芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍における高頻度の 8q24 再構成 : 細胞形態,MYC 発現, 薬剤感受性との関連 Recurrent 8q24 rearrangement in blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm: association wit

Similar documents
1. 研究の名称 : 芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍の分子病理学的研究 2. 研究組織 : 研究責任者 : 埼玉医科大学総合医療センター病理部 准教授 百瀬修二 研究実施者 : 埼玉医科大学総合医療センター病理部 教授 田丸淳一 埼玉医科大学総合医療センター血液内科 助教 田中佑加 基盤施設研究責任者

芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍 (BPDCN) の原因遺伝子変異を発見 ポイント 確立された治療法がない白血病である 芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍 (BPDCN) の遺伝子解析を行い MYB 融合遺伝子を発見しました MYB 融合遺伝子の検査法を確立し この白血病の診断に役立てることが可能になりました

小児の難治性白血病を引き起こす MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見 ポイント 小児がんのなかでも 最も頻度が高い急性リンパ性白血病を起こす新たな原因として MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見しました MEF2D-BCL9 融合遺伝子は 治療中に再発する難治性の白血病を引き起こしますが 新しい

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

EBウイルス関連胃癌の分子生物学的・病理学的検討

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 P EDTA-2Na( 薄紫 ) 血液 7 ml RNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60 氷 MINテイリョウ. 採取容器について 0

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 中谷夏織 論文審査担当者 主査神奈木真理副査鍔田武志 東田修二 論文題目 Cord blood transplantation is associated with rapid B-cell neogenesis compared with BM transpl

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の特性と

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

Microsoft Word - all_ jp.docx

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

がん登録実務について

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

スライド 1

平成14年度研究報告

PowerPoint プレゼンテーション

イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 5. 免疫学的検査 >> 5G. 自己免疫関連検査 >> 5G010. 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク

結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

<303491E592B BC92B08AE02E786C73>

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

H27_大和証券_研究業績_C本文_p indd

平成 30 年 2 月 5 日 若年性骨髄単球性白血病の新たな発症メカニズムとその治療法を発見! 今後の新規治療法開発への期待 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 門松健治 ) 小児科学の高橋義行 ( たかはしよしゆき ) 教授 村松秀城 ( むらまつひでき ) 助教 村上典寛 ( むらかみ

博士の学位論文審査結果の要旨

MTX を使用している患者に発症するリンパ増殖性疾患は WHO 分類では 移植後リンパ増殖性疾患や HIV 感染に伴うリンパ増殖性疾患と類縁の Other iatrogenic immunodeficiency associated LPD に分類されている 関節リウマチの治療は 近年激変し 早期の

上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

(Microsoft Word - \203v\203\214\203X\203\212\203\212\201[\203X doc)

学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

Untitled

-119-

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

長期/島本1

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

検査項目情報 クリオグロブリン Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital 一次サンプル採取マニュアル 免疫学的検査 >> 5A. 免疫グロブリン >> 5A160. クリオグロブリン Ver.4 cryo

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

Microsoft PowerPoint - 資料3-8_(B理研・古関)拠点B理研古関120613

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

ヒト慢性根尖性歯周炎のbasic fibroblast growth factor とそのreceptor

子として同定され 前立腺癌をはじめとした癌細胞や不死化細胞で著しい発現低下が認められ 癌抑制遺伝子として発見された Dkk-3 は前立腺癌以外にも膵臓癌 乳癌 子宮内膜癌 大腸癌 脳腫瘍 子宮頸癌など様々な癌で発現が低下し 癌抑制遺伝子としてアポトーシス促進的に働くと考えられている 先行研究では ヒ

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

Untitled

小児感染免疫第25巻第2号

再発小児 B 前駆細胞性急性リンパ性白血病におけるキメラ遺伝子の探索 ( この研究は 小児白血病リンパ腫研究グループ (JPLSG)ALL-B12 治療研究の付随研究として行われます ) 研究機関名及び研究責任者氏名 この研究が行われる研究機関と研究責任者は次に示す通りです 研究代表者眞田昌国立病院

するものであり 分子標的治療薬の 標的 とする分子です 表 : 日本で承認されている分子標的治療薬 薬剤名 ( 商品の名称 ) 一般名 ( 国際的に用いられる名称 ) 分類 主な標的分子 対象となるがん イレッサ ゲフィニチブ 低分子 EGFR 非小細胞肺がん タルセバ エルロチニブ 低分子 EGF

平成 28 年 12 月 12 日 癌の転移の一種である胃癌腹膜播種 ( ふくまくはしゅ ) に特異的な新しい標的分子 synaptotagmin 8 の発見 ~ 革新的な分子標的治療薬とそのコンパニオン診断薬開発へ ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 消化器外科学の小寺泰

別紙様式第1

急性骨髄性白血病の新しい転写因子調節メカニズムを解明 従来とは逆にがん抑制遺伝子をターゲットにした治療戦略を提唱 概要従来 <がん抑制因子 >と考えられてきた転写因子 :Runt-related transcription factor 1 (RUNX1) は RUNX ファミリー因子 (RUNX1

Untitled

上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

中医協総 再生医療等製品の医療保険上の取扱いについて 再生医療等製品の保険適用に係る取扱いについては 平成 26 年 11 月 5 日の中医協総会において 以下のとおり了承されたところ < 平成 26 年 11 月 5 日中医協総 -2-1( 抜粋 )> 1. 保険適

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認


の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

Microsoft PowerPoint - 分子生物学-6 [互換モード]

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

STAP現象の検証の実施について

を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

検査項目情報 6475 ヒト TARC 一次サンプル採取マニュアル 5. 免疫学的検査 >> 5J. サイトカイン >> 5J228. ヒトTARC Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital Ver.6 thymus a

PowerPoint プレゼンテーション

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

大腸癌術前化学療法後切除標本を用いた免疫チェックポイント分子及び癌関連遺伝子異常のプロファイリングの研究 

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

日臨技九州支部血液卒後セミナー 解説 3

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

サイトメトリー12-1.indd

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

Microsoft Word - 1 color Normalization Document _Agilent version_ .doc

汎発性膿庖性乾癬の解明

2. ポイント ALK 陽性肺がんに対する次世代 ALK 阻害薬 Ceritinib( 国内承認申請中, 米 欧承認済 ) への耐性機構として 新たに P 糖たんぱく質 (ABCB1) の過剰発現が Ceritinib の細胞外排出を亢進して耐性を起こすことを発見しました P 糖たんぱく質の過剰発現

dr

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号添加物 ( キャップ色等 ) 採取容器採取材料採取量測定材料ノ他材料 DNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 JAK2/CALR. 外 N60 氷 採取容器について その他造血器 **-**

インプラント周囲炎を惹起してから 1 ヶ月毎に 4 ヶ月間 放射線学的周囲骨レベル probing depth clinical attachment level modified gingival index を測定した 実験 2: インプラント周囲炎の進行状況の評価結紮線によってインプラント周囲

博士学位申請論文内容の要旨

血漿エクソソーム由来microRNAを用いたグリオブラストーマ診断バイオマーカーの探索 [全文の要約]

いません AYA 世代の代表的ながん種は B-ALL ですが 9 割以上においてがん遺伝子 発がん 機構がわかっておらず 有効な分子標的療法も存在しません 小児 B-ALL の多くが MLL 融合 遺伝子や TEL-AML1 融合遺伝子が原因であることがわかっている一方 成人 ALL は BCR-A

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

Microsoft PowerPoint - 指導者全国会議Nagai( ).ppt

を作る 設計図 の量を測定します ですから PCR 値は CML 患者さんの体内に残っている白血病細胞の量と活動性の両方に関わるのです PCR は非常に微量の BCR-ABL 設計図 を検出することができるため 残存している病変を測定するものとよく言われます 4. PCR の検査は末梢血と骨髄のどち

PowerPoint プレゼンテーション

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

Transcription:

芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍における高頻度の 8q24 再構成 : 細胞形態,MYC 発現, 薬剤感受性との関連 Recurrent 8q24 rearrangement in blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm: association with immunoblastoid cytomorphology, MYC expression, and drug response Sakamoto K, Katayama R, Asaka R, Sakata S, Baba S, Nakasone H, Koike S, Tsuyama N, Dobashi A, Sasaki M, Ichinohasama R, Takakuwa E, Yamazaki R, Takizawa J, Maeda T, Narita M, Izutsu K, Kanda Y, Ohshima K, Takeuchi K. Leukemia. 2018 May 23. doi: 10.1038/s41375-018-0154-5. 研究の背景 芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍 (BPDCN) は, 形質細胞様樹状細胞の前駆細胞に由来するとされる稀な腫瘍です. 皮膚に好発するのが特徴で, 高齢者, 男性に特によくみられます. 当初化学療法に反応しますが, 再発率が高く, 生存期間中央値は 12-14 か月と予後不良な疾患です.BPDCN では様々な癌抑制遺伝子の変異や,MYB 遺伝子の再構成等が報告されていますが, 多数例の収集が困難であることもあり, 大規模コホートをもちい, 臨床的意義とともに検討されたゲノム異常は知られていません. 標準治療も定まっておらず, 有効な治療法の開発が求められています. 組織病理学的には, 腫瘍細胞はクロマチン繊細で中等大の不整形核と少量から中等量の細胞質を持ち, 核小体は不明瞭, または 1 つ~ 数個の小さな核小体が認められます. しかし我々は以前より, このような標準型の BPDCN(classic BPDCN) とは大きく異なり, 類円形空胞状の核, 好塩基性で中等量の細胞質と光輝性の大きな中心性核小体を 1 つ持つ, 免疫芽球 (immunoblast) に似た immunoblastoid cell を主体とする像を示す症例が存在することを認識しており, 免疫芽球様型 BPDCN (immunoblastoid BPDCN) と名付けていました. 最近我々は,8q24 領域 ( がん遺伝子 MYC の遺伝子座 ) の再構成を示し,MYC を発現する immunoblastoid BPDCN の症例を経験しました. このことから,BPDCN の細胞形態と, 8q24 再構成および MYC 発現の間に, 遺伝子型 表現型相関があるのではないかと考え, 研究を開始しました. また,MYC をターゲットとした治療法についても細胞株を用いて検討することとしました. 研究の内容 1

我々は, 全国 52 機関の協力を得て,154 例の BPDCN と診断または疑診された症例の収集に成功しました. これらのうち 118 例を組織病理学的に BPDCN と確定しました. 細胞形態を解析し,62 例 (53%) を classic BPDCN,41 例 (35%) を immunoblastoid BPDCN に分類しました. 続いて,8q24 領域 (MYC locus) の再構成,MYC 発現について,FISH 法 ( 独自開発したプローブを使用 ) および MYC 免疫染色法を用いて, それぞれ解析しました. その結果,109 例が解析可能であり,41 例 (38%) が MYC + BPDCN( 両解析陽性 ),59 例 (54%) が MYC - BPDCN( 両解析陰性 ) に分類されました. 驚くべきことに, 解析可能な immunoblastoid BPDCN の全例 (39/39 例 ) が MYC + BPDCN であり,classic BPDCN のほとんど (54/56, 96%) が MYC - BPDCN であると判明しました. すなわち, 形態分類と MYC による分類の間に強い遺伝子型 表現型相関が見出されました ( 図 1). なお,MYC + BPDCN には MYB/MYBL1 再構成は認められず (0/36 例 ),MYC - BPDCN の 18/51 例 (35%) では MYB/MYBL1 の再構成が認められました. 臨床的情報の統計学的解析により,MYC + BPDCN 症例は MYC - BPDCN 症例に比し, 発症年齢が高く, 局所腫瘤性の皮膚病変が多く, 生存期間が不良であることが示されました ( 図 2). 後方視的研究であるため今後の検証が必要ですが,MYC + BPDCN と MYC - BPDCN は臨床的にも異なる点が認められたことになります. 免疫学的マーカーについても,BPDCN に特徴的とされるマーカーの一つである CD56 の陽性率 (MYC + BPDCN: 78%, MYC - BPDCN: 98%) 等に違いがみられました. 図 3 に BPDCN 118 例の所見のまとめを示します. さらに MYC + BPDCN と MYC - BPDCN の生物学的特徴を比較するため,BPDCN 細胞株 CAL-1, がそれぞれ MYC + BPDCN,MYC - BPDCN であることを確定し, これらの細胞株を用いて実験を行いました. 両株の遺伝子発現プロファイルを比較したところ,MYC はその差異をもたらす代表的な分子の 1 つであることが明らかになりました. また,shRNA により MYC をノックダウンしたところ CAL-1 の生存性が抑制され,MYC + BPDCN 細胞の生存に MYC が重要な役割を果たしていることが示唆されました. 続いて薬剤感受性実験を行い,MYC を間接的に抑制する BET 阻害薬, オーロラキナーゼ阻害薬が に比し CAL-1 の増殖を強く抑制することを見出しました ( 図 4). これらの結果から,BPDCN では, 8q24 再構成,MYC 発現, および細胞形態が密に関連し, さらに治療において有用なバイオマーカーとなる可能性が示唆されました. なお, に対しては,BCL2 阻害薬であるベネトクラックスが CAL-1 同様に有効であり,BET 阻害薬等の効果が比較的低い可能性 2

のある MYC - BPDCN に対しては, 同薬剤を治療に用いることができる可能性が示されまし た. 今後の展開 今回我々は,BPDCN において,MYC 異常 ( 遺伝子再構成および発現異常 ) が高頻度 ( 約 40%) に見られ, かつ, それが細胞形態観察時に推測可能であること, 薬剤感受性と関連することを明らかにしました.MYC 異常に基づく分類は,BPDCN の病態解明と新たな治療戦略開発に寄与するものと期待されます. 3

免疫芽球様型 BPDCN (Immunoblastoid) 標準型 BPDCN (Classic) MYC 免疫染色,split FISH (+) MYC 免疫染色,split FISH (-) MYC + BPDCN (38%) MYC - BPDCN (54%) 図 1:BPDCN における細胞形態と MYC 異常の関連

皮膚病変の例 局在性腫瘤 全身性紅斑 生存期間 1.0 0.8 MYC 分類 MYC( ) MYC(+) 0.6 生存率 0.4 0.2 0.0 P=0.049 (RMST) 0 20 40 60 80 100 生存期間 ( 月 ) 対象者数 MYC( ) 47 23 11 5 3 3 MYC(+) 37 11 4 3 1 1 図 2:MYC+BPDCN と MYC-BPDCN の臨床的特徴

MYC 分類 MYC-positive Indeterminate MYC-negative NE 年齢性別分布皮膚病変肉眼所見細胞形態免疫染色 MYC FISH MYB MYBL1 FISH SUPT3H TCL1 BPDCN BDCA2 CD123 マーカー CD4 CD56 初回治療効果 年齢 性別 皮膚病変分布 皮膚病変肉眼所見 細胞形態 免疫染色,FISH BPDCNマーカー 初回治療効果 > 40 男性 局在性 腫瘤 immunoblastoid 陽性 陽性 20-40 女性 全身性 紅斑 / 局面 classic 不均一 非典型的所見 完全寛解 < 20 皮膚病変なし 混在性 intermediate 陰性 (10%+) 陰性 非完全寛解 不明 皮膚病変なし 陰性 評価不能 不明 不明 評価不能 図 3:BPDCN 118 例の所見一覧

BET 阻害薬 オーロラキナーゼ阻害薬 relative 相対細胞増殖率 cell growth (% (% of control) 100 50 JQ1 相対細胞増殖率 (% of control) 0 10 100 1000 concentration 薬剤濃度 of (nm) JQ1 (nm) BCL2 阻害薬 相対細胞増殖率 relative cell growth (% (% of of control) 100 50 0 OTX015 10 100 1000 concentration 薬剤濃度 of OTX015 (nm) (nm) 相対細胞増殖率 relative cell growth (% (% of of control) 100 50 0 0 1 10 100 1000 10000 concentration 薬剤濃度 of venetoclax (nm) (nm) 図 4:BPDCN 細胞株の薬剤感受性 IGH-MYC 転座陽性の多発性骨髄腫細胞株である KMS-12-PE と,MYC 再構成陰性の慢性骨髄性白血病細胞株である をレファレンスとして用いた.