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男子における思春期発育の分析, とくに 精通現象につ いて 久川太郎 目 次 b. 性的成熟の加速者と遅速者 序 2. 成長 発育に関する疾患 発育と成長の推移 M 男子における性教育 皿 男女の第 2 次性徴 皿 あとがき 234567 陰毛腋毛 序 ヒゲ 喉頭突起と変声 畢丸とホルモン分泌機能 ヒトの出生から老衰にいたる過程で, 個体は形態的 にも機能的にも多くの変化を遂げる この変化によリ ヒトの一生を観察すると, 乳児, 幼児, 小児期, 外性器の発育 思春期 ( 破瓜期 ), 成熟期 ( 性成熟期 ), 更年期 去勢とその影響 ( 閉経期 ), 老年期の 5 区分をすることができる 性成熟の現状 出生直後から幼児期までは, 身体的にも精神的にも未, 精通現象 熟である 個体の発育は, まず個体維持のために身体 2, 初潮 発育がみられ, っ いで種属保持に必要な性器の発育と V 発育加速現象 L 年間加速現象 2. 発育勾配現象 3. 発育加速現象に影響を及ぼす因子 完成がみられ成人となる この新生児から成入にいたるまでの過程は, 新生児の形態と機能が同時に進展を遂げるものではなく, 形態的にも機能的にも飛躍的な変化を遂げる準備期がありこれを思春期という っい abcde 気候 で個体の最盛期に入るが, 男子にあっ ては,20 30 歳 社会的環境 労働 栄養 の 0 年間で,30 歳を過ぎる頃からエネルギー代謝, 性 機能の両面においても老化が徐々に起こってくる 更年期は, 従来女性特有の月経閉止期を意味してきた 遺伝 この閉止期には, 心身の 変化がみられるが, 男性には VI 第 2 次性徴の国際比較 Vif 性差. 形態的性差 2. 機能的性差 3. 運動能力の性差 女性の閉止期に該当する症状ないしは時期が明確にされていなかった しかし近年のアメリカでの研究報告によると, 男性にも更年期とすべき時期があると説かれている これによると男性の更年期は女性よりも概して遅く, 個入差も多く, 心身の変化も女性より顕著 a, バーピーテス ト でないとされている この報告は日本の学者の間でも NM b. 投力, 跳力, 走力の性差 思春期発育が及ぼす影響 認められており, 男女を問わず, 更年期があるとい よう ただ女性においては, 性機能は閉経期を壇とし え. 性徴発現時の心理的変化 て急速に廃能をきたすが, その他の機能, とくにエ ネ 2. 第 2 次性徴が生活態度へ及ぼす影響 ル ギー代謝の衰えは男性のそれよりはるかに緩慢であ IX 性知識と意識の現状 ることが認められている この 5 区分は男女ともに生 X 男子における思春期の疾病. 性的発育に関する疾病 a. 停留畢丸 殖腺, すなわち畢丸または卵巣のホルモン分泌機能の 消長にもとつくものである この 5 区分のうちで, 人生にとってもっとも重要視

男子における思春期発育の分祈, とくに精通現象について 一 57 一 されねばならぬ時期は思春期である この思春期は, 小児期からへ, 成熟期の移行期であり, それまで発育がみられなかった生殖腺ホルモン分泌機能が開始, 増強される また精神的領域での発達の面でも生殖腺同様発育がいちじるしく, 知能の発達, 自我の確立もこの蒔期に方向づけされる したがって思春期に身体的にもあるいは精神的にも発育が十分になされなかった場合は, 成熟後の個体に多くの影響を与えるものである 思春期においては男女とも以上のような全身的発達促進とともに, 男女の性差を示す種々の変化が生じ, へ身疑増加最 } 第 図年齢による身長, 体重増加曲線 身き驪 o 00 目り 50 性機能の完成がみられる これ以後生殖腺すなわち睾 丸と卵巣のホルモン分泌機能が成熟して最高潮を示す性成熟期へと移行するわけである これから思春期は発育期の仕上げをする時期であるともいうことができよう 50 kg 禄 4 鰯 024680246820 象などの発現年齢は, 自然環境や社会環境の影響を受けやすい とくに近年の急激な社会変動による環境の変化は思春期の加速現象をもたらした この現象はとくに女子の初潮において顕著で, 医学的あるいは心理 出所昭和 34 年 5 月国民栄養調査 ( 男子 ) による. 年 齢 思春期の開始の現象としてあげられる初潮, 精通現 学的研究がなされ, 学校, 家庭をはじめとするあらゆ る社会集団にその成果が還元されている にも機能的にももっ 期である とも大きな変化を遂げるのが思春 しかし, 男子の精通現象をは じめとする第 2 次性徴 についての分析と指導はいまだ十分ではなく, 性的非 行少年の増加 ) などにみられる若年者における性の混 乱を招いている 今回は男子の精通現象にっいてその発現の現状と発 現時期を左右する因子の分析, 精通現象が個体に及ぼ す影響についての分析を通して, 思春期の理解を深め ようとするものである 皿 発育と成長の推移 新生児から青年期までの心身の発育成長は, いうま でもなく新生児の体型が年々が増すにつれて増大する とい う単純なものではなく, 身体の各部分にそれぞれ 特有の発育様式がみられる 性器についていえば, 幼 児では外性器を除けば男女の体型に差異はまったくみ られず, L 許性的な体格を示してい るのに対して成人に おいては, 男女の性差が明確に認められている この 出生後 年間は爆発的ともいえる顕著な身長, 体重 の増加がみられる その後 2,3 年と経過するにっ れて, 第 図に示されるように, 増加傾向は次第に鈍化し, 5 6 歳頃になると年間増加量は, ほぼ一 定となる 全体の体型をみると, この 時期におい ては, 手足の発 育は躯幹の発育をやや上回り, 出生当初の 胴長, 四肢 短小の釣合いはわずかではあるが改善される この頃 ではまだ男女の体型の差異はまっ たく認められず, 出 生当時と同様に中性的な外型を示してい る 男子では0 歳頃になるとそれまで年々 減少していた 身長増加曲線は再び一ヒ昇し, 顕著な発育がみられる この現象は 3 歳と年間増加 : 鼠が増し, 0 歳時に年 間 0 セー ンチメトル もの増加を示している この時期 には驅幹の 発育もい ちじるしいが, 四肢の発育成長は さらにめざましく成人の体型に近づく しかし体重の 増加が身長の増加に追いつ くのは 年後なので, 全体 として四肢の 伸びたすらっ とした体型を示す 4 歳頃 ような新生児から成入へ の体型の変化は,20 年間にわ になると前にも述べたように, 身長増加が鈍化し, 筋 たる発育成長により完成される ものであるが, 形態的 肉がたくましくなり骨格も次第に太さを増し, 体重増 ) 性犯少年 ( 触法少年を含む ) の推移は昭和 32 年を 00 とした時, 昭和 39 年以来 60 7D を小している. 加が顕著になる 筋肉年間増加量の年齢的変化につい ては第 2 図と第 3 図の とおりである これは第 2 次性

一 Z58 一 微の発現, 性殖器の発達を示し, これにより男らしい体格が明らかになる この傾向は年々顕著になる 7 歳では身長の増加はほぼ停止し, ほぼ完成した成人の体型を示す この体型の変化は畢丸の発育過程とくに, 性ホルモ 2 次性徴としては, 骨格, 筋肉, 皮膚, 皮ド組織, 陰 毛 腋毛などの発毛状態, 乳房, 喉頭突出などの身体 の外貌を示す形態的変化と, 音声変調, 精通現象, 初潮などの機能的変化, また精神的特性が認められる これらの 形態的, 機能的あるいは精神的特徴は, 乳児 ン生成, 分泌の様相と密接な相関を示している n 期, 幼児期を通じて徐々 に変化を示しながら思春期に 第 2 図筋力年間増加量の年齢的変化 入ると一挙に急激に発現する n すなわち思春期発育の 握 8 韋躍 90k 6 望 特微のひとつとして, ある時期までは変化が少なく, 発育の短い時間に急激に発育を終えるゴといえよう 陰毛 腋毛の発毛状態, 外陰部, 乳房などの形態的変 化は 2 3 年から 7 8 年間で発育を終わる n いずれ に しても 2 次性徴は思春期のい ちじるしい特徴的変化 であへり, 個人 及ぼす影響が大きい とともに, 個人差 が大きく, 指導の 際には十分留意すべ きことであると 考えられる 2. 陰毛 男子では, 女子より 年ほど遅れて, 陰茎根部から 6 8 0 2 4 ユ6 8 年齢 ( 歳 ) 出所賭飼 高石 r 身体発育と教冑, 束京大学体育学研究室. 第 3 図筋力年間増加量の年齢的変化 児童期のうぶ毛に変わって終毛が発生する これは加 齢とともにその捩れ方も大となる 完成は女子 4 5 歳, 男子は 6 歳頃である 第 4 図は男子における陰毛 発生年齢累計率であるが, ここにも発育加速現象がみられる この発育の型は典型的な生殖型の発育カーブ 90k 第 4 図 陰毛発生 ( 男子 ) 年齢累計率 ( 昭 32,36, 大山 ) 脚筋力年間増加量 8 6 4 2 DO 80 6D 40 20 6 802468 年齢 ( 歳 ) 出所猪飼 高石 身休発育と教育, 東京大学体育学研究室 0 盤 女子につい ての諸説は男子の発育経過と比較して 2 年早い とい うの が定説であり, 今回の私の 調査 でも精通覗象は初湖よ D 年ほど遅れて発現がみられ, その前後の発育成長も [ 司様の傾向がみられた 皿 男性の第 2 次性徴 睾丸や卵巣などの 生殖器に認められる性差を 次性 徴と呼び, 生殖器以外の身体の性差を 2 次性徴とい う を描いている 陰毛の発生に関しては, 男子は睾丸性 男性ホルモンの影響も受けるので性差がいちじるしく, 完成期には男子が菱形, 女子が逆三角形となる 2. 腋毛 男性では陰毛の 発現と同様, 副腎性因子のほか, 睾 丸性男性ホルモンの影響を受ける 女子が 0 歳, 男子が 2 3 歳頃から発毛し, 陰毛より 年ないし 2

男一 r における思春期発育の彡 } 析, とくに精通ヨ H 象について _59_ 年遅れて発毛することが種々の報告から認められている % oo 第 5 図 わが国男子の各種第 2 次性徴的 特微の開始年齢 (%) 3. ヒ ゲ 男性特有の ものであり, 男性ホル モ ンの 影響を受け 90 腋毛と同様に陰毛より 2 年遅れて発現するが, そ 80 の時期と発毛状態は個入差が大きい u 70 4. 喉頭突起と変声 60 幼児期には日立たなかった男子喉頭は, 思春期に入るとわずか 年間ほどの短い期間で急速に発育増大す 50 る すなわち男子では喉頭軟骨が前後上下左右への発育をするため前頸部にその隆起が認められるわけである これにより声帯ヒダの震動数が減少し, 男子は変 40 30 声が生じる 一一方女子の喉頭は上下左イ にのみ発育するためそれまでの小児型を保持し, したがって声帯は 20 依然として短く薄い e 男子の音声が女子に比較して約 0 オクターブから 2 オクターブ低い と常規されてい る のはそのためである 5. 睾丸とホルモ ン分泌機能 睾丸の 発育は 0 歳頃から発現する また睾丸ととも に副睾丸, 精嚢腺, 前立腺などの 副生殖器も急激な発 育を示す この翻生殖器の 発育は, 精液分泌機能をも 発現させ性欲が生ずる いわゆる精通現象が生じる しかし成人に達するのは 9 } 20 歳である 6, 外性器の発育 陰茎は学童期では円錐型であり, 陰嚢は球状で緊張 してい る. また皮下脂肪の発育がい ちじるしく, 陰茎 根部は陰嚢の付着部におおわれてい る. 思春期になる と陰茎は円錐型から円筒型になり急激に肥大する こ の時期は2 歳頃から始まり8 歳頃が最大の発育を遂げ る また陰嚢も発育し, ひだが顕著となり色素沈着を ともなって 8 20 歳頃で成入の 容積に達する これら男子の 性的成熟は, 思春期に入っ て身体各部 にわたり, 急激な変化を示すようになる 第 5 図は H 本人の 第 2 次性徴的特徴の 開始年齢を示したもの であ る い ずれも典型的な生殖型の発育カーブを描くこと がわかる しかし形質によっては発育にやや早い遅いの時間的差異が認められる また思春期発育は個人差も大きく基準との比較の判定の際主観が入りやすいので指導の際, 留意せねばならない 0 2 3 4 5 6 7 8 9 2e 歳 出所教ヨ 養成研究会 7. 去勢とその影響 動物の去勢についての記述は古くはアリストテレス の r 動物史 にみられる アリストテレスはこの記述 の中で, ニワトリを去勢すると, どのような影響が現 われるかについてっぎのような観察をしている ヒナの時に睾丸を取ると, トサカは大きくなら ず, トキもつげず, 第, メスに対して少しも興味 を持たなくなる オスらしい, いわゆる第 2 次性徴 の発達もみられなくなる 成熟したオスの睾丸を取 ると, できあがった第 2 次性徴は消えないが, 非常 に貧弱になっていく. 人間の場合, 思春期に結核などの疾病で睾丸を失 うか, 先天的に睾丸の発育が悪い時は, 性の悩みを 全く感じない人間となる また女性の様に腰幅が広 くなり, 乳房や腰のまわりに脂肪がつき, 声変り, あるいはヒゲの発生などの男子にみられる第 2 次性徴が生じなくなる事 が中国の甫官や教会の含唱隊な どの例から認められている IY 性成熟の現状 男子の思春期の特徴としては, 喉頭突出, 音声変調, ヒゲの発生, 腋毛発生, 陰毛発生, 陰茎急大, 夢性発 生, 骨格の発育, 筋肉の発育などが認められているこ とは前に述べた これらは第 2 次性徴と表現されるわ

一ヱ 60 一 けである しかしこれらの変化とともに外性器の発育があいまて成人っ男子になるわけである この男らしさを生じてから完成するまでの期間を思春期というが, 女子の初潮のように性の成熟を示すはっきりとした目安がないので, 思春期の始りと終りを決定することは外観上むずかしい しかし種々の発育現象を分析する と, 男子は精通現象, 女子は初潮をその目安とするこ とが妥当であると考えられる. 精通現象精通現象の発現は受精能力の完成ではない すなわち精通現象の発現後 2 3 年遅れて, はじめて完全な精子が管腟内に認められ, 受精能力が完成する 第 6 別に考察すると, ことが認められる 加速現象は若年者ほどいちじるしい 居住地別にみたものが第 表である これから住宅地 2 歳 8.7 ヵ月, 商店街 3 歳 6.9 ヵ月, 住宅商店街 3 歳.3 ヵ月, 平均 3 歳 3 ヵ月であり, 通現象の発現の相違が認められる 居住地による精 これはあとに述べ る初潮の発現と同様に, 社会階層との関連で考察した 場合, 上層の者は下層の者より精通現象が早いことを 示していると考えられる 精通現象の発現の季節については, われわれの調査 では春が 54% である これから精神的にも身体的にも 制約がなくなっ うるとも考えられよう S) た状態が精通現象を起こす因子になり 歳 第 6 図 023456 初潮と精通現象の発現年齢 2. 初潮 初潮に関する発達加速現象は前回 6 ) と同様以. ドの傾 向が認められた a. 初潮における発達加速現象は都市, 農村を問 わず明らかに認められるが, 都市の発達加速現象は 農村その他より著明である また同一都市において も都市の中心部ほどいちじるしい b. 社会階層と初潮年齢との関係では, 上層部の 子女は, 下層部の子女と比較して初潮の 発現が早い ことが認められる 第 表 精通現象 初 中 局 大 2323234 3 4 5 6 7 8 9 20 2 225 戎 潮 都立 B 校高校 2 年生における初潮と精通現象 ( 居住地による発現年齢 ) 住宅地 商店街 住宅商店街 2 歳 8.7 ユ3 ヵ月 (68 人 ) ヵ刀 (5 人 ). 方月 (38 人歳 3 ヵ判 ) 3 歳 6.gl 3 歳 3 2 2 歳 6.5iJ 緬 丿亅 (89 丿 t ) 瓢 騰 ), 図は精通現象と初潮の発現年齢についてのわれわれの 調査 2) 2 ) である 石井の調査では,5.6 5.9 歳, 京 都市での調査己 では 5. 歳となっており,29 年間で精 通現象には 2 年 5 ヵ月の加速がみられる さらに学年 2) 対象を L [ 学 年から大学 4 年生の未婚の男子として, 昭和 46 年夏実施したものである. 3 ) r 日本内分泌学会誌 8 巻昭和 年. 4 ) 京都市内の高校生 4,888 名の資料 ( 昭和 2S 年調査 ) から任意抽出した 689 名のうち射精年齢を明記したもの 49 名の初経験年齢. 平 均 c. 居住地と初潮との関係では, 住宅街では家庭 内での正しい性知識, 人間関係や性に対する考え方 や態度が他の居住地より望ましい状態で, 商店街, 農村よりも早いことが認められる コ V 発育加速現象 ッホ T} が 935 年に, 世代が新たになるにつれて人 間の発逵の速度が促進されるとい らに 942 年にベ う事実を指摘し, さ ンホルト トムセン s ) が多くの資料を 提示して独自の理論を発表してから発達の加速現象は 注目された この発達加速現象はヒトのからだの時代 的変化の重要な特徴である 発育加速現象の結果生ず るものとして, 成長と成熟の二面性がある 成長面に おいては同一 年齢における時代的発育値の増加であり, 成熟面においては, より若年者に成熟現象が発現する 5) El 本内分泌学会誌 8 巻でも石井氏が,557 名の調査をしているが, そのうち 722 名が春と答えている. 6 ) 昭和 4 年 月から 2 月にわたり鄙内の女子高校生,24 名を対象として実施した. 7) Koch,E.W, 8 )Bennhordt Thomsen,C.

男子における思春期発育の分析, とくに精通現象について一 6 こ とである この現象を世代間の時代の函数としてみ た場合を年間加速現象といい, 同壯代問における集団, 地域, 民族, 社会階層などの差でみる場合を発育勾配 現象という 現在までに明らかなものは以下のと SS / ) である. 年間加速現象 a. すべての年代における身長, 体重の増加の加 速 bcdef 粛牙発生の前傾 初潮年齢の前傾 男性生殖器とその機能初発の前傾 死亡率最低年齢の前傾 特定の疾病の好発年齢の前傾 2. 発育勾配現象 a 市部の小児は郡部小児に比較して発育加速現 象がいちじるしい b. 同. 一市部において社会階層上層の小児は下層 の小児に比較していちじるしい これら性的成熟を含む発達加速現象は, 新生児から 加齢とともに認められ, 思春期に, もっとも顕著にな b. その差が成入に移行している 3. 発育加速現象に影響を及ぼす因子 思春期の発育 成長あるい は性的成熟の加速現象に 影響を及ぼす因子としては以下のように考えられる a. 気候一般に気候温暖な地方では, 寒冷地と比較して初潮 などが早い傾向にあるといわれてきたが, われわれの 調査では, 宮崎, 鹿児島とい J た気候温暖な地方は, 東京, 大阪のみならず, 北海道, 青森より身体発育と 性的成熟も遅く日本一晩熟県である 発育が終わった 時点では早熟県と晩熟県との問に差異がない から, 気候は因子になりにくいと考えられる b. 社会的環境 ( 文化度, 生活水準 ) ことなど 都市と農村との発育 成長の比較は多くの学者によってなされ, 都市化の進んだ地方ほど, 思春期発育が 早いとされている また同一都市内においても, われ われの調査からいえることは, 住宅地, 商店住宅地, 商店街の順で精通現象が発現しているということであ る D これは精通現象だけでなく, 初潮の発現において も同様な現象が認められる これから文化の高い環境, 社会的 経済的に高水準にあるものは, 一般に成熟の 早発化を生ずると考えられる なお文化度に関連して性的刺激の強さが, 影響力を持つ, との説もあるが, 住宅地が商店街より精通現象, 初潮とも発現年齢の平均が早いということから, 感受性の個人差が強く相関関係は弱いと思われる c. 労働今までの調査報告の多くは, 学生の初潮発現が職業婦人より早いのが顕著である すなわち労働が過重な揚合には, 初潮発現が遅くなるようである しかし現在では 5 歳までの義務教育年限中に発現することが多いので, 労働強度よりむしろ社会的環境あるいは経済的な面に起因するところが多いと考えるべきであろう d. 栄養都市と農村の食生活における最大の差異は, 動物性蛋白質の摂取が都市生活者に多いことである 食事の質についての報告では, 蛋白質食の平均初潮年齢が, 2.65 歳であったのに対して, 炭水化物食が,4,0 歳との 9 報告 もあり, われわれの精通現象, 初潮の発現年齢と食生活との調査結果とも一致する これから, 蛋白質の摂取量が, 性的成熟に影響を及ぼすのではないかと考えられるが, 肥満児では一般児より初潮の早発現象がみられることと, 漁村の初潮発理が都市より遅いことなどから, 蛋白質が主因と断定できず, 重要一 な因子のつであると考えられる e. 遺伝初潮年齢は遺伝因子との和関が高い すなわち親と子, 姉と妹, 一卵性双生児などの初潮発現年齢に高い相関が認められている よって身長, 体重などと, と もに初潮においても遺伝因子が重要な影響を持っといえよう これらのことから成熟の加速現象は内因的には遺伝と, 相関関係が認められ, 外因としては環境因子があげられる その中で, 気候気温などの自然条件より, むしろ文化度, 生活水準, 栄養などの社会的環境に左右される面が強いといえよう VI 第 2 次性徴の国際比較 男子における第 2 次性徴の開始年齢の国際比較をしたものが第 8 図である これは日米青少年の比較で, 陰毛の発現, 最初の射精, 変声などその形質により多少の相違はあるが, 目本においては米国より 2 3 年遅れている 9) 木村邦彦 ヒトの発育, メヂカルフレンド社, 昭和 4 年.

一ヱ 62 一 第 2 表発育, 運動に対する遺伝的影響 ( 水野忠文 ) 第 8 図 H 本 アメリカ青年の第 2 次性徴の開始年齢累言卜 (%) 体 筋 発育, 運動の区分遺伝係数 位 力 瞬問的運動 身体胸 握 長重囲 背筋力 立幅垂直ボ 飛飛喉 蹄雖懺關驢 力 { 堊 び びげ 3.792.02,47.70,430.6.63.00 2.78.77 初潮についての国際比較は第 7 図である 精通現象 と同様に, 米国より 2 年の遅れが認められる 0) しか しこの差は現在ではいちじるしく減少しつつある この国際間の差の起因するものは, 発育加速現象に % oo 9080 70 60 50 4030 20 0 / 7 / /!! / /, ノ / /!, 一 /4 〆ノ! lf ノ ノ P! アメリカ入〆円本人 陰 } の } 魏 ノー一一一一ア刈杁ノ ー一 一一日 メ本入ノ死ノ〆一 一 一アメリカ人ノ 一 一 日本人 },, o 2 3 4 5 6 7 8 9 20 毳 影響を及ぼす因子で考察したものがそのままあてはまると考えられる D 第 7 図初潮の早期化傾向 爆発的にその性差が発現する この頂点は, 女性の発育が男性より早いために, 約 2 年の差が生じる 性差は大きさとかたち等の形態的性差と, 機能的性 歳 8765432 \ 丶ノルウーェ フ K ンランド 差に分類される. 形態的性差 身良, 体重, 胸囲, 座高, 上腕囲等, 全般的な形質 におい て男性は女姓より値が大きい とい える また男 性の体型からい えば, 胴が短く, 四肢が長いが, 女性 第 3 表男女骨盤相違点 一 85060 70 80 90 900 0 2D 30 4e 50 60 成人における性差はすべ 珊性差 ての形質の面で明確に認め られる これを発育との関係においてみると, すでに 受精の際に性差が生じている さらに性調節遺伝子の 支配のもとに, 内分泌腺の成熟によるホルモ ンの作用 にコントロールされて, 性差は少しずつ顕著になって いくが, 思春期の生殖機能の完成の時期を頂点として, 0) ニュルセンとヘンレー一の報告をまとめると,2 歳頃か ら発育し, 5 歳頃完成するアメリカ人に対し, 口本人は 初潮で 2 年, 完成期で 4 5 年ほ ど遅いことが認められ る. 外 形 骨盤 Itl. の形 艦 山 f 腔の形 碍 腸骨翼 耳必骨. r 角 凪日 卑 臼 コ 女 子 幅が広く丈が低い 男 横楕円形ハート形 広くて円 壽状 [ 広くて短い いちじるしく驫平 で外斜 走する 左右 丁前 } こ 自 th. 子 幅が狭くて丈が高い 下方に向うに従ワて狭くなる L 匕較白勺糸田長 v 丶 直走する 90Fvlooe 70 9 ) 相距離でう 左右の距離が短く, 側方に向かう

男子における思春期発育の分析, とくに精通現象について 一 63 一 は胴が長く, 四肢が短い 腰幅は男性が比較的狭いの に対して女性は広く, 肩幅については男性が広いのに 第 4 表性 差 対して女性は狭いという性差も認められている ll ) 性 差がもっとも顕著にみられる骨盤についてのまとめが 第 3 表である これから女性の妊娠に対する準備がうかがえる 2. 機能的性差 男性 女性の身体の大きさとプロポーションより, むしろ直接的に, 表面的な筋肉, 脂肪, 毛髪といった 形質で性差を認めることが多い 体重に対する筋肉は 男性が,4L 890, 女性が 35.8% である 一方体重に対 する脂肪は男性が 8.2 % で女性は 28.2% で, 筋肉と脂 肪における性差が顕著である 皮下脂肪は量的な差ば かりでなく, 分体にも性差が認められる すなわち全 体として女性の脂肪は男性より厚い 男性は一一般的に は, 上半身により多く分布し, 女性は下半身に分布し ている 第 9 図は Stratz によるものである 第 9 図 皮下脂肪の性差 ( 黒は男, 臼は女,Strate ) 全 骨 皮 毛 男 胴がい訓短く四肢が長胴が長く四肢が短い剔肩幅は広く腰幅は比較的狭肩幅が比較的狭く, 腰幅がい 広い. 頑丈で四肢の骨格の発育が一般にきゃしゃで四肢の骨格いちじるしい格は短小骨盤は狭く深い骨盤は広く深い 髪 乳房る 筋 一般に強靱で皮下脂肪が少皮膚が柔軟で皮下脂肪が膚. 発ない達している 発達している [ 少な. い簸は韃していゆ乎 L 腺にヒ第 2 次 庄生徴後退イ匕づ よく発達し, 筋の緊張力が肉筋の発育が劣る 強い 削藏 鯲 ホル モ ン分泌 呼機 吸能 女 いちじるしく膨大する 脚軅浪く腹音 画醵 鰍よ 肺活量, 酸素摂取量は女子より比較的多い 腹式呼吸をする 機能障害が多い 肺活量および酸素摂取量は男子に劣る 胸式呼吸をする 第 0 図バーピーテストの年齢的変化 6 5.5 また皮膚については, 男性が一般に強靱であるのに 対し, 女性では柔軟である 乳腺は男性では第 2 次性徴後はむしろ退化するのに対して, 女性ではいちじるしく発達する 男性では肩の発育がいちじるしく, 腰部の発育が貧弱であり, 筋肉や骨の発達が強く, 皮下脂肪の発達が貧弱であるのに対し, 女性では, 肩筋肉や骨の発達が弱いが, 腰部の横への発達がいちじるしく, 皮下脂肪 U ) 岩田正道 成熟期への到達, 医学書院,966 年. 5 890234567 歳 もよく発達している 脈博や呼吸数にっい ては, 男性が少なく, 女性が比 較的多い, 基礎代謝暈につ いては女性は男性の 95% で ある その他, 皮脂腺, 体毛, 腋毛, 陰毛の発毛の仕方と 量にも性差が認められる これまでの性差にっい てま とめたの が第 4 表である

一 64 一 3. 運動能力の性差 a. バーピーテスト第 0 図はバーピーテストの年齢的変化であるー バ ピー テストは敏捷性を測定するものであるが,8 3 歳までは, 男女とも明らかな神経型の経過をたどる が,4 歳から急激に低下してい る とくに低下は女子 にいちじるしい これは体重の発育と関係し, 急激な体重の増加と身体の成長に, 敏捷性に関係する筋力が追いっかない状態を示すものである すなわち, 神経, 筋, 筋力と体重の不調和によるものである しかし図から理解されるとおり,/7 歳前後から同復に向かう これは成熱が完成に近づき, ふたたび調和のとれた個体となりつつあることを示すものである b. 投力, 跳力, 走力の性差 第 図運動力 ( 走, 跳, 投 ) の発達の 比較 3Q 20 様に神経型で 5 歳を過ぎて急激に ヒ昇してい る これ は少年期の神経の発達と筋力の発達によるものが多く, 身体自体の大きさと比例の問題であり, 女性では体重 の 増加に見合うだけの 筋力の 発逮がないことがあげら れる e ボール 投げでは, 男性の発達は一般型に近づ くが, 女性は神経型と筋力型の中間を示している 以上のとおり, 運動能力にも性差が, 認められる 5 歳以上における性差は, 筋力等の性差だけによるも の ではなく, 女性が急激に運動生活から離れるとい う 社会生活の差に起因するものが多いと考察される 皿思春期発育が及ぼす影響 精通現象や陰毛, 腋毛の発現, 音声変調, あるい は 初潮の発現などの第 2 次性徴は思春期の青少年に多く の影響を及ぼすことが考えられる すなわち男子では, 4 歳頃, 女 r 一では,9 2 歳頃に性のめばえが生ずる この性のめばえは異常ではなく, むしろ正常で あり必然的に生ずるものである とくに性のめばえや性徴の遅速が本人のコンプレックスとして大きな精神 的負担となり, ひいては性的ノイローゼにまで発展し ユ 0 ている例は少なくない あるいは遅速者に性徴が. 生じ た場合本人が ホッとした と解答する者が多いこと 00 go 80 70 60 5G 男子 女テ. から性的成熟の心理面に及ぼす影響がいかに大きいか を知ることができよう. 性徴発現時の心理的変化 糖通現象あるいは初潮の発現時の心理を調査したも のが第 5 表である e 対象は学生で, 男子 37 名, 女子 56 名で 別に fl も感じなかった と答えているものは 男子 67 名, 女子 20 名で, それぞれ全体の 49% と 0 % を 占めている 勤労青年については 2 間宮氏 } によるもの である これから学生と勤労青年の問には性的変化に対する 40 30 8 ]0 2 4 6 8 20 歳 出所木村邦彦 ヒ [ の発育. 第 図は最大値を 00 とした百分比による年齢別運動能力の変化である 50 メートル. 走では男女の性差が明確である すなわち女性の発育は神経型で,6 7 歳から変化がなくなるが, 男性では, 前半が女性と同 感じ方にいちじるしい差が生じている 男子における 精通現象では, 学生に 不安, 恐れ 驚いた 嫌な 感じ など, 否定的な受取り方が多いのに対して, 勤 労青年には, うれしかワた 大入になった感じ 当 然 予期したものが生じた など, 肯定的な受取 i 丿方 が多い この差は, 勤労青年が比較的早く, 大人の仲 間入りをし, その日常生活で, 性的知識を得ているこ lz) 佐藤正 間宮武 藤原喜悦 r 青年の心理, 岩 ll 奇書店, 昭和 33 年.

男. 子における思春期発育の分析, とくに精通現象につ いて 一ヱ 65 一 第 5 表 性的成熟に対する感じ 第 6 表性的成熟による生活態度の変化 (%) うれしか一 v た 男子女予 学 k 勤労青年学生勤労! r 年 0.0% 6.7 ラら 9.7 争 5.8 ヲら 生じない 男性女 ユ 03 名 07472 80.5 鮎 性.8f 大人になった感じ 0.0 当 然 ユ.5 不 安, 恐 れ 20.0 引菖 レ た二 25,7 嫌な 感 じ 2.4 はずか しい 0.O 26.7.D 5.0 23.42.5 3.3 6.724.3 2.5 ユ6.73.2 D.0 ユ6,725.0 工 O.8 ユ6.7 2.9 8.3 生じた 25 ゴ熟 9.5 % 40 侶 27.2 ヲ δ 大入らしくなった 8 (32%) 0 (25 % ) 異性観がかわ. v た 9 ( 36 %) 5 (2.5% ) 考え深くなった ( 4 %) 6 ( エ5% ) 不安感を感じる ( L / ) 7(7.5%) { 自分の体調に気をつける ( % ) i 6 ( 5% ) 運動をしなくな一 た O (0 %) 3 (7.5% ) 計画性ができた 2 ( 8 %) 2 (5%) その他 4 (6 %) ( 2.5% ) 病気かと思った その他 7. 4.3 出所勤労青年は間宮氏の調査による..0 0.7 0.G ri I 8.3 5 9 とに起因するものであろう また前回の調査と比較す ると 不安, 恐れ 驚いた 嫌な感じ などが約 2 倍になっている これは成熟加速環境によ D, より早. く第 2 次性徴が発現し, それに対する適切な指導がな されていないことを示すものである 方, 女子における初潮に関しては, 学生に うれ しかった 大入になった感じ 当然 予期したもの が生じた感じ など肯定的な受取り方と 不安 嫌 な感じ 驚いた など, 否定的な受取り方が同時に あることは, 初潮が精通現象などの他の第 2 次性徴と 比較して, より劇的なものであること, さらには初潮 が性的成熟の中でもっとも加速化が激しいものである ことに起因するものであろう 前回の調査と比較して 不安, 恐れ 驚いた 嫌な感じ など, 否定的な 受取り方が減少しているのは, 初潮への対処が, 学校 や家庭でなされることを示すものであろう これら男女の性的成熟に対する受取り方は, 発達加 第 6 表である 男子学生においては,9.5% が生活態度に変化が生 じたと述べ ている これは間宮氏の調査の 28.9 %, わ れわれの 前回の調査の 2.5 % と比較すると減少してい るが, 成熟の加速化によ り, 若年者に性的成熟が発現 することに起因するもの であろう 生活態度に変化が 生じた内容として性の めばえによる 異性観が変わっ た 大人らしくなっ た が 30% で, 計画性がでてき た 考え深くなっ た 不安感が生じてきた と続い てい る これは自我の確立期における身体的変化が心 身相関の面から精神的に大きな影響を及ぼしていると 考えられる 勤労青年においては, 生活態度に変化が 生じたと答えた者が,30.0 % で学生より多くなっ り, てお 性的成熟は勤労青年により強く影響を及ぼしてい ることがうかがえる 女子学生においては27,2 % が生活態度に変化が生じたと答えている これも前回の調査より減少しているのは, 発育加速現象による面が多いと考えられる 勤労女子青年は 不答 が多く, 性的成熟に対して, 性教育が不徹底であるため不安や, はじらいを多く感じていることが推測される これらの解答は, 性的成熟 速現象, 性知識の程度, 家庭における人間関係と性に の加速化や激しい社会変動, 家庭における人問関係や 対する考え方と態度, 学校や家庭教育の場における性教育の程度などの要因が複雑にからみあって生ずるものであろう 2. 第 2 次性徴がへ生活態度及ぼす影響性的成熟が生活態度に及ぼす影響についての調査は 性に対する考え方や態度, あるいは性教育や性知識の程度などが複雑にからみあっていることを示している これから性的成熟を含めた第 2 次性徴の発現とその発達は, 加速化により, 肯年に心身の異常を生じやすく, 男らしさ, 女らしさと表現される生活態度の相違は徐々に行なわれることがうかがえる

_66 _ IX 性知識と意識の現釈 われわれが青少年 ( 思春期, 成熟期 ) の性知識を調 査したものが第 7 表である これは男 74 名, 女 29 名を対象として昨年夏実施したものである 中学生に 3 関する調査は, 朝山氏 によるものである これから 青少年が, いかに短期間にしかも断片的に性知識を吸 収しているかがうかがえる すなわち性教育の必要性 が現在ほど痛感させられる時はない 2 年ほど前まで は, 性教育に必要な人間の性の全般について, 科学的 な知識が不足していたわけである しかし現在では, 人問の性に関する知識の普及は性教育の実施を可能に している すなわち, 生物学, 医学のみならず, 人類 生態学, 心理学, 社会学の領域における実験と観察は 人間の性教育を可能にしたのである 現在マス コミ ュニケーションを通じて, ジャーナリズムは性を解放 してきた しかしこれは性教育とはいい難い 性教育とは, 人間の生命を尊重し, 生命を育てる教育であり, 男女両性が, それぞれのっ役割を担た上での男女の平等など理想的な社会にふさわしい人格と能力を持った男女になることを期待し, 民主的な人間教育が究極のねらいであるとするならば, 指導者の欠如などが原因となって, 性教育はとくに男子においては, ほとんど実施されていないといえるであろう このことに関するわれわれの調査は第 8 表である すなわち断片的な知識を得た成長過程にある青少年は自分たちのいだく疑問や危惧に対して両親や教師などの指導者が, 正確で, 体系的な知識で助言し, 対応してくれることを待ち望んでいることが, うかがえる これらのことから, われわれは, 子どもが成長するにつれての疑問を解くため, 解剖, 生理, 遺伝, 発生, 妊娠, 分娩などについての知識, また思春期の心身の 青男 少女年 中男 学女生 受 精 00 78 % 奴 娠 98 9 分 娩 7 46 29 8 % 66 月 経 86 loo 23 寸身 精 第 7 表中学 3 年生と青少年の性知識 (%) 夢 精 85 93 43 3 ユ 0 自 慰 卵 巣 87 9 26 87 7 39 2 4 変化, それを裏づける内分泌学, 心理学的な事実, 性 行動を支配するしくみ, 人間の性 ( 社会的関係に関す る知識, 恋愛, 性の社会問題 ) についての知識を青少 年の発達, 年齢に応じて系統だてて与えることがいかに重要かを知るものである 工 97 年の 青少年白書 において, はじめて, 青少 年の性意識調査の結果が発生されている この調査対 象は,5 歳か ら 24 歳の宋婚の男女 5,000 名で, この春 実施された 青少年が, 性や結婚につ 精 巣 排 卵 85 83 性 ホ ル モ ン 脳 下 乖 体 87828885 53 65 64 537959 83 9 29 いてどのように 考えているかを知り, 今後の性教育の方針を決める参 考にしようとしたものである 性の混乱, 性革命, 性の解放の時代とまでいわれる 95 白 律 神 経 中 枢 神 経 8 23 2 性 交 一 7 卜 ペ ッ テ ィ ン グ. 92 8 [ 62 2 74 93655 売 春 96 9. 7 5 25 47 20 29 第 8 表性教育の現状とその指導者 男爿女子 受け tk い 479 % 45 % 受けた 40 % 646 85 % 父母姆姉兄囎 麟 師 也 67006308 性 犯 罪 96 65 35 0 0528 974 注 2 人に性教育を受けた場合, それぞれに加えたので合計は合わない. 7986482 世相にもかかわらず, この 青少年白書 の結果では, 青少年の像は, きわめて穏健, 妥当なものである 性 3) 卒業期の中学生 ( 京都 K 中学, 男 273 名, 女 22 名 ) の よく知っている ことがらを表示 ( 朝 ILI 調査,96 ). 意識をするのはきわめて早く, 異性の友人を持ちたいが, その交際はおおむね腕を組む程度が望ましいし, 男女力を合わせて家庭を築くのが結婚の意義だという これでは 一部のマスコミの言う実態とはだいぶ違っ

男子における思春期発育の分析, とくに精通現象につ いて _67 _ ている と白書が記しているのも無理からぬことである しかしこの結果は調査対象にかなりの年齢の幅があったため, あるいは学生から社会人までという幅のあたためと考えられっる すなわち性という問題については,5 歳と24 歳とでは, 決定的な考え方の違いが生じるし, 学生と社会人では考え方に相当な相違が生 小学校以前 男 2 名 女 3 名 小学校低学年 ] i2i 3822 2 % 第 9 表初恋の時期 8 640 小学校高学年 35 2 3 中学校 65 62 高校 38 8 5 49 5. 4 その他 43 9 7 J 第 2 図 異性意識の発達 じるわけである このアンケートは一括して平均して い るので, 問題の所在と焦点がボケているともいえよ う 青少年が性と結婚についての理想と本音とを区別 70 していることも考えられ, その理想と現実の間に横たわる落差はかなり大きいものである 第 2 図は異性意 60 識の発達を示したものである またわれわれが実施した調査結果, 第 9 表からも白書と違ったことが考察さ れる すなわち初恋の時期は男子が小学校低学年から 50 芽ばえ, 中学校で最高値を示す 女子におい ても同様 で, 発達加速現象にマスコミュニケーションの刺激が 40 加わり, 異性を意識するのは早まっていることが認め 30 農 翻農 漁村 られる キスの欲求と経験については第 0 表のとおり, 青少 年臼書とは相違が認められる すなわち青少年が理想 と現実の聞でいかに悩んでいるかをうかがい知ること 20 都 i ができる われわれはこの青少年の本音と理想とのギャップをどう埋めているか, 理想としての性意識と現 0 都市 実の性衝動をどう処理しているかを見きわめる必要がある % ノ 小学生 中学生 匹 ヰ父 LL ード X 男子における思春期の疾病 思春期とは今までまとめたとおり, 第 2 次性徴の発現, 身体の急激な成長など乳児期とならんで変動がも 出所山根真住叮青少年期の理解 による. っとも激しい時期である このため精神的, 身体的に 第 0 表キスの 欲求と経験 欲求と経験 欲求あり 男欲求なし 女 経験あり ユ 3 4 一 欲求あり 4 欲求なし 5 5 4 ユ 6 40 7 353 25 5 ユ 司 2 8 9 222 435 4 3 6 643 6 5 8 6 8 8 6 8 24 25 0.2 8 9 2 6 9 4 4 3 4 経験あり 8 ー 9 0 9 9 3

一 68 _ も不調和をきたし, 思春期特有の疾病が発病しやすい状態にある L 性的発育に関する疾病 a. 停留睾丸睾丸は胎生 7 ヵ月の末期に, 腹腔内から陰嚢内に下 降するが, 生後 年以内まで続く者も0% 近く残る しかし思奉期になってもいずれか一方もしくは両方とも睾丸が下降してないものを停留睾丸という 治療としては, 性腺刺激ホルモンの注射が実施されており, まったく効果のない場合には手術が必要とされている する深い理解を必要とすることを知るものである 2. 成長 発育に関する疾患体重に関しては肥満症, 身長に関しては, 巨人症と小入症があり, その中でも小人症が問題になりやすい a. 小人症身長は人種, 性別により差が生じるため, 絶対値よりも普通は同一人種, 同性の集団よりいちじるしく隔たっているものをいっており, 学者により少しずっ異 なる 主因としては, 下垂体性, 思春期遅発症あるい は原発性のものが認められている 下垂体性小人症は, 停留睾丸が思春期を過ぎると造精機能は失われる ま ホルモ ン分泌低下がともなうので, 思春期に相当する た停留睾丸からの悪性腫瘍の発生率は, 正常の睾丸よ りはるかに高い とされている b, 性的成熟の加速者と遅速者 9 世紀の中頃までは, 人間の成長や成熟につい ての 変動があっ たかどうかの資料は乏しいが, あまり変化 はなかっ たであろ うと考えられる 最近における変化 は激しく, 発育の加速化は性的成熟の加速化よりさら に激しい これは前にも考察したとおり, 遺伝, 栄養, 気候, 文化度, 生活水準の高まりなどに起因すると思 われるが, 現代社会その ものが大きなカを及ぼしてい るとも考えられる 発達加速現象が成長, 成熟, 心理 の各面にわたって 調和の とれた形で行なわれるのであ れば望ましい現象であるが, 現在の社会の急激な変動 の時代には部分的加速, 部分約遅速といっ た不調和が 生じやすく, 個人差が以前に も増して大きくなっ てい る 早熟者は身体が大きく, 性的成熟が早い その反面 年齢に達しても, 第 2 次性徴の発現がみられない 体的には, 声変りもせず, 陰毛, 腋毛の発生もなく, 性器も幼児型のままで, 女子では月経がみられない この小人症の原因はいまだ明らかではない このほか, 思春期に多い病気としては, 早発乳房発 達, 思春期男子の女性乳房症, 肥満症, 貧血症, 心悸 亢進, 心雑音, 高血圧症, バーヒドウ病や甲状腺腫など の甲状腺疾患, ニキビや毛孔性苔蘚, 腋臭症, 進行性り指掌角化症などの皮膚の疾患などがあげられる 虹 男子における性教育 文部省純潔教育審議会では青年期を 少年期から成 熟期への移行期であって成熟期に対する準備としての 肉体的変化と精神的変化の起こる時期で, 男女ともお よそ 5 歳より 8 歳までとする と定義し, この時期に おける性教育の要領を以下のとおりまとめている らにこの要領は青年を対象とする性教育の要領である 具 さ では血圧が高く, 起立性調節障害や心臓疾患にかか り と同時にその両親, 指導者の基本的な常識として普及 やすい ことが指摘されている これは体位と機能との されるべきであるとも述べている 不調和が生じやすいことに起因するものであろう ま た早熟者は心理的には孤独感や, 未来への不安感が強 性教育の要領 く, 両親に対する批判的態度が顕著であるともいわれ ている 遅速者については体位が劣り, 成熟が遅れていると ともに, これが社会階層の低いグループに多く, 知能水準においてっも劣ているものが多いことに注目しな ければならない 遅速者は容易に劣等感に陥り, 学校不適応になりやすく, また社会不適応から非行にも走りやすい このように社会環境が加速者を作りだす一 方, 同じ 社会環境が遅速者をも作り出す現象を考える時, われわれは発育期, とくに思春期における成長と成熟に対. 肉体的変化イ性徴の発達 ( イ ) 性微の種類と区分 ( ロ 性徴発育の時期と起因ロ特に女性における月経の発来 2, 精神的変化 3. 月経に関する指導イ月経に関する科学的知識 ( イ ) 月経の一般的性状 ロ ( ロ ) 月経の起因とその開始, 開止, 休止 月経時の摂生

男子における思春期発育の分析, とくに精通現象について 一 J69 一 ( イ ) 肉体的変化を対象とする摂生と手当 @ 精神的変化を対象とする摂生 4. 性欲に関する指導 マスターベーションの習慣がつきやすくなり, 悪癖を 身につけてしまったという自責の念にかられ, そのた めに劣等感にかられる者も 唱現してくる むろん現在 イ 卩 性欲とは何か 性欲の純潔性とその必要の理山 ではマスターべ一ションは, 無害であるといわれてい るが, その無害性を強調すると同時に, 運動を十分に ハ男女交際の純潔性の尊守 するこ と, 朝は眼が覚めたらすぐ起床するなどの習慣 5. 成熟期に対する予備知識 を身につけさせるなどの指導が望祟しい さらには女 イ 成熟期とは何か 性の生理現象にっ いても理解をさせ, 妊娠の尊厳さに ロ 予備知識の指導要領 イ ) 婚姻に関する常識 婚姻の意義とその目的理想的な結婚一遺伝, 優性 ロ ) 生殖に闘する常識 生殖の意義 生殖の目的 及ぶ説明もつけ加えたい 澀あとがき思春期とは個体が成人としての形質や機能が飛躍的な変化を示すいわば準備期あるいは移行期とでもいうべき時代である この思春期の発育は骨格, 筋肉, 皮膚, 陰毛, 腋毛などの身体の外貌などの形態的変化の 女子の初潮に関する指導は, 家庭, 学校あるいはそ みならず, 音声変調, 初潮, 精通現象などの機能的変 の他の教育の場などを通じて実施されてきたし, その 化あるい は精神的特徴が生ずる時代である この変化 効果も認められる しかし男子の精通現象に対する指導は十分とはいえないし, むしろ指導者の欠如などの原因により, 性教育は行なわれていないといえよう. そこで男子の思奉期における指導を以下の原則を踏まえながら早急に実施すべきである が急激であるだけに, 青年は心身の不調和をきたし, 思春期特有の疾病が発現しやすい時期でもある この思春期の発育には加速現象がみられる 男子の精通現 象についても, 遺伝, 栄養, 労働, 社会的あるいは経済的影響を受けて年々早まっていることが認められる 第 2 次性徴の発現とともに, 陰茎よ り精液が流出す このため思春期の成熟発現が及ぼす影響が大きい す ること, あるいは精子生存の 至適条件, 成熟精子が駄 なわち断片的な知識しか得ていない成長過程にある青 目になる条件, 精子の製造と調節の過程, 勃起現象, 少年たちのいだく疑問や危惧に対して止確で, 体系的 射精の多くは夢性という現象として発現すること, こ れらを通じて成熟した男性としての資格が与えられる こと, 射精の意義は将来健全な子どもを作る能力が与 な知識で助言することが望まれる とくに男子におけ る性教育が皆無な現在, 解剖, 生理, 遺伝, 発生, 妊 娠, 分娩などにっいての知識, また思春期の心身の変 えられたことにあること, したがっ て生殖器を清潔に 化, それを裏づける内分泌学, 心理学的な : 実, 性行 保っことなどを説明することが必要である また精液 動を支配するしくみ, 人間の性につ いての知識を青少 でよごれた下着は自分で洗濯するように指示すること も忘れてはならない 思春期の性的成熟が発現すると, 年の 発達, 年齢に応じて系統だてて与えることが指導 首の養成とともにいかに重要かを知るものである