JASMiRT-WS 2018

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目次 序 重要な用語 Ⅰ. 基本的な考え方 1 位置づけと対象 2 地震ハザードの特徴を踏まえた原子力発電所の安全性 3 地震安全における基本的考え方 3.1 安全の捉え方と対処 3.2 システムとしての安全確保 3.3 地震安全のための深層防護 3.4 地震安全を実現するための枠組み Ⅱ. 実践に

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Transcription:

JASMiRT-WS 2018 2018.8.23 安全性向上に向けて 構造工学分野への期待 横浜国立大学名誉教授白鳥正樹 1

概要 原子力プラントの構造健全性設計 / 評価は 荷重に対する建屋 機器の応答 ( 加速度 変形 応力等 ) がそれぞれに対して定められた許容値を超えないという基準で行われる 地震荷重を考えた場合 応答の評価および許容値の決定プロセスに大きな不確かさが内在しており 結果として大きな安全裕度をとらざるを得ない この安全裕度を定量的に把握することは難しく また機器ごとに裕度の大きさが異なっている このことが構造物システムとしての合理的な健全性設計 / 評価を困難にしている 現在 この不確かさを定量的に評価する試みが行われているが 本講ではこのような試みに対する私見と期待を述べる 2

原子力分野の解析の特色 設計 / 評価 : 従来の決定論的規格基準に則った解析 保守性が大きい => V&Vも保守性が担保されていることを確認できれば良い 基準耐力を超えた場合の安全裕度が未定 建屋 機器 配管等によって裕度が異なる ストレステストを行って終局強度に対する知識を集積することが必要 PRA: 主として SA の予測に適用されるものと理解する SAという発生頻度が極めて少ない事象の予測が必要となる 終局強度の正しい評価 ( ばらつきの評価を含む ) が求められる PRAの予測精度について 注意深い検証が必要 3

耐震安全性評価のための地震 PSA の活用 (3) フラジリティ評価の概要と耐震構造設計への活用日本原子力学会 2007 秋の大会 ( 山口彰 ) 4

第 46 回原子力安全委員会資料第 3-2 号より抜粋平成 22 年 7 月 12 日 5

設計値と現実的応答 現実的耐力 OP DR AL FP OP: Operating Point DR: Design Response AL: Allowable Limit FP: Failure Point Design: DR<AL SA: FP<OP 損傷評価の指標 6

耐震安全性評価のための地震 PSA の活用 (3) フラジリティ評価の概要と耐震構造設計への活用日本原子力学会 2007 秋の大会 ( 大阪大学山口彰 ) 7

ストレステスト ( 原子力安全保安院ホームページより ) 8

配管系終局強度 ( 既往研究 ) 平成 15 年配管系終局強度試験 : 配管バウンダリーが設計レベルの約 12 倍の耐震裕度を有している 平成 18 年に実施した電共研における耐震試験 : 配管サポート部及び定着部を含めて模擬した配管サポート系の実規模加振試験を実施配管及びサポートについて 設計で許容されるレベルに対して少なくとも9 倍の耐震裕度がある 9

保守性は大きければ大きいほど良いのか? 耐震バックチェックの折には建屋および機器の構造強度ばかりに関心が集まり 津波の問題は後回しにされた これは評価の段階において 規格基準を満たすべく DR( 設計応答 ) が AL( 許容耐力 ) を超えるか否かに議論の大半が費やされたためである 保守性が大きすぎると 真に検討すべき課題の優先順位が見えなくなる 東京電力福島第一原子力発電所事故 : 国会事故調報告書 2.1 耐震設計は機能したのか 当委員会は 事故の直接的原因について 安全上重要な機器の地震による損傷はないとは確定的には言えない 特に 1 号機においては小規模の LOCA が起きた可能性を否定できない との結論に達した しかし未解明な部分が残っており これについて引き続き第三者による検証が行われることを期待する 10

日本機械学会 配管系の耐震安全性評価に対する弾塑性評価導入のタスク活動 中村いずみ 大谷章仁 森下正樹 渡壁智祥 渋谷忠弘 白鳥正樹 背景と目的 これまでに実施されてきた地震荷重下における配管系の終局挙動に関する実験研究や 実地震における被災状況などから 機器 配管系では現行の耐震基準における許容応力と実際の構造物の破壊には大きな差異があることが認識されている 配管系の耐震設計は弾性設計を基本としているが 実際の配管系では破損に至るまでに大きな弾塑性応答を示し その効果を現行の耐震設計では考慮していないことが一因と考えられる 安全側の ( 保守的な ) 評価ではあるが 配管系の有する実力を適切に評価していないため サポート等の ( 過剰な ) 増大 それに伴う検査の困難化などの弊害も生じている 12

事例規格で整備する内容 1. ひずみに基づく評価基準体系 従来の評価は応力に基づく評価基準体系 実験等で確認されている疲労損傷の評価 2. 弾塑性の効果を簡易的に取り入れた応答スペクトル解析手法 ( 簡易弾塑性解析手法 ) による耐震性評価の手順 3. FEM 解析を用いた非線形詳細解析 ( 詳細弾塑性解析手法 ) による耐震性評価の手順 合理的かつ実務で使いやすい を目指して開発 13

Benchmark Test (1) ベンド管の静的繰り返し曲げ (2) 配管系の振動試験 14

Nakamura,Izumi et al., Proceedings of the ASME 2016 Pressure Vessels and Piping Conference, PVP2016 July 17-21, 2016, Vancouver, British Columbia, Canada 15

NUPEC NUPEC 減肉管防災科研 NAP 研究 エルボ ( 健全管 ) エルボ ( 減肉管 ) ティ ( 健全管 ) ティ ( 減肉管 ) レデューサー ( 健全管 ) レデューサー ( 減肉管 ) 100 試験結果平均線試験結果平均線 -3σ 10 ひずみ振幅 (%) 1 E29% E13.3% T13.3% N17.9% E20.3% R38% E21% E28.3% E14.4% E5.2% T10.6% T28.8% E 高温 (300 ) E: エルボ,T: ティ,R: レデューサー設計建設規格 ( 炭素鋼 ) 0.1 10 100 1000 10000 繰り返し数 N ( 回 ) ( 文献 ) 平成 11 年度原子力発電施設耐震信頼性実証試験に関する報告書その 3 配管系終局強度耐震実証試験, 平成 12 年 3 月, 原子力安全基盤機構 ほか 3 編 16

OP DR AL FP 設計値と現実的応答 現実的耐力 S S の増大 弾塑性評価導入 OP: Operating Point DR: Design Response AL: Allowable Limit FP: Failure Point Design: DR<AL SA: FP<OP 17

原子力分野の解析の特色 設計 / 評価 : 従来の決定論的規格基準に則った解析 保守性が大きい => V&Vも保守性が担保されていることを確認できれば良い 基準耐力を超えた場合の安全裕度が未定 建屋 機器 配管等によって裕度が異なる ストレステストを行って終局強度に対する知識を集積することが必要 PRA: 主として SA の予測に適用されるものと理解する SAという発生頻度が極めて少ない事象の予測が必要となる 終局強度の正しい評価 ( ばらつきの評価を含む ) が求められる PRAの予測精度について 注意深い検証が必要 18

軽水炉に係る基礎基盤研究の課題と強化平成 24 年 8 月 31 日一般社団法人日本原子力学会 軽水炉に係る基礎基盤研究の検討 特別専門委員会 4. 軽水炉に係る基礎基盤研究の現状と課題 4.2.3 構造 耐震 大地震に対する原子力施設の耐震余裕を詳細に評価できる耐震設計技術の研究開発 原子力施設の耐震余裕の定量的な評価には 計算科学を活用した損傷評価手法の確立の他 観測データや解析結果に含まれる不確かさ評価技術の研究開発が必要である (1) 計算科学を活用した損傷評価手法を確立するための計算科学技術の進展を支える人的資源の確保 (2) 外的事象リスク評価の確立のための分野横断的かつ総合的な取組体制の構築 ( 例. 公的研究機関や大学を含め 事業者 メーカーと連携して実施する体制の構築 ハザード評価については原子力分野以外の専門家との連携体制の確立 ) (3) 産業界との連携等を活用した物づくりの経験を有する研究者の確保 19

原子力学会のリスク評価に関する規格基準等 日本原子力学会標準 シミュレーションの信頼性確保に関するガイドライン :2015 (AESJ-SC-A008:2015) 日本原子力学会標準 外部ハザードに対するリスク評価方法の選定に関する実施基準 :2014 (AESJ-SC-RK008:2014) 日本原子力学会標準 原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準 :2015 (AESJ-SC- P006:2015) 日本原子力学会標準 原子力発電所の確率論的リスク評価のパラメータ推定に関する実施基準 :2015 (AESJ-SC-RK001: 2015) 柏崎苅羽原子力発電所 6 号及び 7 号炉 確率論的リスク評価について ( 外部事象地震 PRA) 平成 26 年 9 月 東京電力株式会社 20

ガイドラインへの期待 (1) 1.1 制定の趣旨 原子炉にかかわるシミュレーションの分野では この事故の教訓に基づき シミュレーションが取り扱うべき対象の範囲及び事象想定が大きく拡大することとなった また 自然現象の複雑さと我々が持つ知見の限界を認識し シミュレーション技術の検証により これを適切に運用すること 同事故に対するシミュレーションの不確かさが大きなことからシミュレーション技術の向上へ新たな知見を収集する取組の必要性が提言されている さらに 原子力関連施設で生じ得る低確率 高影響事象に対するリスクの予測評価の信頼性および網羅性を着実に向上させるとともに 最新知見に照らして継続的に改善することの必要性が再認識された このような諸課題を着実に解決していくためには モデリング及び予測における不確かさの定量化およびその低減に資する客観的な方法論の枠組みを構築し活用することが重要である 21

ガイドラインへの期待 (2) 1.1 制定の趣旨 ( つづき ) このとき シミュレーション業務に対する品質保証システムが既に構築され活用されている状況が前提とできる場合には 原子力分野での予測評価を含むシミュレーションの信頼性確保のための方法論は 物理現象及びこれが種々複合した事象を必要にして十分に模擬でき 最新の技術的知見を反映できることを示すための方法論に帰着される このようなシミュレーションの信頼性確保のためには そのモデリングの検証及び妥当性確認の的確な実施を可能とし 併せてその信頼性を継続的に改善するための仕組みが重要であり その下でシミュレーションの予測性能を担保する必要がある このためには モデルの不確かさの評価を含めた V&V( 以下 モデル V&V という ) のための方法論の確立が喫緊の課題であることなどが指摘されている 22

東京電力福島第一原子力発電所事故 : 2 号機格納容器圧力変化 14 日 22 時 50 分には 0.540MPa[abs] となって ラプチャーディスク作動圧を超えた ( 中略 ) しかしながら ラプチャーディスク作動圧を超えた後も ドライウェル圧力は上昇傾向を続け 23 時 35 分には 0.740MPa[abs] に達した ( 政府事故調報告 ) 15 日 6 時 14 分頃 大きな衝撃音と振動が発生した ほぼ同時期に圧力抑制室の圧力がダウンスケールを示し 発電所対策本部に 0( ゼロ )kpa[abs] と伝えられた 圧力抑制室が損傷した可能性を考え プラントの監視 応急復旧作業に必要な要員を除き 一時的に福島第二原子力発電所へ移動することとした ( 東電事故調報告 ) 23

耐震安全性評価のための地震 PSA の活用 (3) フラジリティ評価の概要と耐震構造設計への活用日本原子力学会 2007 秋の大会 ( 山口彰 ) 24

スケーリング シミュレーション V&V 実験室での実験 ( 小型 ) 予測可能? Real World の挙動 ( 大型 ) 25

The Black Swan How to tackle with uncertainties Artifacts are essentially made by applying the scientific knowledge, the principles of which are extracted from the real world. It means that the complexity of the real world, such as the natural phenomena and/or the behaviors of human society, are mostly neglected in the mathematical models that express the scientific principle. The complexity is usually regarded uncertainties. If we neglect the uncertainties, it might cause an instability, called the black swan, such as the Lehman shock and the NPP accident. The control of the uncertainties is very important. 26

まとめー原子力分野の解析の特色 設計 / 評価 : 従来の決定論的規格基準に則った解析 保守性が大きい => V&Vも保守性が担保されていることを確認できれば良い 基準耐力を超えた場合の安全裕度が未定 建屋 機器 配管等によって裕度が異なる ストレステストを行って終局強度に対する知識を集積することが必要 PRA: 主として SA の予測に適用されるものと理解する SAという発生頻度が極めて少ない事象の予測が必要となる 終局強度の正しい評価 ( ばらつきの評価を含む ) が求められる PRAの予測精度について 注意深い検証が必要 27

ご清聴ありがとうございました 分類すれば 複雑さは必ず低下する 黒い白鳥が生まれるのは必ずそういうところだ 凝り固まったプラトン性が黒い白鳥を呼ぶのである どんな形にせよ 私たちのまわりの世界を単純化すれば大変なことになる可能性が生まれる 不確実性の源をいくつか無視することになるからだ ブラック スワン - 不確実性とリスクの本質 - Nassim Nicholas Taleb 著 望月衛訳 ダイアモンド社 2009. 28