笹子トンネル天井板落下事故 2012 年 12 月 2 日中央自動車道上り線笹子トンネル天井板のコンクリート板が約 130m にわたって崩落死亡者 9 名負傷者 2 名 Wikipedia より 原因 : 複合的な要因ずさんな点検天井板の設計の未熟さ施工不良 老朽化したインフラ施設に対する維持管理の

Similar documents
図 維持管理の流れと診断の位置付け 1) 22 22

Microsoft PowerPoint - 01_内田 先生.pptx

§1 業務概要

スライド 1

十河茂幸 ( そごうしげゆき ) 略歴 1974 年 ~ 大林組技術研究所所属 2011 年 ~ 広島工業大学工学部教授 2017 年 ~ 近未来コンクリート研究会代表

国土技術政策総合研究所研究資料

- 目次 - 1. 長寿命化修繕計画の背景と目的 相馬市の概要 計画

Microsoft PowerPoint - 02 関(HP用).pptx

<4D F736F F F696E74202D E838A815B83678D5C91A295A882CC90DD8C7682CC8AEE967B F A2E707074>

橋梁長寿命化修繕計画 ( 案 ) 平成 25 年 3 月 那覇市役所 建設管理部道路管理課

高浜町 橋梁長寿命化修繕計画 ( 第 2 期 ) 高浜町建設整備課

< CF68A4A94C5288D828DAA91F292AC825189F196DA816A2E786477>

< F2D8F C7689E F97702E6A7464>

<4E6F2E C8E B8D DCF82DD5D2E6169>

<4D F736F F D2091E682508FCD816091E682528FCD95F18D908F912E444F43>

PowerPoint プレゼンテーション

橋 梁 長 寿 命 化 修 繕 計 画

平成23年度

<4D F736F F F696E74202D20355F8CC389EA8FE390C88CA48B8688F CD90EC A837E B81698CC389EA816A5F E

様式 1-1 池田町橋梁長寿命化修繕計画 平成 25 年 4 月 池田町役場建設水道課

Microsoft PowerPoint - 03_HP掲載資料(詳細).pptx

社会資本の維持管理 更新 社会資本は日々の生活を支えるとともに 産業 経済活動の基盤であり 社会資本がその役割を十分果たすことができるよう 適切な維持管理 更新が必要 道路分野 河川分野 港湾分野 橋梁点検堤防巡視床版の打ち替え トンネル補修排水機場の補修水中溶接による電気防食の施工 1

アルカリ骨材反応の概要

平成 29 年度事業報告 ( 平成 29 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで ) 平成 29 年度事業の概要 当会計年度における県内の経済は 公共投資では大型案件の増加等により 景気は回復基調にありましたが 県が行う土木事業については 減少傾向にありました 平成 29 年度の

大学院維持管理工学特論 ローマンコンクリートと分析技術 芝浦工業大学伊代田岳史

<8BB497C092B78EF596BD89BB8F C7689E681798CF6955C A5F F9096BC>

05設計編-標準_目次.indd

<4D F736F F F696E74202D FC92F9817A D815B838B8E9E82CC88D98FED94AD8CA981698BB497C095D2816A2E707074>


コンクリート工学年次論文集 Vol.28

資料 1 3 小規模附属物点検要領 ( 案 ) の制定について Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

国土技術政策総合研究所研究資料

<4D F736F F F696E74202D B182EA82A982E782CC95DC D836C A195E28DB2816A2E >

別紙 3 点検表記録様式 様式 1( その1) 橋梁名 所在地 管理者名等 橋梁名 路線名 所在地 起点側 緯度 経度 学園橋 ( フリガナ ) ガクエンバシ 町道上中下中線 鹿児島県熊毛郡南種子町中之下 管理者名 点検実施年月日 路下条件 代替路の有無 自専道

市民皆様が安心して利用していただくために 佐伯市橋梁長寿命化修繕計画 佐伯市建設課 2018 年 12 月

複合構造レポート 09 FRP 部材の接合および鋼と FRP の接着接合に関する先端技術 目次 第 1 部 FRP 部材接合の設計思想と強度評価 第 1 章 FRP 構造物の接合部 FRP 材料 FRP 構造物における各種接合方法の分類と典型的な部位 接合方法

08_05_特集.indd

<4D F736F F F696E74202D208D E9197BF28947A957A89C2208E9197BF C90DD937996D82091BD93638E81>

Microsoft Word - ①背景説明の概要(丸山先生)

<322E318AEE91628E9197BF2E786C73>

様式及び記入例 (3) 点検結果一覧表 ( その 1) 半田市橋梁点検 補修設計業務 橋梁諸元 定期点検結果 整理番号 橋梁 ID 橋梁名 橋梁形式 径間 長根橋 ( 上流側 ) PC 単純プレテンホロー桁橋 1 橋種 PC 橋 有効 橋長 幅員 橋面積 (m) (m) (m2) 供

橋りょうの予防保全型管理について

イ使用年数基準で更新する施設 ( ア ) 使用年数基準の設定使用年数基準で更新する施設については 将来の更新需要を把握するためにも 更新するまでの使用年数を定める必要がありますが 現時点では 施設の寿命に関する技術的な知見がないことから 独自に設定する必要があります このため あらかじめ施設を 耐久

技術でつなぐ 100年橋梁 Inherited a bridge to after 100 years しっかりとした管理で後世に残す 100年橋梁を目指して 日本橋梁建設協会は平成26年に創立50周年を 迎えた この50年間に協会会員によって約23,000 橋の鋼橋を建設してきた わが国の鋼橋建設

<4D F736F F F696E74202D B78EF596BD89BB82CC8EE888F882AB C8E86816A F4390B3205B8CDD8AB B83685D>

資料 7-1 特殊車両の通行に関する指導取締要領の一部改正について 国土交通省関東地方整備局道路部交通対策課 1 (1) 特殊車両通行許可制度 2

目 次 1. 長寿命化修繕計画の背景と目的 背景 目的 2 1) 持続可能な維持管理体制の確立 2 2) 対症療法的な修繕から 予防保全的な修繕への転換 2 2. 長寿命化修繕計画の対象 ウイング21 大型ボックスカルバート 岩岳トンネル

勝浦市橋梁長寿命化修繕計画 平成 25 年 3 月 勝浦市都市建設課

KEN0919_特集 花田-四.indd

地方公共団体の現状 ( 技術者 点検方法 ) 町の約 3 割 村の約 6 割で橋梁保全業務に携わっている土木技術者が存在しない 地方公共団体の橋梁点検要領では 遠望目視による点検も多く ( 約 8 割 ) 点検の質に課題あり 市区町村における橋梁保全業務に携わる土木技術者数 分類市 3 8% 92%

<4D F736F F F696E74202D F4C434392E18CB882F096DA934982C682B582BD8BB48B AAA97A782C482C982A882AF82E982D082D18A8482EA90A78CE490DD8C CC92F188C482C691CE8DF48CF889CA82CC8C9F8FD85F E7

京都大学博士 ( 工学 ) 氏名宮口克一 論文題目 塩素固定化材を用いた断面修復材と犠牲陽極材を併用した断面修復工法の鉄筋防食性能に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 本論文は, 塩害を受けたコンクリート構造物の対策として一般的な対策のひとつである, 断面修復工法を検討の対象とし, その耐久性をより

1_平成30年度_第1回コンクリート委員会・第3回コンクリート常任委員会_議事録案(最終)

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F D F30318BB497C092B78EF596BD89BB8F C7689E CF8D58292E646F63>

イマー ) とコテ塗用 ( 断面増厚 ) の仕様の異なる 2 種類のポリマーセメントモルタルを交互に施工することによって, 既設床版と補強部材の一体化を強固に図っている さらに施工を下面から行うため, 交通に障害を与えず, 床版振動下にあっても既設床版と増厚部が一体化するものである 位計を設置してた

Microsoft Word - 01_建議(本文)(0414修正)

<4D F736F F F696E74202D2092B7956C8E BB497C092B78EF596BD89BB8F C7689E682DC82C682DF81698DC58F49816A2E >

本日の主な内容 1. はじめに 2. 塩害 中性化補修の基本的な考え方 塩害の劣化メカニズム 塩害の補修工法選定潜伏期 進展期 加速期 劣化期 3.ASR 補修の基本的な考え方 ASR の劣化メカニズム ASR の補修工法選定潜伏期 進展期 加速期 劣化期 4. 劣化機構に応じた補修工法の選定の考え

長崎大学大学院工学研究科インフラ長寿命化センター 平成30年度 活動報告書

8 章橋梁補修工 8.1 橋梁地覆補修工 ( 撤去 復旧 ) 8.2 支承取替工 8.3 沓座拡幅工 8.4 桁連結工 8.5 現場溶接鋼桁補強工 8.6 ひび割れ補修工 ( 充てん工法 ) 8.7 ひび割れ補修工 ( 低圧注入工法 ) 8.8 断面修復工 ( 左官工法 ) 8.9 表面被覆工 (

第2章 長寿命化改修各論 ~耐久性向上編~(1)

<4D F736F F F696E74202D2091B98F9D8E9697E18F FAC8B7B8E528F4390B3816A205B8CDD8AB B83685D>

エポキシ樹脂塗装鉄筋・ステンレス鉄筋

<4D F736F F D E77906A817A DB289EA8CA78CA7974C8E7B90DD92B78EF596BD89BB8E77906A AAE90AC2E646F6378>

Microsoft PowerPoint 塩害シンポジウム_配布資料.pptx

ワンポイント講習 農業水利施設の機能診断及び補修について 東海農政局土地改良技術事務所 槻瀬誠

Microsoft PowerPoint - 予防保全の取組みv3.pptx

5.4章.xdw

国土技術政策総合研究所資料

国土技術政策総合研究所 研究資料

< F2D32362D C8E86816A E D815B>

講習会を企画する際に留意すべき点を挙げる 1) 定期点検要領 ( 案 ) への理解を深めること 2) メンテナンスサイクルという概念への理解 メンテナンスサイクルを定着させること 3) 受講者となる地方自治体職員の技術レベルを把握すること 4) 地方自治体職員が受講したい研修を自分で選ぶことが出来る

平成 26 年度経済産業省委託事業 高圧ガス取扱施設における リスクアセスメント手法及び保安教育プログラム調査研究 講師データベースの構築 平成 27 年 3 月 高圧ガス保安協会

国土技術政策総合研究所 研究資料

Microsoft Word _tomei_shuchu_WEB

コンクリート構造物のひび割れ と劣化について

コンクリート工学年次論文集 Vol.25

既存共同住宅の躯体の性能及び健全性の評価に係る手法及び基準の検討

<4D F736F F F696E74202D F81798E9197BF A93B CC98568B8089BB91CE8DF482CC967B8A698EC08E7B82C982C282A282C4>

<4D F736F F F696E74202D208E9197BF CE38F4390B3816A2E B8CDD8AB B83685D>

<4D F736F F D E C982A882AF82E98E E968D8082D682CC91CE899E82C982C282A282C4>

はじめに 東京都は 首都東京を水害から守るため 昭和 30 年代より 1 時間 50 ミリの降雨や伊勢湾台風級の高潮に対処する河川施設の整備を進めてきました その中でも 河道拡幅による河川整備が早期に実現困難な区間では 地下調節池や分水路の整備を進め これまでに9 地下調節池と 8 分水路が完成して

Microsoft PowerPoint - 講演資料.ppt

4 健全度の把握及び日常的な維持管理に関する基本的な方針 健全度の把握の基本的な方針橋梁の長寿命化を図るため 定期点検要領に基づき5 年に1 回の定期点検を実施していきます また 定期点検の結果に基づく診断結果 ( 健全度 ) を長寿命化修繕計画に反映させていきます 日常的な維持管理に関する基本的な

<4D F736F F F696E74202D F8E9197BF335F935F8C9F8BC696B182C98AD682B782E996AF8AD48E918A F8C9F CC82BD82DF82CC90EA96E58B5A8F708ED282CC F8C9F91CC90A C98AD682B782E

AM部会用資料(土木・建築構造物)

平成 26 年度公共事業事後評価調書 1. 事業説明シート (1) ( 区分 ) 国補 県単 事業名道路事業 [ 国道橋りょう改築事業 ( 国補 )] 事業箇所南巨摩郡身延町波高島 ~ 下山地区名国道 300 号 ( 波高島バイパス ) 事業主体山梨県 (1) 事業着手年度 H12 年度 (2) 事

<4D F736F F D F88DB8E9D8AC7979D82C98AD682B782E9918A926B8E9697E1>

インフラをめぐる状況 少子高齢化 人口減少 人材難 低経済成長 地球温暖化 異常気象と災害の巨大化 社会基盤の老朽化 長寿命化 維持管理 補修 補強 更新 廃棄 東日本大震災と南海トラフ地震 想定外 減災 国土強靭化 2

焼津(名古屋方面)IC津工事箇所焼IC参考資料 1. 工事箇所東名高速道路静岡 IC~ 焼津 IC 間用宗高架橋 ( 下り線 ) 凡例 高速自動車国道 一般有料道路 建設中区間 国交省建設区間 ( 上り線 : 名古屋 東京方面下り線 : 東京 名古屋方面 ) 至至静岡(東京方面)用宗高架橋

各取組は PDCA サイクルを回し効果を評価し 目標が達成できない見通しとなったときは さらなる総量の縮減や取組 体制の強化等 基本方針等を見直します [ 図表 40] [ 図表 40:PDCA サイクル ] 計画修正 Action 計画修正 Action Plan Check 計画等修正 Acti

<4D F736F F D CF6955C A97A4914F8D E738BB497C092B78EF596BD89BB8F C7689E D96A2969E816A>

平成 26 年度建設技術フォーラム発表資料 道路パトロール支援サービス ~ 社会インフラの維持管理業務へのスマートデバイス活用 ~ 平成 26 年 11 月富士通株式会社 Copyright 2014 FUJITSU LIMITED

本日の主な内容 1. はじめに 2. 塩害 中性化補修の基本的な考え方 塩害 中性化の劣化メカニズム 塩害 中性化の補修工法選定潜伏期 進展期 加速期 劣化期 健康寿命を延ばすための着目点 3.ASR 補修の基本的な考え方 ASR の劣化メカニズム ASR の補修工法選定進展期 加速期 劣化期 健康

相馬市 橋梁長寿命化修繕計画 平成 28 年 12 月 福島県 相馬市建設部土木課

<4D F736F F F696E74202D20312D335F93B998488D5C91A295A88AC7979D959489EF93798CA4835A837E B90E096BE8E9197BF2E B8CDD8AB

<4D F736F F D B985F95B6817A5F F82E482AB82DD82E782A A82B08D9E82DD95E28F4395FB964082F A282BD837C A815B838B91CE8DF482C982C282A282C42E646F63>

<4D F736F F F696E74202D20819C817593B998488D5C91A295A882CC98568B8089BB82C98AD682B782E98EE DD E >

untitled

Transcription:

2016 年 2 月 29 日道路の老朽化対策に関する講演会 構造物の維持管理における課題と展望 ( 本格的な維持管理の時代を迎えて ) 山梨大学工学部土木環境工学科地域防災 マネジメント研究センター斉藤成彦

笹子トンネル天井板落下事故 2012 年 12 月 2 日中央自動車道上り線笹子トンネル天井板のコンクリート板が約 130m にわたって崩落死亡者 9 名負傷者 2 名 Wikipedia より 原因 : 複合的な要因ずさんな点検天井板の設計の未熟さ施工不良 老朽化したインフラ施設に対する維持管理の重要性が改めて浮き彫りに 2013 年道路法改正 道路構造物の維持管理が本格化 山梨県警より 1

構造物の維持管理とは? 現状を保存したい 既設構造物の維持管理は未知なる領域 2

構造物の維持管理とは? 供用して大丈夫? いつまで使える? どんな対策が必要? 構造物の現在の状態 ( 現有性能 ) とこれからの状態 ( 性能予測 ) 問いかけに対して適切に答えることができるか? 3

構造物の維持管理とは? 対策の実施 対策で何が変わったの? どの性能がどのように治ったのか? 4

道路橋の損傷事例 鋼桁の腐食 外観変状では最も悪い評価 国交省 HP より 床版の水平ひび割れ 外観変状では把握が困難 実は耐荷力は十分にあるなぜ補修が必要なのか? 5

道路橋の損傷事例 コンクリートのはく落 第三者への影響 鋼材の破断 耐荷力の低下 ( 独 ) 日本高速道路保有 債務返済機構 HP より 変状によって構造物の性能への影響が異なる 6

道路橋の損傷事例 PC ケーブルの損傷を確認 はく落部分の補修を実施 損傷が局所的であることを確認 現況の評価 鋼材の全数 全位置の調査は困難 抜本的な対策通行止め 車線規制が困難 ( もちろん架け替えも ) モニタリングにより損傷の進行を検知 維持管理の方法は正しいのか? 7

現状の維持管理における課題 現状の維持管理の課題材料の劣化現象に着目 ( 構造物の性能は?) 点検主体で性能評価があいまい ( 点検 対策 ) 対策で性能がどのように回復しているのか不明予防保全なのか問題の先送りなのか? 土木学会 示方書の目標点検に過度に依存した維持管理法からの脱却構造性能評価の具体的方法の提示性能評価に基づく効果的な対策の実施構造性能に立脚した合理的な維持管理の実現へ 2014 年版土木学会 複合構造標準示方書 [ 維持管理編 ] 8

構造物の維持管理サイクル 計画 定期点検 : 定期健康診断 30 年以上経過した構造物 : より詳細な健康診断 ( 人間ドック ) 設計耐用期間が明確でない ( 構造物をいつまで使うの?) サイクルを回すことは大事 点検 記録 評価 対策 構造物の保守が一番大事 各行為の実質化 9

構造物の維持管理サイクル 各維持管理行為の課題と展望 点検 記録 評価 対策 構造性能に基づいた点検とは? 10

点検 構造性能に基づいた点検とは? たとえば鉄筋コンクリート構造物のひび割れ要因 交通荷重コンクリートの収縮 ( 乾燥, 温度 ) アルカリシリカ反応 ( 骨材の膨張 ) 塩害 ( 鋼材腐食によるひび割れ ) 凍害など ひび割れは全て悪い? 鉄筋コンクリート構造物はひび割れの発生が前提 設計で想定しているひび割れ or 設計で想定していないひび割れ 11

点検 構造性能に基づいた点検とは? 現在の主目的 : 構造物の異常を検知問題があれば早めに対処 老朽化が進むと構造物の性能 ( 構造性能 ) を把握したい あるべき姿 : 構造物の性能を評価するための情報を取得 まず性能評価の方法が決まる点検で性能評価に必要な情報を取得する 評価の対象となる性能 ( 走行性? 第三者影響? 耐荷力?) 評価の指標 ( たわみ? ひび割れ? 応力 ひずみ?) 必要な情報 ( 環境 荷重条件? 材料の状態?) 調査方法 項目 ( 目視? コア採取? 非破壊試験?) 12

構造物の維持管理サイクル 各維持管理行為の課題と展望 点検 記録 評価 対策 構造性能に基づいた評価とは? 13

評価 構造性能に基づいた評価とは? 維持管理の目的 : 構造物の要求性能を確保すること 材料の劣化 コンクリートのひび割れ鋼材の腐食など 結びついていない 構造物の性能 走行性第三者影響耐荷力など 現状 診断 点検評価対策 対症療法的 あるべき姿 点検評価対策 構造性能に基づいた維持管理 14

評価 地域における人材育成 長崎大学道守養成ユニット 自治体との連携 地域再生の観点 道守補助員コース ( 講習, 現場実習 ) 道守, 特定道守, 道守補コース ( 実験, 研究開発 ) ( 対象 ) 地域住民自治体 企業の職員や OB (2014 年実績 ) 道守 :12 名特定道守 :36 名道守補 :154 名道守補助員 :286 名 点検と評価真に必要な人材とは? 長崎大学 HP より 15

評価 地域における人材育成 点検 構造物の異常を察知評価に必要な情報を取得 訓練の実施マニュアルの整備 必要とする技術レベルが異なる 評価 構造物の保有する性能を判断構造物の将来を予測適切な対策の判断 設計 施工に精通高度な知識と経験 評価を実施可能な技術者の育成は容易でない 16

評価 維持管理に関する人材育成 看護師による応急処置 風邪やすり傷の治療 点検依存 構造物の老朽化が進行老朽化した構造物の増加 医師による診断 構造性能評価の実施 患者やその病状に応じた適切な処置 高度な知識と豊富な経験 17

評価 維持管理に関する人材育成 町医者で触診による定期健康診断 トリアージ的 グレーディング 町医者で判断できない症状 総合病院 ( 専門医 ) の整備 (MRI,CT スキャンに基づく診断 ) 定量的評価 技術革新の必要性 設計 ( 人間と違って設計図がある ) 施工 ( どのように造られたか記録がある ) 18

評価 性能評価の手法 グレーディング 点検や評価にかかる労力が比較的小さい 外観の変状のみから性能を評価するのは容易ではない かなり安全側の判断が必要経験の蓄積が必要 定量的評価手法非線形数値解析 ( コンピュータシミュレーション ) 容易でない評価には高度な技術が必要 力学的根拠に基づく客観的手法高度な技術的判断 19

構造物の維持管理サイクル 各維持管理行為の課題と展望 点検 記録 評価 対策 適切な対策を実施するには? 20

対策 現状 適切な対策を実施するには? 診断点検評価対策 対症療法的 見かけの損傷を補修 あるべき姿 点検評価対策 構造性能に基づいた維持管理 性能の回復を図る ひび割れの補修 樹脂注入 ひび割れの種類によって効果が変わる 21

対策 適切な対策を実施するには? 構造性能評価に基づく対策 どの性能 ( 対象となる性能を明確に ) どの程度 ( 補修 補強設計と性能照査 ) どのくらいの期間 ( 対策の設計耐用年数 ) ライフサイクルコストを考慮して合理的に 構造物の設計耐用期間を明確に意識 構造物の延命化 構造物の更新 構造性能評価に基づく維持管理 通行止め, 車線規制 地域住民や使用者の理解を得るために根拠を持って説明 22

構造物の維持管理サイクル 各維持管理行為の課題と展望 点検 記録 評価 対策 意味のある情報とは? 23

記録 意味のある情報とは? 長寿命化計画 5 年に一度の定期点検 2m 以上の橋梁で全国 70 万橋山梨県内だけでも約 8000 橋 膨大なデータが蓄積されるが活用できない 利用可能なデータに ( 誰がいつどんな情報を必要とするか ) 意味のあるデータを記録 ( 構造性能評価のためのデータ ) 公開による情報の共有 ( 経験値の共有 ) 機能的なデータベースの構築 利用者が必要な情報にアクセスしやすいように情報の一般化や知識化が必要 24

笹子トンネル天井板落下事故 2015 年 12 月 22 日賠償命じる判決 天井板を固定するボルトが劣化したことなどが 崩落の原因と認定 建設から 35 年が経過しており 打音や触診といった適切な点検をしなければ 不具合を見過ごし 事故が起きると予見できた と指摘した さらに こうした点検をしていれば事故は防げたと述べ 中日本高速と子会社に道路管理上の過失があったと結論づけた ( 朝日新聞 ) 点検の問題だけ? 1977 年 12 月供用開始 2012 年 12 月事故 35 年間 なぜ適切な時期に更新できなかったのか? 25

まとめ 設計耐用期間の明確化 いつまで使うのか? 使えるようにするのか? 点検と性能評価の関係 何のための点検か? この橋は落ちるのか落ちないのか? 対策の課題 何が直ったのか? いつまで効果があるのか? 使用者の理解は? 技術者 予算不足への対応 どんな能力を持った技術者と何のための予算が必要なのか? 維持管理システムの高度化 26

おわり