2018/4/10 大阪電気通信大学 教科書 第1章 第2章 生体を構成する物質 4/10/18 今日の講義の内容 I. 生物とはなにか II. 細胞を構成する物質はなにか III. 細胞を構成する元素はなにか IV. 生命はどのように誕生したと考えられている か 生物とは何か 1.脂質二重層(膜) で囲まれた細胞を単位とする 脂質二重層 リン脂質分子を主とする膜 細胞膜の表面は親水性をもち 内部は脂肪酸に満ちて細胞の 内外を遮断する障壁の役目をもつ 疎水性部分 内側 親水性部分 外側 単細胞生物 一つの細胞から体ができている生物 例:ゾウリムシ ミドリムシなど 多細胞生物 複数の細胞で体が構成されている生物 例 マウス シロイヌナズナなど 2.ATPを合成し ATPのエネルギーを利用して生命活動を行う ATP(アデノシン三リン酸)とは 有機物(でんぷんなど)を分解して生じたエネルギーをいろ いろな生命活動に使いたい そのままでは使いにくいので 共通に使えるATPという化合物中に蓄えて使おう つまり ATP=エネルギー通貨 ちなみに 単細胞生物だからといって機能 が劣っているわけではない 1
ATP からとうやってエネルギーをつかうの? 加水分解 アデノシン三リン酸 従属栄養生物生活に必要な炭素化合物を他の動植物がつくった有機物に依存する栄養様式をとる生物 動物, 菌類, 多くの細菌などの栄養形式がこれにあたる 独立栄養生物無機化合物のみを素材として, 有機化合物を自力で合成して生活できる栄養の摂取法をおこなう生物 例 : 緑体をもつ植物や藻類 シアノバクテリアおよび光合成細菌 アデノシン二リン酸 ATP の加水分解で ADP とリン酸塩が生じる エネルギーの放出 従属栄養生物 独立栄養生物 3.DNA の情報によって自己複製する DNA は遺伝情報が載っているからだの設計図 細胞は分裂して 同じ細胞をつくる働きがある 体の細胞が入れ替わっても 細胞の DNA は変わらない DNA が複製される際に生じたミスコピーががんの原因になる 4. 外界の刺激を受容し 応答する 植物の例刺激 : 光 応答 : 光合成 動物の例刺激 : 体温の上昇 応答 : 汗をかく 生物には体内を一定に保つ つまり恒常性を維持するために反応する 5. 進化する 生殖によって生物の個体の再生産が繰り返されていく際に 生存競争により 環境に適応した有利な性質を持った個体が生き残っていく これにより生物の種族全体における遺伝的な変化を 進化 という ウイルスは生物でしょうか? ウイルスの特徴 1. 動物や植物などの宿主に感染し 増殖して子孫を残す 2. キャプシド ( タンパク質でできた殻 ) と DNA からできている 3. 変異が起きて 進化する 生物と無生物のあいだ ( 講談社現代新書 ) 2
生物はなにからできているか? 細胞を構成する成分 http://y-arisa.sakura.ne.jp/link/yamadaka/animal-cell/seibun/kousei-bussitu.htm 植物細胞では炭水化物の割合が大きいのが特徴 水 生命活動を支える溶媒 いろいろな物質を溶かす 細胞内の多くの物質は水に溶けており それが互いに反応して代謝 ( 生命活動の一つ ) が進められている 比熱が大きいため 生物体内の温度の急変が妨げられ 内部環境が安定する 核酸 遺伝情報の担い手 ヌクレオチド ( リン酸 糖 塩基の 3 点セット ) が連なったものである DNA( デオキシリボ核酸 ) と RNA( リボ核酸 ) がある DNA( デオキシリボ核酸 ) 遺伝情報 ( 遺伝子 ) を含む生物の設計図 ヌクレオチドがつながった長いひも状のもの 一つの核に 2m ぐらいの長さが入っている デオキシリボース ( 糖 ) が使われている 塩基にはアデニン (A) チミン (T) グアニン (G) シトシン (C) の 4 種類がある 塩基の並び方 ( 塩基配列 ) によって遺伝情報がきまる 2 本のヌクレオチド鎖が平行に並んでおり 相補的な塩基同士が結合して二重らせん構造を作る 3
2018/4/10 DNAコンパクトにまとめられて 核内に 収納されている 塩基の相補性 A T G C DNAとRNAの違い RNA(リボ核酸) DNAの遺伝情報を写し取り 細胞質に移動し た んぱく質の合成工場であるリボソームまで遺伝情 報を伝達する働きがある リボース(糖)が使われている 塩基にはアデニン(A) ウラシル(U) グアニン (G) シトシン(C)の4種類がある 一本鎖構造をとる タンパク質とは RNAからつくられたアミノ酸がペプチド結合によって つながって長くなったポリペプチド=タンパク質 アミノ酸は20種ある ヒトのタンパク質は約10万種類ある アミノ酸20種類の側鎖 アミノ酸は もっている電荷によって中性アミノ酸 酸性アミノ 酸 塩基性アミノ酸に分けることができる 中性アミノ酸 正の電荷を1つと負の電荷を1つ 酸性アミノ酸 負の電荷を2 塩基性アミノ酸 正の電荷を2つ 親水性 疎水性 4
必須アミノ酸とは 体内で合成できないため食事から摂取する必要のあるアミノ酸 タンパク質は立体構造をとる 語呂合わせ フロバイスヒトリジメ ( 風呂場 椅子独り占め ) ( 三次構造 ) 二次構造 ポリペプチド鎖が水素結合や S-S 結合 ( ジスルフィド結合 ) によって折り曲げられた構造 代表的な構造に α- へリックスと β- シートがある 三次構造 一分子のタンパク質分子が立体的に折れ曲がった構造 α- へリックス β- シート 四次構造 三次構造が分子間力などで集まり より複雑な構造になったもの 細胞内のタンパク質は 2 種類か 3 種類のポリペプチド鎖からなるものが多い タンパク質の性質 熱に弱く 高温では立体構造が変化して性質が変わる 熱変性 極端な酸性やアルカリ性では変化する アルコールやアセトンで変性して 沈澱する 赤血球に多量に含まれるヘモグロビンは α- グロビンと β- グロビンをそれぞれ 2 個ずつ含むタンパク質である ( ヘム鉄の部分に酸素が結合する ) 熱変性 5
炭水化物 生命活動のエネルギー源 生命活動のエネルギー源働く セルロースは細胞壁の主成分である タンパク質と結合して糖タンパクとなって細胞膜に存在し 血液型を決めたり 細胞同士の接着にはたらいたりしている 炭水化物の種類炭水化物の構成単位は単糖類 2 個結合 二糖類 複数結合 多糖類 脂質 水に不溶で 有機溶媒 ( クロロホルムやエーテル等 ) に溶ける一群の物質 油脂 脂肪 ( 個体 ) 脂肪油 ( 液体 ) ステロイド コレステロール 性ホルモン リン脂質 脂質二重層 ( 細胞膜 ) 糖脂質 細胞膜の構成成分 細胞の認識 ステロイド 無機塩類 細胞質中にイオンとして溶けており 細胞の状態や働きを調節している 細胞内を構成する成分は小分子がつながってできている Na( ナトリウム ) 体液の浸透圧調節や活動電位の発生 Cl( 塩素 ) 浸透圧の調節 K( カリウム ) 膜電位 ( 静止電位 ) の調節 P( リン ) 骨や歯の成分 ATP Ca( カルシウム ) 骨や歯の成分 筋収縮 血液の凝固に関係している Fe ヘモグロビンの成分 化学的にみてみる 生物体はごくわずかな元素からなりたっている 炭素 (C) 水素 (H) 窒素 (N) 酸素 (O) の 4 種類で生物体の重量の 96.5% をしめる http://y-arisa.sakura.ne.jp/link/yamadaka/animal-cell/seibun/kousei-bussitu.htm 6
自然発生説 生物が親無しで無生物 ( 物質 ) から一挙に生まれることがある とする 生命の起源に関する説の 1 つ アリストテレスが提唱したとされる ファン ヘルモントの実験 小麦の粒と汗で汚れたシャツに油と牛乳をたらし それを壺にいれ倉庫に放置することにより ハツカネズミが自然発生する レディの実験 1. 二つの瓶に魚の死体を入れる 2. 一方は蓋をせず もう一方は目の細かいガーゼで蓋をする 3. 数日間放置する 4. 蓋をしなかった瓶にはウジがわくが 蓋をした瓶にはウジがわかなかった 後にレディやパスツールの実験にて自然発生説はほぼ完全に否定された ハエやウジの自然発生は否定されたものの 微生物は自然発生すると考えられていた パスツールの実験 パスツールは空気は通すが微生物は通さない 白鳥の首フラスコ ( パスツールフラスコ ) を使った実験によって 自然発生説を否定した 1. フラスコに肉汁を入れる 2. フラスコの口を加熱して長くのばし 下方に湾曲させて口をつくる 3. フラスコを加熱する 4. フラスコをしばらく放置しても濁らない 5. このフラスコの首を折り しばらく放置すると濁る http://mcb2010projects.blogspot.jp/2014_01_15_archive.html 化学進化 単純な無機分子から簡単な有機物 ( アミノ酸やヌクレオチドなど ) の合成に始まり, それらが化合して複雑な有機物 ( タンパク質や核酸など ) が合成される段階を経て, 原始生命体ができるまで ミラーの実験 生命発生の最初の過程が原始大気と海とを舞台にして生じるか? 来週の講義 (4 月 17 日 ) は 細胞の構造 について講義します 事前学習として細胞小器官について調べておいて下さい 実験室で原始地球のモデルを作り, アミノ酸などの有機物を合成するのに成功した 7