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(1) 継続的な観測 監視 研究調査の推進及び情報や知見の集積〇気候変動の進行状況の継続的な監視体制 気象庁では WMO の枠組みの中で 気象要素と各種大気質の観測を行っている 1 現場で観測をしっかりと行っている 2 データの標準化をしっかりと行っている 3 データは公開 提供している 気象庁気象

( 第 1 章 はじめに ) などの総称 ) の信頼性自体は現在気候の再現性を評価することで確認できるが 将来気候における 数年から数十年周期の自然変動の影響に伴う不確実性は定量的に評価することができなかった こ の不確実性は 降水量の将来変化において特に顕著である ( 詳細は 1.4 節を参照 )

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報道発表資料

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(c) (d) (e) 図 及び付表地域別の平均気温の変化 ( 将来気候の現在気候との差 ) 棒グラフが現在気候との差 縦棒は年々変動の標準偏差 ( 左 : 現在気候 右 : 将来気候 ) を示す : 年間 : 春 (3~5 月 ) (c): 夏 (6~8 月 ) (d): 秋 (9~1

2. 背景わが国では気候変動による様々な影響に対し 政府全体として整合のとれた取組を総合的かつ計画的に推進するため 2015 年 11 月 27 日に 気候変動の影響への適応計画 が閣議決定されました また 同年 12 月の国連気候変動枠組条約第 21 回締約国会議で取りまとめられた 新たな国際的な

IPCC 第 5 次報告書における排出ガスの抑制シナリオ 最新の IPCC 第 5 次報告書 (AR5) では 温室効果ガス濃度の推移の違いによる 4 つの RCP シナリオが用意されている パリ協定における将来の気温上昇を 2 以下に抑えるという目標に相当する排出量の最も低い RCP2.6 や最大

2. エルニーニョ / ラニーニャ現象の日本への影響前記 1. で触れたように エルニーニョ / ラニーニャ現象は周辺の海洋 大気場と密接な関わりを持つ大規模な現象です そのため エルニーニョ / ラニーニャ現象は周辺の海流や大気の流れを通じたテレコネクション ( キーワード ) を経て日本へも影響

正誤表 ( 抜粋版 ) 気象庁訳 (2015 年 7 月 1 日版 ) 注意 この資料は IPCC 第 5 次評価報告書第 1 作業部会報告書の正誤表を 日本語訳版に関連する部分について抜粋して翻訳 作成したものである この翻訳は IPCC ホームページに掲載された正誤表 (2015 年 4 月 1

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1. 天候の特徴 2013 年の夏は 全国で暑夏となりました 特に 西日本の夏平均気温平年差は +1.2 となり 統計を開始した 1946 年以降で最も高くなりました ( 表 1) 8 月上旬後半 ~ 中旬前半の高温ピーク時には 東 西日本太平洋側を中心に気温が著しく高くなりました ( 図 1) 特

資料1-1 「日本海沿岸域における温暖化に伴う積雪の変化予測と適応策のための先進的ダウンスケーリング手法の開発」(海洋研究開発機構 木村特任上席研究員 提出資料)

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図 1 COBE-SST のオリジナル格子から JCDAS の格子に変換を行う際に用いられている海陸マスク 緑色は陸域 青色は海域 赤色は内海を表す 内海では気候値 (COBE-SST 作成時に用いられている 1951~2 年の平均値 ) が利用されている (a) (b) SST (K) SST a

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An ensemble downscaling prediction experiment of summertime cool weather caused by Yamase

日本の海氷 降雪 積雪と温暖化 高野清治 気象庁地球環境 海洋部 気候情報課

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資料6 (気象庁提出資料)

21世紀気候変動予測革新プログラム 平成21年度研究成果報告会

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2016 年 5 月 17 日第 9 回気象庁数値モデル研究会 第 45 回メソ気象研究会第 2 回観測システム 予測可能性研究連絡会 気象庁週間アンサンブル予報 システムの現状と展望 気象庁予報部数値予報課 太田洋一郎 1

あおぞら彩時記 2017 第 5 号今号の話題 トリオ : 地方勤務の先輩記者からの質問です 気象庁は今年度 (H 29 年度 )7 月 4 日から これまで発表していた土砂災害警戒判定メッシュ情報に加え 浸水害や洪水害の危険度の高まりが一目で分かる 危険度分布 の提供を開始したというのは本当ですか


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IPCC 第1作業部会 第5次評価報告書 政策決定者のためのサマリー

IPCC 第 5 次評価報告書第 1 作業部会報告書概要 ( 気象庁訳 ) 正誤表 (2015 年 12 月 1 日修正 ) 第 10 章気候変動の検出と原因特定 : 地球全体から地域まで 41 ページ気候システムの特性第 1 パラグラフ 15 行目 ( 誤 ) 平衡気候感度が 1 以下である可能性

森林水文 水資源学 2 2. 水文統計 豪雨があった時, 新聞やテレビのニュースで 50 年に一度の大雨だった などと報告されることがある. 今争点となっている川辺川ダムは,80 年に 1 回の洪水を想定して治水計画が立てられている. 畑地かんがいでは,10 年に 1 回の渇水を対象として計画が立て

2018 年 12 月の天候 ( 福島県 ) 月の特徴 4 日の最高気温が記録的に高い 下旬後半の会津と中通り北部の大雪 平成 31 年 1 月 8 日福島地方気象台 1 天候経過 概況この期間 会津では低気圧や寒気の影響で曇りや雪または雨の日が多かった 中通りと浜通りでは天気は数日の周期で変わった

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スライド 1

水田 亮

宮城県災害時気象資料平成 30 年台風第 24 号による暴風と大雨 ( 平成 30 年 9 月 29 日 ~10 月 1 日 ) 平成 30 年 10 月 3 日仙台管区気象台 < 概況 > 9 月 21 日 21 時にマリアナ諸島で発生した台風第 24 号は 25 日 00 時にはフィリピンの東で

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風力発電インデックスの算出方法について 1. 風力発電インデックスについて風力発電インデックスは 気象庁 GPV(RSM) 1 局地気象モデル 2 (ANEMOS:LAWEPS-1 次領域モデル ) マスコンモデル 3 により 1km メッシュの地上高 70m における 24 時間の毎時風速を予測し

また 積雪をより定量的に把握するため 14 日 6 時から 17 日 0 時にかけて 積雪の深さは と質 問し 定規で測っていただきました 全国 6,911 人の回答から アメダスの観測機器のある都市だけで なく 他にも局地的に積雪しているところがあることがわかりました 図 2 太平洋側の広い範囲で

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アジアでの水災害評価

結果を用いて首都圏での雪雲の動態を解析することができました ( 詳しい解説 は別添 ) こうした観測事例を蓄積し 首都圏降雪現象の理解を進め 将来的に は予測の改善に繋げていきたいと考えています 今回の研究成果は 科学的に興味深く 新しい観測研究のあり方を提案するものとして 日本雪氷学会の科学誌 雪

( 第 2 章異常気象と気候変動の将来の見通し ) 第 2 章異常気象と気候変動の将来の見通し 2.1 気候変動予測と将来シナリオ本節では 異常気象と気候変動の将来の予測を述べる前に それらの定量的な評価を可能にしている気候モデルと これに入力する将来の社会像について述べる 気候変動予測

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2016年台風発生環境場と台風ハザードマップ

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気象庁 札幌管区気象台 資料 -6 Sapporo Regional Headquarters Japan Meteorological Agency 平成 29 年度防災気象情報の改善 5 日先までの 警報級の可能性 について 危険度を色分けした時系列で分かりやすく提供 大雨警報 ( 浸水害 )

[ ここに入力 ] 本件リリース先 2019 年 6 月 21 日文部科学記者会 科学記者会 名古屋教育記者会九州大学記者クラブ大学プレスセンター 共同通信 PR ワイヤー 2019 年 6 月 21 日立正大学九州大学国立研究開発法人海洋研究開発機構名古屋大学 立正大 九州大 海洋研究開発機構 名

第 41 巻 21 号 大分県農業気象速報令和元年 7 月下旬 大分県大分地方気象台令和元年 8 月 1 日

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平成 29 年 7 月 20 日滝川タイムライン検討会気象台資料 気象庁札幌管区気象台 Sapporo Regional Headquarters Japan Meteorological Agency 大雨警報 ( 浸水害 ) 洪水警報の基準改正 表面雨量指数の活用による大雨警報 ( 浸水害 )

近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

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DIAS はこう使う! 第 3 回 DIAS 利用ワークショップ全体セッション 西村一 JAMSTEC

三重県の気象概況 ( 平成 30 年 9 月 ) 表紙 目次気象概況 1P 旬別気象表 2P 気象経過図 5P 気象分布図 8P 資料の説明 9P 情報の閲覧 検索のご案内 10P 津地方気象台 2018 年本資料は津地方気象台ホームページ利用規約 (

4

平成 30 年 2 月の気象概況 2 月は 中旬まで冬型の気圧配置が多く 強い寒気の影響を受け雪や雨の日があった 下旬は短い周期で天気が変化した 県内アメタ スの月降水量は 18.5~88.5 ミリ ( 平年比 29~106%) で 大分 佐賀関 臼杵 竹田 県南部で平年並の他は少ないかかなり少なか

されており 日本国内の低気圧に伴う降雪を扱った本研究でも整合的な結果が 得られました 3 月 27 日の大雪においても閉塞段階の南岸低気圧とその西側で発達した低気圧が関東の南東海上を通過しており これら二つの低気圧に伴う雲が一体化し 閉塞段階の低気圧の特徴を持つ雲システムが那須に大雪をもたらしていま

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委 44-4 TRMM の最近の成果と これからの展望について 第 44 回宇宙開発委員会平成 14 年 11 月 20 日 ( 水 ) 宇宙開発事業団独立行政法人通信総合研究所

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資料2-3 気候変動適応技術社会実装プログラムの研究開発体制・進捗状況

イベント アトリビューション研究の現状と気象研究所における計画 異常気象分析検討会 2015/02/23 気象研究所気候研究部第 5 研究室今田由紀子 1

Wx Files Vol 年4月4日にさいたま市で発生した突風について

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高解像度 MRI-AGCM アンサンブル実験を用いた日本域の 10 年規模の気温変動に関する要因分析 今田由紀子 ( 気象研 ) 前田修平 ( 気象研 ) 渡部雅浩 ( 東大 AORI) 塩竈秀夫 ( 国環研 ) 水田亮 ( 気象研 ) 石井正好 ( 気象研 ) 木本昌秀 ( 東大 AORI) 1.

本日のお話 大雨から身を守るために 1. 大雨をもたらす気象現象 2. 気象庁が発表する情報と対応 動 3. 急な大雨から身を守るために 4. 情報の入手方法 地震から身を守るために 1. 地震とは 2. 緊急地震速報とは 3. 緊急地震速報を 聞きしたときは 4. 緊急地震速報の入手方法 2

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NEWS 特定非営利活動法人環境エネルギーネットワーク 21 No 年 9 月 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change) の概要 環境エネルギーネットワーク 21 主任研究員大崎歌奈子 今年の夏は世界各国で猛暑や洪水 干ばつ

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データ同化 観測データ 解析値 数値モデル オーストラリア気象局より 気象庁 HP より 数値シミュレーションに観測データを取り組む - 陸上 船舶 航空機 衛星などによる観測 - 気圧 気温 湿度など観測情報 再解析データによる現象の再現性を向上させる -JRA-55(JMA),ERA-Inter

内湾流動に及ぼす大気の影響 名古屋大学村上智一

Cバンド偏波レーダー及び 地上雨滴計を用いた 降雨量推定アルゴリズム構築に関する研究

梅雨 秋雨の対比とそのモデル再現性 将来変化 西井和晃, 中村尚 ( 東大先端研 ) 1. はじめに Sampe and Xie (2010) は, 梅雨降水帯に沿って存在する, 対流圏中層の水平暖気移流の梅雨に対する重要性を指摘した. すなわち,(i) 初夏に形成されるチベット高現上の高温な空気塊

本ワーキンググループにおけるこれまでの検討事項

Transcription:

温暖化により将来台風や豪雨がどうなる のかが分かる 世界でも類のない大規模データセット (d4pdf) 高薮出 ( 気象研究所 ) 創生一般公開シンポジウム @ 国立オリンピック記念青少年総合センター 2016/09/30 V6 2016/09/28

東北の太平洋岸に上陸する台風はどの程度あるのか? ここで数えているのは 単に東北の太平洋岸から上陸した台風であり 決して東北地方に大雨災害をもたらした台風という数え方はしていない 降水量のチェックもなされていない d4pdf で見つかった 東北の太平洋岸に上陸する台風すべての経路 過去実験 60 年の 100 アンサンブルで 熱帯低気圧総数 :507,626 うち日本 ( 沖縄以外の ) に上陸 :8,380 ( 総数の 1.65% 1.4 回 / 年程度 ) その中で東北太平洋側からの上陸 : 102 ( 日本上陸台風の 1.22% 59 年に 1 回程度 ) 観測平年値で規格化した東北上陸頻度は 31 年に 1 回 このような統計量を取り出すことも d4pdf データからなら可能である

d4pdf のねらい 地球温暖化への適応策を考えるに当たって 気候変動の予測結果にどのくらいの不確実性があるのか評価すること また 温暖化に伴う自然災害がいかなる頻度で生じるのかを知ることが必要になります そのためには 従来より大幅に実験アンサンブル数を増やし サンプルの数を確保する必要がありました 今回 テーマ間連携により 世界で類例のない最大 100 アンサンブル実験を行い 自然災害を及ぼす豪雨 台風といった稀な気象現象の変化についての情報の提供に成功しました

気候会リスク評価に必要な気候ハザード評価 気候モデルで寄与できる部分はハザード評価 脆弱性 社ハザード気候ハザード( 災害外力 ) リスク評価 暴露 社会が求めているのはリスク評価 気候変動 2014 IPCC 第 5 次評価報告書政策決定者向け要約より IPCC 第二作業部会 影響 適応および脆弱性 第 5 次報告において中核となる概念図

細密度をある程度犠牲にしても例数をかせいだ実験 細密度の高い高解像度のモデルを用いて再現した気象学的特定事例 生活への影響などを見積もるのに必要な情報 2 防災 1 減災 どれだけ起こるの? 一番ひどい場合は? アンサンブル実験から確率的に示すことが必要になる 最悪の一例を見つけ出すことが必要になる 保険 防災対策が打てる ( 資産を救う ) ハザードマップ 避難策が打てる ( 人命を救う )

実験のデザイン

実験デザイン 全球平均地上気温偏差 RCP8.5 +4 1850 年産業革命前の気温 60km AGCM 100 メンバー会議場 会議場 90 メンバー (6 T 15δT) NHRCM 20 km ( 日本周辺のみ ) 50 メンバー 1951 過去実験 2010 90 メンバー 60 年間 +4 上昇 TCCIP workshop March 11, 2016

気候モデルを用いた地球温暖化予測における様々な不確実性要因 計算の流れ 単一の数値モデル RCP の 1 シナリオ 海面水温 1 排出シナリオ (RCP 等 ) 2 数値モデル 様々な不確実性要因 d4pdf 3 自然変動 単一の実験 アンサンブル計算 将来予測の振れ幅 ( 予測の不確実性 ) 自然変動を考慮しないと 発生頻度の低い異常天候や極端気象の変化の不確実性を十分に評価できていない

将来実験 : 産業革命前から 4 昇温した状態を延べ 5400 年間 観測不確実性を表す 15 摂動 (δt) 6 種の温暖化パターン (CMIP5) (ΔT) 温暖化トレンドを除いた過去 60 年の時間変動 ( 青線 ;COBE SST2)

日本を対象としたダウンスケーリング AGCM ( 水平解像度約 60km) NHRCM ( 水平格子間隔 20km) ( 画像 : 気象庁提供 )

パフォーマンス

アンサンブル実験の御利益 多アンサンブル実験 平均状態をより正確に推定する 平均からはみ出した事例のサンプルが十分に採取できる 極端な事例の統計がとれる

中国南部で平均した年最大降水量の頻度分布 実験メンバー数が増すに従い 頻度分布の凸凹が減っていく 変化の確からしさが増していく 塩竈作成

東京での 再起確率降水量の将来変動 青 : 現在の結果赤 : 4 上昇の将来の結果 確率降水量 (mm) 再起年 1 メンバー実験の結果 100 メンバー実験の結果 日比野作成

相対頻度(%東京の極端な降水の変化 東京での年最大日降水量 過去 +4 多数メンバーによって年最大日降水量の確率分布が得られる )日比野作成 年最大日降水量 (mm)

稀に起こる短期間の大雪については 既存の気候シミュレーションでは精度の良い予測は困難 1 日で降る大雪の例富山市で 54cm の降雪 (2012 年 2 月 17 日 ) (2012 年 2 月 19 日富山市内撮影 : 川瀬宏明 ) 気温上昇により減少するのか? 大気中の水蒸気量の増加とともに増加するのか? 川瀬他 2016

日本海側で雪が多い理由 冬型の気圧配置 筋状の雲 気団変質 雪雲発達 冷たい空気 空っ風 暖かい海 雪 雪 高い山 松江地方気象台より引用

総降雪量 (11 月 ~3 月 ) の将来変化 全国的に減少 増加 減少 10 年に一度の大雪 (24 時間降雪 ) 増加 減少 川瀬他 2016 中部地方の内陸部で増加

高頻度 中部日本内陸部における日降雪量の頻度分布 弱い降雪は減少 灰色 : 現在気候赤色 : 将来気候 頻度 ( 日 /5 か月 ) 現在気候 強い降雪が増加 将来気候 低頻度 川瀬他 2016 弱い降雪 降雪量 ( 水換算 ) [mm] 強い降雪

熱帯低気圧の全球年発生数の確率分布 発生確率 [%] 将来 観測 [1] N=84.3 (32 年 ) 過去実験 [100] N=84.6 (60 年 ) 過去実験 [1] N=84.9 (60 年 ) 将来実験 [90] N=54.7 (60 年 ) 将来実験 [1] N=55.7 (60 年 ) [ ] はメンバー数 過去 年々変動の標準偏差 HPB(1951-2010): 10.35 (±0.90) HPB(1979-2010): 9.74 (±1.24) 観測 (1979-2010): 8.91 HFB(2051-2110): 8.76 (±0.88) 熱帯低気圧の 1 年あたりの発生数 吉田提供

害評価に重要な台 の評価は難しい 本への年平均上陸数 2.7 個 ( 気象庁 ) 30 年の気候ランによる台 経路 d4pdf 現在再現計算 (6,000 年 ) 森提供

適応事例

背景 : 災害防御施設の考え d4pdf 河川 海岸堤防の さの決め 1. 重要度の決定 1. 最 で何年に 1 回 ( 再現期間 ) という規模の災害を防御するのかを決める 2. 最 外 ( 位 ) の推定 1. 期間の 量 ( 潮 波浪 ) 観測データから X 年に 1 回の確率規模の 量 ( 位 ) を求める. 河川の場合 : 降 の時空間分布を与え, 計画 位を求める. 3. 外 に対応した防災施設の外 条件の決定 外 ( 位 ) とその再現期間 ( 確率値 ) の推定が重要 Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University

顕著な 災害の発 頻度は極端に低く観測データも圧倒的に不 している 気象庁報告書 : 比屋定ら (2011) 伊勢湾台風 3.5 m 過去の顕著な高潮偏差の再現年数の評価ができなかった Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University

再現年数 : 潮偏差 ( 阪 ) 最大クラス 第 2 室戸台風 2.4m d4pdf 潮偏差 阪湾の奥で評価 現在気候将来気候 作成 : 志村 再現年数 Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University

将来変化割合 :50 年確率 潮 / 速 d4pdf 高潮 風速 作成 : 志村 Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University

気候変動影響評価が可能な豪雨は? 集中豪雨 気象庁 HP 間スケール時間スケール 範囲 :100km 継続時間 :6 時間から半日程度 中 小河川での洪水 内水氾濫 土砂災害 2010/10/20 in 奄美 5km 格子モデル (NHRCM05) 南日本新聞 OFFICIAL SITE 台風範囲 :1000km 継続時間 :1 日から数日 大河川での洪水 大規模水害 土砂災害 2009/08/08 in 台湾 20/60km 格子モデル (AGCM20/60) ゲリラ豪雨 ( 局地的豪雨 ) 範囲 : 数 km 継続時間 :1 時間程度 台湾中央気象局 台湾国家災害防救科技中心 小河川や下水道内での鉄砲水 都市内水氾濫 2008/07/28 at 都賀川 2008/08/05 at 雑司ヶ谷 2km 格子モデル (NHRCM02) 都賀川モニタリング映像 共同通信 創生 D 提供資料に一部改変空

梅雨期集中豪雨発生の大気場の将来予測 台風よりも小さいシステムで起きる集中豪雨の将来変化は? この間をつなぐために天気図パターン (SLP, WVFL) を見る 集中豪雨そのものを見つけるには 5km 格子モデルが必要である 梅雨期集中豪雨をもたら天気図は 60km 格子モデルでも検出可能 計算コストがかかるため事例数を多くとることができない 創生 C 60km 格子モデルの結果なら d4pdf から十分な事例数が得られる d4pdf

気場と降 量 : 豪 が じる 気場の出現頻度 2013 年夏は この 気場の影響で 本海側で集中豪 が多発した 2013 年 7/1 8/25 で平均した 蒸気フラックスの平年差 RCM5km のアップスケーリング結果の地上気圧 蒸気流のパターン図 類似

気場と降 量 : 豪 が じる 気場の出現頻度 過去気候 60 年 (1951 2010) 100 摂動 (6000 アンサンブル ) と将来気候 60 年 (2051 2110) 15 摂動 6 温暖化トレンド (5400 アンサンブル ) の SLP,WVFL の 6 8 平均値を 10 10 マップ中の最も類似したユニットにプロットした 各ユニットにプロットされたアンサンブル数の過去気候と将来気候の差. 暖 のユニットは過去気候と 較して将来気候でプロットされる数が増加 [ 個 ] ユニット (1,1) (1,10) にプロットされたアンサンブル数. 棒が過去気候の数 棒が将来気候の数を表す 1000 800 600 HPB678 HFB678 草野 中北 峠 (2015) 400 200 0 11 12 13 14 15 16 17 18 19 110 あるユニットにプロットされる数が将来気候で増加する そのユニットが す特徴の 気場の出現頻度が増加する 1000 ユニット (10,1) (10,10) にプロットされたアンサンブル数. 800 HPB678 600 HFB678 400 200 0 101 102 103 104 105 106 107 108 109 1010 中北 草野 峠 Kim 2016 京 防災研究所年報 59B ( 印刷中 )

まとめ

まとめ 気候ハザードをリスク評価に活用する方法は 1 減災の観点 細密モデルによる現象再現 2 防災の観点 適切な解像度によるアンサンブル実験がある アンサンブル実験の御利益は 1 平均状態のより正確な推定 2 極端事象の確率評価にある 大規模アンサンブル実験としてd4PDFを実施した

謝辞 d4pdf の計算は 海洋研究開発機構 地球シミュレータ特別推進課題において 地球シミュレータを用いて実施しています また地球環境情報統融合プログラムの協力を得て データ統合 解析システム DIAS 上でデータを公開しています 関係諸機関に感謝いたします