化学変化をにおいの変化で実感する実験 ( バラのにおいからレモンのにおいへの変化 ) 化学変化におけるにおいは 好ましくないものも多い このため 生徒は 化学反応 =イヤな臭い というイメージを持ってしまう そこで 化学変化をよいにおいの変化としてとらえさせる実験を考えた クスノキの精油成分の一つであるリナロールの誘導体には バラのにおいの成分であるゲラニオールやレモンのにおいの成分であるシトラールがある リナロールの誘導体 リナロールをアセチル化すると 異性体である酢酸ゲラニル ( E 体 ) と酢酸ネリル ( Z 体 ) ができる その後 加水分解 酸化を行うことで酢酸ゲラニルは ゲラニオール ゲラニアールに変化する また 酢酸ネリルはネロール ネラールへと変化する ゲラニアールとネラールの混合物を一般にシトラールと呼ぶ E 体 ( trans) MnO 2 (n-hex) 20 ゲラニアール Z 体 ( cis) シトラール 酢酸ネリルネロールネラール リナロールからゲラニオール ネロールを得る反応は やや難しい実験であるが ゲラニオール ネロールからシトラールを得る実験は簡単な操作で行うことができるため 教材として十分に活用が可能であると考えられる
ゲラニオールからシトラールを合成する実験 MnO2 ゲラニオール (n-ヘキサン) 20 1 h シトラール ゲラニオール 0.1g をヘキサン 10ml に溶かし活性二酸化マンガン 1.0g を加え 室温 (20 ) でスターラーを使い攪拌する 薄層クロマトグラフィー :TLCアルミシート( Silica Gel 60 F 254 ) 反応前後の物質を薄層クロマトグラフィーにかけるとゲラニオールがシトラールに変化していることが分かる 展開液酢酸エチル :n- ヘキサン 4 : 1 シトラールは UV 吸収もある α-β 不飽和カルボニル 薄層クロマトグラフィー 薄層クロマトグラフィー ( はくそうクロマトグラフィー, TLC Thin-Layer Chromatography) はガラスの板の上にシリカゲル アルミナ ポリアミド樹脂などを薄く張ったもので 主に 反応の進行状況を迅速に確認したり カラムをする際の分離条件の検討や 分離の確認に用いられる スポットの移動距離を溶媒の移動距離で割ったものを Rf 値と呼ぶ Rf 値は溶離液組成 温度 担体 チャンバーの溶媒蒸気の飽和度 スポット量を管理すれば再現性があるので サンプル同定にも使用できる 検出方法 ( TLC) 市販の TLC 担体は UV インジケーターが配合されているので UV を照射すると仄かに蛍光を発する 芳香環など UV を吸収するサンプルは UV インジケーターの蛍光を阻害するので TLC に UV を照射してスポット位置を確認するのが普通である UV を吸収しないスポットの検出方法として 希硫酸をスプレーして ホットプレートで焼く ( あぶり出しの原理 ) ヨウ素ビン中でヨウ素蒸気に曝す 1
実験の手順 1 スクリュー瓶 Ⅰにn-ヘキサン 1ml を入れ ゲラニオール 0.05g を加える 2 スクリュー瓶 Ⅱに活性に酸化マンガン 0.5g をいれる 3 ゲラニオールをろ紙にひたしにおいを確認する 4 反応前のゲラニオールをキャピラリーを使いTLCにスポットする 5 瓶 Ⅰ(n-ヘキサンに溶かしたゲラニオール 0.05g) を瓶 Ⅱ( 活性に酸化マンガン ) に入れ ふたをして3 分間振る 6 反応後の溶液をTLCにスポットする 酢酸エチル :n-ヘキサン=4:1の溶液で展開する UVランプで紫外線の吸収をみる ( シトラール ) ヨウ素の入った瓶に入れる 7 反応後の溶液をろ紙で吸い取り においを比較する ( 反応前と ) 1 2 3 4 6 5 6 7 ゲラニオールからシトラールへ化学変化したことを バラのにおいからレモンのにおいに変化したこと でとらえることができる実験である TLC( 酢酸エチル :n- ヘキサン = 4:1 ヨウ素を付加 ) 2
授業における生徒用実験 ゲラニオール( Geraniol) ゼラニウムから発見された直鎖モノテルペンの一種 分子式は C10H18O 分子量 154.25 である 常温常圧で無色の液体であり 弱い揮発性を有する 水にもある程度溶けるが 油の方がこれをよく溶かす バラの香りの主成分でもある 香料として広く利用されており 合成も可能 ゲラニオールの シス異性体はネ ロールと呼ばれ C10H18O これも香料とし て利用される化 合物である 25ml 1,200 円 ゲラニオール ネロール E 体 (trans) Z 体 (cis) 3
シトラール (Citral) モノテルペンのうち ひと組のシス-トランス異性体であるゲラ ゲラニアール ネラール ニアール (geranial) とネラール (neral) を合わせて指す呼称 ゲラニアールが E 体で ネラールが Z 体 別名をレモナール (lem onal) アルデヒド基 (-CHO) を持つ シトラールはレモングラスやその同属種から採れる精油の主成分である バーベナ レモンマートル レモン オレンジにも含まれる ゲラニアールは強いレモン臭を持つ ネラールのレモン臭はやや弱いが 甘みがある それらの香りのため 清涼感を与える香料として香水や香味料 レモン油の強化剤などに用いられる E 体 (trans) Z 体 (cis) 25ml 1,700 円 酢酸エチル CH3CO2C2H5 エステル化合物である 引火点 2 の果実臭のする無色の液体である 極性が高く 最大で 3 重量 % ほど酢酸エチルに水が溶解する 逆 に水に対しては 10 体積 %(25 ) ほど溶解し温度が低いほど増大 する また エタノール エーテル ベンゼン ヘキサンなどの ほとんどの有機溶媒と任意の割合で混ざり合う 日本では消防法により危険物第 4 類引火性液体 ( 第一石油類 水溶 性液体 ) に また毒物及び劇物取締法により劇物に指定されてい 500ml 1,300 円 る n-ヘキサン 有機溶媒の一種で 示性式 CH3(CH2)4CH3 で表される直鎖状ア CH 3(CH 2) 4CH3 ルカンである 常温では無色透明で 灯油様の臭いがする液体 水溶性は非常に低い (20 で 13 mg/l ) 構造異性体 すなわち 分子式 C6H14 と表される枝分かれアルカ ンとして 2-メチルペンタン 3-メチルペンタン 2,2-ジメチル ブタン および 2,3-ジメチルブタンの4つが知られる それらの 異性体と区別するため ヘキサンは特にノルマルヘキサン (n-hex ane) と呼ばれることもある また これらの異性体を含めた炭素 500ml 1,100 円 6 個のアルカン群の呼称として ヘキサン (hexanes: 複数形 ) という言葉を使うこともある 活性化二酸化マンガン MnO 2 (activated) 二酸化マンガンを活性化処理したもので 一般的な二酸化マンガンと比べると酸化剤としての力が強い 100g 6,000 円 4