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結果毛包の免疫組織化学では K15 および CD200 がバルジ周辺に発現しており CD34 および CD271 は毛根部に近い外毛根鞘に発現していた 特に CD200 と CD34 は表皮には発現せず毛包特異的マーカーであることがわかった (Fig.1, Fig.2A) バルジにおける外毛根鞘最外層( 基底層 ) の細胞は CD200 + CD34 K15 + 基底上層の細胞は CD200 + CD34 K15 であることがわかった (Fig.2B) Figure 1 ヒト成長期毛包におけるバルジの位置 ( 左 ) と各種マーカーの発現様式 ( 右 ) Figure 2 ヒト成長期毛包における K15,CD200, CD34, CD271 の発現様式 (A) 長軸断面 (B) 横断面 これらの発現様式をもとに 新鮮毛包由来細胞を cell sorter により分析すると 毛包由来細胞に特異的に CD200 + CD34 の分画が含まれていることがわかった (Fig.3A) また この分画を K15 の発現の有無により更に解析すると CD200 + CD34 K15 + 細胞と CD200 + CD34 K15 細胞の大きさ (forward scatter 値 ; FSC 値 ) には有意差が存在し 前者が後者より大きいことがわかった (Fig.3B) K15 の染色は細胞の固定を必要とするため 生きたまま幹細胞を分取するためには K15 の発現に拠らない分取方法が必要とされる そこで 上の結果をもとに K15 を用いずに外毛根鞘最外層 ( 基底層 ) の 2

細胞 ( すなわち CD200 + CD34 K15 + 細胞 ) を FSC 値をもとに分取することを試みたところ CD200 + CD34 FSC high 細胞はすなわち K15-rich な細胞集団であることが確認できた (Fig.4A) そこで CD200 + CD34 FSC high ( すなわち CD200 + CD34 K15 -rich ) と CD200 + CD34 FSC low ( すなわち CD200 + CD34 K15 -poor ) の細胞集団を生きたまま cell sorter により分取し コロニー形成能を比較したところ 両者とも高いコロニー形成能を示したが 前者においてより大きなコロニーを形成することがわかった (Fig.4B,C) Figure 3 (A) ヒト毛包由来新鮮細胞と表皮細胞の K15,CD200, CD34 発現の FACS による比較 (B) CD200 + CD34 K15 + 細胞と CD200 + CD34 K15 細胞の大きさ (FSC 値 ) の比較 Figure 4 (A) ヒト毛包由来新鮮細胞の CD200, CD34, FSC をもとにしたソーティング (B) (A) の各分画毎のコロニー形成能 (C) コロニー数と大きさの分析 3

考察毛包バルジには CD200 + CD34 FSC high ( すなわち CD200 + CD34 K15 -rich ) と CD200 + CD34 FSC low ( すなわち CD200 + CD34 K15 -poor ) という コロニー形成能が高い2つの幹細胞集団が存在し それぞれがバルジ基底層細胞および基底上層細胞と考えられた また 表面抗原をもとに細胞を生かしたまま毛包上皮系幹細胞を分取することが可能であることが示された 第 2 章ヒト毛乳頭細胞における TGF-β2 発現と毛包再生における機能解析過去に毛乳頭細胞の毛包誘導能関連因子として TGF-β や BMP FGF プロテオグリカン アルカリフォスファターゼなどいくつかの重要な候補分子が報告されている このなかで TGF-β2 はマウスの毛包発生において毛包誘導因子として機能していることが報告されているが ヒトの毛包再生での詳細な機能は不明である また ケラチノサイトの培養上清を培養毛乳頭細胞に添加すると その増殖能および毛包誘導能が維持されることが報告されており ケラチノサイト分泌物質により毛乳頭細胞の毛包誘導能が調節されていることが示唆される 方法ヒト頭皮毛包から毛乳頭細胞を培養し 毛包誘導関連因子を網羅的にマイクロアレイおよびリアルタイム PCR により検索した リアルタイム PCR では過去に報告されている遺伝子群を検索した また ケラチノサイト培養上清の成分をサイトカインアレイにより分析し これが培養毛乳頭細胞の TGF-β2 を含む遺伝子発現に与える影響を調べた 動物実験ではヒト培養毛乳頭細胞とラット足底皮膚を組み合わせてヌードマウスの皮下に移植して毛包再生を起こすモデル (Fig.5) を作成し ここに TGF-β シグナル伝達阻害剤および TGF-β2 中和抗体を投与して 毛包再生における TGF-β2 の機能を解析した Figure 5 ヒト毛乳頭細胞を用いた毛包再生モデル 結果マイクロアレイにより培養ヒト毛乳頭細胞と線維芽細胞の遺伝子発現を網羅的に比較解析すると TGF-β2 が発現の増強している遺伝子群に含まれていた また発現増強している遺伝子群を 継代により発現が減少する遺伝子群に絞ると TGF-β2 はその上位 10 位内に含まれることがわかった (Table) 培養継代数 P2 の細胞を用いてリアルタイム PCR を行うと 培養ヒト毛乳頭細胞と線維芽細胞の毛包関連因子 4

の発現比は TGF-β2 が他の因子に比較して有意に高かった (Fig.6A) また TGF-β2 の発現は早い継代数の培養細胞だけでなく 少なくとも継代数 P8 まで維持されていることが分かった (Fig.6B) ヒト表皮ケラチノサイト培養上清中のサイトカインを検索すると細胞増殖や遊走に関与しうる interleukin や MCP-1 Gro MIP ENA-78 など多種のケモカインに加えて VEGF PDGF-BB などの細胞増殖因子も含まれていることがわかった (Fig.7A) この結果をもとに ヒト表皮ケラチノサイトが分泌すると考えられる物質が培養ヒト毛乳頭細胞の TGF-β2 分泌に与える影響を調べたところ 活性型ビタミン D3 を添加したときに顕著に増加することがわかった (Fig.7B,C) また毛乳頭細胞マーカーであるアルカリフォスファターゼの活性も増強した (Fig.7D) 活性型ビタミン D3 は 10 nm から 100 nm において TGF-β2 mrna の発現を増強し この変化は添加後 8 時間で現れることがわかった (Fig.8A,B) また細胞あたりの TGF-β2 分泌は活性型ビタミン D3 濃度依存的に上昇した (Fig.8C) Table 培養ヒト毛乳頭細胞 ( 継代数 P2 および P8) において繊維芽 Upregulated Downregulated 細胞と比較して発現増強または発現減弱している遺伝子群 Symbol Gene name P2 P8 CCL2 chemokine (C-C motif) ligand 2 4.93 1.98 MGC5618 hypothetical protein MGC5618 4.31 1.20 G0S2 G0/G1switch 2 3.93 2.05 TFPI2 tissue factor pathway inhibitor 2 2.85 1.40 HNT Neurotrimin 2.84 1.01 TGFB2 transforming growth factor, beta 2 2.47 1.49 PRG1 proteoglycan 1, secretory granule 2.31 2.19 HLA-C major histocompatibility complex, class I, C 2.23 1.29 FGF7 fibroblast growth factor 7 (keratinocyte growth factor) 2.10 1.50 TNFRSF10B tumor necrosis factor receptor superfamily, member 10b 2.10 1.08 PTX3 pentraxin-related gene, rapidly induced by IL-1 beta 2.00 1.12 EGR1 early growth response 1-3.46-1.62 TK1 thymidine kinase 1, soluble -2.46-2.57 SGK serum/glucocorticoid regulated kinase -2.27-1.23 DOK5 docking protein 5-2.09-1.14 CDC20 CDC20 cell division cycle 20 homolog (S. cerevisiae) -2.02-2.86 5

Figure 6 (A) ヒト培養毛乳頭細胞における既知の関連マーカーの発現 ( 線維芽細胞との比較 ) (B) P2 と P8 のヒト培養毛乳頭細胞における TGF-β2 の発現 ( 線維芽細胞との比較 ) Figure 7 (A) サイトカインアレイによるヒト表皮ケラチノサイト培養上清の成分分析 (B) ヒト培養毛乳頭細胞にケラチノサイト分泌物質等を添加したときの TGF-β2 mrna 発現 (C) 同じく TGF-β2 蛋白の発現 (D) 同じくアルカリフォスファターゼの発現 6

Figure 8 ビタミン D3 投与がヒト培養毛乳頭細胞の TGF-β2 mrna 発現に対して与える 濃度 (A) および時間 (B) 依存的な影響 (C) ビタミン D3 濃度と TGF-β2 蛋白分泌に与える影響 Figure 9 (A) 毛包再生モデルにおける TGF-β1 および TGF-β2 の発現 (B) TGF-β 受容体阻害剤 (SB431542) 投与時の毛包再生モデルにおける再生毛包組織像 (C) 阻害剤 (SB431542) 投与時の再生毛包数 (D) 阻害剤 (SB431542) 投与時の再生毛包成熟度 培養ヒト毛乳頭細胞を毛包再生モデルに移植し 再生毛包組織における TGF-β2 の発現を調べると TGF-β2 は再生毛包の繊維性毛根鞘に強く発現していた (Fig9.A) このモデルに TGF-β タイプ I 受容体キナーゼ阻害剤 (SB431542) を持続投与して 再生した毛包の成熟度および毛包数を調べると 阻害剤投与群で成熟度 Stage5 から Stage7 の成熟度の高い毛包が減少し 毛包数も有意に減少することがわかった (Fig9.B-D) また TGF-β の 3 つのサブタイプ TGF-β1/2/3 を阻害する中和抗体を持続投与すると 毛包成熟が抑制され 毛包数も有意に減少した さらに TGF-β2 のみを中和する特異的抗体を投与するだけでも同様の結果が得られることがわかった また興味深いことに ヒト培養毛乳頭細胞にビタミン D3 を添加すると TGF-β2 だけでなく 毛包誘導因子のひとつである Wnt10b の発現も増強することがわかった (Fig10.A-C) 7

考察 TGF-β2 は培養ヒト毛乳頭細胞の継代初期に強く発現しており 継代と共に発現が減少することから ヒト毛乳頭細胞の毛包誘導能を反映するバイオマーカー遺伝子として利用できると考えられる また再生毛包モデルを用いた実験結果から 実際に生体内でも TGF-β2 が毛包誘導因子として機能していることがわかった また活性型ビタミン D3 により TGF-β2 発現と同時に毛包誘導因子である Wnt10b 発現や毛乳頭細胞マーカーであるアルカリフォスファターゼ活性が増強することが示された 活性型ビタミン D3 が培養毛乳頭細胞を未分化な細胞から 毛包誘導細胞として機能する より分化した細胞へ変化させると考えられる 培養毛乳頭細胞移植による毛包再生治療を実現するには 毛包誘導を維持した培養法の開発が必要であるが 活性型ビタミン D3 を使用した毛乳頭細胞の培養方法はひとつの候補となると考えられる Figure 10 (A) ヒト培養毛乳頭細胞にケラチノサイト分泌物質等を添加したときの Wnt10b mrna 発現 (B) ビタミン D3 添加後 48 時間までの Wnt10b mrna 発現の変化 (C) ビタミン D3 添加による Wnt10b 蛋白発現の変化 ( 細胞免疫染色 ) まとめヒト毛包由来細胞を用いた毛髪再生治療を実現する上で不可欠であろう 毛包上皮系幹細胞の単離 および毛乳頭細胞の毛包誘導能に関連する遺伝子解析をおこなった ヒト毛包上皮系幹細胞は CD200 や CD34 の表面抗原だけでなく 細胞の大きさも利用することで コロニー形成能の高い細胞群を生きたまま分取することが可能であることがわかった また培養ヒト毛乳頭細胞における TGF-β2 の発現および生体内で機能することが毛包再生において重要であることが示された これらの結果は 将来的な毛髪再生治療の開発において 基盤となる研究結果であると考えられる 8