平成 27 年産麦類技術情報 総括号平成 27 年 9 月 10 日宮城県美里農業改良普及センター TEL 0229-32-3115 FAX 0229-32-2225 URL http://www.pref.miyagi.jp/site/misato-index/ 1 気象経過 (10 月上旬 ~7 月中旬 : アメダス鹿島台 ) * 気温 :12 月上旬 ~1 月上旬は 最高気温が平年より 2 最低気温が 0.5 低くなりました 1 月中旬以降は 概ね平年を上回りました * 降水量 :10 月上旬 ~ 中旬は 平年を上回りました 11 月下旬 ~12 月下旬 1 月下旬も平年を上回り 3 月上旬には平年を大きく上回りました 一方 3 月下旬以降は平年を下回ることが多くなり 3 月下旬 5 月下旬の降水量は 0mm でした 6 月 ~ 7 月も平年を下回って推移しました * 日照時間 : 越冬前は概ね平 年を下回り 越冬後は概ね平年 を上回りました 2 生育調査ほ生育概況 生育ステージ 表 2 生育調査ほ場における各生育ステージ 図 1 管内の気象経過 地区名地点品種 播種日 幼穂形成始期減数分裂期出穂期成熟期 本年値平年差本年値平年差本年値平年差本年値平年差本年値平年差 大崎市鹿島台大迫シラネコムギ 10 月 29 日 -8 3 月 23 日 -12 4 月 27 日 -10 5 月 4 日 -13 6 月 23 日 -6 美里町南郷二郷シラネコムギ 10 月 30 日 0 3 月 23 日 -11 4 月 30 日 -7 5 月 6 日 -11 6 月 25 日 -4 美里町南郷二郷ゆきちから 10 月 30 日 0 3 月 30 日 -5 4 月 30 日 -6 5 月 8 日 -9 6 月 23 日 -6 涌谷町 猪岡短台 注 1 平年値は H21~26 の平均値である ゆきちから 11 月 9 日 4 3 月 28 日 -9 4 月 30 日 -6 5 月 9 日 -7 6 月 26 日 -3 注 2 平年差におけるマイナスの値は 平年より早いことを示す
涌谷ほ場では 10 月の降雨でほ場のわら上げが進まず 播種が遅くなりました 越冬後 平年を上回る気温で推移したため 播種が遅れた涌谷ほ場でも生育が早く進みました 生育経過 図 2 生育調査結果 ( 草丈 茎数 ) * 草丈 :12 月時点では平年を下回ったが 越冬後は平年を上回りました * 茎数 : 越冬後は平年を上回るほ場が多くなりました 南郷のゆきちからほ場では 越冬後も平年を下回って推移しましたが 白鳥による食害が原因のひとつとみられます 成熟期調査結果 表 3 成熟期調査結果 地区名地点品種 稈長 ( cm ) 穂長 (cm) 穂数 ( 本 / m2 ) 千粒重 (g) 坪刈り収量 (kg) 本年値平年差本年値平年差本年値平年比本年値平年比本年値平年比 大崎市鹿島台大迫シラネコムギ 74-2.8 8.0 0.4 338 62% 40 103% 646 134% 美里町南郷二郷シラネコムギ 81 0.5 7.8 0.2 598 112% 38 97% 701 121% 美里町南郷二郷ゆきちから 80-5.5 8.2-0.5 428 83% 37 94% 619 124% 涌谷町 猪岡短台 ゆきちから 74-9.5 8.9 0.1 326 73% 41 104% 460 88% 注 1 平年値はH21~26の平均値である 注 2 坪刈り収量 :H21は2.2mm, それ以降は2.0mmで篩ったものである 稈長は平年より短く 穂長はやや長い傾向 穂数は平年より少なくなりました 収量は平年を上回りました 播種遅れにより 穂数を確保できなかったほ場では 平年を下回りました
2 作柄解析 < 美里管内 > 管内生育調査ほ場では 越冬後の平年を上回る気温により 生育が早まり 草丈 茎数ともに概ね平年を上回って推移しました しかし 減数分裂期 ( 今年度は 4 月末頃 ~) 以降に降水量がほとんどなく 減数分裂期追肥の効果が十分に得られなかった可能性があります また 6 月に入ると 穂が退色したり 草丈の伸長が抑制される症状が管内の一部ほ場でみられ 過乾燥が原因と考えられます < 宮城県作況試験ほ場 > 本年の作柄の特徴 : 成熟期が平年に比べて早く 整粒数が少なくなったもの 千粒重と容積重が平年を上回り 収量は平年並み 播種後は適度な降雨がみられ 出芽は概ね良好でした 12 月上旬 ~1 月上旬は低温傾向で経過したため 生育量は平年を下回りましたが 1 月中旬以降は高温傾向で経過し 越冬後の生育量は平年を上回りました また 生育ステージも平年より早く進みました 各生育ステージは 減数分裂期で -8 日 出穂期でー 10 日となりました 登熟期間も概ね高温傾向で推移したため 成熟期は -9~11 日となりました 特に 4 月第 6 半旬 ~5 月第 2 半旬はほとんど降雨がなく 追肥の効果は判然としませんでした 成熟期の稈長は同程度 ~ やや短い 穂長は平年並み 穂数は平年並み 整粒数は平年を下回り 千粒重は平年を上回り 子実重は平年並みでした 出穂期以降は降雨が少なく 赤かび病は観察されませんでした 外観品質は平年並みとなりました ゆきちから : 部分的に白く退色 ゆきちから : 白く退色した部分がへこんでいる ( 草丈が短い ) 図 3 過乾燥によるものとみられる症状 ( 平成 27 年 6 月 2 日撮影 )
1 適正な播種作業 播種は適期内に行いましょう年内生育確保が収量につながるポイントです 北部平坦の適期は 10 月 5~10 日頃, 晩限は 10 月 20 日頃です 砕土は土壌条件を考慮して行いましょう発芽率向上や除草剤の効果を高めるために, 砕土は十分に行います 2cm 以下の土塊が 70% 以上が 砕土の目安です ただし, 強粘土壌では砕土率を高くしすぎると, 反対に土が固くなり出芽に影響することもあるので, 注意が必要です 播種深は 3cm 程度が適切です深いと出芽に時間がかかるとともに 分げつの発生が抑制されます 播種量の目安ドリルシーダ - でm2当たり 250 粒 ( 播種量 9~10kg) を播種する場合, 条間 30cm で 75 粒 /m 25cm では 50 粒 /m となります 千粒重が軽い年は 播種量を多くすると粒数が多くなりすぎるということが発生します 表 4 を参考に播種量を調整して下さい ドリル播きの場合の播種量シラネコムギ :9~10kg ゆきちから :10~11kg 表 4 小麦播種量の目安 シラネコムギゆきちから 播種量 (kg) 千粒重 (g) 250 粒 / m2 200 粒 / m2 42 10.5 8.4 40 10.0 8.0 38 9.5 7.6 35 8.8 7.0 播種時の注意点 (1) 播種量の目安 は 10 月 20 日頃までに播種した場合の目安です播種がこれ以降になると年内生育を確保しにくくなりますので, 播種量を増やして対応してください ただし量を増やしすぎると穂数過剰に繋がり, 千粒重低下や整粒歩合の低下に繋がるので注意して下さい (2) 播種後の降雨による出芽不良事例が見受けられます降雨前に無理をして播種することを避けましょう 降雨後に播種量を多くする方が, 安定した出芽が期待できるようです 2 雑草対策 < 除草対策のイメージ >
(1) 土壌処理剤土壌が乾燥していると 薬剤の効果が劣ります このような場合は表面に十分に薬剤がかかるよう, 登録されている範囲で希釈水量を多めにします また 小雨程度の降雨後 ほ場が湿った状態で散布する方法も効果的です ゴーゴーサン乳剤 ボクサーは小麦出芽後にも散布が可能です ただしゴーゴーサンはキク科雑草とツユクサに ボクサーはイタリアンライグラスには若干効果が劣りますので 発生草種を把握した上で使用するのが望ましいです 除草剤の効果を十分に発揮するためには 砕土率も重要ですので 丁寧な作業を心がけて下さい 表 5 麦類に登録のある主な土壌処理剤 ( 除草剤 ) 剤名 使用時期 使用方法 希釈倍数 使用量 散布液量 本剤使用回数 備考 砂質土壌を除く全土壌 水田裏 ガレース乳剤 作で使用する場合は過湿状態で播種後出芽前 200~250ml 全面土壌散布 100L の使用は避ける ( 雑草発生前 ) 秋まきでは土壌残効が長いの で 年内に散布を終える 適用土壌は砂壌土 ~ 埴土 コワーク乳剤 1 年生のイネ科から広葉雑草ま播種後発芽前 700~900ml 100~150L 全面土壌散布 で 幅広い草種に効果を発揮す ( 雑草発生前 ) る ゴーゴーサン乳剤 30 播種後 ( 雑草発生前 )~ 小麦雑草茎葉散布 300~500ml 70~100L 2 葉期 ( イネ科雑草 1 葉期まで ) 全面土壌散布 土壌が極端に乾燥している場合は効果が劣る キク科雑草とツユクサには効果が劣る ロロックス ( リニュロン水和剤 ) 播種後 ~ 発芽前 100~200g 70~150L ( 雑草発生前 ~ 発生始期 ) 全面土壌散布 砂土での使用は避ける イネ科雑草が優占しているところでは 他剤との併用または体系処理が望ましい 適用土壌は砂土を除く全土壌 ムギレンジャー乳剤 播種後出芽前 400~600ml 全面土壌散布 ( 雑草発生前 ) 50~100L ノミノフスマにやや効果が劣る ボクサー 播種後 ~ 麦 4 葉期まで ( 雑草発生前 ~ 雑草発生始期 ) 雑草茎葉散布全面土壌散布 400~500ml 70~100L 2 回 播種後出芽前 300~400ml 100L シナジオ乳剤全面土壌散布 ( 雑草発生前 ) 適用土壌は砂土を除く全土壌 適用雑草はツユクサ カヤツリグサ キク科雑草を除く 備考欄は平成 27 年度宮城県農作物病害虫 雑草防除指針より抜粋 (2) 茎葉処理剤 発生状況を見て早めの散布を 融雪後 ~3 月までが散布の目安となる薬剤ハーモニー剤は土壌処理効果もあります 薬剤使用量には幅がありますが 登録されている数量内で多めの薬量を使用した方が効果が高いようです 幼穂形成期以降 雑草は急激に大きくなりますので 雑草が小さいうちに対策を行いましょう 表 6 麦類に登録のある茎葉散布除草剤剤名使用時期使用方法希釈倍数 使用量散布液量本剤使用回数備考 ハーモニー 75DF 水和剤 播種後 ~ 節間伸長前 ( 但しスズメノテッポウ 5 葉期まで ) 雑草茎葉散布 ( 又は全面土壌散布 ) 5~10g 100L 散布後に降雨が予想されるときには散布を避ける 適用土壌は砂土を除く全土壌 エコパートフロアブル 節間伸長開始期まで ( 広葉雑草 2~4 葉期 ヤエムグラ 2~6 節期まで ) 但し 収穫 45 日前まで 雑草茎葉散布 50~100ml 但し小麦 4 葉期以降 止葉抽出期までは 50~75ml 100L 2 回以内 - MCP ソーダ塩 幼穂形成期 ( 但し収穫 45 日前まで ) 70~100L 雑草茎葉散布 200~300g 以内 - 備考欄は平成 27 年度宮城県農作物病害虫 雑草防除指針より抜粋
3 月 ~5 月が散布の目安となる薬剤出穂時期や雑草の生育状態を考えると, 小麦では穂ばらみ期 (5 月上旬位 ) までが除草剤を使用できる限界といえます 表 7 麦類に登録のある茎葉散布除草剤 ( その2) 剤名使用時期使用方法希釈倍数 使用量散布液量本剤使用回数備考 アクチノール乳剤 穂ばらみ期まで ( 雑草生育初期 ) 雑草茎葉散布 100~200ml 70~100L イネ科雑草及びコニシキソウには効果が劣る 2 回以内 広葉雑草は雑草発生揃期 ~6 葉期に散布する 但しヤエムク ラは 4 節期までに散布する バサグラン液剤 小麦の生育期 ( 雑草の 3~6 葉期 ) 但し収穫 45 日前まで 雑草茎葉散布 100~200ml 70~100L - 備考欄は平成 27 年度宮城県農作物病害虫 雑草防除指針より抜粋 使用前には最新の登録内容を確認して下さい 3 適切な施肥 麦は肥料で取る と言われ, 多量の窒素栄養を必要とします また, 追肥はその時期によって期待する効果が異なりますので, 時期を逃さないよう施用します なお, シラネコムギ ゆきちから両品種ともに 減数分裂期に穂揃期分の追肥 ( 窒素量 ) も合わせて行い,3 回目を省略することが可能です 表 8 小麦標準施肥体系 施用時期 10 月上 ~ 中旬 2 月上 ~ 中旬 3 月中 ~4 月上旬 4 月中 ~ 下旬 5 月上 ~ 中旬 基肥株直し追肥幼穂形成期追肥減数分裂期追肥穂揃い期追肥 栽培品種 シラネコムギ ゆきちから 肥料形態 目的 : 葉色の維持 目的 : 穂数増加 目的 : 一穂粒数を多くする 目的 : 千粒重, タンパク含量を高める < 幼穂形成前 > < 幼穂長 1mm~> < 幼穂長 3~5cm> <80~90% が出穂 > 窒素成分量 7~9kg 基本的に行わない 2.5kg 5kg 2.5kg 硫安 ( 現物量 ) 40~50kg 12kg 24kg 12kg 窒素成分量 8~10kg 基本的に行わない 2.5kg 5kg 5kg 硫安 ( 現物量 ) 50~60kg10a 12kg 24kg 24kg 尿素燐加安 777 号の場合