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食肉製品の高度化基準 一般社団法人日本食肉加工協会 平成 10 年 10 月 7 日作成 平成 26 年 6 月 19 日最終変更 1 製造過程の管理の高度化の目標事業者は 食肉製品の製造過程にコーデックスガイドラインに示された7 原則 12 手順に沿ったHACCPを適用して製造過程の管理の高度化を

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1.9.1 管理基準の遵守状況を連続的又は相当の頻度で確認をするためのモニタリングの方法を設定し その文書を作成すること 十分なモニタリング頻度を設定することまた 設定した理由を整理しておくこと モニタリングに関する全ての文書と記録は モニタリングを行う担当者及び責任者による

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スライド 1

前文 この文書の最初の項では コーデックス規格委員会により採択された危害分析 重要管理点 (HACCP) システムの原則について説明している 第 2 項では適用の詳細は食品の取扱い状況によって異なる可能性があることを認識して このシステムの適用のための一般的なガイドラインを示している 1) HACC

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(*) ノロウイルス : 冬期に流行する人の感染性胃腸炎の原因ウィルスで 調理従事者がノロウイルスに感染していた場合に その人を介してノロウイルスに汚染された食品を食べたり または汚染されていた二枚貝を 生あるいは十分に加熱調理しないで食べることにより食中毒を起こす ( イ ) サルモネラ * 食中

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15 変更管理

 

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ください 5 画像の保存 取扱い防犯カメラの画像が外部に漏れることのないよう 一定のルールに基づき慎重な管理を行ってください (1) 取扱担当者の指定防犯カメラの設置者は 必要と認める場合は 防犯カメラ モニター 録画装置等の操作を行う取扱担当者を指定してください この場合 管理責任者及び取扱担当者

どのような便益があり得るか? より重要な ( ハイリスクの ) プロセス及びそれらのアウトプットに焦点が当たる 相互に依存するプロセスについての理解 定義及び統合が改善される プロセス及びマネジメントシステム全体の計画策定 実施 確認及び改善の体系的なマネジメント 資源の有効利用及び説明責任の強化

目次 4. 組織 4.1 組織及びその状況の理解 利害関係者のニーズ 適用範囲 環境活動の仕組み 3 5. リーダーシップ 5.1 経営者の責務 環境方針 役割 責任及び権限 5 6. 計画 6.1 リスクへの取り組み 環境目標

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Transcription:

千葉県立保健医療大学 給食施設等における食の安全管理 ~ HACCP の考え方による ~ 平成 24 年 7 月 17 日 千葉県食の安全安心協議会 (NPO 法人食品保健科学情報交流協議会 ) 北村忠夫

食の安全 安心とは 調理者は安全は提供できるが 安心は提供できない

食品事業者に求められているもの 取り扱っている食品について 安全であることが継続している (= 継続して問題がない ) 企業 施設などであるとして確信でき 信頼できること

消費者等の判断 食の安全に対する問題発生に対し 社会はその事故の健康影響への重大性より 当該問題への企業 施設などの対応や姿勢を見て判断することがある 消費者は コンプライアンス CSR に則った 安全確保を実感できる事業者の体制 が構築 されているかを見る 4

食中毒について 食中毒の発生状況 細菌性食中毒

月別食中毒発生状況平成 21~23 年平均と平成 8 年の比較

主な病因物質別食中毒発生状況 ( 平成 23 年 平成 8 年 ) 平成 23 年 平成 8 年 件数患者数死者数件数患者数死者数 総数 1062 21616 11 1217 46327 15 サルモネラ属菌 67 3068 3 350 16576 3 ブドウ球菌 37 792 0 44 698 0 腸炎ビブリオ 9 87 0 292 5241 0 病原大腸菌 49 1681 7 179 14488 8 カンピロバクター 336 2341 0 65 1557 0 ノロウイルス 296 8619 0 ーーー 自然毒 69 171 1 73 228 4

主な原因食品別食中毒発生状況 ( 平成 23 年 平成 8 年 ) 平成 23 年 平成 8 年 件数患者数死者数件数患者数死者数 総数 1062 21616 11 1217 46327 15 魚介類 加工品 137 1351 0 152 3105 3 肉類 加工品 76 895 6 23 1147 0 卵類 加工品 5 54 1 35 3049 0 菓子類 5 417 1 16 1263 0 きのこ類 37 98 0 35 137 1 複合調理食品 73 5027 0 83 4129 0 その他食事特定 455 11261 0 ーーー

主な原因施設別食中毒発生状況 ( 平成 23 年 平成 8 年 ) 平成 23 年 平成 8 年 件数患者数死者数件数患者数死者数 総数 1062 21616 11 1217 46327 15 家庭 88 285 3 183 631 5 事業所 学校等 105 3455 1 117 18013 6 旅館 57 2043 0 104 5869 1 飲食店 640 10046 6 357 10209 1 販売店 16 66 0 14 799 0 製造所 6 446 1 20 1087 0 仕出し屋 45 2997 0 74 7235 0

細菌性食中毒の発生まで 1 食中毒菌が存在する 2 食品に食中毒菌が付着する ( 原料 製造過程 流通過程 消費喫食時に汚染 ) 3 食品中に食中毒が発生する菌量がある 4 この食品を食べる 5 食中毒になる人とならない人がいる * 食中毒菌があっても必ず食中毒になるとは限らないが 起こる可能性はある

細菌性食中毒はなくなるか 1 食中毒菌は絶滅できるか 2 食品への食中毒菌を完全に制御できるか ( 原料 製造過程 流通過程 消費喫食時の汚染防止 ) 3 食品中の食中毒菌の増殖を防げるか 4 安全な食品を選んで食べる 安全な食品とは リスク管理された食品 * 食中毒菌があっても 食中毒にならないリスク対応策を構築する リスク管理

食品安全と法律の考え方

食の安全行政の考え方 製造物責任に乗った自主管理の促進 ( 従来の考え方 ) 国は規格基準つくりを推進し 自治体が監視指導を徹底 ( 国や自治体が食品安全確保の責任を持つ ) 食品関係事業者と適切な責任と役割の分担関係を構築 ( 現在の考え方 ) 食品関係事業者自身が製造物責任の観点から自主管理 ( 自主管理による食品の安全システムを構築 )

食の安全のための自主管理とは 食品等事業者がリスクの予測の上に立ち 設計上の 製造上の 流通上 ( 表示上 ) の面から 製造物の欠陥をなくすこと 自主管理目標の変遷 ( 給食施設では ) 不良食品を提供しない 不良食品を調理しない 不良食品を設計 企画 ( 献立 ) しない

EU 等先進諸国における食品安全行政の考え方 BSE 以来 消費者の信頼を取り戻すために変化 食品安全確保の目的 科学に基づいた政策 消費者の健康の保護 リスク分析の実施 食品安全確保 Farm to fork. Farm to table. 安全と証明されなければ安全といえない 事故の対応より予防に重点を置く

日本における食品安全行政 BSE 以後の変化 食品安全基本法の制定食品衛生法 JAS 法等の改正 消費者の健康保護食品事業者の責務の明確化リスク分析手法の導入 ( 消費者庁の設置 )

( 資料 ) 食品事業者の関係法規 食品安全に関する基本 3 法 食品安全基本法 食品衛生法 農林物質の規格化及び品質表示の適正化に関する法律 (JAS 法 ) * 消費者安全法 * 健康増進法 * 製造物責任法 (PL 法 )

法令違反を犯さないために 1 法令に定める基準値等に対し 違反しないように自主的な規格を定め かつ 安全を確保できるように設定する 保存基準が 10 と定められた食品の冷蔵保存の温度は何度に設定したらよいのか 10 8 5 0

法令を犯さないために 2 1 アレルギー表示の例 使用していない物質のコンタミ表示をなぜするのか 2 期限表示 ( 消費期限 賞味期限 ) の例 安全を確認した期間に対し 表示する期限を設定する際に 0.7~0.8 を係数として掛けのはなぜか

食の安全と危機管理 安全管理 = 危機管理

安全の確証 消費者が安心するための科学的根拠とは 食品事業者が安全であると主張してもそれが信頼されなければ 消費者は安心であると言わない 安心され信頼を得るためには リスクを認識した上で食の安全が実証的 論理的 体系的に説明され それがマニュアルやデータなど現実的な裏付けに基づき継続的に実証されていることが 最低限の必要条件である

マニュアルはなぜ必要か 常に同じ品質の製品を製造できること ( 誰が担当しても問題が起きないこと ) 異常の発生への対応に問題なく 適切に処理できるとともに 同様の異常の発生をさせないための修正 補正がされること ( 常に 記録により 正常に稼動していることが 確認 できること ) 品質に影響する事故への対応もできること

食品安全管理の段階 食品の安全管理 異常の探知 事故の発生 事件への展開 事前対策 ( 発生異常の適正補正 ) 事前対策 2 ( 事故を事件にしない ) 事後対策 ( 早期の事件処理 )

危機管理の前提 (1) 食中毒の知識がなくとも 食中毒は起こせる 食中毒を起こす知識がなければ 食中毒は防げない

危機管理の前提 (2) * 食中毒が起きるには 必ず原因と過程がある 原因ハザード = 危害要因 過程 ( 発生の機序 ) ハザードを制御できず 残留 活性

危害分析という ハザードを知る どのようなハザードが原料搬入から 製品搬出までに存在し 食品に接触し 混入するか それがどのような危害をもたらすのか ハザードは どのような物質であるか 微生物であるのか 化学物質であるのか 物理的物質であるのか

ハザードを理解する リスク認識の前提 ハザードが存在する ハザードが危害を発生させる可能性を知る リスクを見極める ( 評価 ) ハザードの量はどのくらいか ハザードはコントロールできるのか 予測される危害は低減できるのか

HACCP システムの考え方による衛生管理 リスク評価に基づく管理

調理施設における管理のモデル 140 120 100 * 冷凍食品の利用の事例 * 数値は原料を 100 として 80 60 適正不適正 40 20 0 受入 保管 解凍 洗浄 加工 加熱 盛付 提供 不適正 * 保管前放置 * 解凍 : 自然 ( 室温放置 ) * 加熱 : 達温

微生物制御のシステム HACCP 一般衛生管理 5S 原材料 不活 ( 細菌を殺す ) 不増 ( 菌を増やさない ) 不増 ( 細菌を増やさない ) 不着 ( 細菌をつけない ) 不着 ( 細菌をつけない ) * 菌を持ちこまない

原材料とは汚染の塊 汚染の最重要チェックポイント 外部から汚染が持ち込まれる 原材料そのもの 搬入までの安全管理の履歴が明確ではない 原材料の包装 : 特にダンボール 異物の付着 昆虫の付着 便利に使い汚染の拡散 外部の関係者の立ち入り 納入業者等がゾーニングを越えて立ち入る

フードチェーンとは 農場から食卓までの安全管理を各段階で 原材料農水産物加工原料食品添加物 保管流通 製造加工 流通 消費 フードチェーンが確立すると各段階における透明性が保てる トレーサビリティが明確になる 安全が確信でき 適切な表示管理ができる

フードチェーンにおける衛生管理 HACCP 一般衛生管理 5S 原材料 HACCP 一般衛生管理 HACCP 一般衛生管理 5S 原材料 ゲストへ安全な食品を提供 HACCP 一般衛生管理 5S 原材料 HACCP 一般衛生管理 5S 原材料 HACCP 一般衛生管理 5S 原材料 5S 原材料

5S とは 整理 整頓 清掃 清潔 習慣 ( 躾ではない ) 職場環境の美化 従業者のモラル向上 食品事業者の清潔とは 微生物的な意味 安全な食品が常に提供できていると確信できるために基本的なものであること 安全のシステムの理解 / 生産性の向上 / 衛生状態の向上 / 生産環境への自信

一般衛生管理とは 安全な食品を製造等するために 従事者の衛生管理を基本としながら 施設設備等の食品取り扱い作業環境を整えることを目的とした 一般的に行う衛生管理をいう HACCP システムの導入を容易にし その効果を高めるために 衛生的作業環境を維持するものとして 基本的な衛生管理である

給食施設のゾーニングと食品導線 ( 例 ) 廃棄物残渣置場 汚染作業区域 下処理場 非汚染作業区域 検収室 原材料保管場所 食器保管庫 調理場 下膳置場 放冷 調整 保管場所 使用後食器等の流れ 食品の流れ

HACCP とは * 食品の安全性 健全性を確保するための監視方式 HA: フードチェーン ( 食品の生産から消費に至るまで の各段階 ) で発生する恐れのある微生物危害に ついて分析する CCP: 危害を防止し 排除するための重点的チェック を行うこと

HACCP システムとは HACCP システムとは 食品の製造 加工工程のあらゆる段階で発生する恐れのある微生物汚染等の危害をあらかじめ分析 (HA=Hazard Analysis) し その結果に基づいて 製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を得ることができるかという重要管理 (CCP=Critical Contorol Point) を定め これを連続的に監視することにより 安全な製品を確保する衛生管理手法 厚生労働省ホームページから

HACCP と従来の方式との違い HACCP 方式 各段階のモニタリング 原材料生産 : 取扱い 原材料受入 : 鮮度 温度 保管 : 温度等 下処理 加熱処理 調理品 盛り付け 配膳 : 工程管理 : 殺菌温度 時間 : 品質 時間 : 温度 時間 : 温度 時間 従来の方式最終段階でのチェック 原材料生産 原材料受入 調理 調理品 : サンプル検査

HACCP は自主的衛生管理手法 食の安全を確保する衛生管理 科学的根拠に基づく危害の予防 安全性確保のための重点的な管理 基本はマニュアル化と記録 自主的衛生管理のシステム

HACCP システムの目的 食品中に存在又は存在する可能性のある危害要因 ( ハザード ) を健康を損なわないレベルに低減又は排除することである HACCP システムの前提 ( 一般的衛生管理フ ロク ラム ) 危害要因ができるだけ存在しない原材料の使用 食品への危害要因の汚染防止や食品中のハザードの増加防止を確実に行うための清潔で衛生的な食品取扱の確実な実施をすることが重要である

給食施設の問題はどこに 原材料 二次汚染 施設汚染 食器 原材料包材 下処理調理盛り付け 取扱 外来者 従事者 エラー人的 機械的 システム

( 資料 ) HACCP システム適用のための 12 手順 HACCP プラン立ち上げの前段 1 専門家チームの編成 2 製品の記述 3 意図される使用方法の確認 4 製造工程一覧図及び施設の図面 5 現場確認 HACCP プラン立ち上げの原則 6 危害分析 7 重要管理点の特定 8 管理基準の設定 9 モニタリンク 方法の設定 10 改善措置の設定 11 検証方法の設定 12 記録保存及び文書作成規定の設定

危害分析の基礎となる情報の整理 (1) * 製品に対する理解 2 製品の記述 ( 手順 2): 製品 ( 料理 ) の特徴を記述する HACCP では 一つの製品ごとに システムを導入することが原則 製品の名称 組成 特性 原材料 ( 添加物を含む ) 保存条件等 3 意図される使用方法の確認 ( 手順 3): 製品 ( 料理 ) の使用 方法を明確化する 製品は そのまま食べるのか 保管後に食べるのかを明確にする どのような人が食べるのかを明確にする 子供か 老人か健常者か 病人か

危害分析の基礎となる情報の整理 (2) * 製造工程及び施設の図面の作成 確認 4 製造工程一覧図及び施設の図面 ( 手順 4): 原料受け入れから 最終の調理サービスに至る調理加工の全工程の必要資料の作成 工程フロー図: 原料別 工程別に明確にする 危害発生防止のために重要な温度 時間等管理に関する事項を記載する 標準作業手順書( 作業マニュアル ): 担当者 作業時間 使用器具 温度 時間等を記入する 給食等施設の図面の作成: 機械器具 設備の配置に合わせ 人の作業導線 ゾーニング ( 作業の汚染 非汚染の区分 ) 5 製造工程一覧図及び施設図面の現場確認

原則 1 危害分析 危害分析は HACCP の基本 原材料の生産から製造 加工 保存及び流通を経て消費に至るまでの過程に含まれる潜在的な危害について 認識する その危害と発生条件などの情報を収集し 危害の起こりやすさや起こった場合の危害の影響などを 明らかにし 評価する HACCP プランに取り込むべきかどうかを決定し 個々の危害の発生要因と危害に対するコントロールを明確にする

原則 2 重要管理点 (CCP) の設定 危害分析の結果 明らかにされた危害のうち 特に厳重に管理する必要があり 危害の発生を防止するためにコントロールできる手順 操作 工程をいう 原材料の生産 受け入れ 製造 加工 貯蔵などの食品製造の全工程における適切な箇所に設定する * コントロール : 食品の安全性に影響を及ぼす危害発生の防止 除去 減弱あるいは許容水準までに下げること

原則 3 管理基準 (CL) の設定 危害を管理する上で許容できるか否かを判断する基準である 確認された危害が CCP において適切にコントロールされているかを判断するために設定する 管理基準からの逸脱は製品が安全性を保証する条件下で製造していないことを意味する *CL : 色調 臭気 粘度などの官能指標 温度 時間などの理化学測定値 ph 塩濃度などの化学的検査値等が用いられる

CCP CL を守るために 温度上限設定 管理目標温度 温度下限設定管理基準 (OL) 許容基準 (CL) CCP が CL を守るために 安全な食品 安全でない食品

HACCP システムを確実に 原則 4 モニタリング方法の設定 原則 5 改善措置の設定 原則 6 検証方法の設定 原則 7 記録及び各種文書の保存

HACCP のコンセプト HACCP= 製品の 100% を保証するシステム パラメータのモニタリング ( 原則 4) 通常の測定値 ある日の測定値 1 番目の製品 N 番目の製品 CL( 許容水準 )( 原則 3) 改善措置 ( 原則 5) 改善措置の検証 ( 原則 6) 記録 ( 原則 7 )

検証 是正又は改善何を検証 是正 改善するのか管理手段の有効性実証できない安全でない又はその可能性のある製品発生人的エラー機械的エラーシステムエラー従業員教育 訓練人員 組織体制保守管理使用方法管理手段の組合せ管理システム再発防止原因の究明

終わりに 食品安全管理のシステムは継続して運営することではあるが ベストなシステムはありえない 常にチェックし 問題があればこれを改めよりベターなシステムへと努力する

食の安全ナビ検定クイズ WHO の提唱する 食品をより安全にするための 5 つの鍵 を 理解するために

WHO の提唱する 食品をより安全にするための 5 つの鍵 1 清潔に保つ 2 生の食品と加熱済み食品とを分ける 3 よく加熱する 4 安全な温度に保つ 5 安全な水と原材料を使う * 主に調理に対するものですが 安全管理の基本を理解するために 次のクイズに挑戦してください

例題 WHO は食品の安全等に関わる国際機関ですが その正式な名称はどれか 1 国連食糧 農業機関 2 世界保健機関 3 国連食品 医薬品局

例題の答 2 世界保健機関 2 WHO World Health Organization 不正解の理由 1 国連食糧 農業機関 (FAO) WHO と連携し コーデックス委員会を設置 3 国連食品 医薬品局 米国食品 医薬品局 (FDA)

WHO とは その仕事は WHO は 保健衛生の分野における問題に対し広範な政策的支援や技術協力の実施 必要な援助等を行っている また 伝染病や風土病の撲滅 国際保健に関する条約 協定 規則の提案 勧告 研究促進等も行っており ほかに食品 生物製剤 医薬品等に関する国際基準も策定している 目的 : すべての人々が可能な最高の健康 水準に到達すること ( 憲章第 1 条 )

問 1 清潔に保つ のはなぜか 最も正しいものを選びなさい 1 清潔にすることにより 作業環境が良くなり 作業手順の省略ができる 2 清潔にすることにより 手 調理器具などについている微生物が食中毒を起こす可能性を少なくする 3 清潔にすれば 工程における 2 次汚染の可能性を少なくし ゾーニングなどをしなくとても安全だ

問 2 生の食品と加熱済み食品とを分ける のはなぜか 最も正しいものを選びなさい 1 生の食肉や魚介類は加熱済み食品と一緒に保存すると 生臭くなるから 2 加熱済み食品は高温であるため 生の食品と同時に保存すると 生の食品や冷蔵庫の温度が上がってしまうから 3 生の食品に危険な微生物が含まれている可能性があり 保存中に加熱済み食品など他の食品へ移行する可能性があるから

問 3 よく加熱する のはなぜか 最も正しいものはどれか 1 再加熱する食品はすでに加熱してあるので 食べ ごろまで温めればよい 2 鶏肉などは サルモネラ カンピロバクターに汚染さ れている可能性のある食品については 十分加熱 し 他の食品は特に問題はない 3 適切な加熱により ほとんどの危険な微生物を死滅させるか 減少させることができる

問 4 安全な温度に保つ のはなぜか 最も正しいものはどれか 1 食品を汚染する微生物の増殖し易い温度がある ので これを止めたり 遅らせる温度帯で食品を保管する 2 微生物の生育は低温にすることにより 完全に抑えられるので 冷蔵又は冷凍にする 3 冷凍食品を短時間で解凍するためには 室温で行うことが状態を見られることから 効果的である

問 5 安全な水と原材料を使う のはなぜか 最も正しいものはどれか 1 日本では水は安全で 微生物や化学物質が入らず 原材料に注意すればよい 2 水を含め原材料には 微生物や化学物質に汚染されている可能性がある 3 傷んだ原材料は危険だが 最終的に殺菌工程を経るので 重大視することではない