**************************************** 2017 年 4 月 29 日 日本植物病理学会殺菌剤耐性菌研究会 耐性菌対策のための DMI 剤使用ガイドライン 一般的な耐性菌対策 1. 薬剤防除だけに頼るのではなく 圃場や施設内を発病しにくい環境条件にする 1)

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日本植物病理学会殺菌剤耐性菌研究会 2008 年 4 月 29 日公表 2014 年 6 月 18 日改訂 イネいもち病防除における QoI 剤及び MBI-D 剤耐性菌対策ガイドライン (1) QoI 剤及び MBI-D 剤の使用は最大で年 1 回とする また それぞれの薬剤の使用前あるいは使用後

予報 岡病防第16号

等 ) ジカルボキシイミド ( イプロジオン プロシミドン ) 等 上市後数年間で耐性菌が発生 防除効果が大幅に低下した事例のある殺菌剤を高リスクとしている DMI( トリアゾール等 ) アニリノピリミジン ( シプロジニル メパニピリム ) のように 一部の条件で防除効果が低下 または限定的に防除

PowerPoint プレゼンテーション

5月の病害虫発生予想と防除のポイント

190号.indb

いちごじゃのめ病 さやえんどう実えんどうピーマンすいか メロン きゅうり うどんこ病 ~ 5,000 陥没病 黒星病 ~ 5,000 うどんこ病 かぼちゃ種子重量のフザリウム立枯病 0.3% にがうり うどんこ病うり類 ( 漬物用 ) つる枯病 炭疽病 ~ 5,000 トマト葉かび病ミニトマトすすか

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2018/08/06 注意報サツマイモシロイチモジヨトウ平成 30 年度第 3 号 徳島県 2018/08/03 注意報水稲斑点米カメムシ類平成 30 年度第 1 号 宮城県 2018/08/03 注意報りんご なしナミハダニ平成 30 年度第 2 号 宮城県 2018/08/01 注意報ネギシロイ

バンカーシート 利用マニュアル 2017年版(第一版)

「公印省略」

(2) 新系統の発生状況平成 28 年 4~10 月にかけて府内 19 地点のネギ キャベツ及びタマネギほ場から採集したネギアザミウマの次世代を一頭飼育法 ( 十川ら, 2013) により調べた結果 南丹市以南の16 地点で新系統 ( 産雄性生殖系統 ) を確認した 山城地域では 産雄性生殖系統が優

2 ブドウの病害虫

平成 29 年度全国特殊報一覧 2018/03/30 特殊報イチジクラシオディプロディア落葉病 ( 仮称 ) 平成 29 年度第 4 号 福岡県 2018/03/29 特殊報ヤマノイモジャガイモクロバネキノコバエ平成 29 年度第 3 号 神奈川県 2018/03/29 特殊報ガーベラ茎えそ病 (

イネいもち病菌の MBI-D 剤耐性菌の分布 (2012) 耐性菌検出 北海道 2010 年 耐性菌未検出 全国 47 都道府県中 36 道府県より耐性菌を検出 佐賀県 2001 年 全農営農 技術センター及び農環研のまとめ 長期残効型箱施用粒剤 本田散布剤と違い 使用者の被曝や地域外への有効成分の

CONTENTS Q1. の特長を教えてください... 2 Q2. の有効成分について教えてください... 2 Q3. 登録内容を教えてください... 3 Q4. 対象病害虫について教えてください... 3 Q5. 効果試験などあれば教えてください... 4 Q6. 使い方を教えてください... 6

本剤の使用に当たっては 使用量 使用時期 使用方法を誤らないように注意し 特に初めて使用する場合には病害虫防除所等関係機関の指導を受けることをおすすめします 安全使用上の注意事項 本剤は眼に対して刺激性があるので眼に入らないよう注意してください 眼に入った場合には直ちに水洗し 眼科医の手当を受けてく


わかっていること トマトすすかび病について

本年 10 月 11 日 ~11 月 10 日の間に登録登録されたされた新農薬 ( 適用拡大を含む は 次の通りですりです 下線部が適用拡大適用拡大になりましたになりました 登録日 薬剤名 10/24 テルスタ - フロアブル 登録内容 ( 適用拡大を含む のあらまし 対象作物内容 もも 対象害虫の

SDS農薬要覧2019 ネマモール粒剤30

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病害虫発生予察情報(11月予報)

3. 生物的方法 ある種の微生物や 病原力を脱落させた病原菌に 植物の防御能力を高める作用があり ます また 病原力を弱めたウイルス ( 弱毒ウイルス ) を前もって接種しておくと その 後の同一あるいは近縁ウイルスの感染率を低下させることが可能です それらのうち 農 薬登録されているものを表 2-

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( ア ) 殺菌剤 を付した病害虫は 薬剤耐性もしくは抵抗性個体群が出現している ( 詳細は 24~ ページを参照 ) ( 小麦 : 殺菌 ) 毒魚処理濃度 量新性毒 ( ) は分類名 等性 眼紋病 赤さび病 褐色雪腐病 規 改訂 茎葉散布劇 A 他合成 ヘ ンソ イミタ ソ ール 1

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北病防第 平成 23 年 142 号 2 月 18 日 関係総合振興局産業振興部長 関係振興局産業振興部長 様 様 技術普及課長 病害虫防除所長 水稲いもち病防除の徹底について 水稲の重要病害であるいもち病は 平成 20 年以降 3 年連続して多発生し 平成 22 年の 葉いもち と 穂いもち の発

月中旬以降の天候によって塊茎腐敗による被害が増加する事例も多い 平成 28 年度は疫病の発生面積率は19.9% と例年に比べてやや少なかったものの 塊茎腐敗の発生面積率は 14.8% と例年に比べてやや多かったとされる ( 平成 現在 北海道病害虫防除所調べ ) かつては 疫病には

平成16年度農作物有害動植物発生予察情報

冷蔵貯蔵中のぶどう「シャインマスカット」に発生する灰色かび病防除に、オンリーワンフロアブルの7月中~下旬散布が有効である

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北海道におけるコムギなまぐさ黒穂病防除について 一般社団法人北海道植物防疫協会 事務局長理事 田中 Fumio Tanaka 文夫 1. はじめにイネ科作物の黒穂病といえば ある年代以上の方はトウモロコシの所謂 お化け や春播き小麦の裸黒穂病を思い浮かべるのではないだろうか? いずれも採種圃場管理と

Microsoft PowerPoint - チャトゲシンポ

ダコニール1000_農薬ガイド_2018年8月31日

圃場試験場所 : 県農業研究センター 作物残留試験 ( C-N ) 圃場試験明細書 1/6 圃場試験明細書 1. 分析対象物質 およびその代謝物 2. 被験物質 (1) 名称 液剤 (2) 有効成分名および含有率 :10% (3) ロット番号 ABC 試験作物名オクラ品種名アーリーファ

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平成19年度事業計画書

水稲いもち病当面の対策                   

イチゴ炭疽病のヘソディム

付図・表

平成16年度農作物有害動植物発生予察情報

本日のお話 つなぐことの意味 技術の効果 ( 第一期実用技術開発事業 ) 現地実証と産地への実用化 適用樹種拡大研究への発展 更なる共同研究 実用化に向けて

キノンドー顆粒水和剤 2 年目 継続 1. 目的製剤変更による効果確認 樹齢 20 年生栽植密度 m 20 本 /10a (6) 試験内容試験面積 40 a 試験区 20 a 対照区 20 a 7/2 キノンドー顆粒水和剤 1,000 倍 500 リットル 7/2 キノンドーフロアブ

表紙

Microsoft Word 予報第9号

スライド 1

平成 28 年度農林水産業 食品産業科学技術研究推進事業 平成 29 年 1 月版 コムギなまぐさ黒穂病 Q & A 北海道農政部生産振興局技術普及課 北海道病害虫防除所 北海道立総合研究機構農業研究本部

エチレンを特定農薬に指定することについてのこれまでの検討状況 1 エチレンについて (1) 検討対象の情報 エチレン濃度 98.0% 以上の液化ガスをボンベに充填した製品 (2) 用途ばれいしょの萌芽抑制のほか バナナやキウイフルーツ等の果実の追熟促進を目的とする 2 検討状況 (1) 農林水産省及

SDS農薬要覧2018 ダコニール1000

白紋羽病の病徴 果樹の地上部にこんな症状が出ていたら要注意 春先の発芽が遅れ 花芽分化が多く 開花時期が早まる 徒長枝の本数が少ない または伸長が悪い 梅雨明け後期に 葉が萎れたようになる 秋期に葉の黄化や 落葉が早くなる 果実の肥大が悪く 熟期が早まる 徒長枝の伸長が悪い 菌 糸 束 秋期の葉の早

( 一財 ) 沖縄美ら島財団調査研究 技術開発助成事業 実施内容及び成果に関する報告書 助成事業名 : 土着微生物を活用した沖縄産農作物の病害防除技術の開発 島根大学生物資源科学部 農林生産学科上野誠 実施内容及び成果沖縄県のマンゴー栽培では, マンゴー炭疽病の被害が大きく, 防除も困難となっている

5月の病害虫発生予想と防除のポイント

4 奨励品種決定調査 (1) 奨励品種決定調査の種類ア基本調査供試される品種につき 県内での普及に適するか否かについて 栽培試験その他の方法によりその特性の概略を明らかにする イ現地調査県内の自然的経済的条件を勘案して区分した地域 ( 以下 奨励品種適応地域 という ) ごとに 栽培試験を行うことに

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Microsoft Word - H30予報06号.docx

2) の特徴 1 有効成分が 銀 自然界に広く存在している 銀 を有効成分とした水稲種子消毒剤です 2 幅広いスペクトラム本剤のみで 水稲の主要な種子伝染性病害 ( ばか苗病 いもち病 ごま葉枯病 もみ枯細菌病 苗立枯細菌病 褐条病およびイネシンガレセンチュウの防除が可能です 3 細菌病に対する優れ

高品質米の生産のために

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炭疽病並並やや少 (-) やや多 ~ 並 降水並 ~ 少 (-) 8 月降水量多 チャ カンザワハダニ並並並 やや多 ~ 少 気温並 茶研予察ほ降水並 ~ 少少 (-) クワシロカイガラムシ 並並やや少 (-) 並 ~ やや少 気温並 降水並 ~ 少 カンキツ 黒点病並やや多少 (-) ミカンハダニ

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KASEAA 51(10)

平成 30 年 7 月 27 日 ( 表題 ) 台風第 12 号の接近に伴う農作物被害技術対策情報について ( 担当 ) 佐賀北部農業技術者連絡協議会事務局 気象庁によると台風第 12 号は 現在 ( 平成 30 年 7 月 27 日 6 時 45 分 ) 硫黄島の南 東約 80km を北東に向かっ

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画面遷移

大型の捕虫網 ( 径 42cm) を使用し 1 地区 5 地点の払い落し法により調査する 越冬後の5~6 月の指標植物としては結実しているクワ サクラ ヒイラギ及び開花中のミカン 新梢伸長中のキリが適しており また 新成虫が出現する7 月以降の好適な指標植物として結実したスギ ヒノキ サワラ ヒイラ

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令和元年度 (2019 年度 ) 病害虫発生予察情報第 5 号 6 月予報北海道病害虫防除所令和元年 (2019 年 )5 月 29 日 Tel:0123(89)2080 Fax:0123(89)2082 季節予報 ( 付記 )

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(3) 病原の種類と性質 病原として主要なものは 糸状菌 ( かび ) 細菌 ウイルスの 3 つです この他にマイコプラズマ ウイロイドなどがあり これらを総称して病原微生物とよびます 種類性質作物の病原として重要なものの多くがこれに属する 通常 かび とよばれ 菌糸や胞子を形成する 糸状菌は 大き

P7-15(金子)

PowerPoint プレゼンテーション

果樹の生育概況

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展示圃要領1

日照不足技術対策資料 H18,5.26

ハクサイ黄化病のヘソディム

殺虫剤メタアルデヒド粒剤スクミノン 有効成分 : メタアルデヒド 10.0% 農林水産省登録第 号性状 : 淡褐色粒状毒性 : 普通物 ( 毒劇物に該当しないものを指していう通称 ) 有効年限 :3 年包装 :2kg 8 スクミノン はサンケイ化学 の登録商標です 特長 主に食毒で作用し

平成 30 年産米づくりのポイント ~ 水稲種子の消毒時の注意点について ~ JA 全農ちば営農支援部今年も水稲栽培に向けた準備の時期がやって来ます イネばか苗病や細菌性の苗立枯病など種子伝染性の病害の発生を防ぐためには 薬剤による種子消毒を中心とした対策が必要不可欠のため しっかりとした対策を実施

参考 < これまでの合同会合における検討経緯 > 1 第 1 回合同会合 ( 平成 15 年 1 月 21 日 ) 了承事項 1 平成 14 年末に都道府県及びインターネットを通じて行った調査で情報提供のあった資材のうち 食酢 重曹 及び 天敵 ( 使用される場所の周辺で採取されたもの ) の 3

情報01-1.xlsx

園芸殺菌剤 Z ボルドー [ 銅 和剤 ] 農林 産省登録有効成分 性状 第 号塩基性硫酸銅 58.0%( 銅として 32.0%) 淡 緑 和性粉末 45μm 以下 毒性 : 普通物 ( 毒劇物に該当しないものを指していう通称 ) 危険物 :- 有効年限 :5 年 包装 :500g 20

茨城県 消費者ニーズに応えるイチゴ産地の育成 活動期間 : 平成 22 年度 ~ 継続中 1. 取組の背景鉾田地域は, メロン, ピーマン, イチゴ, トマト, 葉菜類などの野菜類の生産が盛んな, 県内有数の野菜園芸産地である 経営体の多くが複数の園芸品目を組み合わせ, 大規模な複合経営を行っている

ミニトマト ( 野菜類 ) ( トマトモサ イクウイルス キュウリモサ イクウイルス ) 黄化えそ病 ( トマト黄化えそウイルス TSWV) 黄化葉巻病 ( トマトイエローリーフカールウイルス TYLCV) 1. 発病株は抜き取り 苗床や本畑に発病株の根をできるだけ残さないようにする 2. 摘心 摘

中晩柑の病害虫

Microsoft Word - H30予報03号.docx

項目樹木対象学年 2 3 場所園芸室 フィールド 剪定実習 園芸研究家阪上敏行 1 1. 庭木の整枝 剪定の目的と効果 2. 剪定とその技法 3. 庭木の移植と時期 4. 庭木の管理暦 黒松の剪定実習 2 全日剪定実習シルバーカレッジ内の樹木剪定 3 全日剪定実習しあわせの村内施設の植栽

Bacillus subtilis を有効成分とした新規微生物殺菌剤 アグロケア水和剤 について 前田光紀 Mitsunori Maeda はじめに わが国の微生物農薬は1954 年のトリコデルマ生菌の登録に始まり 1980 年代にはBT 剤が登録され始めた その後 環境保全型農業が重要視され始めた

Ⅱ 今後の管理について 1 水管理について (1) 気象変動に対応した水管理 幼穂形成期に入ったら間断かん水 出穂期から開花期にかけては湛水管理 その後は間断 かん水が水管理の基本になりますが 気象変動に対応した水管理を心がけましょう 1 減数分裂期の低温 減数分裂期 ( 葉耳間長 ±0cm 出穂期

令和元年度 (2019 年度 ) 病害虫発生予察情報第 13 号 8 月予報北海道病害虫防除所令和元年 (2019 年 )7 月 29 日 Tel:0123(89)2080 Fax:0123(89)2082 季節予報 ( 付記

農薬登録事項変更登録申請書

Microsoft Word - ⑦内容C【完成版】生物育成に関する技術.doc

30年防除基準.indb

Transcription:

**************************************** 2017 年 4 月 29 日 日本植物病理学会殺菌剤耐性菌研究会 耐性菌対策のための DMI 剤使用ガイドライン 一般的な耐性菌対策 1. 薬剤防除だけに頼るのではなく 圃場や施設内を発病しにくい環境条件にする 1) 可能ならば病害抵抗性品種や耐病性品種を栽培する 2) 病原菌の伝染源となる作物残渣や落葉 剪定枝あるいは周辺の雑草などは速やかに処分する 3) 作物が過繁茂にならないよう誘引や整枝 剪定に気をつける 4) 施設内の温度や湿度管理に気を配る 5) 土壌や水管理にも気を配り 健苗や健全樹の育成 栽培に心がける 6) 発病した葉や果実などは 支障がない限り見つけ次第除去する 7) 関係機関等から薬剤に代わる最新の防除技術について情報を集め その積極的な導入に努める 2. 薬剤防除にあたっては 以下の点に留意する 1) 使用する薬剤がどの系統に属するのかを調べ 耐性菌が発生しやすい薬剤かどうかを確かめる 2) 一般に同じ系統の薬剤では交差耐性になることが多いが DMI 剤の場合 感受性の低下は徐々に進行し また その程度は薬剤によって異なることが多いため 薬剤間で防除効果に差を生じる場合がある 3) 耐性菌が発生しやすい薬剤はガイドラインが示す回数の範囲内で使用し 使用後は効果の程度をよく観察する 4) 同じ系統の薬剤は連用しない 5) 防除基準や防除暦等で決められた薬剤の希釈倍数や薬量を守り 作物にムラなく散布する スピードスプレーヤで果樹に散布する場合は 毎列散布とし隔列散布はしない 6) 新しく開発された薬剤の場合 特に栽培後期の発病の多い時期に特効薬として散布しがちであるが これでは耐性菌がより発達しやすくなって防除に失敗する恐れがある 薬剤の予防散布を徹底する 7) 薬剤の効果が疑われる場合は直ちに関係機関に連絡し 耐性菌の検定を依頼するとともに防除指導を受ける 検定で 耐性菌の分布が確認された場合 は 直ちに当該 DMI 剤の使用を中止して効果が確認されるまで使用しない また 感受性低下菌の分布が確認された場合 でも当該 DMI 剤の使用は控え 効果が確認されている他の DMI 剤に他系統薬剤を混用し最小限で使用するか 又は他系統薬剤のみを使用する なお 他系統薬剤との混用 ( または混合剤を使用 ) 又は輪番 ( ローテーションまたは交互 ) 使用をしても 耐性菌の発達は起こることが多いので 過信しない 1

DMI 剤の使用に関するガイドライン 水稲一般栽培での DMI 剤の使用は 種子消毒を含め1 作当たり最大 2 回までとする 種子生産過程 ( 育種 原種 採種圃 ) における DMI 剤の使用は 種子消毒も含めて最大で年 1 回限りとする また 育苗箱処理に長期持続型 DMI 剤は使用しない 採種圃の周辺圃場でもこれに準じる 麦類オオムギ及びコムギにおける DMI 剤の使用は 以下のとおりとする オオムギ 種子粉衣は最大 1 作 1 回とする 散布は最大で 1 作 2 回とする 但し 種子粉衣を実施した場合は 最大 1 作 1 回とする 秋播きコムギ 種子粉衣は最大 1 作 1 回とする 根雪前散布は最大で 1 作 1 回とする ただし 種子粉衣を実施した場合は 根雪前散布を行わないこととする 融雪後散布は最大で 1 作 2 回とする 春播きコムギ ( 初冬播きを含む ) 融雪後散布は最大で 1 作 2 回とする オオムギ 作物区分 オオムギ及びコムギにおけるDMI 剤の使用回数使用根雪前 ( 前年度 ) 融雪後 ( 当年度 ) 1 作中での最大使用回数パターン 2 種子粉衣 (1 回 ) 散布 (1 回 ) 2 回 秋播きコムギ 2 種子粉衣 (1 回 ) 散布 (2 回 ) 3 回 3 散布 (1 回 ) 散布 (2 回 ) 3 回 春播きコムギ ( 初冬播きを含む ) 2

野菜類 野菜類での DMI 剤の使用に関するガイドラインについては 防除対象となる病害で の耐性菌の発生状況や耐性菌リスクを考慮した 主要野菜類における耐性菌リスクと DMI 剤使用回数の考え方 作物 主な防除対象 DMI 剤耐性菌の報告 DMI 剤 防除対象病害 耐性菌リスク 注 2) 栽培期間中の防除頻度 ( 発生及び防除期間など ) 使用時期 DMI 剤の 1 作中での使用回数 単剤のみ使用する場合 効果が期待できる他系統薬剤と混用または混合剤を使用する場合 ( 単剤使用を併用する場合の回数 ) イチゴうどんこ病有 ( : 通年 育苗圃とで実質的には 2 作型 ) 育苗圃 ( このうち単剤使用は ) ( このうち単剤使用は ) ナスすすかび病有中 ( :10~6 月 ) ( このうち単剤使用は ) トマト葉かび病有中 ( :10~6 月 ) 3 回以内 ウリ科うどんこ病有 ( : 通年 年 3 作も有り ) ( このうち単剤使用は ) DMI 剤と対象病害の耐性菌リスクは殺菌剤耐性菌研究会 (http://www.taiseikin.jp) の資料. 注 2) 栽培期間中の防除頻度は 対象病害の発生期間が長い施設栽培を想定. 発生が長期間に及ぶものでは短いものに比べ DMI 剤の総使用回数が多くなり耐性菌リスクがまりやすいと考えられる. 使用に関するガイドライン イチゴ ( 育苗圃 )DMI 剤は 単剤で使用する場合は 1 作 1 回まで 効果が期待できる他系統薬剤との混用もしくは混合剤で使用する場合は 1 作 2 回まで 単剤と他系統薬剤との混用もしくは混合剤を組み合わせて使用する場合は単剤 1 回 + 混用または混合剤 1 回まで ( ) 同上 ナス DMI 剤は 単剤で使用する場合は 1 作 1 回まで 効果が期待できる他系統薬剤との混用もしくは混合剤で使用する場合は 1 作 2 回まで 単剤と他系統薬剤との混用もしくは混合剤を組み合わせて使用する場合は単剤 1 回 + 混用または混合剤 1 回まで トマト DMI 剤は単剤で使用する場合は 1 作 2 回まで 効果が期待できる他系統薬剤との混用もしくは混合剤の場合は 1 作 3 回まで 注 ) 混用 混合剤で使用する場合の 3 回以内 とは DMI 剤を単剤では使用せず 他系統剤との混用または混合剤を使用する場合にのみ 3 回まで使用可能であることを示す 例えば DMI 単剤を 1 回散布した後に DMI 剤を含む混合剤を 2 回散布する場合は ガイドラインで規定する使用回数を超過することとなる 3

ウリ科 DMI 剤は 単剤で使用する場合は 1 作 1 回まで 効果が期待できる他系統薬剤との混用もしくは混合剤で使用する場合は 1 作 2 回まで 単剤と他系統薬剤との混用もしくは混合剤を組み合わせて使用する場合は単剤 1 回 + 混用または混合剤 1 回まで 果樹類果樹類でのDMI 剤の使用に関するガイドラインについては 防除対象となる病害での耐性菌の発生状況や耐性菌リスクを考慮した 主要果樹病害における耐性菌リスクとDMI 剤の使用回数の考え方 作物 防除対象 DMI 剤耐性菌の報告 耐性菌リスク 単剤のみ使用する場合 DMI 剤の 1 年当たり使用回数 効果が期待できる他系統薬剤と混用または混合剤を使用する場合 ( 単剤使用を併用する場合の回数 ) リンゴ 黒星病有 うどんこ病有 ( 単剤は使用しない ) 黒星病有ナシ 2~3 回以内 ( 単剤は使用しない ) うどんこ病無 ( 中 ) うどんこ病無 ( 中 ) カキ 3 回以内 ( このうち単剤使用は ) 落葉病無 ( 中 ) 核果類 ( モモ スモモ オウトウ ウメなど ) 灰星病 無注 2) 中 黒星病無中 黒とう病無 ( 中 ) ブドウ ( このうち単剤使用は ) 無うどんこ病 黒点病無 ( 中 ) 無カンキツ緑かび病中 ( このうち単剤使用は ) 青かび病有中 3 回以内 ( このうち単剤使用は ) 防除対象の耐性菌リスクは殺菌剤耐性菌研究会 (http://www.taiseikin.jp) および FRAC(http://www.frac.info) の情報を参照. これらに記載がないものは暫定的に中とし カッコ書きで表記した.DMI 剤の耐性菌リスクは中である ( 殺菌剤耐性菌研究会 ). 注 2) モモで報告あり. 使用に関するガイドライン果樹類病原菌の DMI 剤感受性は徐々に低下する傾向がある 一方 DMI 剤の使用回数は多い傾向があることから 効果が期待できる他系統薬剤との混用または混合剤の使用に努め 単剤の使用は可能な限り控える なお 開花期に他系統薬剤との混用または混合剤を使用すると受粉に影響する場合があるので 薬剤の組み合わせや散布時期に十分注意する リンゴ効果が期待できる他系統薬剤との混用または混合剤で使用し 1 年 2 回まで 黒星病 うどんこ病で耐性菌が確認されているため 薬効低下には十分注意する また 罹病落葉の処分や鱗片発病芽の除去等を行い病原菌密度の低下を図る 4

ナシ効果が期待できる他系統薬剤との混用または混合剤で使用し 地域の実情に応じて 1 年 2~3 回まで 黒星病で耐性菌が確認されていることから 薬効低下には十分注意する また 罹病落葉の処分や鱗片発病芽の除去等を行い病原菌密度の低下を図る カキ 効果が期待できる他系統薬剤と混用または混合剤と組み合わせて使用し 1 年 3 回ま で ( このうち単剤使用は ) 単剤のみ利用する場合は とする 核果類 ( モモ スモモ オウトウ ウメなど ) 効果が期待できる他系統薬剤と混用または混合剤と組み合わせて使用し 1 年 3 回ま で ( このうち単剤使用は ) 単剤のみ利用する場合は とする ブドウ 効果が期待できる他系統薬剤と混用または混合剤で使用し 1 年 2 回まで ( このうち 単剤使用は ) 単剤のみ利用する場合は とする カンキツ 効果が期待できる他系統薬剤と混用または混合剤で使用し 1 年 2 回まで ( このうち 単剤使用は ) 単剤のみ利用する場合は とする チャチャでは 摘採と同様と見なす作業 によって農薬使用回数がリセットされるため ほ場の栽培管理によって年間の作数が大きく異なる たとえば 一番茶から三番茶まで摘採する場合は 秋整枝も 摘採と同様と見なす作業 とされるため 年に 4 作となる 一方 自然仕立て園の手摘み園では 年に 1 作となる 以上のことから 年間の最大使用回数を一律に定めることは困難である なお 摘採と同様と見なす作業 の具体例については各県で作成された防除基準等を参照されたい 使用に関するガイドライン DMI 剤の 1 作中における使用回数は 1 回が望ましい 複数回使用する場合は連用はせず 他系統薬剤との組み合わせで使用する 炭疽病 もち病に関しては 生育初期 ( 萌芽 ~1 葉期 ) に保護剤 ( 予防剤 ) その 1 週間 ~10 日後に DMI などの治療剤を用いることを原則とする DMI 剤が登録されているチャ病害のいずれも 樹上の罹病葉 ( 葉層内の罹病葉を含む ) が主な伝染源となっているので 罹病葉の除去に努める 5