京都市 土砂災害警戒避難体制 づくりの手引き 京都市消防局防災危機管理室
目 的 この手引きは, 土砂災害防止法に基づき指定された土砂災害警戒区域において, 災害の予防と被害の軽減のため, 地域特性を踏まえて住民の方々と行政が情報を共有し, 早期の避難体制を構築するために作成したものです 土砂災害は突発的, 局所的な災害であるため, すべてを予測し, 対応することは非常に困難です 土砂災害の防止と被害の軽減を図るためには, 普段から危険箇所, 前兆現象, 雨量情報, 早期自主避難の重要性などを住民の方々に知っていただくとともに, 地域の状況をよく知っている住民の方々と行政が様々な情報の交換を行い, いざとういときに安全に避難できる体制を構築する必要があります 目 次 1 土砂災害の種類 1-1 急傾斜地の崩壊 ( がけ崩れ ) -------------------------------------------------1 1-2 土石流 ----------------------------------------------------------------------------------2 2 近年の土砂災害 2-1 平成 21 年 7 月中国 九州北部豪雨 -------------------------------------------3 2-2 京都府の土砂災害 -------------------------------------------------------------------3 3 防災気象情報 3-1 防災気象情報の発表 -------------------------------------------------------------4 3-2 注意報 警報の発表 ----------------------------------------------------------5 3-3 土砂災害警戒情報の発表 -------------------------------------------------------6 4 土砂災害の警戒避難 4-1 行政と住民の役割分担 -------------------------------------------------------------7 4-2 土砂災害の危険箇所の把握 -------------------------------------------------------8 4-3 避難場所と避難経路 ----------------------------------------------------------------9 4-4 避難するタイミング ----------------------------------------------------------------10 4-5 情報収集及び伝達体制 -------------------------------------------------------------11 4-6 警戒避難体制の組織 ----------------------------------------------------------------12 5 訓練 研修 ----------------------------------------------------------------------------------------13
1 土砂災害の種類 1-1 急傾斜地の崩壊 ( がけ崩れ ) 雨や地震などにより, 地盤の緩みや地表部の土砂のすべりが生じ, 山の斜面が急に崩れ落ちる現象をいいます がけ崩れは, 崩れ始めた高さの2 倍 ~3 倍の距離まで土砂が押し寄せることがあり, 発生が突発的で, 崩れ落ちる速度も速いため, 土砂災害の中で最も多くの人命被害が発生しています 谷のように中央がくぼんだ斜面 落石, わき水, 割れ目などがある斜面 高さ 5 m 以上 勾配が 30 以上高さ 5m 以上の斜面 勾配が 30 以上 前兆現象 ( 土砂災害が起こる前ぶれ ) がけに亀裂が入る 小石がぱらぱら落ちてくる がけから水がわき出る 地面やがけにひび割れができたとき がけから小石がぱらぱらと落ちてきたとき 斜面やがけから水が急に噴出したとき
1-2 土石流渓谷などにたい積した土砂や大きな岩が大雨による雨水と混じり合い, 一気に流れ下る現象をいいます 土石流は, 大きな岩の塊を先頭にして, 時には樹木を巻き込みながら時速 40kmぐらいの速さで突き進み, 谷の出口に広がる扇状地の人家や道路などに大きな被害を与えることがあります 土砂や大きな石が谷底にたまっている渓流 上流の山で樹木の伐採が行われてから 10 年以内程度の渓流 水の集まる範囲の広い奥行きの深い渓流 勾配 15 以上となる区間のある渓流の谷出口周辺や扇状地 前兆現象 ( 土砂災害が起こる前ぶれ ) 河川の水位が下がる 川が急に濁る 山鳴りがする 雨が降っているのに川の水が急に減り始めたとき 川の流れが急に濁ったり, 流木がたくさん流れてきたとき 山全体がうなっているような音 ( 山鳴り ) がしたとき
2 近年の土砂災害 2-1 平成 21 年 7 月中国 九州北部豪雨平成 21 年 7 月 19 日から26 日にかけ, 西日本で梅雨前線の活動が活発になり,21 日には山口県を中心に非常に激しい雨が降り, 山口県防府市では19 日 0 時から21 日 2 4 時の3 日間の雨量が332.0ミリに達しました この大雨により, 鳥取県 広島県 山口県 福岡県 佐賀県 長崎県において死者が3 1 名となり, このうち山口県防府市では, 土石流による社会福祉関連施設への被害などにより14 名の死者が発生しました ( 国土交通省の HP より ) 2-2 京都府の土砂災害 宮津市滝馬地区 ( 死者 2 名 ) 平成 16 年 10 月台風 23 号 京丹後市丹後町間人地区 ( 死者 2 名 ) 平成 18 年 7 月梅雨前線による豪雨 ( 京都府の HP より )
3 防災気象情報 3-1 防災気象情報の発表気象庁は, 低気圧や台風の接近などによって, 大雨や強風により, 災害が発生するおそれがある場合, 注意報や警報などの防災気象情報を発表します 大雨による防災気象情報発表のタイミングと目的は, 次のとおりです 発表の時期 大雨, 強風の可能性が高くなる 大雨, 強風となる 重大な災害をもたらす大雨, 暴風となる 気象情報 大雨や暴風の注意, 警戒を呼び掛け 注意報, 警報を補完する情報 注意報 大雨や強風などによる災害に注意を呼び掛け 防災担当者の連絡, 待機などの目安 警 報 発表の目的 重大な災害のおそれがある場合に発表 防災担当者の防災活動, 住民の避難の目安 記録的な大雨の出現 記録的短時間大雨情報 災害発生の引き金となりやすい数年に一度しか発生しない短時間の大雨を観測, 解析したときに発表 観測値及びレーダー アメダス解析雨量の 1 時間の降水量が 90mm 以上を記録した場合に発表 被害の拡大が懸念される 土砂災害警戒情報 大雨による土砂災害発生の危険度が高まった時に発表 市町村長が避難勧告等を発令する際の判断, 住民の自主避難の目安
3-2 注意報 警報の発表注意報や警報は, 雨量などが下記の基準値を超えると予想されるときに発表されます 大雨注意報 1 時間雨量 20mm 以上かつ総雨量 60mm 以上 3 時間雨量 60mm 以上土壌雨量指数 90 ~119 発表区域 大雨警報 1 時間雨量平坦地 50mm 以上平坦地以外 60mm 以上土壌雨量指数 112 ~149 土壌雨量指数とは 土壌雨量指数とは, 降った雨が土壌中に水分量としてどれだけたまっているかを示した指数です 大雨によって発生する土砂災害 ( 土石流 がけ崩れなど ) は, 土壌中の水分量が多いほど発生の可能性が高く, また, 何日も前に降った雨が影響している場合もあります 京都 亀岡 対象市町村 京都市, 亀岡市, 向日市, 長岡京市, 大山崎町 平成 22 年度から市町村ごとに発表予定 雨の強さと人の受けるイメージ 地面からの跳ね返りで足元がぬれる地面一面に水たまりができる 傘をさしていてもぬれる 注意報の発表 道路が川のようになる 傘は全く役に立たない 警報の発表 水しぶきであたり一面が白っぽくなり, 視界が悪くなる
3-3 土砂災害警戒情報の発表大雨による土砂災害発生の危険度が高まった時, 市町村長が避難勧告等を発令する際の判断や住民の自主避難の参考となるよう, 都道府県と気象庁が共同発表する防災情報で, 京都府では, 平成 19 年 6 月 1 日より土砂災害警戒情報の発表が開始されました 土砂災害警戒情報降雨予測と土壌中の水分量 ( 土壌雨量指数 ) をもとに, 大雨による土砂災害発生の危険度が高まった時に発表されます がけ崩れ, 土石流に対応した情報です 発表区域 大雨注意報 大雨警報 土砂災害警戒情報 テレビ ラジオなどで発表 避難の目安避難勧告等を発令する際の判断住民の自主避難の目安 京都市は, 行政区ごとに発表されますが, 上京区, 中京区, 下京区, 南区には発表されません 発表基準 土砂災害警戒情報の発表及び解除は, それぞれ次の項目のいずれかに該当する場合に京都府と京都地方気象台が協議して行います 発表 解除 大雨警報発表中に気象庁の降雨予測に基づき作成された指標が監視基準に達した場合実況値が監視基準を下回り, かつ短時間で再び発表基準を超過しないと予想される場合や無降水状態が長時間継続している場合
情報共有報伝達ハザードマップの提供 4 土砂災害の警戒避難 4-1 行政と住民の役割分担行政と住民は, 土砂災害の特徴と各々の役割分担について共通認識を持ち, 双方で協働して, 土砂災害に対する警戒避難体制を構築する必要があります 住民 平常時豪雨時知る努力情危険な場所を把握する情報の連絡網をつくる安全な避難行動を知る 的確な避難 避難勧告等による避難自主的な避難 行政 知らせる努力 研修会 防災訓練の実施広報活動の推進 警戒避難体制づくり 各種情報の提供 情報の提供避難勧告等の発令関係部局との連携 警戒 避難の実行 行政の役割行政は, 降雨の状況や土砂災害警戒情報等について, 住民への情報提供等に努めます ( 豪雨時 ) 雨量情報, 土砂災害警戒情報, 避難所開設情報等の提供 土砂災害警戒情報や住民から得られた前兆現象に基づき, 避難勧告等を発令 関係部局との連携 ( 平常時 ) ハザードマップの提供 研修会 防災訓練の実施 広報活動の推進 住民の役割住民は, 土砂災害の危険性が高まった場合には, 避難することが最善の方法です ( 豪雨時 ) 避難勧告等に従って避難 前兆現象等の把握により自ら避難 ( 平常時 ) ハザードマップ等で危険な場所を把握する 土砂災害警戒情報や避難情報等を伝達するため, 地域で情報の連絡網をつくる 住民と行政で話し合い, 土砂災害による被害を軽減するための安全な避難行動を知る
地域防災力の向上のために住民の防災意識の向上を図るため, 行政は, 土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等の指定の際の説明会や防災訓練等の機会を通じ, 住民との話し合いを積極的に行っていきます また, 住民は, いざというときに備え, 日ごろから, 自主防災組織, 自治会や町内会等の活動において, 土砂災害への対策を話し合い, コミュニティーとしてのつながりを深めることが重要です 土砂災害への対策という共通認識に立って, 行政側の 知らせる努力 と住民側の 知る努力 により情報共有を図り, 地域の防災力を向上していく必要があります 4-2 土砂災害の危険箇所の把握 土砂災害警戒区域の指定箇所の縦覧 ( 閲覧 ) 土砂災害の区域指定が行われると, 京都府から指定図書が公表されます 縦覧は, 京都府砂防課, 京都土木事務所, 消防局防災危機管理室, 該当区役所, 出張所等で行えます 急傾斜地の崩壊 土石流 土砂災害ハザードマップの提供土砂災害の区域指定が行われた地区ごとに, 土砂災害ハザードマップを作成し, 配布します このハザードマップは, 警戒区域の指定箇所及び避難所等を標記した地図と, 土砂災害に関する情報などを記載しています
4-3 避難場所と避難経路避難場所は, 安全な場所であることが最も重要であり, 土砂災害の警戒区域外で, 安全な避難経路を通っていける, できるだけ近い場所に設定することが理想です しかし, 指定している避難所が警戒区域内にあり, それに替わる公共施設等がないこともあります 避難場所を設定する時は, 避難が可能な範囲で, 少しでも安全な場所に避難することを検討する必要があります 土砂災害警戒区域 親戚 知り合い宅 危険な道路 安全な施設 安全な避難経路 安全な避難所 安全な避難経路避難場所への避難においては, 土砂災害や水害の危険性の少ない道路を通って避難することが重要です 地域で, 安全な避難経路について普段から点検を行い, 周知しておく必要があります また, 避難時において災害の前兆現象などが確認された場合は, 情報を共有して, 危険な避難経路を避けて避難することが必要です 安全な避難場所避難場所が土砂災害に対して安全である場合は, 本市の指定している避難所に避難することが原則です しかし, 避難所が遠くにある場合や避難路が危険な場合, 高齢者等で長距離の避難が困難な場合などは, 近くに避難する場所を設定する必要があります 警戒区域外にある公民館や事業所, 親戚宅や御近所宅へ避難することについて, 地域で話合いをしましょう
緊急の度合い4-4 避難するタイミング土砂災害のほとんどは大雨が原因として発生します 今後の降雨の状況や, 大雨に関する注意報 警報及び土砂災害警戒情報が発表された場合には, 避難の準備や自主避難を行う必要があります また, 京都市又は各区災害対策本部から土砂災害による避難勧告が発令された場合は, すぐに避難を開始してください 災害時の情報 避難行動 大雨警報が発表されたら 報安全な避難場所土砂災害警戒情報が自主的に発表されたら収早めの避難全な避避難勧告等が発令されたら集すぐに避難前兆現象が確認されたら一刻も早く避難してください 安避難指示 避難情報の種類 種類 呼び掛け例 みなさんの行動 避難の準備を整え, ラジオや現在 付近は, 土砂災害のテレビの放送にも注意をしてく避難準備危険性が非常に高くなっておりださい お年寄りや子どもなど情報ます いつでも避難できるよう避難に時間を要する方は, このに準備をしてください 段階で避難しましょう 避難勧告 ただいま 付近一帯に避難家族, 近所で助け合いながら, 勧告が出されました 急いで 安全な避難場所に速やかに避難 に避難してください を始めましょう 危険が間近に迫っています 現在, 付近で土砂災害の発生が予想されます 直ちに避難を開始してください 情情報収集を始める 避難の準備 難経路大雨注意報が発表されたら 自然現象のため不測の事態等も想定されることから, 計画された避難場所等に避難するいとまがない場合もあり, 災害が切迫した状況では, 自宅や隣接建物の 2 階等に避難することも必要です
( 地域住民 ) 京都府京戒区域の住民テレビ ラジオ共同発表都地方気象警戒区域の住民主防災会者自警戒区域の住民 一斉連絡の住民援護設要4-5 情報の収集 伝達体制土砂災害警戒情報の発表や避難勧告等の発令をした場合は, 京都市又は区災害対策本部から, 電話等により避難等の必要な地域の自主防災会の会長等に伝達します 連絡を受けた自主防災会は, 各自主防災部等を通じて避難が必要な住民に伝達を行います 土砂災害警戒情報の伝達 インターネット 携帯 Web (インターネット京 一斉連絡都主防警市電話災戒災災自主防災部会区害害警域対対自主防災部戒の策策区住本本電話域関警の民部入援連戒住 一斉連絡護施区所域者区民自主防災部者自設要台警内)インターネット 協議 区災害対策本部テレビ ラジオ 電話 電話 一斉連絡 自主防災部自主防災部自主防災部(関警連戒区所施域者入内)警戒区域部 避難勧告等の伝達 ( 地域住民 ) 京都市災害対策本部 あらかじめ登録した方に対してメール 電話 FAX により一斉に伝達 あらかじめ登録した方に対してメール 電話 FAX により一斉に伝達 ( 注 ) 避難勧告等は, 緊急の場合には, 消防署長や警察官が発令する場合もあります
4-6 警戒避難体制の組織区域指定の規模 ( 世帯数等 ) を考慮し, 警戒避難の情報連絡体制や組織内の役割などを検討します 情報連絡体制 ( 例 ) 土砂災害の指定区域内 情報連絡担当者自主防災部長 ( 自主防災部長など ( 情報連絡担当者 ) ) 各組長など ( 情報連絡協力者 ) 民生委員など ( 避難誘導協力者 ) 各世帯 各世帯 会長 副会長 自主防災部長 自主防災部長 省略 組織内の役割 ( 例 ) ** 自主防災会 情報連絡担当者 ( 自主防災部長 ) TEL***-**** 会長との連絡調整及び情報伝達 各担当者との情報連絡 ** ** 住所 ******* ** 区役所 TEL***-**** ** 消防署 TEL***-**** 情報連絡協力者 ( 各組長など ) 担当者 ** ** TEL***-**** 住所 ********* 担当者 ** ** TEL***-**** 住所 ********* 隣組内の住民への情報伝達 避難誘導協力者 ( 民生委員など ) 担当者 ** ** TEL***-**** 住所 ********* 担当者 ** ** TEL***-**** 住所 ********* 住民の避難の協力 ( 特に要援護者の支援 ) * 既存の連絡組織等があれば, 御活用ください
5 訓練 研修 目的意識を持った防災訓練の実施防災訓練の実施に当たっては, 地域の被災経験や他市町村の災害実態等を参考にしながら, 警戒避難の方法や体制の点検を行うとともに, 訓練を通じて明らかになった課題等について, 早急に対策を施すことが重要です こうした訓練は, 雨がよく降る時期の前に実施するとともに, 継続した取組としましょう 訓練は, 災害時要援護者 (*) を含む住民参加型とし自主防災組織, 区役所, 消防署, 消防団, 警察, その他関係機関等と連携して実施するとともに, 夜間 休日の実施等, 実効性のある訓練となるように工夫しましょう * 災害時要援護者 ( 災害から身を守るために安全な場所に避難する際に支援を要する人 ) 様々な機会を通じての研修会等の実施定期的に地域の避難場所での講習会などを実施し, 土砂災害に対する知識を深めるとともに, 行き帰りの道で, 避難場所や避難経路を確認していただくことも重要です また, 次世代の地域防災の担い手となる児童 生徒を対象に, 早い段階から防災教育を実施することも地域の防災力を高める効果的な方法です 避難所における講習会 ( 宮崎県 ) 災害時要援護者の避難支援 ( 奈良県 ) 園児等に対する学習会 ( 山形県 ) 国土交通省のホームページより
京都市 土砂災害警戒避難体制 づくりの手引き 京都市消防局防災危機管理室 604-0931 京都市中京区押小路通河原町西入榎木町 450 番地の2 TEL 075-212-6730 FAX 075-212-6790 発行京都市消防局防災危機管理室京都市印刷物番号第 210256 号