜなら, 徳島市の市バスの本数が減ってしまって, 車を持っていない方が困る という問題点があるけど, みんなで協力して, お年寄りなどが困らなくて, みんなが暮らしやすい市になると思うから 50
選択 判断する力の高まりの分析 ( 抽出児 ) C 児本時 2の学習前本時 2の学習後 考えの比較 水と緑の絵をみてもらうことで, ぼくたちの市もこういう感じになったらいいなと思うから, 自然を増やすことに役立つと思う 水と緑はすごく大切なのでこれにした 他の人の話を聞いてみると, バスがまずないと移動できないので, 地域のバスも二番にいいのではないかなと思った 外国の人も増えてきていて, 徳島市が汚い市だと外国の人も来ないし, 人も増えていかないと思ったので, 水と緑は徳島市をにぎやかにしていくためには人を増やせると思ったのでいいと思った 51
選択 判断する力の高まりの分析 ( 抽出児 ) F 児本時 2の学習前本時 2の学習後 判断する力の高まり? どうしてかと言うと, 商店街にたくさんの人が集まると徳島市のことを色々知ってもらえるのでそういう風なイベントをたくさんの人に見てもらえたりすると世界に広がったりするかもしれないから イベントがいいと思ったけど, S さんや O さんの意見を聞いて地域バスもいいなと思った たしかに, 降りる場所が決まっていないからいろいろなところにいけるなどと思い, 便利だと思う また, ファミサポもいいなと思う 52
よりよい社会のイメージの分析 ( 抽出児 ) 事前アンケート 単元後 E 児 事件が起きないように 徳島市の様子やくらしがどのように変わったのかというと, ふれあい健康館や子育て安心ステーションなどができて, 住みやすくなったと思う でも, 昔と比べて町の様子はにぎやかじゃなくなったと思う なぜなら, 店はシャッターが閉まっている店が多くなったりしているから 徳島市をもっとにぎやかな町にできるように, わたしもできるようなことで役立つことをしたい 53
よりよい社会のイメージの分析 ( 抽出児 ) 事前アンケート 単元後 G 児 公園や遊ぶところをふやしてほしい 自然や動物などを少し増やしてほしい 単元の前よりか徳島市は少し便利な市と思う所がたくさんある 単元の前は, 徳島市はちょっとしか便利じゃないと思っていたけど, この単元で色々な話を聞いて, 少し便利だと感じるようになった なぜ少しだけ便利になったかと言うと, 子育てのための施設ができたり, バスでもノンステップバスができたり, 公共施設が増えたり, ふれあい健康館ができたりして少し便利だけど, お金がたくさんかかったりして, 少し不便なところがあるけど, もう少し工夫されてもう少し便利になったら, もっと外国人の方や県外の方が来てくれたりして, 便利でにぎやかな市になると思う 54
4 成果と課題 55
4 成果と課題 市の様子の移り変わり 県の自然災害 という現代社会の課題に目を向ける教材の開発ができた 子どもの認識と判断が相互に作用する展開や手立てを事例的に解明できた 特に 選択 判断する力 の高まりを見取る方策に課題が残った 56