15 図表 1. 住宅投資 ( 季調値 指数 212 年 =) 14 図表 2. 住宅着工戸数と建設許可件数 ( 季調値年率 万戸 ) :1 13:1 14:1 15:1 16:1 17:1 18:18:2 18:3 ( 資料 )BEA

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28 GCC UAE GCC (2) 大きく上昇した食料価格と住居費 GCC GCC GCC 図表 2 湾岸協力会議 (GCC) 諸国の消費者物価上昇率 (28 年 ) 図表 3 湾岸協力会議 (GCC) 諸国の消費者物価指数に占める食料品と住居費の割合

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1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

平成 21 年 9 月 5 日 角山智 投資環境レポート (2009 年 9 月 ) 1. 主な株価指数 8 月は 中国株が大幅に値下がりしました 反面 出遅れていた英国株が好調です 市場 日本株 日本新興市場 J-REIT 米国株 英国株 中国株 ( 指数 ) (TOPIX) (JASDAQ) (

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目 次 はじめに 1. 景気は減速 中国経済の重しとなる過剰債務 過剰投資 先行き 景気が大幅に下振れるリスクも おわりに はじめに GDP RIM 215 Vol.15 No.59

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今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

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別紙2

News Release No.214(14-5) 2014 年 ( 平成 26 年 )6 月 13 日 東商記者クラブ 日銀クラブで 資料投函させていただいております 平成 26 年 5 月度貸金情報統計概況 貸金業法の指定信用情報機関シー アイ シー (CIC) は 毎月 貸金情報統計を公表して

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2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

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1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

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< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

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マイナス金利付き量的 質 的金融緩和と日本経済 内閣府経済社会総合研究所主任研究員 京都大学経済学研究科特任准教授 敦賀貴之 この講演に含まれる内容や意見は講演者個人のものであり 内閣府の見解を表すものではありません

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( 無断転用禁止 ) BRICs 経済研究所レポート 中長期で上昇が期待されるブラジル株 ~2030 年のボベスパ指数は 2005 年実績の 8.4 倍まで上昇する見込み ~ ~ 要 旨 ~ 2006 年 9 月 2 日 ( 土 ) BRI Cs 経済研究所代表門倉貴史 postbr

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いるものの 引き続き年前半に比べて先行きの不透明感は強い こうした状況下で懸念されるのは 米国経済が景気後退に陥る確率 ( 以下 景気後退確率 ) がどの程度かという点であろう 米国のエコノミストの予測を集計する Blue Chip Economic Indicators(9 月 1 日号 ) では

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第 124 号 公益社団法人日本経済研究センター Japan Center for Economic Research 米国の金利上昇 住宅投資を下押し 218 年 11 月 15 日公表 利上げ続けば景気に悪影響も 短期経済予測班 : 岩橋淳樹 < 監修 > 短期経済予測主査 : 西岡慎一 総括 : 宮﨑孝史 ポイント 米国の住宅投資が減少に転じている 住宅投資は 218 年に入り 3 四半期連続でマイナス成長となり 弱い動きが続いている 住宅販売戸数が頭打ちであるほか 新築住宅価格の増勢も歯止めがかかるなど 住宅需要は低下している 金利の上昇が住宅需要の弱さにつながっている 政策金利の引き上げで住宅ローン金利は上昇しており 18 年 1 月には 8 年ぶりに 5% 台に達した 試算によれば 金利上昇は 218 年に入り住宅投資を 6.% 下押しに寄与している 米国経済は大型減税に支えられて好調であり 今のところ 住宅投資の減少が景気全体に及ぼす影響は小さい リーマン ショック時と異なり 金利上昇によるデフォルト増加が 金融機関のバランスシート悪化を通じて 住宅投資を一段と減少させる可能性も低い ただし 政策金利は今後も引き上げられる見込みであり 住宅投資の弱さは続く可能性がある 景気全体への影響が注目点となる はじめに 米国の住宅投資が減少に転じている これには住宅需要の低下が挙げられ 住宅販売戸数と住宅価格の増勢がともに一服している こうした住宅投資を巡る弱さは 政策金利の上昇が影響している可能性がある 以下では 最近の住宅市場を概観した後 金利上昇による住宅需要への影響について考察する 減少に転じる住宅投資 住宅投資の伸びは 216 年ごろから鈍化をはじめ 218 年に入ると 1-3 月期に前期比年率 3.4% 4-6 月期に同 1.4% 7-9 月期に同 4.% と 3 四半期連続で減少した ( 図表 1) 7-9 月期の住宅着工戸数は 年率 121.8 万戸と前期比 3.4% 減少した ( 図表 2) 先行指標である建設許可件数も 7-9 月期は年率 127.4 万戸と同じく 3.4% 減少した 住宅投資の減少は 住宅需要の低下を反映しているとみられる 新築住宅販売戸数は 18 年に入ってから頭打ちとなっており 7-9 月期は年率 58 万戸と前期比 8.3% 減少している ( 図表 3) これまで大きく上昇してきた住宅価格も 18 年に入って低下した ( 図表 4) 建設業者の景況感も悪化方向にあり NAHB( 全米住宅建設業協会 ) 住宅市場指数は 17 年 12 月をピークに低下している ( 図表 5) 随所に住宅市場の弱さが見られる -1-

15 図表 1. 住宅投資 ( 季調値 指数 212 年 =) 14 図表 2. 住宅着工戸数と建設許可件数 ( 季調値年率 万戸 ) 14 13 13 12 11 12 11 9 12:1 13:1 14:1 15:1 16:1 17:1 18:18:2 18:3 ( 資料 )BEA 9 7 6 住宅着工戸数建設許可件数 12:1 13:1 14:1 15:1 16:1 17:1 18:18:3 ( 資料 )Census Bureau 7 65 6 55 5 45 4 35 3 図表 3. 新築住宅販売戸数 ( 季調値年率 万戸 ) 12:1 13:1 14:1 15:1 16:1 17:1 18:18:3 ( 資料 )Census Bureau 36 34 32 3 2 26 24 22 ( 千ドル ) 図表 4. 新築住宅販売価格 12:1 13:1 14:1 15:1 16:1 17:1 18:18:3 ( 注 ) 中央値 ( 資料 )Census Bureau 7 6 5 4 ( 指数 ) 図表 5. NAHB 住宅市場指数 3 ( 月次 ) 2 12/1 13/1 14/1 15/1 16/1 17/1 18/1 18/1 ( 資料 )National Association of Home Builders 住宅ローン金利上昇 8 年ぶりの水準へ 住宅需要の低下は政策金利が上昇していることが背景にある 米連邦準備理事会 (FRB) は 215 年 12 月以来 政策金利 ( フェデラル ファンド レート ) を段階的に引き上げている すでに 8 回の利上げが実施され 政策金利の誘導目標は 利上げ開始前の.-.25% から 18 年 9 月末時点で 2.-2.25% まで引き上げられた -2-

政策金利の上昇により 住宅ローン金利も上昇傾向にある ( 図表 6) 住宅ローン金利は直近ボトム (16 年 9 月 ) の 3.62% から徐々に上昇し 18 年 1 月には 5% 台に達している 5% 超えは 1 年 4 月以来 8 年ぶりである 住宅ローン金利の上昇により 住宅ローン申請件数 ( 住宅購入目的 ) の増勢も最近は鈍化している ( 図表 7) 7. 図表 6. 住宅ローン金利 6.5 6. 5.5 5. 4.5 4. 3.5 ( 月次 ) 3. 8/1 1/1 12/1 14/1 16/1 18/1 18/1 ( 注 ) 住宅ローン金利は3 年固定 ( 資料 )MBA; Bloomberg 35 3 25 2 図表 7. 住宅ローン申請件数 (199/3/16=) 15 ( 月次 ) 12/1 13/1 14/1 15/1 16/1 17/1 18/1 18/1 ( 注 ) 住宅購入目的の住宅ローン申請件数 ( 資料 )MBA; Bloomberg 金利上昇が住宅投資を 6.% 下押し 金利上昇が住宅投資を下押ししている可能性がある 住宅ローン金利の上昇は 家計の住宅取得コストを増加させ 住宅投資を減少させる VAR モデル (Vector Autoregressive Model) による推計によれば 政策金利が 1% 上昇すると 住宅投資は 1 年後に 5.% 2 年後に 6.3% と有意に減少する ( 図表 8 左上 推計の詳細は補論参照 ) 利上げ開始から 3 四半期目までに住宅ローン金利が上昇し ( 同右下 ) 住宅販売戸数もこれにあわせて減少する ( 同左下 ) 住宅投資はこれにやや遅れて減少する 住宅価格は利上げから 6 四半期 (1 年 6 ヵ月 ) 遅れて有意に下落する ( 同右上 ) VAR モデルによる要因分解 ( ヒストリカル分解 ) によれば 18 年 1-9 月の住宅投資の伸び ( 2.2%) に対して 金利上昇要因は 6.% 下押ししている計算になる 住宅投資は 所得 成長期待などが支配的な個人消費 設備投資よりも金利の動きに左右されやすいことで知られる 実際 VAR モデルによる推計結果も 金利上昇が 個人消費や設備投資よりも住宅投資をより速く より大きく減少させることを示している ( 図表 9) これは 住宅投資が弱含み 個人消費や設備投資が好調である現状と整合的である -3-

-2-4 -6-8 -1-12 図表 8. 構造型 VARに基づく累積 政策金利 (FFレート) のショックに対する住宅市場の各変数の反応 < 住宅投資 > < 新築住宅販売価格 > 1. -2. -3. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 13 14 15 16 17 18 19 2 1 2 3 4 5 6 7 8 9 11112131415161718192 < 住宅販売戸数 > (% ポイント ) < 住宅ローン金利 >.8-2.6-4 -6.4-8.2-1. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 11112131415161718192 1 2 3 4 5 6 7 8 9 11112131415161718192 ( 注 )FFレートに1% ポイントのショックを与えたときの各変数の反応 図中の破線は95% 信頼区間を表す ( 資料 )BEA; Census Bureau; FRB; Commodity Research Bureau; National Association of Realtors; Federal Housing Finance Agency; Haver Analytics より筆者推計. -1. 1.. -1. -2. -3. -4. -5. -6. -7. -8. -9. < 非住宅固定投資 > 図表 9. 構造型 VAR に基づく累積 政策金利 (FF レート ) のショックに対する米国経済の各 GDP 項目の反応 1.. -1. -2. -3. -4. -5. -6. -7. -8. -9. < 個人消費支出 > 1.. -1. -2. -3. -4. -5. -6. -7. -8. -9. < 住宅投資 > 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2 2 4 6 8 1 12 14 16 18 2 2 4 6 8 1121416182 ( 注 )FFレートに1% ポイントのショックを与えたときの各 GDP 項目の反応 図中の破線は95% 信頼区間を表す ( 資料 )BEA; FRB; Commodity Research Bureau; Haver Analytics より筆者推計 金融機関経営への悪影響は限定的 金融機関経営の悪化も 金利上昇が住宅投資の減少につながる経路のひとつである 住宅ローン金利が上昇すると 借り手の返済負担が増大し 住宅ローンが不良化しやすい バランスシートの悪化により金融機関は与信を収縮させ これが住宅投資を減少させる こうした経路は 利払い負担の増加や住宅価格の下落でサブプライムローンの多くが焦げついたリーマン ショック時に顕在化した 現段階では この経路からの住宅投資の減少は考えにくい 住宅ローン残高は経済全体でみれば積み上がっていない 所得との対比でみた住宅ローン残高は リーマン ショック時よりも低位にとどまる ( 図表 1) 住宅ローンの内容についても 信用力が高い債務者向けの割合が高い ( 図表 11) このため 住宅ローンの延滞率は低位にとどまり 金融機関の貸出態度に目立った変化はない ( 図表 12 13) 上記の VAR モデルによる推計結果は 金融機関経営の悪化の影響を完全には織り込んでいない このため 金利の大幅な上昇や住宅価格の急落が金融機関の貸出態度に悪影響を及ぼす場合 上記の推計結果よりも住宅投資が大きく減少する可能性がある -4-

14 13 12 11 図表 1. 住宅ローン残高 ( 家計所得対比 23 年 =) 9 3:1 5:1 7:1 9:1 11:1 13:1 15:1 17:118:2 ( 資料 )FRBNY; BEA 図表 12. 住宅ローン延滞率 1 9 8 7 6 5 4 3 2 1 3:1 5:1 7:1 9:1 11:1 13:1 15:1 17:1 18:2 ( 注 )9 日以上の延滞 ( 資料 )FRBNY 図表 11. 住宅ローンの信用力別組成額割合 9 76+ 7 72-759 6 5 66-719 4 3 62-659 2 1 <62 3:1 5:1 7:1 9:1 11:1 13:1 15:1 17:1 18:2 ( 注 ) 信用力はEquifax Risk Score 3.による スコアレンジは 2-85であり 値が大きいほど 信用力が高い ( 資料 )FRBNY 6 4 2-2 図表 13. 金融機関の住宅ローン向け貸出態度 非伝統的プライム GSE 適格 -ジャンボサブプライム厳格 緩和 -4 8:1 1:1 12:1 14:1 16:1 18:1 18:2 ( 注 )215 年第 1 四半期より集計カテゴリー変更 ( 資料 )FRB おわりに 米国の住宅投資は 金利上昇を背景に減少に転じている 個人消費や設備投資は大 型減税に支えられて好調であり 住宅投資の負の影響を打ち消している ただし 政策金利は 今後も段階的に引き上げられる見込みであり 住宅投資の弱さが続く可能性がある 家具 家電など住宅購入に関連する消費の動きも含め住宅投資の弱さが景気全体に及ぼす影響には注意を要する -5-

< 補論 : 構造型 VAR を用いた分析 > ここでは 構造型 VAR による推計の詳細を示す 1 (1) 政策金利 (FF レート ) のショックに対する住宅市場の各変数の反応 使用する変数は 1 実質 GDP 2GDP デフレーター 3 コモディティ価格 4 実質住宅 投資 5 新築住宅販売価格 6 住宅販売戸数 7FF レート 8 住宅ローン金利の 8 つである ( 補論図表 1) サンプルは 1973 年第 4 四半期 ~218 年第 3 四半期までの四半期データを使用 ラグ期間は 2 期 を選択 2 補論図表 1. 推定方法と使用データ 推定方法実質 GDP GDPデフレーター コモディティ価格 実質住宅投資 新築住宅販売価格 住宅販売戸数 FFレート 住宅ローン金利の8 変数 ( 四半期データ ) からなる構造型 VARを推定 ショックの識別は McCarthy and Peach(22) を参考にした上記の順のコレスキー分解 ( 再帰的構造の仮定 ) による 推定のサンプル期間は1973 年第 4 四半期から218 年第 3 四半期まで ( 観測個数は1) である 使用データ 加工 処理 出所 1 実質 GDP - 2 GDPデフレーター - 3 コモディティ価格 - Commodity Research Bureau 対数階差 4 実質住宅投資 - 5 新築住宅販売価格 GDPデフレーターにて基準化 Census Bureau 6 住宅販売戸数 戸建ての中古と新築の合計値 Census Bureau; National Association of Realtors 7 FFレート - Federal Reserve Board 階差 8 住宅ローン金利 - Federal Housing Finance Agency (2) 政策金利 (FF レート ) のショックに対する米国経済の各 GDP 項目の反応 使用する変数は 1 実質 GDP 2GDP デフレーター 3 コモディティ価格 4 実質非住宅固 定投資 ( 設備投資 ) 5 実質個人消費支出 6 実質住宅投資 7FFレートの7つである ( 補論図表 2) サンプルは 1966 年第 1 四半期 ~218 年第 3 四半期までの四半期データを使用 ラグ期間は 3 期 を選択 3 補論図表 2. 推定方法と使用データ 推定方法 実質 GDP GDPデフレーター コモディティ価格 実質非住宅固定投資 ( 設備投資 ) 実質個人消費支出 実質 住宅投資 FFレートの7 変数 ( 四半期データ ) からなる構造型 VARを推定 ショックの識別は Bernanke and Gertler(1995) を参考にした上記の順のコレスキー分解 ( 再帰的構造の仮定 ) による 推定のサンプル期間は 1966 年第 1 四半期から218 年第 3 四半期まで ( 観測個数は211) である 使用データ 加工 処理 出所 1 実質 GDP 2 GDPデフレーター 3 コモディティ価格 Commodity Research Bureau 対数階差 4 実質非住宅固定投資 ( 設備投資 ) 5 実質個人消費支出 6 実質住宅投資 7 FFレート 階差 Federal Reserve Board 1 推計においては Bernanke and Gertler (1995) McCarthy and Peach (22) を参考にした ただし 先行論文では水準で推計を行っていたが 本稿の推計では階差をとって推計を行った 2 (1) では一定の自由度を確保するため先行研究に習い ラグ期間を 2 期 とした 3 (2) では赤池情報量規準 (AIC) に従い ラグ期間を 3 期 とした -6-

<< 参考文献 >> McCarthy J. and Peach R.W., (22),"Monetary Policy Transmission to Residential Investment," FRBNY Economic Policy Review. Bernanke B.S. and Gertler M., (1995),"Inside the Black Box: The Credit Channel of Monetary Policy Transmission," The Journal of Economic Perspectives, Vol.9, No.4, pp.27-48. 岩橋淳樹 研究生 三井住友信託銀行より派遣 ( 本稿に関するお問い合わせ : 研究本部短期予測班 3-6256-773) 本稿の無断転載を禁じます 詳細は総務本部までご照会ください 公益社団法人日本経済研究センター -66 東京都千代田区大手町 1-3-7 日本経済新聞社東京本社ビル 11 階 TEL:3-6256-771 / FAX:3-6256-7924-7-