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70% の患者は 20 歳未満で 30 歳以上の患者はまれです 症状は 病巣部位の間欠的な痛みや腫れが特徴です 間欠的な痛みの場合や 骨盤などに発症し かなり大きくならないと触れにくい場合は 診断が遅れることがあります 時に発熱を伴うこともあります 胸部に発症するとがん性胸水を伴う胸膜浸潤を合併する

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094 小細胞肺がんとはどのような肺がんですか んの 1 つです 小細胞肺がんは, 肺がんの約 15% を占めていて, 肺がんの組 織型のなかでは 3 番目に多いものです たばことの関係が強いが 小細胞肺がんは, ほかの組織型と比べて進行が速く転移しやすいため, 手術 可能な時期に発見されることは少

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9 2 安 藤 勤 他 家族歴 特記事項はない の強い神経内分泌腫瘍と診断した 腫瘍細胞は切除断端 現病歴 2 0 1X 年7月2 8日に他院で右上眼瞼部の腫瘤を に露出しており 腫瘍が残存していると考えられた 図 指摘され精査目的で当院へ紹介された 約1cm の硬い 1 腫瘍で皮膚の色調は正常であ

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83.8 歳 (73 91 歳 ) であった 解剖体において 内果の再突出点から 足底を通り 外果の再突出点までの最短距離を計測した 同部位で 約 1cmの幅で帯状に皮膚を採取した 採取した皮膚は 長さ2.5cm 毎にパラフィン包埋し 厚さ4μmに薄切した 画像解析は オールインワン顕微鏡 BZ-9

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1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

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限局性前立腺がんとは がんが前立腺内にのみ存在するものをいい 周辺組織やリンパ節への局所進展あるいは骨や肺などに遠隔転移があるものは当てはまりません がんの治療において 放射線療法は治療選択肢の1つですが 従来から行われてきた放射線外部照射では周辺臓器への障害を考えると がんを根治する ( 手術と同

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一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

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2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

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日本内科学会雑誌第96巻第4号

病理剖検登録の手引き_剖検情報

タフィンラーカプセル50mg/75mg、メキニスト錠0.5mg/2mg 添付文書改訂のお知らせ

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

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皮膚は角層も真皮も共に分厚くて 体重を支えて 物理的刺激に耐えられる構造になっていますが 通常の遊離植皮では そのような踵の皮膚本来の役割を十分に果たすことはできません そこで 踵の皮膚の機能を再現するための工夫を考えました それは アキレス腱部の皮膚など 踵に隣接した皮膚を脂肪組織も含めて移動させ

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans


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cm 以上の腫瘍では悪性化していることも考慮する必要があります ただし 良性腫瘍でも長期間放置すれば大きくなりますので サイズが大きいからと言って悪性とは限りません 成長速度: 悪性度の高い腫瘍では 大きくなるスピードが速くなります 腫瘍がいつからあったか 最近はどのくらいのスピードで大きくなってき

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

Dr. Kawamura.doc

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記入方法

別紙様式第1

悪性黒色腫(メラノーマ)薬物療法の手引き version

スライド 1

線に及ぶ 4 パッチテスト 光パッチテストで多数の陽性物質が検出されるが それらの抗原によるアレルギー反応は直接原因ではない 5 病理組織学的に湿疹 皮膚炎群の所見を示し 時に真皮内に異型リンパ球の浸潤がみられる などです なお 現在までに本疾患の原因は解明されていません 慢性光線性皮膚炎の臨床像次

を優先する場合もあります レントゲン検査や細胞診は 麻酔をかけずに実施でき 検査結果も当日わかりますので 初診時に実施しますが 組織生検は麻酔が必要なことと 検査結果が出るまで数日を要すること 骨腫瘍の場合には正確性に欠けることなどから 治療方針の決定に必要がない場合には省略されることも多い検査です

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2011 年 9 月 29 日放送第 74 回日本皮膚科学会東京支部学術大会 6 教育講演 4-1( 膠原病 ) 皮膚限局型エリテマトーデスの病型と治療 埼玉医科大学皮膚科教授土田哲也 本日は 皮膚限局性エリテマトーデスの病型と治療 についてお話させていただき ます 言葉の問題と病型分類エリテマトー

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

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4 月 20 日 2 胃癌の内視鏡診断と治療 GIO: 胃癌の内視鏡診断と内視鏡治療について理解する SBO: 1. 胃癌の肉眼的分類を列記できる 2. 胃癌の内視鏡的診断を説明できる 3. 内視鏡治療の適応基準とその根拠を理解する 4. 内視鏡治療の方法 合併症を理解する 4 月 27 日 1 胃

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2010 年 12 月 2 日放送第 109 回日本皮膚科学会総会 9 教育講演 19 メラノーマのすべて より メラノーマの早期診断と治療方針 岡田整形外科 皮膚科 眼科髙田実はじめに悪性黒色腫は転移しやすく 悪性度の高いがんとして恐れられていますが 他のがんと同じく早期発見 早期治療が適切に行われればほぼ 100% 治癒させることが可能です 本稿では悪性黒色腫の早期診断のポイントと病期別の治療指針についてお話いたします 足底の黒色腫の早期診断日本人の黒色腫の約 40% は足の裏に発生します それらは必ず色素斑として始まるので これをできるだけ早期に検出して切除することが重要です このためにはほくろ すなわち色素細胞母斑との鑑別が必要になります 足底の黒色腫は de novo に発生し 良性の色素細胞母斑が黒色腫に変化することはありませんので 黒色腫の早期病変と色素細胞母斑の鑑別を効率よくかつ確実に行うことが重要です 両者の鑑別には 最近 皮膚科の診断機器として普及してきたダーモスコピーが非常に役に立ちます 足の裏の皮膚をダーモスコピーで観察すると 皮膚の紋理がきれいに見えます 足の裏の皮膚紋理は丘と溝が平行に並んだパターンを示しています 足の裏の色素細胞母斑は基本的に皮膚

紋理の溝に着色する皮溝パターン (parallel furrow pattern; PFP) 格子様のパターン (lattice-like pattern; LLP) 細線維状のパターン(fibrillar pattern; FP) のいずれかを呈します これらの3つのパターンの出現は足の裏の解剖学的な部位と相関があり 一般に 踵や拇趾球部などの荷重部位の母斑では細線維パターンが 土ふまずでは格子状パターンが 両者の境界部と趾腹には皮溝着色パターンが認められます これら 3つの良性のダーモスコピーパターンとその足底における好発部位を頭に入れておけば 色素細胞母斑はかなり自信を持って診断できます これに対して黒色腫の早期病変は 皮膚紋理の丘にあたる皮丘に着色がみられ 皮丘パターン (parallel ridge pattern; PRP) という特徴的な所見を示します また 黒色腫の早期病変はしばしば成人期以降に気づかれる色素班で大きさは通常 7 mmを超えるという臨床的な特徴があります そこで 右図のようなアルゴリズムにしたがって足の裏の黒色腫と色素細胞母斑の鑑別を行うと 両者を効率よく確実に区別することができます すなわち 足の裏の後天的に生じてきた色素斑を観たらまずダーモスコピーで観察します ダーモスコピーで定型的な皮溝着色パターンや 格子様パターンまたは規則的な細線維パターンが認められればその大きさにかかわらず母斑と診断して放置して差し支えありません これに対して ダーモスコピーで定型的な皮丘パターンが認められた病変はその大きさに関わらず 黒色腫の早期病変と考えて切除します 一方 皮溝着色パターンや格子様パターンが非定型的である場合または細線維パターンが不規則な場合は色素斑の最大径を計測します それが7mm以上

の場合は悪性黒色腫の可能性が否定できませんので切除して病理診断を行います 色素斑の大きさが7mm未満であれば 6 カ月に 1 回程度 定期的に経過を観察し もし大きさが7mmを超えればその時点で切除して病理診断を行います このアルゴリズムに従えば 悪性黒色腫の早期病変を確実に切除できるだけでなく 良性の色素細胞母斑を切除することを大幅に減らすことができ 医療経済的側面からもその意義は極めて大きいと考えられます 爪部黒色腫の早期診断足の裏に加えて 手足の爪も日本人の悪性黒色腫の好発部です 爪の黒色腫は爪甲の着色や色素線条として始まりますが この場合も良性の母斑による爪甲色素線条との鑑別が問題となります 爪の黒色腫の早期病変のダーモスコピー所見は 比較的広範囲におよぶ爪甲の褐色の着色を背景として 不規則な色素線条が見られることが特徴とされています 黒色腫の色素線条はその太さや間隔が不揃いで 褐色から黒色まで様々な色調の線によって構成され その平行性は保たれておらず互いに交差しあうこともあります また micro-hutchinson 徴候と呼ばれる爪上皮の着色も時にみられます これに対して良性の色素線条は均一な褐色の縦方向の平行線で構成され 線の間隔と太さは比較的揃っています 個々の色素線条の色調は 淡褐色から黒色まで様々ですが 病変全域にわたりほぼ同じ濃さを呈することが特徴です 以上のようにダーモスコピーは爪の色素線条の診断にも有用ですが その所見は足の裏のようにクリアーカットではなく 判断に迷う症例も少なくありません 現在 爪のダーモスコピー所見のデジタル画像をコンピュータで解析して診断する研究が進められており その成果が待たれます 悪性黒子の早期診断悪性黒子型黒色腫の早期病変は悪性黒子と呼ばれる色素斑で 主に高齢者の顔面に発生します 一方 高齢者の顔面にはしばしば良性の日光黒子が認められますので 両者の鑑別が重要になります この場合もダーモスコピーが有用です 悪性黒子の所見として 毛孔の非対称性着色 暗色菱形構造 灰青色小球 / 小点などがあり これらの所見は比較的診断特異性が高いと言われています

これに対して 日光黒子では虫食い状境界や指紋様構造などの所見がしばしば認められます しかし これらの所見は悪性黒子にも認められることがありますので診断特異性は低く これらの所見がみられても直ちに良性と判断せずに ほかに先に述べた悪性黒子に特徴的な所見がないかをよく探す必要があります 悪性黒色腫の新しい病期分類昨年の 11 月に悪性黒色腫の国際的な病期分類が改訂されました 新しい病期分類では T1 分類の基準として従来の Clark の解剖学的浸潤レベルが廃止され 病理組織学的に単位mm平方あたり 1 個以上の核分裂像があるものを T1b に分類するようになりました その他のT 分類は従来通りで特に変更はありません N 分類に関してはセンチネルリンパ節における顕微鏡的転移の判定に HMB-45 や Melan-A/MART1 などのメラノーマに特異的な蛋白の免疫染色を参考にすること これらの免疫染色で径 0.1mm 未満の小さな胞巣や孤立性の腫瘍細胞が同定された場合はそれもリンパ節転移として N1a に分類することが明記されました このように 黒色腫の病期分類にはセンチネルリンパ節生検が必須の検査となりつつありますが 我が国でも本年 4 月の保険点数の改正で センチネルリンパ節生検に対して 5000 点の加算が認められるようになりました M 分類に関しては従来通りで特に変更はありません 病期別治療指針最後に 悪性黒色腫の病期別治療指針についてお話しいたします 原発腫瘍の切除マージンは 病期 0の表皮内黒色腫は 5 ミリ 病期 I では 1 センチ 病期 II 以上では 2 センチを目安とします 所属リンパ節の腫大認められない場合でも 病期 Ib 以上ではセンチネルリンパ節生検を行うことが推奨されます 本邦における多施設共同研究の成績ではセンチネルリンパ節における微小転移の陽性率は T1 で 10% T2 で 20% T3 で 34% T4 では 62% と 原発腫瘍の厚さの増加とともに上昇します なお センチネルリンパ節生検の普及により従来のような所属リンパ節の予防的郭清は原則として行われなくなりました 所属リンパ節に転移が認められる病期 Ⅲでは所属リンパ節の根治的郭清を行います 但し 病期 Ⅲa でセンチネルリンパ節のみ顕微鏡的な転移のみがみられる場合は 追加郭清で生存期間の延長が得られるというはっきりしたエビデンスがありませんので センチネルリンパ節生検のみで郭清を省略し 定期的に経過を観察するという選択肢もあ

りえます 病期 II およびⅢのハイリスク群に対する術後の補助療法としては 欧米における臨床試験で高用量のインタフェロンαが無病生存期間を有意に改善することが明らかにされています しかし この治療法は副作用が強いことと 全生存期間の延長には寄与しないとされていることから 欧米においてもその適応は限定的です 本邦では黒色腫に対するインタフェロンαの保険適応がありませんので これまで慣例的にダカルバジン ニドラン ビンクリスチンの抗腫瘍薬 3 剤にインタフェロンβを加えた DAV-フェロン療法が行われてきました しかし DAV-フェロンは国際的に認知されたエビデンスレベルの高い治療とは言えないことと 2 次発がんとして白血病や骨髄異形成症候群の発生が報告されていることが問題であり その施行に際しては十分な説明に基づく同意が求められます 遠隔転移を有する病期 Ⅳの治療はダカルバジンによる化学療法が主体となりますが 奏効率 15% 前後と低くその有用性は限られています そのほかに様々な免疫療法や分子標的治療などの新規治療の臨床試験が世界中で行われていますが 未だに確立された治療法はなく 今後の研究の進展が待たれます