資料 2 ~ 特別支援教育及び教育を支える環境整備に関する参考事例集 ~ 1. 特別支援教育 (1) インクルーシブ教育の推進 参考事例国の特別支援教育の推進に係る審議の動向 共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進 ( 中央教育審議会初等中等教育分科会報告 平

Similar documents
Ⅱ インクルーシブ教育システムをめぐる国の動向と本研究の位置づけ 1. インクルーシブ教育システム構築に向けての国の動き (1) 障害者の権利に関する条約の批准までの経緯平成 18 年 12 月に国連総会において採択された 障害者の権利に関する条約 について 我が国は平成 19 年 9 月に署名し

教育支援資料 ~ 障害のある子供の就学手続と早期からの一貫した支援の充実 ~ 平成 25 年 10 月 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課

第 1 部第 3 章特別支援教育推進計画 ( 第二期 ) の基本理念と施策の方向性 1 東京都特別支援教育推進計画 ( 第二期 ) の基本理念東京都特別支援教育推進計画 ( 前計画 ) の基本理念発達障害を含む障害のある幼児 児童 生徒の一人一人の能力を最大限に伸長するため 乳幼児期から学校卒業後ま

中央教育審議会初等中等教育分科会

基本方針1 小・中学校で、子どもたちの学力を最大限に伸ばします

4. 障害者制度改革中央教育審議会初等中等教育分科会共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進 ( 報告 ) 概要 2 1. 共生社会の形成に向けて (2) インクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進 特別支援教育は 共生社会の形成に向けて インクル

教職研究 第 8 号, インクルーシブ教育 は 障害児のための教育か? 特別支援教育の在り方に関する特別委員会報告から学校の役割と合理的配慮を確認する 庄司和史 ( 信州大学学術研究院総合人間科学系教授 ) 1. はじめに 平成 24 年 (2012 年 )7 月 中央教育審

Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

北見市特別支援教育の指針 平成 25 年 11 月

校外教育施設について

1-澤田-インクル.indd

教員の専門性向上第 3 章 教員の専門性向上 第1 研修の充実 2 人材の有効活用 3 採用前からの人材養成 3章43

Q1 診断書等がない子どもへの合理的配慮はどう考えたらよいのか A1 診断書や障がい者手帳等の有無が 合理的配慮の提供に関する判断の基準ではありません 教育支援資料 ( 文部科学省平成 25 年 10 月 ) において 各障がいは以下のように定義されています ( 参考 ) 教育支援資料における各障が

はじめに 我が国においては 障害者の権利に関する条約 を踏まえ 誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い 人々の多様な在り方を相互に認め合える 共生社会 を目指し 障がいのある者と障がいのない者が共に学ぶ仕組みである インクルーシブ教育システム の理念のもと 特別支援教育を推進していく必要があります

<4D F736F F D F81798E9197BF94D48D A95CA8E B8CA782CC8EE691678FF38BB581698B6096B18B4C8DDA92F990B38CE3816A2E646

平成28年度「英語教育実施状況調査」の結果について

補足説明資料_教員資格認定試験

1

目 次 1 設置の目的 1 2 設置の基本的枠組み (1) 課程 (2) 学科 (3) 入学定員 (4) 設置予定 3 教育理念 育てたい人物像 (1) 教育理念 (2) 育てたい人物像 4 教育課程について (1) スポーツマネジメント科教育課程編成の基本方針 2 (2) 教育課程表 4 5 その

13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

公式WEBサイト_取得できる免許・資格(H27入学生~)Ver_02

①CSの概要

政策評価書3-3(4)

資料4-4 新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について 審議のまとめ(参考資料)

< F2D82A882A882DC82A982C897AC82EA816995BD90AC F944E>

<4D F736F F D D AD8DF48D8096DA C82A982C89053>

【資料2】社会教育主事講習の見直しについて【派遣社会教育主事制度とその現状】

要覧2016.indd

2 次 2 次 率 2 次 2 次 大阪教育 ( 教育 - 小中 - 保健体育 ) 69 ( 教育 - 中等 - 保健体育 ) 奈良教育 ( 教育 - 教科 - 英語 ( 中 )) 55.0 山口 ( 教育 - 学校 - 国語 ) 50.0 ( 教育 - 学校 - 英語 ) 52.5 福岡教育 (

第 2 部 東京都発達障害教育推進計画の 具体的な展開 第 1 章小 中学校における取組 第 2 章高等学校における取組 第 3 章教員の専門性向上 第 4 章総合支援体制の充実 13

①保有率向上の指針

英語教育改善プラン

参考資料 障害者の生涯を通じた多様な学習活動の充実について(1/2)

平成30年度学校組織マネジメント指導者養成研修 実施要項

第3期埼玉県教育振興基本計画(案)の概要

農山漁村での宿泊体験活動の教育効果について

市町村における住民自治や住民参加、協働に関する取組状況調査

No_05_A4.ai

市中学校の状況及び体力向上策 ( 学校数 : 校 生徒数 :13,836 名 ) を とした時の数値 (T 得点 ) をレーダーチャートで表示 [ ] [ ] ハンドボール ハンドボール投げ投げ H29 市中学校 H29 m 走 m 走 表中の 網掛け 数値は 平均と同等または上回っているもの 付き

1 計画策定の背景と趣旨 昭和 56(1981) 年の 完全参加 をテーマとする 国際障害者年 を契機に, 障害者福祉は大きく変化しました 国では, 平成 5(1993) 年 3 月に 障害者対策に関する新長期計画 が策定され, 同年 12 月には 障害者基本法 * が施行されました 以後も, 平成

Microsoft Word - 1.doc

P5 26 行目 なお 農村部は 地理的状況や通学時 間等の関係から なお 農村部は 地理的状況や通学時 間等から P5 27 行目 複式学級は 小規模化による学習面 生活面のデメリットがより顕著となる 複式学級は 教育上の課題が大きいことから ことが懸念されるなど 教育上の課題が大きいことから P

平成 24 年度職場体験 インターンシップ実施状況等調査 ( 平成 25 年 3 月現在 ) 国立教育政策研究所生徒指導 進路指導研究センター Ⅰ 公立中学校における職場体験の実施状況等調査 ( 集計結果 ) ( ) は 23 年度の数値 1 職場体験の実施状況について ( 平成 24 年度調査時点

3 学びのユニバーサルデザイン化 合理的配慮は 障がいのある生徒の能力を最大限に伸長させるとともに 障がいのない生徒と共に学ぶことができるようにするための必要な支援です また ホームルームや一斉授業において 学びのユニバーサルデザイン化 を図るなど 個別の支援 と 全体への配慮 の両面で支援を考える

基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります 基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります (1) 基礎的 基本的な学力の定着児童 生徒一人ひとりが生きる力の基盤として 基礎的 基本的な知識や技能を習得できるよう それぞ

【資料2】緊急提言(委員意見反映)

<4D F736F F D E937893FC8A778E8E8CB196E291E8>

 

持続可能な教育の質の向上をめざして ~ 教員の多忙化解消プラン に基づく取組について ~ 平成 30 年 3 月 愛知県教育委員会

<4D F736F F D B90B3947A F935F90AE979D2893FA957493FC82E8292E646F6378>

p 札幌市小学校).xls

する・みる・ささえるの スポーツ文化

愛媛県学力向上5か年計画

Taro-自立活動とは

資料4_1いじめ防止対策推進法(概要)

スライド 1

学力向上のための取り組み

大学と学生第549号広島大学におけるアクセシビリティ支援と人材育成プログラム_広島大学(岡田 菜穂子)-JASSO

02-01 ビジョンの基本的考え方

介護保険制度改正の全体図 2 総合事業のあり方の検討における基本的な考え方本市における総合事業のあり方を検討するに当たりましては 現在 予防給付として介護保険サービスを受けている対象者の状況や 本市におけるボランティア NPO 等の社会資源の状況などを踏まえるとともに 以下の事項に留意しながら検討を

工業教育資料347号

第91号議案 H 基本ビジョン冊子(教育委員会) 

目 次 平成 29 年度島根県公立高校入試の改善方針について 1 Ⅰ 改善方針の概要 2 1 基本的な考え方 2 改善方針の内容 3 実施の時期 Ⅱ 選抜制度の具体的内容 3 1 選抜の機会 2 検査の時期 3 選抜資料 学力検査 3-2 個人調査報告書 3-3 面接 3-4 その他の資

年中児スクリーニングの事後支援 年中児スクリーニングの事後支援として 22 市町村が園巡回を実施しているが SST は 5 市町村の実施 ペアレントトレーニングは 7 市町村の実施に止まっており 事後支援を実施する市町村の拡大が課題 園巡回 : 専門職が保育所 幼稚園を巡回し 保育士等に指導 助言

45 宮崎県

第2節 茨木市の現況

目次 1 はじめに 1 2 根拠法令 1 3 計画期間 1 4 大綱の基本方針 2 5 主な取組 3 参考資料 7

kihonhousin6.doc

教育調査 ( 教職員用 ) 1 教育計画の作成にあたって 教職員でよく話し合っていますか 度数 相対度数 (%) 累積度数累積相対度数 (%) はい どちらかといえばはい どちらかといえばいいえ いいえ 0

44 大分県

本年度の調査結果を更に詳しく分析するため 本道の課題となっている質問紙の項目について 継続して成果を上げている福井県 秋田県 広島県と比較した結果を示しています ( 全国を 100 とした場合の全道及び他県の状況をレーダーチャートで示したもの ) 1 福井県との比較 (~P51) 継続的に成果を上げ

<4D F736F F D20906C8CA08BB388E E646F63>

「公立小・中・高等学校における土曜日の教育活動実施予定状況調査」調査結果

第 1 部 施策編 4

教育学科幼児教育コース < 保育士モデル> 分野別数 学部共通 キリスト教学 英語 AⅠ 情報処理礎 子どもと人権 礎演習 ことばの表現教育 社会福祉学 英語 AⅡ 体育総合 生活 児童家庭福祉 英語 BⅠ( コミュニケーション ) 教育礎論 音楽 Ⅰ( 礎 ) 保育原理 Ⅰ 英語 BⅡ( コミュニ

訂されている 幼稚園 小 中学校学習指導要領改訂の基本的な考え方として 次の 3つがあげられる 1. 子供たちに求められる資質 能力を明確にし それらを社会と共有していくという社会に開かれた教育課程を実現していく 2. 現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で 知識の理解の質を高めていく 3

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

< F2D318BB388E789DB92F682CC8AC7979D F >

17 石川県 事業計画書

平成21年度「研究の手引き」の解説(案)

平成16年度小学校及び中学校教育課程研究協議会報告書

No_05_A4.ai

平成27年度公立小・中学校における教育課程の編成実施状況調査結果について

平成25~27年度間

.T.v...ec6

回数テーマ学習内容学びのポイント 2 過去に行われた自閉症児の教育 2 感覚統合法によるアプローチ 認知発達を重視したアプローチ 感覚統合法における指導段階について学ぶ 自閉症児に対する感覚統合法の実際を学ぶ 感覚統合法の問題点について学ぶ 言語 認知障害説について学ぶ 自閉症児における認知障害につ

文化庁平成 27 年度都道府県 市区町村等日本語教育担当者研修 2015 年 7 月 1 日 生活者としての外国人 に対する日本語教育の体制整備に向けた役割分担 日本語教育担当者が地域課題に挑む10のステップ よねせはるこ米勢治子 ( 東海日本語ネットワーク )

英語教育改善プラン

4 選抜方法 (1) 選抜の方法 本校の 期待する生徒像 に基づき, 学力検査の成績, 調査書, 面接の結果 等を総合的に判定して入学者の選抜を行う ア 下表のとおり合計点を算出する 学力検査 調査書 5 教科の 教科の学習の記録 出欠 行動 特別活動 部活動等 面接 得点合計 の記録 の記録 の記

県立学校職員 ( 趣旨 ) 第 1 条この要綱は 地方公務員法 ( 昭和 25 年法律第 261 号 ) 第 15 条の2 第 1 項第 5 号の規定に基づき 山形県教育委員会における職員 ( 学校教育法 ( 昭和 22 年法律第 26 号 ) 第 7 条に規定する校長及び教員等 ) の標準職務遂行

4 選抜方法 (1) 選抜の方法 本校の 期待する生徒像 に基づき, 学力検査の成績, 調査書, 面接の結果 等を総合的に判定して入学者の選抜を行う ア 学力検査の成績 による順位と 調査書の得点 による順位が, ともに次のパーセント以内にある者は, 入学許可候補者として内定する ( ア ) 受検者

教職課程を開設している学部・学科の専任教員数及び授業科目等_2018

Microsoft Word - 舞09・絆1(多文化) ⑤ doc

(2) 国語 B 算数数学 B 知識 技能等を実生活の様々な場面に活用する力や 様々な課題解決のための構想を立て実践し 評価 改善する力などに関わる主として 活用 に関する問題です (3) 児童生徒質問紙児童生徒の生活習慣や意識等に関する調査です 3 平成 20 年度全国学力 学習状況調査の結果 (

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

(2) 熟練技能者等の派遣による若年技能者等に対する実技指導ものづくりマイスター対象職種以外の職種で企業等から実技指導の要請を受けた場合 熟練技能者等を派遣し実施します (3) 学校単位の製作実演のイベント熟練技能者等を小中学校 訓練施設等へ派遣し 製作実演 ものづくり体験等を行う ものづくり体験教

(3) その他 全日制高校進学率の向上を図るため 更に公私で全体として進学率が向上するよう工夫する そのための基本的な考え方として 定員協議における公私の役割 を次のとおり確認する 公立 の役割: 生徒一人ひとりの希望と適性に応じて 多様な選択ができるよう 幅広い進路先としての役割を担い 県民ニーズ

新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について(答申のポイント等)

スライド 1

組織目標シート 平成 28 年度 部局 教育委員会事務局局長吉田久芳 1. 部局の使命 児童 生徒一人ひとりを大切にし 豊かな人間性と人間関係を築く力を育むとともに 自ら学び考え行動する子どもの育成を図る学校教育を推進する 市民生活が豊かで活力のあるものになるよう 市民が生涯を通して学習し学び続ける

Transcription:

資料 2 ~ 特別支援教育及び教育を支える環境整備に関する参考事例集 ~ 1. 特別支援教育 (1) インクルーシブ教育の推進 参考事例国の特別支援教育の推進に係る審議の動向 共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進 ( 中央教育審議会初等中等教育分科会報告 平成 24 年 7 月 ) 概要 1 共生社会の形成に向けて (1) 共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム *1 の構築 (2) インクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進 (3) 共生社会の形成に向けた今後の進め方 2 就学相談 就学先決定の在り方について *2 (1) 早期からの教育相談 支援 (2) 就学先決定の仕組み (3) 一貫した支援の仕組み (4) 就学先相談 就学先決定に係る国 都道府県教育委員会の役割 3 障害のある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその基礎となる環境整備 (1) 合理的配慮 *3 について (2) 基礎的環境整備 *4 について (3) 学校における 合理的配慮 の観点 (4) 合理的配慮 の充実 4 多様な学びの場の整備と学校間連携等の推進 (1) 多様な学びの場の整備と教職員の確保 (2) 学校関連携の推進 *5 (3) 交流及び共同学習の推進 (4) 関係機関等との連携 5 特別支援教育を充実させるための教職員の専門性向上等 (1) 教職員の専門性の確保 *6 (2) 各教職員の専門性 養成 研修制度等の在り方 (3) 教職員への障害のある者の採用 人事配置 上記報告に基づき 平成 25 年度の国予算により インクルーシブ教育システム構築事業 *7 等諸モデル事業を展開する予定となっている 1

*1 インクルーシブ教育システム 障害者の権利に関する条約第 24 条によれば インクルーシブ教育システム (inclusive education system 署名時仮訳 : 包容する教育制度 ) とは 人間の多様性の尊重等の強化 障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ 自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下 障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みであり 障害のある者が general education system ( 署名時仮訳 : 教育制度一般 ) から排除されないこと 自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること 個人に必要な 合理的配慮 が提供される等が必要とされている 共生社会の形成に向けて 障害者の権利に関する条約に基づくインクルーシブ教育システムの理念が重要であり その構築のため 特別支援教育を着実に進めていく必要があると考える 共生社会の形成に向けて 障害者の権利に関する条約に基づくインクルーシブ教育システムの理念が重要であり その構築のため 特別支援教育を着実に進めていく必要があると考える インクルーシブ教育システムにおいては 同じ場で共に学ぶことを追求するとともに 個別の教育的ニーズのある幼児児童生徒に対して 自立と社会参加を見据えて その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる 多様で柔軟な仕組みを整備することが重要である 小 中学校における通常の学級 通級による指導 特別支援学級 特別支援学校といった 連続性のある 多様な学びの場 を用意しておくことが必要である *2 早期からの教育相談 支援 子ども一人一人の教育的ニーズに応じた支援を保障するためには 乳幼児期を含め早期からの教育相談や就学相談を行うことにより 本人 保護者に十分な情報を提供するとともに 幼稚園等において 保護者を含め関係者が教育的ニーズと必要な支援について共通理解を深めることにより 保護者の障害受容につなげ その後の円滑な支援にもつなげていくことが重要である また 本人 保護者と市町村教育委員会 学校等が 教育的ニーズと必要な支援について合意形成を図っていくことが重要である 乳児期から幼児期にかけて 子どもが専門的な教育相談 支援が受けられる体制を医療 保健 福祉等との連携の下に早急に確立することが必要であり それにより 高い教育効果が期待できる *3 合理的配慮 条約の定義に照らし 本特別委員会における 合理的配慮 とは 障害のある子どもが 他の子どもと平等に 教育を受ける権利 を享有 行使することを確保するために 学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更 調整を行うことであり 障害のある子どもに対し その状況に応じて 学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの であり 学校の設置者及び学校に対して 体制面 財政面において 均衡を失した又は過度の負担を課さないもの と定義した なお 障害者の権利に関する条約において 合理的配慮 の否定は 障害を理由とする差別に含まれるとされていることに留意する必要がある 2

*4 基礎的環境整備 合理的配慮 の充実を図る上で 基礎的環境整備 の充実は欠かせない そのため 必要な財源を確保し 国 都道府県 市町村は インクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として 基礎的環境整備 の充実を図っていく必要がある 共生社会の形成に向けた国民の共通理解を一層進め インクルーシブ教育システム構築のための施策の優先順位を上げていくことが必要である *5 交流及び共同学習の推進 特別支援学校と幼 小 中 高等学校等との間 また 特別支援学級と通常の学級との間でそれぞれ行われる交流及び共同学習は 特別支援学校や特別支援学級に在籍する障害のある児童生徒等にとっても 障害のない児童生徒等にとっても 共生社会の形成に向けて 経験を広め 社会性を養い 豊かな人間性を育てる上で 大きな意義を有するとともに 多様性を尊重する心を育むことができる 特別支援学校と幼 小 中 高等学校等との間で行われる交流及び共同学習については 双方の学校における教育課程に位置付けたり 年間指導計画を作成したりするなど交流及び共同学習の更なる計画的 組織的な推進が必要である その際 関係する都道府県教育委員会 市町村教育委員会等との連携が重要である また 特別支援学級と通常の学級との間で行われる交流及び共同学習についても 各学校において ねらいを明確にし 教育課程に位置付けたり 年間指導計画を作成したりするなど計画的 組織的な推進が必要である *6 各教職員の専門性 養成 研修制度等の在り方 学校全体としての専門性を確保していく上で 校長等の管理職のリーダーシップは欠かせない また 各学校を支援する 教育委員会の指導主事等の役割も大きい このことから 校長等の管理職や教育委員会の指導主事等を対象とした研修を実施していく必要がある 特別支援学校教員の特別支援学校教諭免許状 ( 当該障害種又は自立教科の免許状 ) 取得率は約 7 割となっており 特別支援学校における教育の質の向上の観点から 取得率の向上による担当教員としての専門性を早急に担保することが必要である このため 養成 採用においては その取得について留意すべきである 特に現職教員については 免許法認定講習の受講促進等の取組を進めるとともに その後も研修を通じた専門性の向上を図ることが必要である 特別支援学級や通級による指導の担当教員は 特別支援教育の重要な担い手であり その専門性が校内の他の教員に与える影響も極めて大きい このため 専門的な研修の受講等により 担当教員としての専門性を早急に担保するとともに その後も研修を通じた専門性の向上を図ることが必要である *7 インクルーシブ教育システム構築事業 インクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育を着実に推進していくため 各学校の設置者及び学校が 障害のある子どもに対して その状況に応じて提供する 合理的配慮 の実践事例を収集するとともに 交流及び共同学習の実施や 域内の教育資源の組合せを活用した取組の実践研究を行い その成果を普及するものである 3

参考事例特別支援学校在籍児童生徒の居住地域の小中高等学校への転入学 < 移行促進 準備期間 > 特別支援学校児童生徒 < 移行 ( 転入学 )> 特別支援学校 交流 ( 転学に向け定期的に通学 ) 進学準備 転入学 ( 特別支援学校フォローアップ ) 居住地域 居住地域 小学校 ( 児童 ) 中学校 ( 生徒 ) 高校 ( 生徒 ) 小学校児童 中学校生徒 高校生徒 複学籍を視野に入れた取組 事例 特別支援学校小学部児童 1 年間の交流を経て 居住地域の小学校へ転学 ( 転学後 特別支援学校による小学校への訪問相談実施 ) 特別支援学校中学部生徒小学校から特別支援学校中学部を経て 高校へ進学 ( 入学後 特別支援学校による高校への訪問相談を実施 ) 参考事例特別支援教室構想 ( 文部科学省 ) 支援を必要とする子どもたちが 原則 通常の学級に在籍し 必要な時間に特別の指導を受けるしくみづくり < 現状 > < 構想案 > 通常級 0.5% 6.5% 通級 通級指導教室 特別支援学級 1.26% 通常 0.5% 6.5% 級 1.26% 特別支援教室ハ ターン Ⅰ ハ ターン Ⅱ ハ ターン Ⅲ 小学校 小学校 * 0.5% は通級指導教室を利用している児童生徒の割合 6.5% は通常の学級に在籍する発達障害のある可能性のある児童生徒の割合 1.26% は特別支援学級に在籍している児童生徒の割合 ( 文部科学省資料 ) 通常の学級に在籍しながら週 8 時間以内で障害に応じた指導を受ける通級指導教室がある 通常の学級に 特別な支援を必要とする児童生徒が約 6.5% いるが 多くは通級指導の対象とはなっていない 通常の学級とは別枠で特別支援学級があり 1.26% の児童生徒が在籍している 全ての児童生徒を通常の学級の在籍とする その上で 必要に応じ 特別支援教室で特別の指導を受ける 特別の指導を受ける時間は おおむね三つのパターンに分けられる ハ ターン Ⅰ ほとんどの時間特別指導ハ ターン Ⅱ 半分程度の時間特別指導ハ ターン Ⅲ 一部の時間のみ特別指導 4

(2) 地域における自立促進のしくみづくり 参考事例埼玉県立特別支援学校さいたま桜高等学園 ( 就労支援 ) 埼玉県教育委員会では 特別支援学校 ( 知的障害 ) の教室不足の解消 軽度発達障害のある生徒に対する職業教育の充実と生徒の一般就労につながる職業的自立への支援に向け 地域の企業や行政機関 障害者就労支援センター等との連携 協力を得て 就労率 100% の実現をめざし 平成 19 年 4 月に標記の学園を開校 生産技術科 家政技術科 工業技術科 環境 サービス科の 4 学科 8 コースを設置し 生徒は学科ごと 20 名ずつ募集し 1 学年 80 名定員で 教育課程は教科別指導 領域別指導で編成し 専門教科の実習を授業時数 30 単位時間のうち 15 単位時間を充て 一般就労し 自立 をめざす生徒のための心と体の健康学習の指導も強化 参考事例京都市立白河総合支援学校 ( 地域 企業との協働 ) 京都市教育委員会では 平成 16 年 4 月に職業学科を設置して白河総合養護学校を開校し 18 年からは産業総合科として発展させ さらに学校教育法の改正により平成 19 年 4 月からは白河総合支援学校と改称して創設以来 5 年連続で就職率 100% を達成 本校と分校を合せて在籍 157 名 同校の教育課程上の特色は 個別の包括支援プランに基づいた学校での学習と企業等での実習を組み合わせるデュアルシステムを取り入れていることで 3 年間で 24 週 ~35 週程度の産業現場等における実習を 300 社を超える協力企業 事務所で実施 平成 25 年度より地域総合科では 地域コミュニケーション を中核とした教育課程を展開し 地域と協働して社会参加と就労支援を促進 参考事例鹿児島県立鹿児島高等特別支援学校 ( 県立高校敷地内併設 ) 鹿児島県教育委員会では 障害の程度が比較的軽い知的障害のある生徒の後期中等教育の充実を図るとともに 可能な限り社会自立を促していくことから 特に職業教育を中心とした教育を行う高等部のみを置く特別支援学校として 平成 24 年 4 月に同校を開校 また動向は 全国的にも例が少ない県立高校内の敷地内に併設し 既存の高校施設を活用した整備 ( 現在の普通科の前身は農業高校として農業科と家政科の施設整備の環境が特色 ) 1 学年 4 学級 32 名在籍で現在 2 学年まで 64 名在籍 鹿児島東高校の生徒との交流と共同学習を推進し 同じ社会に生きる人間として お互いを正しく理解し 共に助け合い 支え合って生きていくことの大切さを学び 生徒の経験を広め 社会性を養い 豊かな人間性を育てるとともに 近隣の市来農芸学校との交流 共同学習も展開して職業的な体験活動など 就労につながる現場実習の体制と方法 ( 特別支援学校版デュアルシステム ) の確立を軸としたキャリア教育を実践し 生徒全員の卒業後の就労をめざす という同校のミッションに基づき教育実践に力を入れている 5

[5 月 28 日調査会配付 資料 2 からの再掲資料 ] 大阪府 ( 市 ) 立高校 知的障がい生徒自立支援コース の設置 設置の目的 知的障がいのある生徒の後期中等教育における学習機会の充実と選択肢の拡大を図るとともに 生徒一人ひとりのニーズに応じた教育の充実を図り ともに学び ともに育つ 教育を推進することが目的 設置の経過 平成 18 年度に全国に先駆けて 府 ( 市 ) 立高校のうち自立支援推進校 [ 府立 9 校 市立 2 校 ] に 知的障がい生徒自立支援コース を設置し 併せて共生推進校として高等支援学校在籍の生徒が府立高校生とともに学び交友を深める 共生推進教室 [ 府立 1 校 ] を設置したのが発端 高等部生徒増対応と就労支援強化が特徴 平成 25 年度には 自立支援推進校として府 ( 市 ) 立高校に 知的障がい生徒自立支援コース を設置している高校は当初と同じ府立 9 校 市立 2 校で実施し 共生推進校府立 5 校と共生推進教室を設置している府立高等支援学校 2 校とで実施し 後者は年々拡大の方向 後者は他県の分教室と同様 高校から修了証書交付の工夫 高校設置の知的障がい生徒自立支援コース 入学者選抜を経て 高校のクラスに所属 普通科 総合学科 専門学科に併設 療育手帳あるいは公的機関の判定を受けた者の条件 高等学校学習指導要領の配慮すべき事項に従い 障がいの状況に応じ 各教科 科目の学習目標を設定し 学習目標の達成の様子を基準に評価 ( 個人内評価 ) で対応 高等学校の卒業証書の授与 高校と高等支援学校の連携協力による共生推進校 高等支援学校の共生推進教室に所属 週 4 日連携高校で学習し 週 1 日を高等支援学校で職業に関する専門教科の学習 他に企業実習 障がいの状況に応じ 各教科 科目の学習目標を設定し 学習目標の達成の様子を基準に評価 ( 個人内評価 ) で対応 知的障がい高等支援学校職業科の卒業証書の授与 ともに学んだ高校から証書の発行 6

2. 教育を支える環境整備 (1) 地域や保護者 民間企業が学校の教育活動を支える体制づくり 参考事例民間人材を活用する取組み 企業等連携協議会 (KDAC * ) の取組 設立目的企業 大学 専門学校 NPO 等が有する人材やノウハウ 施設等を 部活動をはじめとする学校のさまざまな教育活動に活用させていただくため 県教育委員会と企業等が協定を結び 平成 23 年 7 月に協議会を設立 加盟団体 47 団体 ( 平成 25 年 3 月 ) 具体的支援内容 実業団チームの監督 コーチ 選手を講師とした部活動講習会の開催 企業等に所属する各専門種目指導者による実技指導 企業等の保有施設を利用した部活動の実施 マスメディア等を利用した部活動に関する広報 企業等から栄養士等を講師とした食育出前教室の開催など * 企業等連携協議会かながわドリームアシストコミュニティ Kanagawa Dream-Assist Community ( 通称 KDAC[ ケイダック ]) 民間人材を活用する取組み 部活動エキスパート指導者派遣 県立高等 中等教育学校の部活動において 民間のスポーツトレーナーや現役選手など 顧問教諭の専門性を補完し 生徒の体力向上に資する 部活動エキスパート指導者 を派遣する取組みを平成 20 年度から実施 派遣校は平成 24 年度現在で 28 校にのぼり サッカー 野球 バレー ダンス 吹奏楽 演劇などの部活動において 生徒の体力向上に成果を挙げている 派遣回数と指導時間等 1 ヶ月に 4 回を原則とし 1 年間に 2 時間以上 3 時間未満の指導を 36 回 3 時間以上 4 時間未満の指導を 12 回 公式戦等 4 時間を超える指導を 3 回とする 謝金については月額 34,750 円 ( 交通費含む 平成 24 年度実績 ) 民間や地域の人材を活用する取組みの例 PLANET かながわ 様々な生涯学習関連情報について インターネットを利用した生涯学習情報システム (PLANET かながわ ) による指導者 人材情報の提供 指導者 人材情報件数 4,302 件 (24 年度 ) ( 登録分野 ) 学術 教育 芸術 文化 趣味 産業 技術 生活 福祉 健康 スポーツ レクリエーション 環境 まちづくり 語学 国際関係 7

民間や地域の人材を活用する取組みの例 子ども応援人材バンク ( 岡山県 ) 岡山県では 子ども応援人材バンク を設置し 学校が身近な地域では得られにくい人材や団体等を県広域に募集し 学校の応援団の充実を図っている 利用を希望する教職員は 教育委員会に設置されている おかやま子ども応援センター へコーディネートを依頼する なお 授業 部活動 クラブ活動等での利用のほか PTA 活動 放課後子ども教室等でも利用が可能となっている 登録している企業 団体等 不登校や心の課題をもつ子どもに 心理カウンセラー 特別な支援が必要な子どもに 特別支援教育士 授業や放課後等での学習支援 元教諭 大学生など 職場体験受入 職業講話 企業 団体 非行防止 携帯電話の安全利用出前授業 県警 携帯電話企業 食育や自然環境に関する出前授業 企業 団体など その他 福祉 文化 国際理解などの登録がある (2) 学校施設 設備整備や財産の有効活用に向けた取組み 県民による施設整備支援 ( 神奈川県まなびや基金 ) 県では 県立教育施設を着実に整備するため 1 耐震化 老朽化対策 2 新たな時代に対応する高校教育に必要な機能改修 3 特別支援学校の整備などを行うため 平成 19 年度 ~28 年度の 10 か年 総額 1,000 億円からなる 県立教育施設再整備 10 か年計画 ( まなびや計画 ) を策定している 計画の実施には多額の財源が必要であり 可能な限り自主財源の確保を図るため 平成 21 年 4 月に 神奈川県まなびや基金 を創設し 現在 まなびや基金募集キャラバン隊 による募金活動 クレジットカード払いで寄附ができる かながわキンタロウ寄附金 制度の導入 寄附金税額控除による寄附者のメリットの周知などを行うことで より多くの寄附金募集につなげていく 平成 24 年度末基金状況 寄附金額 6 億 299 万 8,451 円 運用益額 78 万 4,603 円 取崩金額 1 億 5,674 万 2,998 円 残高 4 億 4,704 万 56 円 平成 24 年度から寄附は 2 種類とした 施設全般への寄附 特定の学校への寄附 県民による施設整備支援 ( 学校施設開放の有料化 )( 福岡県太宰府市 ) 授業に支障のない範囲で 小中学校の校庭 体育館 テニスコートなどを開放し スポーツ活動に利用している 学校数 11 校 使用料( 市内在住者使用 ) 校庭 (3 時間 / 回 ) 500 円体育館 (2 時間 / 回 )500 円 ( 照明はともに別途 ) 8