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< 事業の目的 > 視力は生まれた後から発達していきますが 遠視や乱視 斜視などの種々の要因によって発達が阻がいされますと弱視になります 弱視とは特別な病気がないにもかかわらず視力の低下した状態であり 6 歳頃までに治療を開始しなければ視力が未熟なままになり 生涯にわたって眼鏡やコンタクトレンズによ

Ⅰ. 試験実施方法 1. 目的 ブルーライトカットレンズを搭載した眼鏡の装着による VDT 症候群の症状改善効果を対 照群を用いて検証した 2. 方法 2.1. 試験デザイン 多施設共同による二重マスク並行群間比較試験 2.2. 対象 VDT 症候群と診断された患者 本試験では VDT 作業が原因と

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健康保険が使えるときと使えないとき 健康保険の給付の対象となるのは 方法として安全性や有効性が認められ あらかじめ国によって保険の適用 が認められている養に限られます こんなときは 仕事や日常生活にさしさわり のないソバカス アザ ニキ ビ ホクロ わきがなど 17-1 回復の見込みがない近視 遠視

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平成19年度学校保健統計調査結果

発育状態調査 身長 身長 ( 平均値 ) を前年度と比較すると 男子は 5~8,10,11,16 歳で 女子は 7~12,15,17 歳で前年度を上回っている (13 年齢区分中 男子は増加 7 減少 4 女子は増加 8 減少 3) 全国平均と比較すると 男子は全ての年齢で 女子は 9~11 歳を除

チトマス ステレオテスト 両眼分離方法 偏光 長所 定量性に優れている 記載例 TST(SC) 図形パターン 最も一般的に普及しているので 他施設との比較が容 fly(-) R supp(+) 実質図形 易である animals(1/3) 検査距離 40cm 視差 羽先端 幼児に動機付けがし易い 短

平成19年度学校保健統計調査結果

茨城大学教育学部紀要 ( 教育科学 )64 号 (2015) 知的障害養護学校における視機能評価へのオートレフラクトメーターの活用 板谷安希子 * 尾﨑久記 ** (2014 年 11 月 28 日受理 ) Evaluation of Visual Function of Childr

報道関係者各位 NEWS RELEASE 2018 年 10 月 9 日ジョンソン エンド ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー 10 月 10 日は 目の愛護デー 小 中 高校の養護教諭 288 名へのアンケート結果を発表 目を取り巻く環境が悪化!? 子どもたちの視力低下が浮き彫りに 6 割の

300426_07-1合同委員会 表紙文

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薬食発 0718 第 15 号平成 24 年 7 月 18 日 各都道府県知事殿 厚生労働省医薬食品局長 コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について コンタクトレンズについては 薬事法 ( 昭和 35 年法律第 145 号 以下 法 という ) 第 2 条第 5 項に規定する 高度管

3 睡眠時間について 平日の就寝時刻は学年が進むほど午後 1 時以降が多くなっていた ( 図 5) 中学生で は寝る時刻が遅くなり 睡眠時間が 7 時間未満の生徒が.7 であった ( 図 7) 図 5 平日の就寝時刻 ( 平成 1 年度 ) 図 中学生の就寝時刻の推移 図 7 1 日の睡眠時間 親子

Japanese Orthoptic Journal 45: , 2016.

Ⅱ 調査結果の概要

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発育状態調査 身長 身長 ( 平均値 ) は 前年度と比較すると 男子は 12~15 歳で前年度を上回り 女子は 5,6,8,9,14,16 歳で前年度を上回っている (13 年齢区分中 男子は増加 4 減少 6 女子は増加 6 減少 5) との比較では 男子は全ての年齢で 女子は 5,9 歳を除い

視覚障害

~目の話~ 幼稚園時代に気をつけたいこと

乳児内斜視 (Infantile esotropia)

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44 た 等価球面値で屈折異常を有する割合は 57 眼 61% となり 遠視に比し近視の割合が高率に認められた 屈折異常の程度は ± 5D 以上の屈折値を 強度 として分類した ( 図 4) 2) 強度近視 21 眼 (37 %) 強度遠視 4 眼 (3.5%) で 屈折異常を有する 57 眼中 4

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4 身体活動量カロリズム内に記憶されているデータを表計算ソフトに入力し, 身体活動量の分析を行った 身体活動量の測定結果から, 連続した 7 日間の平均, 学校に通っている平日平均, 学校が休みである土日平均について, 総エネルギー消費量, 活動エネルギー量, 歩数, エクササイズ量から分析を行った

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Taro-① 平成30年度全国学力・学習状況調査の結果の概要について

障害程度等級表

Japanese Orthoptic Journal 46: , 2017.

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2) エネルギー 栄養素の各食事からの摂取割合 (%) 学年 性別ごとに 平日 休日の各食事からのエネルギー 栄養素の摂取割合を記述した 休日は 平日よりも昼食からのエネルギー摂取割合が下がり (28~31% 程度 ) 朝食 夕食 間食からのエネルギー摂取割合が上昇した 特に間食からのエネルギー摂取

一身体障害認定基準 1 総括的解説 (1) 視力の屈折異常がある者については 眼科的に最も適当な矯正眼鏡を選び 矯正後の視力によって判定する () 視力表は万国式を基準とした視力表を用いるものとする () 視野はゴールドマン視野計及び自動視野計又はこれらに準ずるものを用いて測定する ゴールドマン視野

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自動車感性評価学 1. 二項検定 内容 2 3. 質的データの解析方法 1 ( 名義尺度 ) 2.χ 2 検定 タイプ 1. 二項検定 官能検査における分類データの解析法 識別できるかを調べる 嗜好に差があるかを調べる 2 点比較法 2 点識別法 2 点嗜好法 3 点比較法 3 点識別法 3 点嗜好

6. 調査結果及び考察 (1) 児童生徒のスマホ等の所持実態 1 スマホ等の所持実態 54.3% 49.8% 41.9% 32.9% % 78.7% 73.4% 71.1% 76.9% 68.3% 61.4% 26.7% 29.9% 22.1% % 中 3 中 2 中 1

疲れ目の症状 62.8% 疲れ目の症状 n= % 41.2% 37.4% 21.8% 21.4% 2.2% 18.9% 13.4% 12.2% 7.6% 目がショボショボする 目の乾燥 などの症状を挙げた人がおおかったです これらの症状は ドライアイの症状でもあるので ドライアイである

コンタクトレンズ診療ガイドライン(第2版)

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図 信号現示例 ( 高速進行 (GG): 左, 進行 (G): 右 ) 矯正の屈折度について基準の緩和が提案された しかしながら, 委員会報告書では視力の値そのものの緩和についての検討にも触れているものの, この時点では安全の確認に議論の余地が残るとされた さらに, 当時導入されようとしていた高速進

著作権法に違反いたしますので 以下の図 ( 文章を含む ) などを 柏木豊彦の許可なく 複製することを禁じます なお図 B,C,D は 第 51 回日本眼光学学会総会 2015 年 9 月 26 日 ~27 日 岡山コンベンションセンターにて 柏木豊彦がすでに発表したものです 多焦点眼内レンズ挿入眼

四消化器系 ( 口腔及び歯牙 を除く ) 五血液及び造血器系六腎臓 泌尿器系及び生殖器系 ( 二 ) 心筋障害又はその徴候がないこと ( 三 ) 冠動脈疾患又はその徴候がないこと ( 四 ) 航空業務に支障を来すおそれのある先天性心疾患がないこと ( 五 ) 航空業務に支障を来すおそれのある後天性弁

930,000 6,000 7,170 55, , ,903 71,314 1,007,217 8,363 47,543 47,543 39,180 3,000 42,180 5,363 3,000 3, , ,594 63,

Japanese Orthoptic Journal 43: , 2014.

一 身体障害者障害程度等級表 ( 抜すい ) 級別視覚障害 1 級両眼の視力 ( 万国式試視力表によって測ったものをいい 屈折異常のある者については きょう正視力について測ったものをいう 以下同じ ) の和が0.01 以下のもの 2 級 1. 両眼の視力の和が0.02 以上 0.04 以下のもの 2

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スライド 1

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

小学生のカルシウム摂取量に寄与する食品の検討 小学生のカルシウム摂取量に寄与する食品の検討 小川瑞己 1 佐藤文佳 1 村山伸子 1 * 目的 小学生のカルシウム摂取の実態を把握し 平日と休日のカルシウム摂取量に寄与する食品を検討する 方法 2013 年に新潟県内 3 小学校の小学 5 年生全数 3

川崎医療福祉学会誌 Vol. 28 No 原著 他覚的屈折検査を併用した三歳児健康診査における視覚健診 *1 林泰子 *2 松井佳奈子 *1,2,3 三木淳司 *1 田淵昭雄 要 約 井原市において視能訓練士が加わった三歳児視覚健診 ( 以下, 健診 ) で2 種類の

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シリーズ刊行にあたって 21 quality of life 80

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Japanese Orthoptic Journal 44: , 2015.

平成20年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果(概要)

基礎統計

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Japanese Orthoptic Journal 45: , 2016.

画像参照画像送り 5 画像下部に再生ボタンが表示されます 再生ボタンをクリックすると 自動コマ送りされます 1

手術後の生活の質に 関係する眼内レンズ度数

Japanese Orthoptic Journal 46: , 2017.

01_認定基準通知(鑑)

(2) 学習指導要領の領域別の平均正答率 1 小学校国語 A (%) 学習指導要領の領域 領 域 話すこと 聞くこと 66.6(69.2) 77.0(79.2) 書くこと 61.8(60.6) 69.3(72.8) 読むこと 69.9(70.2) 77.4(78.5) 伝統的な言語文化等 78.3(

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2 調査結果 (1) 教科に関する調査結果 全体の平均正答率では, 小 5, 中 2の全ての教科で 全国的期待値 ( 参考値 ) ( 以下 全国値 という ) との5ポイント以上の有意差は見られなかった 基礎 基本 については,5ポイント以上の有意差は見られなかったものの, 小 5 中 2ともに,

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クレイによる、主婦湿疹のケア

(3)(4) (3)(4)(2) (1) (2) 20 (3)

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群馬県野球連盟


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ESPEC Technical Report 12

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河川砂防技術基準・基本計画編.PDF

裁定審議会における裁定の概要 (平成23年度)

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日本経大論集 第45巻 第1号

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レーシック手術を安易に受けることは避け、リスクの説明を十分受けましょう!-希望した視力を得られないだけでなく、重大な危害が発生したケースもあります-

厚生年金保険標準報酬月額保険料額表

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第 5 分科会 小学生の視力 屈折 調節機能についてー第 2 報ー 1 千葉県医師会 かわばた眼科浦安市医師会 かわばた眼科桃山学院大学法学部日本家庭こども総合研究所 川端秀仁 梅澤 竜彦 高橋 ひとみ 衛藤 隆 はじめに演者らは昨年度 一定の割合で近見視力不良の子どもが存在し 近見視力不良児は視行動に多くの問題を抱えていること その原因に調節機能が関与している可能性を報告した 今年度は 視機能検査の内容に同意を得られた演者が学校医を勤める1 小学校 ( 昨年度と異なる ) 全児童を対象に視機能の実体を明らかにすべく調節機能を中心に視力 屈折異常との関連を調査したので報告する 対象と方法 2012 年 5 月 千葉県下の B 小学校において 全児童 837 人 ( 受検者 826 人 : 男子 421 名女子 405 名 ) 対象に 遠見視力 近見視力検査 屈折検査 調節効率検査を行った 全ての検査は日常視 ( 裸眼または使用している眼鏡装用 ) で行った これらの検査は 学校眼科医である演者の指導のもとに 視能訓練士 7 名と東京医薬専門学校視機能学科教官 3 名および 3 年生 24 名が行った 遠見視力検査は 学校保健法に則り検査距離 5 m で 370 方式 による簡易遠見視力検査を 近見視力検査も 昨年までの検査距離眼前 40cm を眼前 30cm に変更し 単一視標 ( 0.3 0.5 0.8 ) を判別する簡易近見視力検査でおこなった 現在 学校健康診断において 近見視力検査は行われていないので スクリーニングの基準値はない 当研究では昨年同様 湖崎克 ( 元小児眼科学会理事長 ) 氏の先行研究 眼前の活字を判読できる視力 1 から近見視力の基準値を 0.8 とした 屈折検査は オートレフケラトメータ (NVision-K 5001 味の素トレーディング株式会社製 ) を使用した 調節効率検査は 球面レンズをフリップして 調節がスムーズに変えられるかを評価する方法で行なった 具体的には 弱度近視の影響を避けるため 昨年度と異なり検査距離を 30cm 視標 0.7 ± 2.00D のフリッパーレンズを眼前において視標を明視させる まず +2.00D レンズを通して明視出来れば -2.00D にフリップしまた明視させる 明視出来ればもう一度 +2.00D にフリップしまた明視させる このようにして 30 秒間に何回裏返しができるかを両眼で検査した +2.00Dレンズを通して30 秒間明視出来なければ -2.00D にフリップして明視出来るか確認した いずれかのみ出来たものは 0.5 回とした 30 秒間に 0 回 者を不良者とし さらに片眼検査を行った 遠見視力または近見視力 B 以下 および調節効率検査で回転数 0 回の児童に対し眼科での精査を勧める報告書をだした 検査室および視標面の照度は適切であることを確認後 視力検査を行っている 統計処理は SPSS(Ver19)χ 2 検定で行った 結果 1. 視力検査の昨年度との比較全学年を通して昨年度と比較し 遠見視力は昨年より不良な児童が多く一昨年度の結果と類似していたが ( 図 1a) 近見視力に大きな違いは見られなかった ( 図 1b) 今回の結果は 視力検査が検査担当 1

の違い ( 担任が行うか 専門の検査員が行うか ) に影響される可能性を示唆している なお左右眼の差はないことから解析および図は右眼のみを示している 図 1a 遠見視力昨年度との比較 遠見視力不良と近見視力不良の関連で 右眼の場合 最も多かったのは 遠見視力 近見視力とも健常 眼 57.6% ついで 遠見視力のみ不良 眼 23.5% 遠見視力 近見視力とも不良 眼 11.0% 近見視力のみ不良 7.9% であった ( 図 2c) 近見視力では学年による差は小さい 0.8 未満 のものは 4 年生までは学年にあがるにつれ減少傾向にあるが 5 6 年で再び低下する結果となった ( 図 2b) 調節機能 屈折度の近視化と関係している可能性がある 図 2b 学年別近見視力 図 1b 近見視力昨年度との比較 図 2c 遠見視力 近見視力不良者の割合 2. 学年別視機能 2.1 遠見視力と近見視力 図 2a 学年別遠見視力 遠見視力は 眼鏡装用しているものも含まれている日常視力での検査であるにもかかわらず 従来の結果通り学年がすすむにつれ低下が認められた B 評価以下の 視力 1.0 未満 は 1 年生の 29.6% から 6 年生の 44.4% に増加する ( 図 2a) 2.2 屈折度学年があがるにつれ遠視群 正視の割合が減少し 近視群が増加した ( 図 2d) 乱視は各学年により4 年生で少ないがほぼ一定である 全学年を通して 76.1% が乱視なし 弱度乱視は 22.3% 強度乱視は 1.6% であった 各学年の平均屈折度 ( 裸眼 ) は1 年生の -0.05D から徐々に近視化し6 年生では -1.37D となる ( 図 2e) 各屈折度の屈折値は以下通りである 中等度遠視 :+3.00 ~ +5.75D 弱度遠視 :+0.25 ~ +2.75D 正視:± 0 ~ -0.50D 弱度近視:-0.75 ~ -2.75D 中等度近視: -3.00 ~ -5.75D 強度近視: 2

-6.00 ~ -8.75D 乱視については 乱視なし :cyl- 0.50D 未満 弱度乱視 : cyl-0.75 ~ -1.75D 強度乱視: cyl-2.00 以上図 2d. 学年別屈折分類 ( 右眼 ) 図 2e. 学年別平均裸眼屈折度 ( 右眼 ) 上下のバーは1 標準偏差 2.3 眼鏡 ( コンタクトレンズ ) 装用者眼鏡装用者は 1 学年の 4% から6 学年の 26.2% へと学年が上がる毎に増加する コンタクト装用者は2 年生の1 名のみであった 2.4 日常屈折度日常眼鏡を装用していないものは裸眼の 日常眼鏡を装用しているものは眼鏡度数を裸眼の屈折度から差し引いた残余屈折度を計算し 日常屈折度を検討した 眼鏡装用により4 年生以降の学年で残余屈折度は裸眼屈折度に比較し補正されている しかし 5 6 年生で明らかに眼鏡装用が必要と思われる視力 C( 視力 0.5 未満 ) がそれぞれ 24.1% 30.9% 存在することからさらに視力補正を指導する必要がある 図 2g. 学年別平均日常屈折度 ( 右眼 ) 上下のバーは1 標準偏差 図 2f. 学年別眼鏡装用者 ( 右眼 ) 2.4 調節効率 3 回サイクル以上プラス マイナスのレンズが切り替わり正常と考えられるものは今回 422 名 (51.1% ) であった ( 昨年は 11.35%) 一度も切り替えられなかったものは 62 名 (7.5%) であった ( 昨年は 19.3% ) 全学年平均の回数は 2.75 ± 1.41 回で米国の平均 3.0 回にかなり接近した値となった 正常者が増えた直接の原因は検査距離の変更にあると考えられる 検査距離 40cm では明視に必要な調節量が 2.50D であることから +2.00D の負荷を与える場合 理論的には屈折度が -0.50D より強い 3

近視の状態では視力表が明視出来なくなる 検査距離 30cm では明視に必要な調節量が 3.33D であることから +2.00D の負荷を与える場合 理論的には屈折度が -1.33D より強い近視の状態では視力表が明視出来なくなる しかし 各学年での日常屈折度が高学年でも -0.75D 以下であることから検査距離を 40cm から 30cm に変更したことにより調節効率検査 ( プラスレンズ側 ) に対する残余屈折の影響をほぼ受けず 評価がより正しく行われたと考えられる また昨年度は学年と調節効率平均回数の間に関連は認めなかったが 本年度は 学年が上がるに従い調節効率が向上することが確認された 図 2h に示すように 5 年生で低下を認めるが1 年生の平均 1.81 回から6 年生の 3.43 回に回数が増加し調節効率の向上が認められる 3. 視機能間の関連 3.1 調節効率と屈折度 1 年生で遠視群が多く 学年が上がると遠視群が減少するにつれ 調節効率が向上することから遠視と調節効率に何らかの関係が示唆される しかし 調節効率回数と平均屈折度との間には直接的関係は認めなかった ( 図 3a) さらに屈折分類別に調節効率回数をみた場合も屈折種別間に差を認めなかった 図 3a 調節効率と平均屈折度 図 2h 学年別調節効率 p<0.0001 調節効率の検査では (+) レンズ側でピント合わせに時間がかかるか (-) レンズ側で時間がかかるかをみているが今回の検査では 調節緊張の状態を示す (+) レンズ側で時間のかかるものが 347 人 (50.5%) (-) レンズ側で時間がかかるものが 77 人 (12.5%) 両者に差がないもの 263 人 (38.3%) と (+) レンズ側で時間のかかるものが多く 調節緊張の状態で過ごす児童が多いことが確認された 3.2 調節効率と視力調節効率と遠見視力は有意 (p<0.0001) に関連し 視力 A で平均 2.89 ± 1.46 回から視力 D で平均 1.94 ± 1.78 回と視力が不良になるにつれて調節効率回数も低下した ( 図 3b) 近見視力も視力 A で平均 2.79 ± 1.48 回から視力 D で平均 2.00 ± 1.73 回と調節効率と有意 (p<0.05) に関連していた ( 図 3c) 3.3 視力と屈折度遠見視力では 視力レベルの平均屈折度 (± 標準偏差 ) は A:-0.23 ± 1.06D B:-1.40 ± 1.77D C: -1.78 ± 1.43D D:-2.28 ± 1.78D と遠見視力が低下するにつれ近視度が増加する 屈折度分類でも視力 A では遠視群 36.3% 近視群 14.1% であるのに対し視力 D では遠視群 8.3% 近視群 83.3% となる 近見視力では 視力レベルの平均屈折度 (± 標準偏差 ) は A:-0.72 ± 1.44D B:-0.66 ± 1.37D C: 4

-0.83 ± 1.61D D:-1.28 ± 2.38D と近見視力と屈折度には関係が認められない 図 3b 調節効率と遠見視力 p<0.0001 図 3c 調節効率と近見視力 p<0.05 また視力検査の結果は検査者により大きく変わることが確認された 2) 遠見視力良好で 近見視力のみ不良の児童が 8% いることが確認された 3) 遠見視力のみ不良の児童は 23% であり 近見視力もともに不良である児童は 11% いることが確認された 4) 小学校児童の ± 2.00D 調節効率検査での 30 秒間の反転回数は 日常視の状態で 2.75 ± 1.41 回で米国の平均 3.0 回にかなり接近した値となった また学年とともに調節効率が向上することが確認された 調節効率の成熟は小学校高学年まで待たねばならないと考えなければならないのかもしれない 次年度以降の課題としたい 5) 調節効率検査から調節緊張の状態で過ごしている児童が 50.5% と多数存在することが確認された 6) 調節効率の不良は 遠見視力 近見視力の低下と関連していることが確認された まとめ学校検視後 遠見視力不良で眼科受診する児童に対し 遠見視力だけでなく 近見視力および調節機能検査を行い 適切な対処を行う必要がある また 学校眼科検診で近見視力検査を実施することを提案したい 4. 精査勧告者遠見視力 B 以下 289 名 近見視力 B 以下 158 名 調節効率回転数 0 回 79 名 ( 重複あり ) 結論 1) 昨年と異なる小学校でも 児童の中に多くの日常遠見視力不良者および一定比率の近見視力不良者 調節効率不良者が存在することが再確認された 5