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児に対する母体の甲状腺機能低下症の影響を小さくするためにも 甲状腺機能低下症を甲状腺ホル モン薬の補充でしっかりとコントロールしておくのが無難と考えられます 3) 胎児 新生児の甲状腺機能低下症 胎児の甲状腺が生まれながらに ( 先天的に ) 欠損してしまう病気があります 通常 妊娠 8-10 週頃

第71回日本産科婦人科学会学術講演会 専攻医教育プログラム3 不育症 習慣流産とは 生殖 内分泌 不育症 2回以上の流産や死産の既往がある場合 妊娠22週以降 の胎内死亡や死産歴も包括 生化学妊娠は含めないが 今後の検討課題 不育症の診断と治療 異所性妊娠や絨毛性疾患は除外 神戸大学大学院医学研究科

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系統看護学講座 クイックリファレンス 2012年 母性看護学

                           2005年12月1日

甲状腺機能が亢進して体内に甲状腺ホルモンが増えた状態になります TSH レセプター抗体は胎盤を通過して胎児の甲状腺にも影響します 母体の TSH レセプター抗体の量が多いと胎児に甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性が高まります その場合 胎児の心拍数が上昇しひどい時には胎児が心不全となったり 胎児の成

AID 4 6 AID ; 4 : ; 4 : ; 44 : ; 45 : ; 46 :

リプロダクション部門について

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

専攻医教育プログラム_不育症の診断と治療_丸山哲夫_ハンドアウト最終版.pptx

平成14年度研究報告

公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研

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体外受精についての同意書 ( 保管用 ) 卵管性 男性 免疫性 原因不明不妊のため 体外受精を施行します 体外受精の具体的な治療法については マニュアルをご参照ください 当施設での体外受精の妊娠率については別刷りの表をご参照ください 1) 現時点では体外受精により出生した児とそれ以外の児との先天異常

系統看護学講座 クイックリファレンス 2013年7月作成

日本産科婦人科学会雑誌第67巻第8号

ン病 虚血性視神経症など 4. 治療法続発性の APS では 原疾患に対する治療とともに抗凝固療法を行う 原発性の場合には抗凝固療法が主体となる 抗凝固療法は 抗血小板剤 ( 低容量アスピリン 塩酸チクロピジン ジピリダモール シロスタゾール PG 製剤など ) 抗凝固剤( ヘパリン ワルファリンな

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ヒト胎盤における

第1回生殖に関する遺伝カウンセリング講習会打ち合わせ会議事録(案)

検査項目情報 1171 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4F. 性腺 胎盤ホルモンおよび結合蛋白 >> 4F090. トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブユニット ) トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブ

妊よう性とは 妊よう性とは 妊娠する力 のことを意味します がん治療の影響によって妊よう性が失われたり 低下することがあります 妊よう性を残す方法として 生殖補助医療を用いた妊よう性温存方法があります 目次 はじめにがん治療と妊よう性温存治療抗がん剤治療に伴う卵巣機能低下について妊娠の可能性を残す方

妊婦甲状腺機能検査の実施成績 東京都予防医学協会母子保健検査部 はじめに て乾燥させたろ紙血液を検体とする 検体は本会の 妊婦の甲状腺機能異常による甲状腺ホルモンの 過不足は 妊娠の転帰に影響を与えるばかりでなく 代謝異常検査センターに郵送される 2 検査項目と検査目的および判定基準 生まれてくる子

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

補足 : 妊娠 21 週までの分娩は 流産 と呼び 救命は不可能です 妊娠 22 週 36 週までの分娩は 早産 となりますが 特に妊娠 26 週まで の早産では 赤ちゃんの未熟性が強く 注意を要します 2. 診断 どうなったら TTTS か? (1) 一絨毛膜性双胎であること (2) 羊水過多と羊

平成24年7月x日

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1 卵胞期ホルモン検査 ホルモン分泌に関して卵巣や脳が正常に機能しているかを知る目的で測定します FSH; 卵胞刺激ホルモン脳の下垂体から分泌されて 卵子を含む卵胞を成長させる作用を持ちます 低いと卵胞の成長がおきませんが 卵巣の予備能力が低下している時には反応性に高くなります LH; 黄体化ホルモ

反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル.indd

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検査項目情報 1174 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4F. 性腺 胎盤ホルモンおよび結合蛋白 >> 4F090.HCGβ サブユニット (β-hcg) ( 遊離 ) HCGβ サブユニット (β-hcg) ( 遊離 ) Department of Clinical Lab

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

その最初の日と最後の日を記入して下さい なお 他の施設で上記人工授精を施行し妊娠した方で 自施設で超音波断層法を用いて 妊娠週日を算出した場合は (1) の方法に準じて懐胎時期を推定して下さい (3)(1) にも (2) にも当てはまらない場合 1 会員各自が適切と考えられる方法を用いて各自の裁量の

【第6回】資料2_精神疾患と周産期3

胎児計測と胎児発育曲線について : 妊娠中の超音波検査には大きく分けて 5 種類の検査があります 1. 妊娠初期の超音波検査 : 妊娠初期に ( 異所性妊娠や流産ではない ) 正常な妊娠であることを診断し 分娩予定日を決定するための検査です 2. 胎児計測 : 妊娠中期から後期に胎児の発育が正常であ

2. 診断 どうなったら TTTS か? 以下の基準を満たすと TTTS と診断します (1) 一絨毛膜性双胎であること (2) 羊水過多と羊水過少が同時に存在すること a) 羊水過多 :( 尿が多すぎる ) b) 羊水過少 :( 尿が作られない ) 参考 ; 重症度分類 (Quintero 分類

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

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凍結胚の融解と胚移植の説明書 平成 27 年 8 月改定版 治療の必要性 / 適応について受精卵 ( 胚 ) の凍結は 体外受精または顕微授精において 以下のような場合に行なわれる治療です 新鮮胚移植後に 妊娠につながる可能性のある受精卵 ( いわゆる余剰胚 ) が残っていた場合 採卵数が多い 血中

全な生殖補助医療を含めて, それぞれの選択肢を示す必要がある. 3 種類の HIV 感染カップルの組み合わせとそれぞれの対応 1. 男性が HIV 陽性で女性が陰性の場合 体外受精この場合, もっとも考慮しなければいけないことは女性への感染予防である. 上記のように陽性である男性がすでに治療を受けて

長泉町では少子化対策の一環として、不妊治療を受けられたご夫婦に対し、治療に要した費用の一部を助成しています

出生前診断を検討している妊婦さんへ

2 注釈 1 精液検査とは? 射精した精液中の精子の数や運動性 形などを調べる検査で これらの結果を 精液所見 といい 治療方針が決められることが多い 精液検査の標準値として左図のWHOラボマニュアルに準拠している場合が多い 注釈 2 フーナーテストとは? 代表的な精子 - 子宮頸管粘液適合試験であ

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配偶子凍結終了時 妊孕能温存施設より直接 妊孕能温存支援施設 ( がん治療施設 ) へ連絡がん治療担当医の先生へ妊孕能温存施設より妊孕能温存治療の終了報告 治療内容をご連絡します 次回がん治療の為の患者受診日が未定の場合は受診日を御指示下さい 原疾患治療期間中 妊孕能温存施設より患者の方々へ連絡 定

日産婦誌58巻9号研修コーナー

桜町病院対応病名小分類別 診療科別 手術数 (2017/04/ /03/31) D12 D39 Ⅳ G64 女性生殖器の性状不詳又は不明の新生物 D48 その他及び部位不明の性状不詳又は不明の新生物 Ⅲ 総数 構成比 (%) 該当無し Ⅰ 感染症及び寄生虫症 Ⅱ 新生物 C54 子宮体部

平成 27 年 8 月改定版こともあります [ アンタゴニスト法 ] 月経が開始してから2~3 日目 ( 前の周期に経口避妊薬を使うこともあります ) から卵巣刺激の注射 (hmg 製剤 FSH 製剤 ) を開始します 原則として連日注射し 数日間の注射の後には超音波検査やホルモン測定により 卵巣の

これらの検査は 月経周期の中で下記のような時期に行われます ( いつでも検査できるわけではありません ) 図中のグラフは基礎体温の変動を示し 印は月経を示します 月経周期における検査の時期 高温期 低温期 月経 月経 血液検査 LH FSH E2( エストラジオール ) AMH 精液検査 排卵日 血

不妊外来を受診される方へ

2 反復着床不全への新検査法 : 検査について子宮内膜の変化と着床の準備子宮内膜は 卵巣から分泌されるステロイドホルモンの作用によって 増殖期 分泌期 月経のサイクル ( 月経周期 ) を繰り返しています 増殖期には 卵胞から分泌されるエストロゲンの作用により内膜は次第に厚くなり 分泌期には排卵後の

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )


検査項目情報 抗 SS-A 抗体 [CLEIA] anti Sjogren syndrome-a antibody 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 5G076 分析物 抗 SS-A 抗体 Departme


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2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

女性用問診票

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脂質異常症を診断できる 高尿酸血症を診断できる C. 症状 病態の経験 1. 頻度の高い症状 a 全身倦怠感 b 体重減少 体重増加 c 尿量異常 2. 緊急を要する病態 a 低血糖 b 糖尿性ケトアシドーシス 高浸透圧高血糖症候群 c 甲状腺クリーゼ d 副腎クリーゼ 副腎不全 e 粘液水腫性昏睡

対象と方法 本研究は 大阪医科大学倫理委員会で承認を受け 対象患者から同意を得た 対象は ASA 分類 1 もしくは 2 の下肢人工関節置換術が予定された患者で 術前に DVT の存在しない THA64 例 TKA80 例とした DVT の評価は 下肢静脈エコーを用いて 術前 術 3 日後 術 7

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日産婦誌60巻12号研修コーナー

妊婦の推定感染経路 2 番目は 妊婦さんの推定感染経路です 2011 年は中国 ベトナムなど海外で感染した夫や本人です 海外からの感染に注意が必要でした ところが 2012 年は夫 同僚から妊婦さんへの感染が認められたので 同居家族 同僚のワクチン接種を勧めるよう喚起しました さらに 2013 年に

資料1-1 HTLV-1母子感染対策事業における妊婦健康診査とフォローアップ等の状況について

負荷試験 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時 )


正常波形外来健診時(妊娠35 週)頻脈基線細変動減少入院時 児娩出前1. 脳性麻痺発症の主たる原因別事例編 事例 33 原因が明らかではないまたは特定困難 1 産科医療補償制度脳性麻痺事例の胎児心拍数陣痛図脳性麻痺発症の主たる原因別事例編 概要 在胎週数 分娩経過 36 週リスク因子帝王切開既往出生

注射すると 1 個だけでなく複数の卵胞が大きくなり 10 日くらいで直径 18 mm前後となります この時期に 卵子の成熟と排卵を促す HCG と呼ばれるもう一つのホルモンを注射します 採卵の直前である HCG 投与後 34 時間から 36 時間ころに卵胞を穿刺し 卵子を採取します これを採卵といい

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4 月 17 日 4 医療制度 2( 医療計画 ) GIO: 医療計画 地域連携 へき地医療について理解する SBO: 1. 医療計画について説明できる 2. 医療圏と基準病床数について説明できる 3. 在宅医療と地域連携について説明できる 4. 救急医療体制について説明できる 5. へき地医療につ

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

現況解析2 [081027].indd

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2008年10月2日

はじめに このサポートブックは 出生前診断に関する情報を提供することで 妊婦さんやパートナー ご家族 今後妊娠を考えている方の不安や疑問を軽減することを目的に作成しました 出生前診断を受けた場合 胎児に異常が見つかることがあります その際 妊娠中から赤ちゃんの病気が分かったから 心の準備ができて良か

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くは不育症プラス特異的自己抗体をもって APS と定義するシンプルな構造になっているこ と 続発性または二次性という用語は使用せず それぞれに合併した APS と表現すること を推奨している点です APS の症状 APS の頻度の高い症状として 脳 心臓 肺などの動静脈血栓症 習慣流産 血小板減少

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

日本内科学会雑誌第98巻第12号

検査のタイミング ご自分の生理 ( 月経 ) 周期から換算して 次の生理 ( 月経 ) 開始予定日の 17 日前から検査を 開始してください 検査開始日から 1 日 1 回 毎日ほぼ同じ時間帯に検査してください ( 過去に検査してLHサージがうまく確認できなかった場合や 今回検査をしたところ陽性か陰

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

母子→グループディスカッション・情報共有

2018 年 10 月 4 日放送 第 47 回日本皮膚アレルギー 接触皮膚炎学会 / 第 41 回皮膚脈管 膠原病研究会シンポジウム2-6 蕁麻疹の病態と新規治療法 ~ 抗 IgE 抗体療法 ~ 島根大学皮膚科 講師 千貫祐子 はじめに蕁麻疹は膨疹 つまり紅斑を伴う一過性 限局性の浮腫が病的に出没

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

血液学的検査 >> 2B. 凝固 線溶関連検査 >> 2B400. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 B 3.2% クエン酸ナトリウム ( 黒 ) 血液 2 ml 血漿 検体ラベル ( 単項目オーダー時

方法について教えてください A 妊娠中の接種に関する有効性および安全性が確立されていないため 3 回接種を完了する前に妊娠していることがわかった場合には一旦接種を中断し 出産後に残りの接種を行うようにしてください 接種が中断しても 最初から接種し直す必要はありません 具体的には 1 回目接種後に妊娠

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出生前遺伝カウンセリングに関する提言の解説(最終版)

( 様式甲 5) 氏 名 渡辺綾子 ( ふりがな ) ( わたなべあやこ ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲 第 号 学位審査年月日 平成 27 年 7 月 8 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 学位論文題名 Fibrates protect again

専攻医教育プログラムSLE合併妊娠の管理

手術や薬品などを用いて 人工的に胎児とその付属物を母体外に排出することです 実施が認められるのは 1 妊娠の継続又は分娩が 身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害する恐れがあるもの 2 暴行もしくは脅迫によって妊娠の場合母体保護法により母体保護法指定医だけが施行できます 妊娠 22 週 0

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妊娠のしくみ 妊娠は以下のようなステップで成立します Step1 卵胞発育脳にある下垂体から分泌される 卵胞刺激ホルモン (FSH) が卵巣内の卵胞を発育させます Step2 射精 精子の子宮内侵入性交により精液が腟内に入ります 腟に入った精子は 子宮を通過して 卵管を登っていきます Step3 排

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晶形成することなく固化 ( ガラス化 ) します この方法は 前核期胚などの早期胚 の凍結に対して高い生存率が多数報告されています また 次に示します vitrification 法に比べて 低濃度の凍結保護剤で済むという利点があります 2) Vitrification( ガラス化保存 ) 法 細胞

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不育症について ~ 流産を繰り返すカップル / アベックへ

不育症 不育症 : 流産, 死産や新生児死亡を繰り返し, 健児を得ることができない疾患群. 習慣流産 : 妊娠 22 週未満の流産を 3 回以上繰り返す. 反復流産 : 妊娠 22 週未満の流産を 2 回繰り返す. * 原発性 出産歴なし. 続発性 出産後に流産を繰り返す.

不育症の定義 2 回以上の流産, 死産, あるいは早期新生児死亡の既往がある場合を不育症と定義する. 生化学妊娠 *( 化学妊娠 ) は流産回数に含めないルールとなっている. * 妊娠反応陽性だが, 胎のうを確認できない状態. 胎のうを確認できれば顕性妊娠と呼ぶ. なお 1 回の死産では定義上は不育症とは診断できない ( 後述 ).

不育症の定義 ( 広義 ) 妊娠 10 週以降の染色体異常や形態異常のない流 死産や重症の妊娠高血圧症候群による子宮内胎児発育不全症例は 1 回でもあれば, 不育症に準じて抗リン脂質抗体や血栓性素因スクリーニングを行なっても良い. 私見であるが,10 週以上の流産, 子宮内胎児死亡や死産の既往なら,1 回でも不育症としてその後の診療に臨むべきと考える. ただし札幌市不育症治療費助成事業の対象にはならない.

疫学 : 自然流産の確率 自然流産率 / 顕性妊娠 自然流産を2 回連続する確率 自然流産を3 回連続する確率 実際の反復流産発生率 実際の習慣流産発生率 15% 2.25% 0.34% 理論値 4.2% 0.9% 実際は理論値よりも頻度は高い

疫学 年齢と流産率 75 80 70 51 60 流産率 50 40 25 30 20 9 11 15 10 0 20~24 25~29 30~34 35~39 年齢 40~44 45~

厚生労働省による研究 黄体機能不全はリスクに入っていない 抗 PE 抗体の関与は不明, 我々はアスピリン療法のみ

外来の受診 反復流産の段階で受診される方が多い. 自身で調べて受診, 他院からの紹介で受診, 院内からの紹介で受診など. こんにちは 武田です <a href="https://jp.freepik.com/free-photosvectors/computer">computer 写真 Freepik によるデザイン </a>

コンサルテーション手順 初期カウンセリング 妊娠の 15% は自然流産にいたる. うち 50~70% が受精卵の染色体異常が流産の原因で,30~50% は染色体が正常である. 何ら検査治療をしなくとも,2 回流産で 60~70%,3 回流産では約 50% の率で次回妊娠時に挙児を得ることができる. 精査によって, 反復流産では 40%, 習慣流産では 50% に原因と考えうる異常がみつかる. 精査 治療によって, 反復流産では 20%, 習慣流産では 25% 挙児獲得率が上昇する. 検査の説明諸検査内容, 金額, 絨毛染色体検査 治療の説明外科 薬理学的効果, テンダーラヴィングケア効果 ( プラセボ効果 )

参考 ~ 流産率には様々な報告あり 初回の妊娠で流産する確率 : 約 15% 1 回流産の後, 次の妊娠で流産する確率 : 約 15%( 初回妊娠時と変わらず ) 初回の流産で不育症の検査を行なう意義は乏しい (10 週以上の流産 胎児死亡, 高年の場合は別 ) 2 回流産の後, 次の妊娠で流産する確率 : 17~31% に上昇 3 回以上の流産の後, 次の妊娠で流産する確率 : 25~48% に上昇 2 回以上の流産で不育症検査の意義あり

参考 ~ 流産率には様々な報告あり 2~3 回流産を繰り返しても, その次の妊娠で無治療であっても 70~80% の確率で生児を獲得できるとの報告もある. ただし, これは tender loving care(tlc~ 後述 ) を受けた場合であり,TLC を行なわなかった場合の生児獲得率は 36~57% に低下する. よって無治療とは言い切れない面もある.

不育症夫婦に対する 検査プログラム 血液検査 血液凝固系 CBC, APTT, 血液凝固第Ⅻ因子, プロテインS, プロテインC, D-dimer 抗リン脂質抗体 自己免疫系 抗カルジオリピンIgG, 抗カルジオリピンβ2GPI複合体抗体, ループスアンチコアグラント, 抗核抗体, 血清補体価, NK細胞活性 問診 既往歴 既往流産歴 月経の様子 家族歴など 超音波 問診が非常に重要 内分泌 代謝検査 黄体機能検査 甲状腺機能, 甲状腺自己抗体, プロラクチン, テストステロン, 血糖値, インスリン 夫婦染色体検査 その他 必要に応じて 細菌学的検査, クラミジア 子宮卵管造影, MRI, 子宮鏡

良く行われる 治療法について <a href="https://jp.freepik.com/freephoto/_2393942.htm">freepik によるデザイン </a>

母体因子 夫婦因子 原因不明 子宮異常 内分泌 代謝異常 自己免疫疾患抗リン脂質抗体血液凝固異常 不育症の原因と治療法 原因 染色体転座保因者 2~3 回流産 4 回以上流産 (NK 細胞高活性 ) 子宮形態異常子宮腔癒着症子宮筋腫頸管無力症黄体機能不全高プロラクチン血症甲状腺機能異常耐糖能異常 治療法 子宮形成癒着剥離筋腫核出頸管縫縮ホルモン療法, 排卵誘発ドーパミン作動薬 内科的治療内科的治療ステロイドアスピリン, ヘパリンアスピリン, ヘパリン カウンセリング, 着床前診断 (PGD) プラセボ ( アスピリン 黄体ホルモン ) テンダーラヴィングケア効果 免疫グロブリン大量療法 * 現在治験が行なわれている * 赤字 特に重要

低用量アスピリン療法 (low dose aspirin=lda) アスピリン = アセチルサリチル酸 世界で初めて人工合成された医薬品である. 1899 年にバイエル社によって アスピリン の商標が登録され発売された. 代表的な消炎鎮痛剤であり, 少量の使用で抗血小板作用を呈する. 抗血小板作用を持つ低用量アスピリン製剤として, バイアスピリン, バファリン配合錠 A81 がある.

低用量アスピリン療法~内服方法 内服法1 アスピリン 月経中以外内服 ~当院はこの方法 基礎体温 月経 内服法2 排卵 アスピリン 排卵 排卵後から内服 月経で中止

低用量アスピリン療法~内服方法 妊娠の場合 アスピリン 排卵 基礎体温は ストレスとな る可能性から やめてもよい 妊娠 アスピリンは継続 基本的に28週まで 状況により最長36週まで

ヘパリン療法 ヘパリンには未分画ヘパリン製剤 (UFH), 低分子ヘパリン製剤があるが, 妊娠中の抗凝固療法として用いるのは UFH である. 2012 年に持田製薬よりプレフィルド UFH 製剤であるヘパリンカルシウム皮下注 5 千単位 モチダ が発売, 在宅自己注射療法が血栓塞栓症に保険適応となった. 基本的に皮下注射用製剤であり,1 日 2 回の自己注射を行なう.

ヘパリン療法 ~ 作用機序 血液凝固の抑制 ( ヘパリンの本来の薬効 ) 血液凝固異常, 抗リン脂質抗体症候群 抗リン脂質抗体の絨毛細胞への沈着を抑制, 抗リン脂質抗体による補体活性化の抑制, 炎症性サイトカイン (TNF-α IL-6 IL-8 など ) の抑制などを介した抗炎症作用 抗リン脂質抗体症候群

ヘパリン療法 ~ 自己注射 妊娠 5 週 ~ 子宮内に胎のうを確認後にヘパリン治療を開始する. 基本的に 1 日 2 回 (12 時間ごと,8 時 20 時など ) の自己注射を行なう. 2 泊 3 日など短期入院による自己注射トレーニングのほか, 専用パッドを用いた外来でのトレーニングを行なう病院 ( クリニック ) もある.

へパリン療法~妊娠の場合 アスピリン ヘパリン 排卵 *基本的にアスピリンを 妊娠 併用する場合が多い 胎のう確認後にヘパリン開始 適応によるが 基本分娩前まで

テンダーラヴィングケアについて テンダーラヴィングケア =tender laving care=tlc= 日本語では やさしさに包まれるようなケア とも言われる? 定まった方法はない. 不育症検査結果の丁寧かつ充分な説明に基づいた治療方針の決定. 妊娠後だけではなく, 妊娠前からの心理的精神的なサポート. 精神面での安定 ( 不安が減る ). たとえその妊娠が流産の転帰となった場合も, 次の妊娠を前向きな気持ちで考えることができる.

テンダーラヴィングケアについて 治療効果として確立されたものはないが, 妊娠転帰との関連を示した報告では下記の項目がある. 1 初期に専門クリニックで診察 2 不育症診療に精通した同じ医師が対応 3 毎週の超音波で妊娠経過を確認 4 時間をかけた説明, 丁寧な対応 すべて安心につながる.4 についてはすべての医師にとって当たり前の対応であると思うが

参考~毎週の超音波 胎のう みえました 初診時 最終月経より5週2日 胎のうを確認

参考~毎週の超音波 胎児 心拍あります 順調です 1週後 最終月経より6週2日 CRL=2.3mm 心拍を確認

参考~毎週の超音波 胎児 大丈夫です 3日後 出血で受診 特に問題ないことを確認

参考~毎週の超音波 胎児 いいですね 4日後 最終月経より7週2日 CRL=9.2mm

参考~毎週の超音波 だいぶいい ですね きっと大丈夫 1週後 最終月経より8週2日 CRL=16.2mm

参考 ~ 毎週の超音波 ほぼ大丈夫 11 日後 (GW のため ), 最終月経より 9 週 6 日, CRL=28.6mm 次から妊婦健診とする

参考~毎週の超音波 もう大丈夫 1週後 初回の妊婦健診 10週6日 CRL=38.0mm

参考 ~ 毎週の超音波 もう安心 2 週後 (2 回目の妊婦健診 ) 12 週 6 日,CRL=62.4mm

流産の原因に ついて <a href="https://jp.freepik.com/freephotos-vectors/computer">computer 写真 Freepik によるデザイン </a>

母体因子 夫婦因子 原因不明 子宮異常 内分泌 代謝異常 自己免疫疾患抗リン脂質抗体血液凝固異常 不育症の原因と治療法 原因 染色体転座保因者 2~3 回流産 4 回以上流産 (NK 細胞高活性 ) 子宮形態異常子宮腔癒着症子宮筋腫頸管無力症黄体機能不全高プロラクチン血症甲状腺機能異常耐糖能異常 治療法 子宮形成癒着剥離筋腫核出頸管縫縮ホルモン療法, 排卵誘発ドーパミン作動薬 内科的治療内科的治療ステロイドアスピリン, ヘパリンアスピリン, ヘパリン カウンセリング, 着床前診断 (PGD) プラセボ ( アスピリン 黄体ホルモン ) テンダーラヴィングケア効果 免疫グロブリン大量療法 * 現在治験が行なわれている * 赤字 特に重要

参考 ~ 生活習慣について 流産した方は 動きすぎたからか おなかを冷やしたからか 〇〇を食べてしまったからか など, 流産に対して自責の念を持つことが多い. 実際に妊婦の生活習慣が原因で流産することは殆どない ( ただし例外に喫煙あり ). 流産したのは決してあなたのせいではない!

参考 ~ カフェインについて カフェイン代謝に関与する CYP1A2 という酵素の遺伝子多型によっては, カフェイン摂取量の増加が h 不育症のリスク因子となる ~ 北大公衆衛生学講座からの報告. カフェイン 1 日摂取量 150.9mg 以下の女性に対し, 同 151mg~300.9mg および 301mg 以上の女性の原因不明不育症に対するオッズ比は各々 3.05(95% 信頼区間 1,24~7.29),16.1( 同 6.55~39.5) であり, カフェイン摂取は不育症リスクを上昇させるとする報告もある.

参考 ~ カフェインについて total (/100ml) 玉露 (150 ml) 180 mg (120 mg) コーヒー ( エスプレッソ )(50 ml) 140 mg (280 mg) コーヒー ( ドリップ )(150 ml) 135 mg (90 mg) コーヒー ( インスタント )(150 ml) 68 mg (45 mg) 栄養ドリンク (100 ml) 50 mg (50 mg) コーラ (500 ml) 50 mg (10 mg) 抹茶 (150 ml) 45 mg (30 mg) ココア (150 ml) 45 mg (30 mg) 紅茶 (150 ml) 30 mg (20 mg) ほうじ茶 (150 ml) 30 mg (20 mg) ウーロン茶 (150 ml) 30 mg (20 mg) 緑茶 (150 ml) 30 mg (20 mg) 玄米茶 (150 ml) 15 mg (10 mg)

参考 ~ カフェインについて total (/100ml) total (/100ml) サントリー ウーロン茶 (500 ml) 100 mg (20 mg) サントリー 伊右衛門濃いめ (500 ml) 100 mg (20 mg) サントリー 黒烏龍茶 (350 ml) 70 mg (20 mg) アサヒ 美スタイル十六茶 (500 ml) 70 mg (14 mg) 伊藤園 お~いお茶緑茶 (500 ml) 65 mg (13 mg) キリン 生茶 (500 ml) 60 mg (12 mg) ダイドー 葉の茶清々しい香り (500 ml) 55 mg (11 mg) サントリー 伊右衛門 (500 ml) 50 mg (10 mg) サントリー 伊右衛門焙じ茶 (500 ml) 50 mg (10 mg) アサヒ 緑茶 (500 ml) 50 mg (10 mg) 伊藤園 お~いお茶玄米茶 (500 ml) 35 mg (7 mg) キリン 午後の紅茶ストレートプラス (350 ml) 182 mg (52 mg) 伊藤園 Tea s Tea Manhattan ミルクティー (500 ml) 170 mg (34 mg) キリン 午後の紅茶エスプレッソティー (185 ml) 117 mg (63 mg) サントリー リプトン白の贅沢 (450 ml) 90 mg (20 mg) キリン 午後の紅茶ミルクティー (500 ml) 80 mg (16 mg) キリン 午後の紅茶ストレートティー (500 ml) 70 mg (14 mg) キリン 午後の紅茶おいしい無糖 (500 ml) 60 mg (12 mg) サントリー リプトンリモーネ (500 ml) 50 mg (10 mg) サントリー リプトンアップルティー (500 ml) 50 mg (10 mg) キリン 午後の紅茶レモンティー (500 ml) 40 mg (8 mg)

血液凝固異常について

血液凝固系とは, 止血のために生体が血液を凝固させる一連の作用系のことである. 逆に形成された血栓を溶かして分解する作用系が線溶系である. 血液凝固系とは

血液凝固異常 凝固異常による不育症は その病態として母児間接点 での血栓による血流障害が想定されている ただし実 際にそれが流産の原因となりうるか まだ議論のある ところである 母児間接点 絨毛組織 胎盤 脱落膜 子宮内膜

活性型プロテイン C の補酵素であり, 活性化プロテイン C と結合し, 活性型第 Ⅴ 因子や活性型第 Ⅷ 因子に結合し抑制することで抗凝固作用を示す. プロテイン S 欠乏

プロテイン S 欠乏 欧米でのプロテイン S 欠乏症の頻度は 0.03~0.13%, 日本では 2.0%, 不育症女性の集団では 7.4% に上るとの報告がある. 流産との直接的な因果関係は現時点では不明とされている. しかし 次項以降へ.

プロテイン S 欠乏 欧米では妊娠後期の死産 子宮内胎児死亡 (IUFD) のリスク因子とされる. 日本ではプロテイン S 活性低下不育症患者の 90% が初期流産患者とされる. ただし妊娠後期の IUFD 既往女性において, 比較的高頻度でプロテイン S 欠乏がみられるとの印象がある ( 私見 ). 流死産だけではなく, 重症妊娠高血圧症候群との関連も報告されている.

プロテイン S 欠乏 日本での治療成績 = 生児獲得率は, 不育症治療に関する再評価と新たなる治療法の開発に関する研究班 ( 齊藤班 ) の調査で, 無治療 6.3%,LDA 単独 77%, LDA へパリン併用 67% と報告されている. 逆に言うと無治療では 93.7% の確率で生児を獲得できない = 流死産することとなる. 我々は基本的に妊娠 28 週までの LDA を行なっている. しかし妊娠後期での胎児死亡既往,LDA 実施も染色体正常流産の既往, などの場合にヘパリンの併用も考慮している.

プロテイン S 欠乏 ~ まとめ 日本においては 10 週未満の初期流産との強い関連が報告されており, 無治療の場合の政治獲得率は 6.6% と低い. LDA は流産予防に有効と考えられる. ただし LDA にヘパリンを併用しても, 生児獲得率が上昇するわけではない.

血液凝固第 Ⅻ 因子欠乏 Ⅻ 因子と流産との関連については数多くの報告があるが,Ⅻ 因子そのものの低下と不育症に直接的な関連はないと考えられている. 抗第 Ⅻ 因子抗体と不育症の関連が注目されている. 治療として,LDA が有効である報告,LDA と無治療群で妊娠予後に差がないとする報告の双方がある. 我々は妊娠 28 週までの LDA を行なっている.

抗リン脂質抗体について

抗リン脂質抗体とは 1983 年に Harris らによって報告された疾患概念. ループスアンチコアグラントや抗リン脂質抗体が陽性となって血栓イベントや習慣流産の原因となるものと報告された. 血栓傾向により, 習慣性流産や若年者に発症する脳梗塞の原因となりうる.

抗リン脂質抗体 ~ 妊娠への影響 流産発生機序 母児接点での凝固亢進, 血栓傾向による血流障害 血液凝固異常と同様の機序 絨毛細胞への障害脱落膜ラセン動脈における絨毛外絨毛組織の分化抑制血清補体活性化, 局所の炎症 流産だけではなく, 死産や胎盤機能不全, 胎児発育不全, 妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症に関係する.

抗リン脂質抗体症候群 ~ 診断 [ 臨床基準 ] 札幌クライテリア (1998), シドニー改変 (2004) 1. 血栓症 2. 産科合併症 a. 妊娠第 10 週以降で他に原因のない正常形態胎児の 1 回以上の死亡 b. 重症妊娠高血圧腎症, 子癇または胎盤機能不全による妊娠 34 週以前の形態学的以上のない胎児の 1 回以上の早産 c. 妊娠 10 週以前の 3 回以上連続した他に原因のない習慣流産 [ 検査基準 ] 1. LAC 2. acl-igg, IgM >40GPL(MPL) or 99%ile 3. acl-β2gpi-igg, IgM >99%ile 臨床所見の 1 項目以上, かつ検査項目のうち 1 項目 (12 週おいて 2 回以上陽性 ) 異常が存在するとき抗リン脂質抗体症候群とする

抗リン脂質抗体症候群 ~ 診断 診断基準を満たすためには 3 回以上の連続した流産 2 回流産では診断できない. 検査陽性の場合も,12 週後の再検が必要. 抗体陽性でも, 診断基準をみたす不育症の方は多くない.

抗リン脂質抗体症候群 問題 : 診断基準を満たさない場合. 3 回ではなく 2 回の流産. 12 週後の再検を待たずに妊娠した場合 ( 年齢的に 12 週を待てない場合も多い ). 基本的に個別対応 ( 基準は施設による ). 我々は妊娠 28 週 ( あるいは 32 週 ) までの LDA, 胎のう確認時から 16 週 ( あるいは 20 週 ) までのヘパリン併用としている. なお単回陽性の場合は基本的に LDA のみとしている.

甲状腺機能異常 について <a href="https://jp.freepik.com/freephoto/_2398749.htm">freepik によるデザイン </a>

甲状腺機能異常 甲状腺は首の前方にある内分泌器官, ヨウ素から甲状腺ホルモンを産生し, 血液中に分泌する. 甲状腺ホルモンには代謝を刺激, 促進する作用があるほか, 妊娠時には胎児の発育に重要な役割を持つ. 甲状腺機能異常, 特に甲状腺機能低下症は流産, 不育症と関係するといわれる.

甲状腺機能異常 甲状腺機能が正常でも甲状腺刺激ホルモン (TSH) が高値となる潜在性甲状腺機能低下症と流産, 不育症との関連が注目されている. 甲状腺自己抗体陽性かつ TSH が 2.5μIU/mL 以上の場合 = 潜在性甲状腺機能低下症の場合は甲状腺補充をするべきと推奨されている. しかし甲状腺自己抗体陰性の潜在性甲状腺機能低下症の場合, 甲状腺補充の治療効果については意見が分かれている.

子宮形態異常について

子宮形態異常 ~ESHRE の分類 ESHRE=European Society of Human Reproduction and Embryology 欧州婦人科内視鏡学会 正常 部分中隔 完全中隔 部分双角 完全双角 双角中隔

参考~中隔子宮 HSG =子宮卵管造影 MRI 弓状ではない HSGだけではなくMRIも実施 双角ではなく中隔子宮と診断 この方は中隔切除後に健児を 得た

子宮形態異常 子宮形態異常は流早産に対し, 高いリスク因子になることが示されている. 特に中隔子宮は流産 早産のリスク因子になるほか, 胎位異常 胎盤早期剥離などの周産期リスク因子になるとされている ~ASRM/ American Society for Reproductive Medicine( 米国生殖医学会議 ) で GradeB= かなりのエビデンスがある, と位置づけられている.

子宮形態異常と不妊症 不育症 診断法 一般 女性 不妊症 不育症 optimal 論文 数 症例 数 形態異常 頻度 弓状% 中隔% 双角% 単角% 重複% その他% (95%CL) (95%CL) (95%CL) (95%CL) (95%CL) (95%CL) 9 5163 5.5 3.9 2.3 0.4 0.1 0.3 0.1 (3.5-8.5) (2.1-7.1) (1.8-2.9) (0.2-0.6) (0.1-0.3) (0.1-0.6) (0-2.2) 2.2 0.2 0.2 0.2 0.1 2.5 (0.9-5.2) (0-0.9) (0-0.7) (0.1-0.5) (0.1-0.2) (1.6-3.7) 1.8 3.0 1.1 0.5 0.3 0.9 (5.3-12.0) (0.8-4.1) (1.3-6.7) (0.6-2.0)* (0.3-0.8)* (0.2-0.5) (0.4-1.8) 6.1 5.8 2.7 0.8 0.8 0.4 1.0 (3.9-9.5) (3.4-10.1) (1.5-4.6)* (0.5-1.4) (0.5-1.2) (0.2-0.9) (0.4-2.4) 13.3 2.9 5.3 2.1 0.5 0.6 0.9 (8.9-20)* (0.9-9.6) (1.7-16.8)* (1.4-3)* (0.3-1.1)* (0.3-1.4) (0.1-12.6) 15.8 8.9 4.3 2.8 0.5 0.6 4.5 (11.9-20.9)* (6.412.4)* (2.3-8.2)* (1.6-5)* (0.3-0.9) (0.2-1.6) (2-9.8)* 24.5 6.6 15.4 4.7 3.1 2.1 0.3 (18.3-32.8)* (2.8-15.7) (12.5-19)* (2.9-7.6)* (2-4.7)* (1.4-3.2)* (0-2.3) 31.8 No study found Non diagnoned Non diagnoned 4.5 Non diagnoned 27.3 suboptimal 13 optimal 19 (2.3-9.1) suboptimal 29 optimal 6 suboptimal 21 不妊症 optimal 9 不育症 subopti- 1 mal 52590 4.6 10303 8.0 8643 2082 3961 7053 66 (20.7-48.8) (1.5-14.1) (17.2-43.3)*

子宮形態異常と不妊症 不育症 診断法 一般 女性 optimal 不妊症 optimal 不育症 optimal 不妊症 optimal 不育症 論文 数 症例 数 形態異常 頻度 弓状% 中隔% 双角% 単角% 重複% その他% (95%CL) (95%CL) (95%CL) (95%CL) (95%CL) (95%CL) 9 5163 5.5 3.9 2.3 0.4 0.1 0.3 0.1 (3.5-8.5) (2.1-7.1) (1.8-2.9) (0.2-0.6) (0.1-0.3) (0.1-0.6) (0-2.2) 1.8 3.0 1.1 0.5 0.3 0.9 (5.3-12.0) (0.8-4.1) (1.3-6.7) (0.6-2.0)* (0.3-0.8)* (0.2-0.5) (0.4-1.8) 13.3 2.9 5.3 2.1 0.5 0.6 0.9 (8.9-20)* (0.9-9.6) (1.7-16.8)* (1.4-3)* (0.3-1.1)* (0.3-1.4) (0.1-12.6) 24.5 6.6 15.4 4.7 3.1 2.1 0.3 (18.3-32.8)* (2.8-15.7) (12.5-19)* (2.9-7.6)* (2-4.7)* (1.4-3.2)* (0-2.3) 19 6 9 10303 8.0 2082 7053 数字は相対リスク 95%CL=95%信頼区間 *<0.001

種々の子宮形態異常の妊娠への影響 妊娠率 初期流産率 中期流産率 早産率 分娩時胎位異常 1.弓状子宮 1.03 (0.94-1.12) 1.35 (0.81-2.26) 2.39 (1.33-4.27) 1.53 (0.70-3.34) 2.53 (1.54-4.18)* 2.不全中隔子宮 0.80 (0.57-1.11) 2.94 (1.90-4.54)* 1.86 (0.56-6.22) 2.01 (1.16-3.51) 5.29 (1.89-14.86) 3.完全中隔子宮 0.93 (0.75-0.96) 2.37 (1.64-3.43)* 3.74 (1.57-8.91) 2.30 (1.46-3.62)* 6.15 (3.96-9.53)* 2+3 0.86 (0.77-0.96) 2.89 (2.02-4.14)* 2.14 (1.48-3.11) 2.14 (1.48-3.11)* 6.24 (4.05-9.62)* 4.双角子宮 0.86 (0.61-1.21) 3.40 (1.18-9.76) 2.32 (1.05-5.14) 2.55 (1.57-4.17)* 5.38 (3.15-9.19)* 5.重複子宮 0.9 (0.79-1.04) 1.10 (0.21-5.66) 1.39 (0.44-4.41) 3.58 (2.00-6.40)* 3.70 (2.04-6.70)* 6.単角子宮 0.74 (0.39-1.41) 2.15 (1.03-4.47) 2.22 (0.53-9.19) 3.47 (1.94-6.22)* 2.74 (1.30-5.77) 4+5+6 0.87 (0.68-1.11) 2.56 (0.89-7.37) 1.94 (0.92-4.09) 2.97 (2.08-4.23)* 3.87 (2.42-6.18)* 数字は相対リスク 95%信頼区間 *<0.001

子宮形態異常 ~ 治療の必要性 中隔子宮に対する手術療法の妊娠転帰に関する報告は少なくないが, その殆どは後方視的検討で, 前向き RCT は存在しない. しかし中隔切除の成績は良好で, いずれの報告でも生児獲得率の向上, 流産率の低下が報告されている. 厚生労働省研究班 子宮奇形を持つ反復流産患者の妊娠帰結調査, 手術 非手術の比較多施設共同研究 より, 子宮形態異常, 特に中隔子宮に対する内視鏡的中隔切除の有効性が示された.

子宮形態異常 ~ 治療の必要性 ただし同研究班 不育症における子宮奇形の Impact では, 診断後の初回妊娠での生児獲得率, 累積生児獲得率とも, 形態異常群 ( 中隔子宮および双角子宮 ) と対象群との間に有意差はないとの結論である. ASRM の中隔子宮ガイドラインでも, 中隔子宮に対する子宮鏡下手術は GradeC( 推奨するには十分なエビデンスがない ) としている. 治療の有効性は報告されているが, 高いエビデンスレベルではない

染色体異常について

染色体とは いわばヒトの体の設計図. ひとつの細胞に 2 本 1 対, 合計 23 対 =46 本が存在 ( うち 2 本は性染色体 ). 配偶子 ( 精子, 卵子 ) の染色体数は減数分裂により 1 本ずつ計 23 本となる この分裂の際の問題 ( 不分離など ) が受精卵の染色体異常の原因となる.

受精卵における染色体異常の頻度 受精卵には高頻度で染色体異常がみられることがわかってきている. 女性が 30 歳の場合, 着床寸前の胚盤胞の段階まで育った受精卵のうち正常染色体の割合は 70%, 残りの 30% には染色体異常が認められる. 受精卵における染色体異常の割合は 40 歳で 70%, 42 歳で 80% と報告されている. * これらの受精卵が必ず着床するわけではない 受精卵の染色体異常率 = 流産率ではない.

参考 ~ 母体年齢と染色体異常 母体年齢と受胎物 (conception) における染色体異常の関係 母体年齢 n % 染色体異常 (= 異数性 )% <35 82 52% 35~40 122 69% 40< 69 72% これらの受精卵が必ず着床するわけではない = この数値が流産率という訳ではない.

染色体異常流産 ( 数的異常 ) 初期流産の 50~70% が染色体異常に起因するといわれている. これを 2 回反復する確率は 25~49% となり, 不育症女性のそれなりの割合を占める計算となる. 流産を反復する女性の 41% は受精卵の染色体異常の反復であったとする報告もある. 妊娠年齢の高齢化により, 染色体不分離に伴う受精卵の数的な染色体異常を繰り返す女性が増加すると考えられる.

染色体異常流産 ( 構造異常 ) 不育症カップルに対して染色体検査を行うと, 約 5% に夫婦いずれかの染色体構造異常がみられる. 多くが均衡型相互転座およびロバートソン転座である.

均衡型相互転座 染色体の分離様式により妊娠転帰は異なるが, 不均衡型の多くは流産のとなる ( まれに不均衡時として出生する ). 我々は流産時の絨毛染色体検査で不均衡型相互転座が見られた場合に夫婦の検査について説明している. 検査は夫婦同時に行なうことが望ましい. * 転座が検出された場合, 夫婦いずれかの異常であるかどうか特定することに意味はないこと.

均衡型相互転座 転座がみつかっても, 生児を得る可能性は充分にある. 流産率は転座のない方に比べ高くなるが, 累積生児獲得率は 68~83% とも報告されている. 日本での他施設共同研究では転座と診断された次の妊娠で 63% が生児を獲得していると報告されている.

着床前診断 ~preimplantation genetic diagnosis=pgd PGD とは, 体外受精により得られた胚の染色体検査を行ない, 異常のない胚を移植することにより流産を回避しようとする診断技術である. 倫理的な問題も内包するため, 日本産科婦人科学会倫理委員会の審査を必要とし, 臨床研究として行なわれている.