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国産粗飼料増産対策事業実施要綱 16 生畜第 4388 号平成 17 年 4 月 1 日農林水産事務次官依命通知 改正 平成 18 年 4 月 5 日 17 生畜第 3156 号 改正 平成 20 年 4 月 1 日 19 生畜第 2447 号 改正 平成 21 年 4 月 1 日 20 生畜第 1

和牛開始マニュアル

Microsoft Word - 宮崎FMDマニュアル⑦ 指針別紙(評価)

ふくしまからはじめよう 農業技術情報 ( 第 39 号 ) 平成 25 年 4 月 22 日 カリウム濃度の高い牧草の利用技術 1 牧草のカリウム含量の変化について 2 乳用牛の飼養管理について 3 肉用牛の飼養管理について 福島県農林水産部 牧草の放射性セシウムの吸収抑制対策として 早春および刈取

「牛歩(R)SaaS」ご紹介

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農林水産省畜産再興プラン実現推進本部酪農生産基盤強化部会 酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針 - 地域の知恵の結集による畜産再興プラン - 人 牛 飼料の視点での基盤強化 酪農生産基盤の強化 のポイント 生クリーム 平成 27 年 4 月

平成 26 年度 ~27 年度施策評価票 評価する施策下記施策の体系による 総合計画との関連 施策の体系 2 - 肉用牛の振興酪農の振興養豚の振興養鶏の振興家畜防疫と環境保全食肉流通体制の充実 施策の内容と現況 (1) (2) (3) (4) (1) (2) (3) (4) (5) (6) 中分類畜

まえがき 我が国は いまだ経験したことのない経済社会の構造の変化に直面し 大きな転換点を迎えており 変化に対応したスピード感のある取組が求められています 酪農 肉用牛生産については 農家戸数や飼養頭数の減少など 生産基盤の弱体化により 生乳生産量が減少し また子牛価格が高騰しており この状態を放置す

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肉用牛振興関係主要事業 (R 元 ) 目的 肉用牛産出額は241 億円と品目別で14 年連続第 1 位の重要な品目であるが 高齢化や担い手不足により飼養戸数が年々減少している 繁殖経営は畜産クラスター事業等の効果により増頭に転じているが 肥育経営は素畜費等の高騰で資金繰りが悪化し 頭数が減少 このた

子牛育成の参考書 ~ 子牛育成プロジェクトの調査結果から ~ 平成 26 年 3 月 東松浦農業改良普及センター唐津農業協同組合上場営農センター北部家畜保健衛生所

目 次 Ⅰ 酪農及び肉用牛生産の近代化に関する方針 Ⅱ 生乳の生産数量の目標並びに乳牛及び肉用牛の飼養数の目標 1 生乳の生産数量及び乳牛の飼養数の目標 2 肉用牛の飼養数の目標 Ⅲ 酪農経営又は肉用牛経営の改善の目標 1 酪農経営方式 2 肉用牛経営方式 Ⅳ 乳牛及び肉用牛の飼養規模の拡大のための

目 次 Ⅰ 酪農及び肉用牛生産の近代化に関する方針 1 酪農及び肉用牛生産をめぐる近年の情勢の変化 1 2 酪農及び肉用牛生産の競争力の強化 1 3 酪農及び肉用牛生産のための飼料生産基盤の確立 3 4 家畜衛生対策の充実 強化 5 5 安全安心な畜産物の生産による消費者の信頼確保 5 6 消費者ニ

肉牛生産管理ご紹介

酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針について 我が国農業における畜産の地位 酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針 ( 酪肉近 ) について 酪肉近のポイント

畜産クラスターの取組と支援のイメージ 地域畜産クラスター協議会 ( 畜産農家 地方公共団体 JA 畜産経営支援組織 畜産関連業者等 ) 繁殖雌牛の増頭と繁殖性の向上で 地域の収益性を向上しよう! 関係者が連携し 収益性の向上を図る取組を記載した畜産クラスター計画を作成 目的 中心的な経営体を核とした

地域における継続した総合的酪農支援 中島博美 小松浩 太田俊明 ( 伊那家畜保健衛生所 ) はじめに管内は 大きく諏訪地域と上伊那地域に分けられる 畜産は 両地域とも乳用牛のウエイトが最も大きく県下有数の酪農地帯である ( 表 1) 近年の酪農経営は 急激な円安や安全 安心ニーズの高まりや猛暑などの

資料 6-1 指定食肉 ( 豚肉及び牛肉 ) の安定価格肉用子牛の保証基準価格等算定概要 生産局 平成 27 年 12 月

6-1 指定食肉 ( 豚肉及び牛肉 ) の安定価格肉用子牛の保証基準価格等算定概要 生産局 平成 27 年 1 月


A 農場の自家育成牛と導入牛の HI 抗体価の と抗体陽性率について 11 年の血清で比較すると 自家育成牛は 13 倍と 25% で 導入牛は 453 倍と % であった ( 図 4) A 農場の個体別に症状と保有している HI 抗体価の と抗体陽性率を 11 年の血清で比較した および流産 加療

報告書


6次産業ガイドブック表1

MergedFile

畜産 酪農収益力強化総合対策基金等事業実施要綱 農林水産事務次官依命通知制定平成 28 年 1 月 20 日付け27 生畜第 1574 号最終改正平成 30 年 2 月 1 日付け29 生畜第 1017 号 第 1 趣旨我が国の畜産 酪農は 農家戸数や飼養頭数が減少している現状にあり 生産基盤の強化

(Microsoft Word - H30\224N\223x\222{\216Y\227v\227\227Ver1.0\201i300412\214\273\215\335\201j.doc)

コントラクター及びTMRセンターの現状

Microsoft Word - 和牛ビジョン( )岡垣改訂版(正式分)

2 肉用牛肥育経営安定特別対策事業 ( 牛マルキン ) について 牛マルキンとは 肉用牛肥育経営の安定を図ることを目的として 肉用牛肥育経営の収益性が悪化した場合に 生産者の拠出と機構の補助により造成した基金から 粗収益と生産コストの差額の8 割を補塡する事業である 粗収益は期間中に食肉卸売市場また

まえがき 1 第 1 酪農及び肉用牛生産の近代化に関する基本的な指針 4 Ⅰ. 酪農及び肉用牛生産をめぐる近年の情勢の変化 4 1. 生産基盤の弱体化の懸念 4 (1) 離農や後継者不足による人手不足 4 (2) 乳用牛 肉用牛飼養頭数の減少 4 (3) 飼料価格の上昇 4 2. 消費者の需要の変化

11 年度以降 これまでに採択した新規参入者は215 者である 道県別にみると 宮崎県が38 者と最も多く 次に鹿児島県の34 者 北海道の31 者 長崎県の26 者となって いる ( 図 1) なお 直近の採択となった 26 年度は 5 県 7 事業実施主体で 新規参入者 10 者を採択した 図

渚泊推進対策 平成 29 年 3 月に閣議決定された 観光立国推進基本計画 において 農山漁村滞在型旅行をビジネスとして実施できる体制を持った地域を平成 32 年度までに 500 地域創出することにより 農泊 の推進による農山漁村の所得向上を実現する と位置づけられたところ 農泊 を持続的なビジネス

ハビリセンター 受精卵センター バイオマスセンター等の諸施設があり 人的組織としては和牛ヘルパー組合 和牛婦人部などがある 設立以来の主要な活動を挙げると 次のようになる 特長として 1 当初から行政が深く関わり 市役所のリーダーシップで行われてきた 2 農協を含め 全畜種を網羅し 地域全体をまとめ



計画期間平成 28 年度 ~ 平成 37 年度 京都府酪農 肉用牛生産近代化計画書 平成 29 年 4 月 京都府

Microsoft Word - H21_全国集計_解析編.doc

ニュースリリース 農業景況調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 1 8 日 株式会社日本政策金融公庫 平成 30 年農業景況 DI 天候不順響き大幅大幅低下 < 農業景況調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日本政策金融公庫 ( 略称 : 日本公庫 ) 農林水産事業は 融資先の担い手農業者

Ⅰ 酪農及び肉用牛生産の近代化に関する方針

Ⅰ 酪農及び肉用牛生産の近代化に関する方針

平成 30 年度 試験研究の概要 平成 30 年 4 月 地方独立行政法人北海道立総合研究機構農業研究本部根釧農業試験場 0

◎表紙

参考1中酪(H23.11)


Ⅰ 酪農及び肉用牛生産の近代化に関する方針

たまみつしげ 2 黒毛和種 琴照重 及び褐毛和種 球光重 ETI が優秀な成績を収めて 種雄牛として選抜される 鳥取牧場で作出した黒毛和種の種雄牛 琴照重 が 産子の肥育成績を調べる現場後代検定により選抜され 精液の供給が始まりました 琴照重 は 同時期に検定を実施した種雄牛 23 頭中 脂肪交雑


Microsoft PowerPoint - H29農業公社パンフ.ppt [互換モード]

目 次 Ⅰ 集落営農数 Ⅱ 集落営農数 ( 詳細 ) 1 組織形態別集落営農数 2 農業経営を営む法人となる画の策定状況別集落営農数 3 設立年次別集落営農数 4 経営所得安定対策への加入状況別集落営農数 5 人 農地プランにおける位置づけ状況別集落営農数 (1) 中心経営体として位置づけの有無別

ニュースリリース 農業景況調査 : 設備投資 平成 2 9 年 3 月 24 日 株式会社日本政策金融公庫 農業者の設備投資意欲が過去最高 ~ 生産効率関連の農業機械投資が最多 後継者確保に課題も ~ < 平成 28 年下半期農業景況調査関連 > ( 注 1) 日本政策金融公庫 ( 略称 : 日本公

乳牛の繁殖技術と生産性向上

Microsoft Word - 01 変更計画書

農業用施設 災害当初 (9 月 20 日十勝総合振興局報告 ) 被害額 2,352,321 千円 内訳 ため池 5か所 85,200 千円頭首工 1か所 240,000 千円水路 33 か所 1,942,161 千円道路 3か所 84,960 千円試算の前提条件 担当職員 関係機関職員 測量会社等に

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第 5 15 隠岐圏域 ( 農業 農村 ) 章 地域プロジェクト (1) 現状と課題 隠岐圏域の農業は 離島である上に急峻な地勢という不利な条件下で営まれています また 農家の高齢化率 が高く 耕種部門では 零細な経営規模が多い状況ではありますが 農外企業の肉用牛部門への参入など新たな 動きもありま

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酪農生産基盤強化事業実施要領 平成 28 年 6 月 3 日付け 28 農畜機第 1231 号承認 平成 28 年 6 月 3 日付け中酪 ( 業務 ) 発第 82 号 我が国の酪農は 高齢化等により酪農家戸数や飼養頭数が減少等するなど 生産基盤の弱体化が進行しており 生産コストの増加や国内消費の減

Farmer's Eye WINTER

Microsoft PowerPoint - H26農業公社パンフ.ppt [互換モード]

ha ha km2 15cm 5 8ha 30km2 8ha 30km2 4 14

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図 1 全国の繁殖雌牛数と主要市場の子牛価格の推移 全国の繁殖雌牛数 ( 千 ) ( 千円 / ) 全国の繁殖雌牛数 主要市場の子牛価格 ( 右軸 ) 主要市場の子牛価格 平成 13 14

Microsoft Word - 原稿

唐津市農業委員会 農地等の利用の最適化の推進に関する指針 平成 2 9 年 11 月 8 日 唐津市農業委員会 第 1 基本的な考え方農業委員会等に関する法律 ( 昭和 26 年法律第 88 号 以下 法 といいます ) の改正法が平成 28 年 4 月 1 日に施行され 農業委員会においては 農地

2 酪農生産 離農農場を 一般予算(28 年度補正 ) 基盤を強化活用して規模畜産クラスター事業民間団体 農協や公社等が買入又は借入ししたい ( つづ拡大したい 畜産企画課推進班た離農跡地等において 家畜のき ) 導入 畜舎等の補改修を実施し 規模拡大者へ貸付けする取組を支援します 乳用後継牛 一般

PowerPoint プレゼンテーション

スライド 1

1 課題 目標 山陽小野田市のうち 山陽地区においては 5 つの集落営農法人が設立されている 小麦については新たに栽培開始する法人と作付面積を拡大させる法人があり これらの経営体質強化や収量向上等のため 既存資源の活用のシステム化を図る 山陽地区 水稲 大豆 小麦 野菜 農業生産法人 A 新規 農業

証料を保証当初 5 年間免除 (3) このほか 被災農林漁業者が意欲を持って経営を再開できるように 以下のとおり要請済み 1 新規融資に際しては 円滑な融通が図られるように 関係金融機関に要請 2 既往融資に関して 償還猶予などの措置を適切に講じるように 関係金融機関に要請 3 災害救助法の適用地域

肉用牛 _ 生産コスト縮減に向けた主な取り組み 2 放牧 放牧は 放牧に取り組む前と比べて 飼料費を約 25% 労働費を約 35% 削減できることから 肉用牛繁殖農家の所得向上に有効な手段である また 放牧に取り組むことで 増頭につながった事例もある バヒアグラス草地への放牧 水田放牧 矮性ネピアグ

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資料 3 ー 1 環境貢献型商品開発 販売促進支援事業 環境省市場メカニズム室

表紙(確).xlsx

当初 酪農 畜産を学んでいるとは言え酪農経験のない学生に どのような貢献ができるのか懸念されたが それは杞憂であった なぜなら 現地の酪農は 筆者の主観ではあるが 我が国の 30~50 年前の農村風景 農民気質そして衛生水準を彷彿とさせるものであり 大学で学んだ知識でも 十分に様々な課題を指摘できる

2. 食料自給率の推移 食料自給率の推移 我が国の食料自給率 ( 総合食料自給率 ) は 長期的に低下傾向で推移してきましたが 近年は横ばい傾向で推移しています (%) (H5 ) 43 7

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品目別の現状と克服すべき課題 食料 農業 農村基本計画 ( 平成 22 年 3 月閣議決定 ) をもとに整理

Microsoft PowerPoint - [参考2]事例集(完成版).pptx

15 [ 平成 26 年度予算概算要求の概要 ] Ⅰ 飼料自給率の向上 1 飼料自給率向上関連事業 飼料増産総合対策事業 1,625( 1,470) 百万円 草地畜産基盤整備事業等 農業農村整備事業 319,666(262,733) 百万円の内数 農山漁村地域整備交付金 132,155(112,82

図 1から農家数の推移をみると 昭和 55 年の8 万 3138 戸から平成 27 年の3 万 8428 戸へと 35 年間に 4 万 471 戸 (53.8%) も減少している しかし それは表 1に示すように全国の同期間の減少率と同値である 農家の中でも主業販売農家数は17 年の1 万 2588

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農山性化1 農山漁村の 6 次産業化の考え方 雇用と所得を確保し 若者や子供も集落に定住できる社会を構築するため 農林漁業生産と加工 販売の一体化や 地域資源を活用した新たな産業の創出を促進するなど 農山漁村の 6 次産業化を推進 現 状 農山漁村に由来する様々な地域資源 マーケットの拡大を図りつつ



その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

褐毛和種(熊本系)の遺伝的能力の推移について

宮城県 競争力のある大規模土地利用型経営体の育成 活動期間 : 平成 27~29 年度 ( 継続中 ) 1. 取組の背景震災により多くの生産基盤が失われ, それに起因する離農や全体的な担い手の減少, 高齢化の進行による生産力の低下が懸念されており, 持続可能な農業生産の展開を可能にする 地域営農シス

2 農業委員会の運営 2 農業委員会は 市町村長が議会の同意を得て任命した 農業委員 で組織され 農業委員は 合議体としての意思決定 ( 農地の権利移動の許可 不許可の決定など ) を担当 農業委員会は 農地利用最適化推進委員 ( 以下 推進委員 という ) を委嘱し 推進委員は 担当区域における農

Microsoft Word - 02肉牛研究室

3 国の政策 施策 事務事業との関係 1 及び2で述べたように センターは 基本計画や家畜改良増殖目標等国の政策の実現に向けて 全国的な視点での家畜の改良増殖並びに飼養管理の改善 飼料作物種苗の生産 供給等の事業に取り組むとともに 牛個体識別台帳の管理等法令に基づく事務を行ってきた これらの事務事業

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三ケ島工業団地周辺地区 第一回勉強会

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【千葉県事業計画】別記様式第3号別添

対象収入 所得税法上の農業所得として申告されているものの例 自ら生産した農産物の販売収入全体を対象 ( 所得ではない ) 加工品は原則として販売収入に含めない ( ただし 所得税法上の農業所得として申告されているものは含める このため 精米などの加工品であっても 農業者が自ら生産した農産物を加工して

平成 26 年度予算概算要求の概要 生産局畜産部 平成 2 5 年 8 月

Transcription:

北海道天塩町 農林水産課 事例発表の内容 1 天塩町の概況 (1) 天塩町の位置 気象条件 人口 産業 (2) 天塩町農業の概要 2 和牛繁殖基地としての可能性 (1) 草地の現状 (2) 植生改善の課題 (3) 国営総合農地防災事業 産 ( うぶし ) 地区 実施による生産 アップ 3 地域づくり放牧推進事業の取り組み (H27 H29) (1) 事業推進体制 (2) 取り組み内容 (3) 天塩町における肉用牛振興の方向性及び課題 4 草地基盤活用による天塩型和牛生産モデル 5 天塩町和牛放牧組合が核となった放牧による地域おこし (1) 天塩町農業支援センターと天塩町和牛放牧組合の連携による人づくり (2) 基盤整備による良質粗飼料の確保 (3) 酪農経営との連携 (4) 酪農経営から和牛経営への転換 (5) 地元の関係機関 近隣市町村等との連携 (6)6 次産業化 -51-

1 天塩町の概況 (1) 天塩町の位置 気象条件 人口 産業 天塩町 稚内市 札幌市 旭川市 位 置 北海道の北部に位置し 最北の街稚内市から で約 1 時間 札幌市からは約 4 時間 気象条件夏の平均気温は21.5 冬は -6.5 であり 年平均気温は 6.8 ( 札幌市 :8.9 ) 最深積雪は85cm前後 人 口 昭和 30 年 (1955 年 )=10,019 人平成 7 年 (1995 年 )= 4,931 人平成 27 年 (2015 年 )= 3,288 人 産業 ( 基幹産業は農業 ) 昭和 31 年に集約酪農地域の指定を受け 畑作から酪農へ転換 農業 ( 酪農 肉用牛 ) 漁業 ( さけ かれい しじみほか ) (2) 天塩町農業の概要 ア販売農家 数の推移イ販売農家人口の推移戸実績値予測値人 987 実績値予測値 300 1000 250 200 150 100 50 227 172 127 <1995 年 2025 年 > 販売農家戸数 =6 割減少 100 0 0 1995 年 2005 年 2015 年 2025 年 1995 年 2005 年 2015 年 2025 年 資料: 北海道立総合研究機構農業研究本部 ( 中央農業試験場 ) ウ販売農家の経営耕地面積の推移 ( 町全体 ) ha 9,000 8,500 8,000 7,500 7,000 8,444 実績値 8,153 7,916 天塩町全体の耕地面積 10,200ha ( うち 町営牧場 1,475ha) 予測値 7,541 1995 年 2005 年 2015 年 2025 年 資料 : 北海道立総合研究機構農業研究本部 ( 中央農業試験場 ) 800 600 400 200 707 465 <1995 年 2025 年 > 販売農家人口 =7 割減少 エ 1 平均経営耕地面積の推移 ha 100 80 60 40 20 0 37 実績値 47 62 327 予測値 75 1995 年 2005 年 2015 年 2025 年 -52-

オ乳用牛 ( ホルスタイン種 ) ( ア ) 飼養 数 ( イ ) 飼養頭数 頭 戸 14,000 12,381 160 12,000 11,369 11,090 140 120 100 80 148 134 128 121 113 2006 年 2008 年 2010 年 2012 年 2014 年 資料 : 天塩町調べ 肉畜等に関する調査 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 4,246 8,135 4,226 7,143 2,335 8,755 10,474 2 歳未満 2 歳以上 9,984 4,133 3,942 6,341 6,042 2006 年 2008 年 2010 年 2012 年 2014 年 カ肉用牛 ( ア ) 飼養 数 戸 30 25 20 15 10 5 0 酪肉複合経営肉用牛専業経営 18 5 16 5 13 11 23 6 17 17 16 20 1 8 12 2006 年 2008 年 2010 年 2012 年 2014 年 ( イ ) 飼養頭数頭 10,000 乳用種肉専用種 8,000 6,000 4,000 2,000 0 1,686 280 1,406 2,607 0 2,607 4,918 220 4,698 8,538 275 8,263 5,226 212 5,014 2006 年 2008 年 2010 年 2012 年 2014 年 資料 : 天塩町調べ 肉畜等に関する調査 キ 販売取扱高 百万円 5,000 4,000 4,633 48 52 1,035 4,330 4,284 4,218 61 72 32 111 33 32 977 901 749 てん菜牧草肉畜生畜生乳 4,415 4,499 4,325 4,249 4,234 31 80 3,931 134 100 78 65 44 20 24 27 27 127 36 828 957 1,042 798 829 712 3,000 2,000 3,499 3,259 3,277 3,327 3,057 3,293 3,278 3,400 3,333 3,333 1,000 0 2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 資料 :JA てしお農業振興 中期経営計画書 通常総会資料 -53-

2 和牛繁殖基地としての可能性 (1) 草地の現状天塩町は広 な草地基盤を有しているが 草地更新の遅れや施肥量の減量 スラリー施用による施肥のアンバランス等により植生が悪化 平成 23 年度に留萌酪農プロジェクトが実施した植生調査結果では リードカナリーグラス ケンタッキー シバムギ等の雑草類が多く 草地に占める雑草類の割合は約 50% これらの雑草の多い原料草はサイレージ発酵に必要な糖類が少なく 嗜好性が劣る シバムギ 簡易更新後の植生調査 植生調査 リードカナリーグラス < 平成 27 年に天塩町営農対策協議会が った植生状況 > (2) 植生改善の課題植生改善を うには草地更新が有効な 段ではあるが きな費用負担が生じるなどの課題があり すべての農家において早急に取り組むことは難しい 植生の悪い粗飼料を搾乳牛に給与した場合 乳量 乳質の低下を招き 酪農経営に与える影響が きい しかしながら これらの粗飼料を和牛 ( 繁殖雌牛 ) に給与した場合においては マイナスとなる影響が少ない -54-

ア 植生の悪い ( 雑草類の多い ) 粗飼料を給与した場合の影響 雑草類 リードカナリーグラスの特徴 嗜好性が悪い 低消化性繊維が多い アルカロイド含量が多い 糖類が少ない シバムギの特徴 嗜好性が悪い サイレージの発酵品質が悪い 茎が細く倒伏しやすい 堆肥の吸収性が高く 硝酸態窒素含有量が高くなる 経営への影響 きい 経営への影響少ない 酪農経営 搾乳牛 乳量 乳質の低下 和牛経営 繁殖雌牛 利用が可能 イ 簡易更新による植生改善 オーバーシーダーダイレクトドリルクーン < 参考 > 畜産クラスター実証支援事業の実施 平成 26 年度から畜産クラスター実証支援事業 ( ソフト事業 ) を活用し 草地の植生改善による 給飼料生産向上と乳牛 肉用牛の飼養管理改善による 畜産経営の収益 向上に向けた取り組みを実施 1 草地の植生改善実証ほの展 (H26 H28) ( 酪農 ) 給粗飼料のTDN 向上による収益増 (TDN=55% 60%) 簡易更新等による植生改善 自給飼料の TDN5% 向上 産乳量 10% アップ 1 頭当たり乳量 869kg 増加 8,690kg/ 頭 10% =869kg/ 頭 1 頭当たり 73,396 円収益増加 869kg/ 頭 84.46 円 /kg =73,396 円 / 頭 天塩町全体の収益 5 億 8 千万円の増加 73,396 円 7,907 頭 =5 億 8 千万円 2 牛群管理 評価システムの実証 (H27 H28) 乳牛検定情報 バルク乳情報 授精 治療等 NOSAI 情報などの結合 分析 加工 3 規模和牛繁殖経営の確 と繁殖経営の収益向上 (H27 H28) 放牧や野草地の利用 繁殖牛のライフサイクルに応じた飼養管理と 年 産と 性の高い素牛生産の確 -55-

(3) 国営総合農地防災事業 産 ( うぶし ) 地区 実施による生産 アップ 和牛放牧組合 第 2 牧場 和牛放牧組合 第 1 牧場 < 事業の概要 > 受益面積 2,289ha 農地防災 851ha 農地機能保全 2,289ha 工事計画 排 路 15.7km 暗渠排 整備 整地 2,289ha 事業費 130 億円 事業工期 平成 27 年度 平成 34 年度 国営総合農地防災事業 産 ( うぶし ) 地区 受益地の全景 加湿による刈り残し 雨の日が続いた状態 位が高い泥炭地 はけの悪い箇所は収穫不能 3 地域づくり放牧推進事業の取り組み (H27 H29) (1) 事業推進体制事業主体天塩町和牛放牧組合 平成 27 年 4 月 6 日 4 により設 天塩町 連携全国肉牛事業協同組合 天塩町和牛放牧組合の牧場 農業改良普及センター家畜保健衛生所 研修会の共同開催など 連携 ( 関係機関の役割分担 ) 組合員の個別経営概況 農家 草地飼養頭数 (H27 年 2 月 ) 面積繁殖育成肥育計 A 760ha 295 頭 283 頭 35 頭 613 頭 B 260ha 332 頭 11 頭 86 頭 429 頭 C 7.5ha 17 頭 8 頭 - 25 頭 D 38ha 48 頭 11 頭 - 59 頭 天塩町営農対策協議会 < 関係機関による組織 > 営農技術対策の指導 家畜の疾病及び伝染病の予防対 家畜 衛防疫に関すること 生乳の品質向上対策に関すること 畜産クラスターによる酪農 畜産経営の収益 向上に向けた取り組み 天塩町和牛振興協議会 < 関係機関による組織 > 和牛の生産振興のための情報交換 和牛生産対策 和牛指導者の育成 天塩町和牛振興会 < 和牛による組織 > 優良繁殖雌牛の導 と保留対策の推進 優良種雄牛精液の活用による計画交配や受精卵による優良 牛の生産 育成 保留 和牛改良 新技術導 生産性向上などに関する研修会等の開催 家畜の伝染病防止に関する事項 -56-

(2) 取り組み内容 天塩町内の和牛 天塩町和牛放牧組合が繁殖雌牛を購入 和牛放牧のイメージ ( 夏期間 ) 家畜市場等 H27 年度事業の実施概要 推進事業 技術指導 研修会開催 防疫検査 繁殖雌牛導入 138 頭 簡易施設整備 電気牧柵 3,974m 水飲み施設 4 箇所 パドック2 箇所 導入牛 パドック 組合員所有の個別牛舎 電気牧柵 水飲み施設 分娩時期 冬期間 放牧によるコスト低減の目標 項 目 現状 目標 増減 1 頭当たり生産コスト 15,656 円 8,056 円 49% 低減 1 頭当たり労働時間 93.5 時間 86.4 時間 8% 低減 1 頭当たり所得 18 万円 20 万円 11% 増加 年度別繁殖雌牛導入計画 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 導入頭数 0 頭 138 頭 200 頭 250 頭 ( 累計頭数 ) (0 頭 ) (138 頭 ) (320 頭 ) (588 頭 ) 放牧面積 0ha 34ha 96ha 171ha (3) 天塩町における肉用牛振興の方向性及び課題 町内の広 な草地資源を有効に活用し 放牧を取り れた 道内屈指の和牛繁殖基地 を目指す 優良繁殖雌牛の導 や優良種雄牛の選定及び計画交配により 和牛の安定生産と遺伝的改良を進め の経営安定と我が国の 料 給率の向上に結び付けて く 必要とする支援策 繁殖雌牛導 支援 動産 ( 繁殖雌牛 ) を担保とした低利資 の融通 債務保証制度の充実 現行制度 肉用牛経営安定対策補完事業 ( 増頭 導入奨励金 ) 国産粗飼料増産対策事業 ( 地域づくり放牧推進事業 ) 低利資 の融資 + 債務保証をセットにした制度が必要 肉用牛振興の方向性 ( めざす姿 ) 天塩町の農家 数 農家人口の維持 地域経済の活性化 国内の肉用牛需給の安定化に貢献 天塩町には恵まれた草地基盤があり また 夏期間は冷涼な気候であることから これらの条件を最 限に活かすことによって 道内屈指の和牛繁殖雌牛供給基地をめざすことが可能 課 繁殖雌牛導 資 及び運転資 の確保 ( 低利 かつ 5 10 年の中期資 ) 債務保証制度の活用 効 題 和牛繁殖経営の安定 生産の拡 和牛繁殖素牛 肥育素牛の安定供給 市場評価の向上 優位販売の促進 和牛経営での新規参 者の受け れ 和牛を組み れた酪農経営の複合化 酪農リタイア後の受皿 和牛素牛供給基地としての天塩町の知名度アップ 果 -57-

市場等 4 草地基盤活用による天塩型和牛生産モデル天塩町は 恵まれた広 な土地資源と家畜の飼育に適した環境を有しており 肉用牛生産の拡 を図ることが可能 また 天塩町内の肉用牛は 旧安愚楽共済牧場の預託等による多頭飼育経験があることから 繁殖センター及び育成センターの設置により 繁殖と育成の分業化による天塩型和牛生産モデルの実現が可能 第 1 段階 地域づくり放牧推進事業の活用による生産基盤の拡大 < これまで > 個別経営による素牛生産 素牛販売 素牛販売 素牛販売 素牛販売 市場等 <27 年度以降の取り組み > 個別経営と併せて 天塩町和牛放牧組合による素牛生産 天塩町和牛放牧組合 繁殖雌牛導 放 種 牧 付 分娩 育成 地域づくり放牧推進事業を活用して 素牛販売 市場等 組合員の牧場に戻して 第 2 段階 繁殖センター設置による生産基盤の確立 個別経営 は繁殖雌牛 ( 牛 ) を繁殖センターに全頭預託 牛の預託 種付 分娩 生後 3 日目以降に 牛をに戻す 素牛販売素牛販売素牛販売素牛販売 市場等 労働力は, の出役 天塩町和牛放牧組合 天塩町和牛放牧組合 繁殖雌牛導 放 種 牧 付 分 育 娩 成 素牛販売 市場等 -58-

市場等 第 3 段階 育成センターを拡充することにより生産を拡大 個別経営 は繁殖雌牛 ( 牛 ) を繁殖センターに全頭預託 牛の預託受 種付 分娩 育成 生 産 者 素牛販売素牛販売素牛販売素牛販売 市場等 天塩町和牛放牧組合 労働力は, の出役 天塩町和牛放牧組合 繁殖雌牛導 放 種 牧 付 運営 : 天塩町和牛放牧組合 分娩 育成 肥育 ( 部 ) 繁殖雌牛のうち 種が留まらないなど経済的に効果が低い牛や低能力牛は肥育に仕向ける 酪農家の哺育牛 育成牛の預託受 ( 預託中に 和種の受精卵を移植し 分娩 カ月前に酪農家に戻す ) 産まれた 牛は 繁殖 育成セン酪農家と産まれた 牛は 繁殖 育成センターターの所有となり 素牛で販売の連携の所有となり 素牛として育成し販売 繁殖 育成センターの設置により 労働 不 や高齢等により酪農経営をリタイアした方や研修生 実習生等の受 れが可能 素牛販売 市場等 5 天塩町和牛放牧組合が核となった放牧による地域おこし ( 和牛繁殖基地をめざして ) (1) 天塩町農業支援センターと天塩町和牛放牧組合の連携による人づくり天塩町和牛放牧組合が和牛に関 のある農業実習生 研修生等受 の 端を担い 人材を育て 地元に定着してもらうことにより 人口減少に 止め 農業実習生 研修生 農業に関 のある 性の受 新規参 者の受 離農者を授業員として受 企業 公務員等の職場研修の受 牧場従業員 リーダーの育成 試験研究機関 学等との包括連携 関連産業との連携強化 研修生用のトレーラーハウス -59-

(2) 基盤整備による良質粗飼料の確保 個々における草地の簡易更新と併せて 国営総合農地防災事業の実施による生産性 効率性の良い生産基盤を確 10,200ha の草地基盤の有効活用 ホルスタインの放牧風景 (3) 酪農経営との連携酪農と和牛の複合経営による生産基盤の拡 を図るとともに 酪農家との連携により ホルスタインに 和種の受精卵を移植して販売頭数を拡 酪農と和牛の複合経営の拡 ( 酪農家への情報提供 研修会等への声掛け ) ホルスタインの借腹協 酪農家との連携 天塩町放牧の会との連携 ( 酪農家 :11 名 ) 天塩町放牧の会例会 酪農の風景 天塩町放牧の会例会 -60-

(4) 酪農経営から和牛経営への転換労働 問題や高齢化等により酪農をリタイヤしようと考えているが 離農という道を選択するのではなく これまで培った育成技術や施設等を活用して和牛生産に取り組むことが可能 労働 問題や高齢化により搾乳作業がきつくなってきた酪農家が和牛経営に転換 ( 草地基盤 機械 施設 育成技術を活かして ) 法 = 酪農を中止する前にホルスタインに和牛の受精卵を移植し 徐々に和牛経営に転換 ホルスタインと F1 の放牧風景 (5) 地元の関係機関 近隣市町村等との連携天塩町和牛振興会などの関係機関 さらに 留萌和牛振興協議会や留萌酪農 畜産プロジェクト会議の取り組みに参加し 情報交換や新技術の導 により生産拡 に結び付ける 天塩町和牛振興会などの地元関係機関との連携 近隣市町村等との連携 留萌和牛振興協議会との連携 留萌酪農 畜産プロジェクト会議との連携 天塩町和牛研修会 農業改良普及センターの現地指導 -61-

(6)6 次産業化地域創生の取り組みと連携し 天塩町で生産された牛乳や牛肉等を活用した 6 次産業化の取り組みにより 地元商店の活性化や観光資源の拡 に結びつける 肥育に仕向けた牛肉を町 に還元するとともに イベントや学校給 用等に活用 町内で生産された牛乳 乳製品及び牛肉等を地元の飲 店や旅館等で提供 を通じて 天塩町の PR と消費者とのつながりを深める チーズ工房 べこちち FACTORY -62-