麦 類 生 育 情 報

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仙台稲作情報令和元年 7 月 22 日 管内でいもち病の発生が確認されています低温 日照不足によりいもち病の発生が懸念されます 水面施用剤による予防と病斑発見時の茎葉散布による防除を行いましょう 1. 気象概況 仙台稲作情報 2019( 第 5 号 ) 宮城県仙台農業改良普及センター TEL:022

毒 2 全面土壌散布 ( 注 : 対象雑草のはシバムギ レッドトップを示す ) 8 カイタック乳剤 [PL-10] -H7 9 カイタック細粒剤 F [PL-10] -H8 ヘ ンテ ィメタリン 15% リニュロン 10% ヘ ンテ ィメタリン 1.5% リニュロン 1.0% は種直後 ~ は種後

3. 播種前処理 ( 播種前に雑草防除を要する場合 ) 4. 播種後出芽前茎葉処理 2017 年 8 月 1 日現在 除草剤名 成分 (%) 除草剤名 成分 (%) ( 登載年 ) ( 登載年 ) プリグロックスL ジクワット 7.0 プリグロックスL ジクワット 7.0 マイゼット パラコート 5

Ⅰ 収穫量及び作柄概況 - 7 -

コシヒカリの上手な施肥

山形県における 水稲直播栽培の実施状況 平成 28 年 8 月 26 日 ( 金 ) 山形県農業総合研究センター 1 1 山形県における水稲直播栽培の現状 1 (ha) 2,500 2,000 1,500 1, 乾田直播 湛水 ( 点播 ) 湛水 ( 条播 ) 湛水 ( 散播 )

1 はじめに北海道の麦作には 二つの大きな目標があった 一つは 秋まき小麦の全道平均反収を一〇俵の大台に乗せること もう一つは E U 並みの反収一トンどりをめざすことである この数字は 決して夢のような話ではなかった 麦作農家のなかには 圃場の一部ではあるが一トンどりを実現したとの声があったし 実

圃場試験場所 : 県農業研究センター 作物残留試験 ( C-N ) 圃場試験明細書 1/6 圃場試験明細書 1. 分析対象物質 およびその代謝物 2. 被験物質 (1) 名称 液剤 (2) 有効成分名および含有率 :10% (3) ロット番号 ABC 試験作物名オクラ品種名アーリーファ

機関名 ( 地独 ) 北海道立総合研究機構農業研究本部 部署名 企画調整部企画課 記入者氏名 山崎敬之 電話番号 レーザー式生育センサを活用した秋まき小麦に対する可変追肥技術 レーザー式の生育センサを使って秋まき小

Ⅱ 今後の管理について 1 水管理について (1) 気象変動に対応した水管理 幼穂形成期に入ったら間断かん水 出穂期から開花期にかけては湛水管理 その後は間断 かん水が水管理の基本になりますが 気象変動に対応した水管理を心がけましょう 1 減数分裂期の低温 減数分裂期 ( 葉耳間長 ±0cm 出穂期

2 穂の発育過程 (1) 穂の形態 イネの穂は 穂軸が枝分かれして し 1 次枝こう 2 次枝こうがつき それ にえい 花 ( 小穂 ) がつく 1 つのえい花 ( 小穂 ) は 1 花から成 っており その数は 1 次枝こうの先に 5~6 個 2 次枝こうに 2~4 個つき 1 穂全体では 80

試験中 試験中 試験中 12 月下旬 試験中 試験中 試験中 12 月下旬 試験中 試験中 試験中 1 月中旬 試験中 試験中 試験終了 12 月中旬 試験中 試験中 試験中 1 月上旬 試験中 試験中 試験中 1

目次 1. やまだわら の特性 _ 1 収量特性 1 2 品質 炊飯米特性 2 3 用途別適性 3 2. 生育の特徴 4 3. 収量 品質の目標 5 4. 各地域での主な作付スケジュール 6 5. 栽植密度 7 6. 肥培管理 1 施肥量 施肥時期 8 2 生育診断 9 7. 収穫適期

農業技術情報 平成 30 年 5 月 16 日 ゆとりみらい 21 推進協議会指導部会 十勝普及センター十勝東部支所 JA 幕別町 JA 札内 JA 帯広大正 日甜幕別原料事務所 幕別町農林課 54-

農業技術情報 平成 30 年 5 月 2 日ゆとりみらい 21 推進協議会指導部会 十勝普及センター十勝東部支所 JA 幕別町 JA 札内 JA 帯広大正 日甜幕別原料事務所 幕別町農林課 54-66

附則この要領は 平成 4 年 1 月 16 日より施行する この要領は 平成 12 年 4 月 3 日より施行する この要領は 平成 30 年 4 月 1 日より施行する 2

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窒素吸収量 (kg/10a) 目標窒素吸収量 土壌由来窒素吸収量 肥料由来 0 5/15 5/30 6/14 6/29 7/14 7/29 8/13 8/28 9/12 9/ 生育時期 ( 月日 ) 図 -1 あきたこまちの目標収量確保するための理想的窒素吸収パターン (

排水対策の実施例 暗渠がある場合排水がよいほ場 排水が悪いほ場 周囲明渠 弾丸暗渠 心土破砕は 2 ~5m おきに行う 周囲明渠は深さ 30 cmを確保する 周囲明渠は排水口に確実に接続する 弾丸暗渠本暗渠 暗渠がない場合排水がよいほ場 排水がよく 長辺が長いほ場 100m 以 ほ場内排水溝は4 ~

付図・表

除草剤使用基準 6 作物別使用基準 _陸稲~_飼料

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スプレーストック採花時期 採花物調査の結果を表 2 に示した スプレーストックは主軸だけでなく 主軸の下部から発生する側枝も採花できるため 主軸と側枝を分けて調査を行った 主軸と側枝では 側枝の方が先に採花が始まった 側枝について 1 区は春彼岸前に採花が終了した 3 区 4 区は春彼岸の期間中に採

元高虫防第 139 号令和元年 7 月 4 日 各関係機関長様 高知県病害虫防除所長 病害虫発生予察情報について 令和元年度病害虫発生予察 6 月月報及び令和元年度予報 4 号 (7 月 ) を送付します 令和元年度病害虫発生予察 6 月月報 Ⅰ. 気象概況半旬 (6 月 ) 平均気温最高気温最低気

p1_10月月報用グラフ

取組の詳細 作期の異なる品種導入による作期分散 記載例 品種名や収穫時期等について 26 年度に比べ作期が分散することが確認できるよう記載 主食用米について 新たに導入する品種 継続使用する品種全てを記載 26 年度と 27 年度の品種ごとの作付面積を記載し 下に合計作付面積を記載 ( 行が足りない

Taro-H30(32-37).本çfl°æŒ½è‡¥.jtd

2018/4/19 JA いなば大豆栽培講習会自己紹介 30 年産大豆の収量 品質向上に向けて平成 27 年度大豆栽培講習会 平成 30 年 4 月 20 日 ( 金 ) JA いなば農業創造センター会議室高岡農林振興センター小矢部班 高岡農林振興センター伊山幸秀 2 富山県農林水産総合技術センター

図 2 水稲栽培における除草剤処理体系 追肥による充実不足 白粒対策 ~ 生育後半まで肥切れさせない肥培管理 ~ 図 3 追肥作業は 水稲生育中 後期の葉色を維持し 籾数及び収量の確保と玄米品質の維持に重要な技術です しかし 高齢化や水田の大区画化に伴い 作業負担が大きくなり 追肥作業が困難になりつ

20 石川県農業総合研究センター研究報告第 28 号 (2008) Ⅰ はじめに家畜ふん尿処理施設では 収集 運搬された家畜ふん尿は固液分離機に搬入され 固形分は堆肥化処理後 農耕地へ還元利用されている 液状分は好気発酵処理 さらに生物処理等の工程の順に適切な浄化処理が行われ その後 放流されている

主要産地における平成 29 年産水稲の収穫量及び作柄概況等について第 1 報 (8 月 31 日現在 ) 全国 道府県 全国 予想収穫量 (29 年 8 月 15 日現在 )1 収穫量 ( 早期栽培等 ) 予想収穫量 (28 年 8 月 15 日現在 )2 前年産との比較 (1-2) 作況 ( 早期

平成 26 年度補正予算 :200 億円 1

11月表紙

水稲調査結果の主な利活用 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律 ( 平成 6 年法律第 113 号 ) に基づき毎年定めることとされている米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針及び米穀の需給見通しのための資料 食料 農業 農村基本計画における生産努力目標の策定及び達成状況検証のための資料 米

目次 重要度の表記

レイアウト 1

今後の管理のポイント [懸案事項] ①早期作型における2番花 房の花芽分化遅延 ②炭そ病とハダニ類の発生 拡大 [対策] ①寒冷紗を被覆して 花芽分化を誘導する 2番花房 の花芽分化を確認して被覆を除去する 被覆期間の目安 9月25 10月20日 ②定期的に薬剤による防除を行う 特に葉かぎ後の 葉か

「そらゆき」栽培マニュアル

1 地域の概要 紫波町は岩手県のほぼ中央にあり 北は矢巾町 を挟んで盛岡市になり 南は花巻市に接しています ( 図 1) 町域は北上盆地を挟んで東の北上山地と西の奥羽山系にまたがって細長く広がり 町域の中央を東北の大河北上川が南流しています 北上川は北上盆地の東寄りを流れているため 平野は北上川の西

調査研究課題:○○▽▽の調査研究

資料報告

総籾数 ( 千 / m2 ) 1 穂籾数 ( 粒 / 穂 ) わら重 (kg/a) 精籾重 (kg/a) 柴田ほか : 水稲新品種 ゆめおばこ の栽培特性 (2) 結果 ゆめおばこ と あきたこまち を比較すると ゆめおばこ は あきたこまち より全重 わら 重 精籾重 玄米重が多く 玄米千粒重が大


1. 地 域 概 況 1 岐 地 阜 域 県 海 概 津 況 市 は 県 最 南 端 に 位 置 し 木 曽 長 良 岐 阜 県 海 津 市 は 県 最 南 端 に 位 置 し 木 曽 揖 斐 三 大 河 川 が 合 流 する 地 域 で 東 部 に 愛 知 県 西 長 良 揖 斐 三 大 河 川

1 課題 目標 山陽小野田市のうち 山陽地区においては 5 つの集落営農法人が設立されている 小麦については新たに栽培開始する法人と作付面積を拡大させる法人があり これらの経営体質強化や収量向上等のため 既存資源の活用のシステム化を図る 山陽地区 水稲 大豆 小麦 野菜 農業生産法人 A 新規 農業

平成 28 年度農林水産業 食品産業科学技術研究推進事業 平成 29 年 1 月版 コムギなまぐさ黒穂病 Q & A 北海道農政部生産振興局技術普及課 北海道病害虫防除所 北海道立総合研究機構農業研究本部

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平成 2 4 年産 農作物の作柄 東北農政局福島地域センター 平成 2 5 年 6 月

H26 中予地方局産業振興課普及だより 新技術情報 -1 いちご新品種 紅い雫 ( あかいしずく ) 1. 紅い雫 の来歴県農林水産研究所が育成したいちご新品種 紅い雫 は あまおとめ ( 母親 ) 紅ほっぺ ( 父親 ) の交配により誕生し 平成 26 年 6 月 25 日に品種登録出願されました

30年防除基準.indb

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水稲いもち病当面の対策                   

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(2) 新系統の発生状況平成 28 年 4~10 月にかけて府内 19 地点のネギ キャベツ及びタマネギほ場から採集したネギアザミウマの次世代を一頭飼育法 ( 十川ら, 2013) により調べた結果 南丹市以南の16 地点で新系統 ( 産雄性生殖系統 ) を確認した 山城地域では 産雄性生殖系統が優

あら

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資料 2 農業データ連携基盤の構築について 農業データ連携基盤 (WAGRI) WAGRI とは 農業データプラットフォームが 様々なデータやサービスを連環させる 輪 となり 様々なコミュニティのさらなる調和を促す 和 となることで 農業分野にイノベーションを引き起こすことへの期待から生まれた造語

第 41 巻 21 号 大分県農業気象速報令和元年 7 月下旬 大分県大分地方気象台令和元年 8 月 1 日

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東北日本海側において播種期、栽植密度および1株本数がダイズの生育収量に与える影響

一太郎 12/11/10/9/8 文書

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5 播種 (1) 播種期本県奨励品種の好適播種期は6 月上 ~ 中旬である 麦跡では6 月中旬 ~7 月上旬の播種となる 早播きすると過繁茂になりやすく 子実害虫の被害も多くなり 遅播きすると生育量が不足し収量が低下する (2) 播種量 適期播種の標準栽培では10a 当り8,000 ~12,000

みどりノートユーザマニュアル(Web版)

190号.indb

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5 事務局 審査会の事務局は 福島県農林水産部農業振興課におく 第 5 奨励品種決定調査の実施県は 奨励品種の決定に当たっては 奨励品種決定調査を行うものとする 1 奨励品種決定調査の種類 (1) 基本調査供試される品種について 県内での普及に適するか否かについて 栽培試験等によりその特性の概略を明

平成19年度事業計画書

水田メタン発生抑制のための新たな水管理技術マニュアル(改訂版)

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展示圃要領1

果樹の生育概況

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Taro-春まきソバ栽培マニュアル上下

平成 27 年 4 月 10 日 ( 第 1 号 ) 東北地方 1 ヶ月予報 ( 平成 26 年 4 月 9 日仙台管区気象台発表 ) 天気は数日の周期で変わりますが 平年に比べ晴れの日が多いでしょう 平均気温は 平年並及び平年より高い確率が 40% 降水量が高い確率が 50% 日照時間は 平年並ま

研究報告 (2) 地球温暖化の道内農作物への影響は?~2030 年代の予測と対応方向 ~ 北海道立総合研究機構中央農業試験場農業環境部 中辻敏朗 北海道は日本の食料供給にとって重要な役割を担っていますが この役割を将来においても果たすためには 温暖化で本道の主要作物がどのような影響を受けるかを予測し

北海道の米づくり 2011年版

無印良品 2012 自転車 カタログ

大豆作における失敗事例 Ver.3 失敗は宝 成功へのヒントにしましょう 雑草が繁茂した圃場 雑草がないきれいな圃場 平成27年1月21日 東北農政局生産振興課

ジベレリン協和液剤 ( 第 6006 号 ) 2/ 年 6 月 13 日付け 25 不知火 はるみ 3 回以内 水腐れ軽減 0.5 ~1ppm 500L/10a 着色終期但し 収穫 7 日前まで 果実 ぽんかん 水腐れ軽減 0.5ppm 500L/10a 着色始期 ~4 分

Microsoft Word - H28年産_麦栽培技術指針(最終・修正版)

Taro-H27.4月の技術対策

白 ネ ギ

Microsoft Word 予報第9号

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目 的 大豆は他作物と比較して カドミウムを吸収しやすい作物であることから 米のカドミウム濃度が相対的に高いと判断される地域では 大豆のカドミウム濃度も高くなることが予想されます 現在 大豆中のカドミウムに関する食品衛生法の規格基準は設定されていませんが 食品を経由したカドミウムの摂取量を可能な限り

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水稲の反射シート平置き出芽 & プール育苗 福島県須賀川市 藤田忠内さん 出芽は平置きした苗箱に反射シートをかけるだけ, 育苗管理はプールに水を張るだけ, 換気も灌水の心配もいらない マット形成, 揃いがよく, 茎が太くて葉幅も広く, 病気の出ない, 根張り抜群の健苗を育成 写真はすべて依田賢吾撮影

委託試験成績 ( 平成 29 年度 ) 担当機関名部 室名 実施期間 大課題名 課題名 目的 群馬県畜産試験場飼料環境係 平成 29 年度 ~ 平成 30 年度 新規 Ⅲ 水田を活用した資源作物の効率的生産 供給技術の確立 汎用コンバインを利用した子実用トウモロコシとオオムギ二毛作体系における自給濃

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第 41 巻 13 号 大分県農業気象速報令和元年 5 月上旬 大分県大分地方気象台令和元年 5 月 1 3 日

AI IoTを活用したスマート農業の加速化 人手不足への対応や生産性の向上を進めるためには ICTを活用したスマート農業の推進が重要 今後人工知能やIoT等の先進技術により 生産現場のみならずサプライチェーン全体にイノ ベーションを起こし 生産性向上や新たな価値創出を推進 1

**************************************** 2017 年 4 月 29 日 日本植物病理学会殺菌剤耐性菌研究会 耐性菌対策のための DMI 剤使用ガイドライン 一般的な耐性菌対策 1. 薬剤防除だけに頼るのではなく 圃場や施設内を発病しにくい環境条件にする 1)

2 子牛放牧 (1) 放牧子牛は 舎飼子牛に比べて運動量が多いため 肢蹄が鍛えられ 丈夫で健康に 育つ (2) 畜産研究所の試験結果によると 100 日程度放牧した子牛は その後の増体に優れ 肥育終了時には舎飼牛と差のない成績が得られている このため 子牛の積極的な放 牧に努める (3) 草丈 20

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はだか麦の早播栽培における播種量と基肥窒素量が生育と収量 品質に与える影響 質を調査した. また木村ら (2004), 下田ら (2006) は, 早播きでは千粒重が小さくなり粒も硬くなるなどの品質低下の実態を確認しているが, その原因究明には至っていない. そこで今回は品質低下要因についても併せて


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平成 27 年産麦類技術情報 総括号平成 27 年 9 月 10 日宮城県美里農業改良普及センター TEL 0229-32-3115 FAX 0229-32-2225 URL http://www.pref.miyagi.jp/site/misato-index/ 1 気象経過 (10 月上旬 ~7 月中旬 : アメダス鹿島台 ) * 気温 :12 月上旬 ~1 月上旬は 最高気温が平年より 2 最低気温が 0.5 低くなりました 1 月中旬以降は 概ね平年を上回りました * 降水量 :10 月上旬 ~ 中旬は 平年を上回りました 11 月下旬 ~12 月下旬 1 月下旬も平年を上回り 3 月上旬には平年を大きく上回りました 一方 3 月下旬以降は平年を下回ることが多くなり 3 月下旬 5 月下旬の降水量は 0mm でした 6 月 ~ 7 月も平年を下回って推移しました * 日照時間 : 越冬前は概ね平 年を下回り 越冬後は概ね平年 を上回りました 2 生育調査ほ生育概況 生育ステージ 表 2 生育調査ほ場における各生育ステージ 図 1 管内の気象経過 地区名地点品種 播種日 幼穂形成始期減数分裂期出穂期成熟期 本年値平年差本年値平年差本年値平年差本年値平年差本年値平年差 大崎市鹿島台大迫シラネコムギ 10 月 29 日 -8 3 月 23 日 -12 4 月 27 日 -10 5 月 4 日 -13 6 月 23 日 -6 美里町南郷二郷シラネコムギ 10 月 30 日 0 3 月 23 日 -11 4 月 30 日 -7 5 月 6 日 -11 6 月 25 日 -4 美里町南郷二郷ゆきちから 10 月 30 日 0 3 月 30 日 -5 4 月 30 日 -6 5 月 8 日 -9 6 月 23 日 -6 涌谷町 猪岡短台 注 1 平年値は H21~26 の平均値である ゆきちから 11 月 9 日 4 3 月 28 日 -9 4 月 30 日 -6 5 月 9 日 -7 6 月 26 日 -3 注 2 平年差におけるマイナスの値は 平年より早いことを示す

涌谷ほ場では 10 月の降雨でほ場のわら上げが進まず 播種が遅くなりました 越冬後 平年を上回る気温で推移したため 播種が遅れた涌谷ほ場でも生育が早く進みました 生育経過 図 2 生育調査結果 ( 草丈 茎数 ) * 草丈 :12 月時点では平年を下回ったが 越冬後は平年を上回りました * 茎数 : 越冬後は平年を上回るほ場が多くなりました 南郷のゆきちからほ場では 越冬後も平年を下回って推移しましたが 白鳥による食害が原因のひとつとみられます 成熟期調査結果 表 3 成熟期調査結果 地区名地点品種 稈長 ( cm ) 穂長 (cm) 穂数 ( 本 / m2 ) 千粒重 (g) 坪刈り収量 (kg) 本年値平年差本年値平年差本年値平年比本年値平年比本年値平年比 大崎市鹿島台大迫シラネコムギ 74-2.8 8.0 0.4 338 62% 40 103% 646 134% 美里町南郷二郷シラネコムギ 81 0.5 7.8 0.2 598 112% 38 97% 701 121% 美里町南郷二郷ゆきちから 80-5.5 8.2-0.5 428 83% 37 94% 619 124% 涌谷町 猪岡短台 ゆきちから 74-9.5 8.9 0.1 326 73% 41 104% 460 88% 注 1 平年値はH21~26の平均値である 注 2 坪刈り収量 :H21は2.2mm, それ以降は2.0mmで篩ったものである 稈長は平年より短く 穂長はやや長い傾向 穂数は平年より少なくなりました 収量は平年を上回りました 播種遅れにより 穂数を確保できなかったほ場では 平年を下回りました

2 作柄解析 < 美里管内 > 管内生育調査ほ場では 越冬後の平年を上回る気温により 生育が早まり 草丈 茎数ともに概ね平年を上回って推移しました しかし 減数分裂期 ( 今年度は 4 月末頃 ~) 以降に降水量がほとんどなく 減数分裂期追肥の効果が十分に得られなかった可能性があります また 6 月に入ると 穂が退色したり 草丈の伸長が抑制される症状が管内の一部ほ場でみられ 過乾燥が原因と考えられます < 宮城県作況試験ほ場 > 本年の作柄の特徴 : 成熟期が平年に比べて早く 整粒数が少なくなったもの 千粒重と容積重が平年を上回り 収量は平年並み 播種後は適度な降雨がみられ 出芽は概ね良好でした 12 月上旬 ~1 月上旬は低温傾向で経過したため 生育量は平年を下回りましたが 1 月中旬以降は高温傾向で経過し 越冬後の生育量は平年を上回りました また 生育ステージも平年より早く進みました 各生育ステージは 減数分裂期で -8 日 出穂期でー 10 日となりました 登熟期間も概ね高温傾向で推移したため 成熟期は -9~11 日となりました 特に 4 月第 6 半旬 ~5 月第 2 半旬はほとんど降雨がなく 追肥の効果は判然としませんでした 成熟期の稈長は同程度 ~ やや短い 穂長は平年並み 穂数は平年並み 整粒数は平年を下回り 千粒重は平年を上回り 子実重は平年並みでした 出穂期以降は降雨が少なく 赤かび病は観察されませんでした 外観品質は平年並みとなりました ゆきちから : 部分的に白く退色 ゆきちから : 白く退色した部分がへこんでいる ( 草丈が短い ) 図 3 過乾燥によるものとみられる症状 ( 平成 27 年 6 月 2 日撮影 )

1 適正な播種作業 播種は適期内に行いましょう年内生育確保が収量につながるポイントです 北部平坦の適期は 10 月 5~10 日頃, 晩限は 10 月 20 日頃です 砕土は土壌条件を考慮して行いましょう発芽率向上や除草剤の効果を高めるために, 砕土は十分に行います 2cm 以下の土塊が 70% 以上が 砕土の目安です ただし, 強粘土壌では砕土率を高くしすぎると, 反対に土が固くなり出芽に影響することもあるので, 注意が必要です 播種深は 3cm 程度が適切です深いと出芽に時間がかかるとともに 分げつの発生が抑制されます 播種量の目安ドリルシーダ - でm2当たり 250 粒 ( 播種量 9~10kg) を播種する場合, 条間 30cm で 75 粒 /m 25cm では 50 粒 /m となります 千粒重が軽い年は 播種量を多くすると粒数が多くなりすぎるということが発生します 表 4 を参考に播種量を調整して下さい ドリル播きの場合の播種量シラネコムギ :9~10kg ゆきちから :10~11kg 表 4 小麦播種量の目安 シラネコムギゆきちから 播種量 (kg) 千粒重 (g) 250 粒 / m2 200 粒 / m2 42 10.5 8.4 40 10.0 8.0 38 9.5 7.6 35 8.8 7.0 播種時の注意点 (1) 播種量の目安 は 10 月 20 日頃までに播種した場合の目安です播種がこれ以降になると年内生育を確保しにくくなりますので, 播種量を増やして対応してください ただし量を増やしすぎると穂数過剰に繋がり, 千粒重低下や整粒歩合の低下に繋がるので注意して下さい (2) 播種後の降雨による出芽不良事例が見受けられます降雨前に無理をして播種することを避けましょう 降雨後に播種量を多くする方が, 安定した出芽が期待できるようです 2 雑草対策 < 除草対策のイメージ >

(1) 土壌処理剤土壌が乾燥していると 薬剤の効果が劣ります このような場合は表面に十分に薬剤がかかるよう, 登録されている範囲で希釈水量を多めにします また 小雨程度の降雨後 ほ場が湿った状態で散布する方法も効果的です ゴーゴーサン乳剤 ボクサーは小麦出芽後にも散布が可能です ただしゴーゴーサンはキク科雑草とツユクサに ボクサーはイタリアンライグラスには若干効果が劣りますので 発生草種を把握した上で使用するのが望ましいです 除草剤の効果を十分に発揮するためには 砕土率も重要ですので 丁寧な作業を心がけて下さい 表 5 麦類に登録のある主な土壌処理剤 ( 除草剤 ) 剤名 使用時期 使用方法 希釈倍数 使用量 散布液量 本剤使用回数 備考 砂質土壌を除く全土壌 水田裏 ガレース乳剤 作で使用する場合は過湿状態で播種後出芽前 200~250ml 全面土壌散布 100L の使用は避ける ( 雑草発生前 ) 秋まきでは土壌残効が長いの で 年内に散布を終える 適用土壌は砂壌土 ~ 埴土 コワーク乳剤 1 年生のイネ科から広葉雑草ま播種後発芽前 700~900ml 100~150L 全面土壌散布 で 幅広い草種に効果を発揮す ( 雑草発生前 ) る ゴーゴーサン乳剤 30 播種後 ( 雑草発生前 )~ 小麦雑草茎葉散布 300~500ml 70~100L 2 葉期 ( イネ科雑草 1 葉期まで ) 全面土壌散布 土壌が極端に乾燥している場合は効果が劣る キク科雑草とツユクサには効果が劣る ロロックス ( リニュロン水和剤 ) 播種後 ~ 発芽前 100~200g 70~150L ( 雑草発生前 ~ 発生始期 ) 全面土壌散布 砂土での使用は避ける イネ科雑草が優占しているところでは 他剤との併用または体系処理が望ましい 適用土壌は砂土を除く全土壌 ムギレンジャー乳剤 播種後出芽前 400~600ml 全面土壌散布 ( 雑草発生前 ) 50~100L ノミノフスマにやや効果が劣る ボクサー 播種後 ~ 麦 4 葉期まで ( 雑草発生前 ~ 雑草発生始期 ) 雑草茎葉散布全面土壌散布 400~500ml 70~100L 2 回 播種後出芽前 300~400ml 100L シナジオ乳剤全面土壌散布 ( 雑草発生前 ) 適用土壌は砂土を除く全土壌 適用雑草はツユクサ カヤツリグサ キク科雑草を除く 備考欄は平成 27 年度宮城県農作物病害虫 雑草防除指針より抜粋 (2) 茎葉処理剤 発生状況を見て早めの散布を 融雪後 ~3 月までが散布の目安となる薬剤ハーモニー剤は土壌処理効果もあります 薬剤使用量には幅がありますが 登録されている数量内で多めの薬量を使用した方が効果が高いようです 幼穂形成期以降 雑草は急激に大きくなりますので 雑草が小さいうちに対策を行いましょう 表 6 麦類に登録のある茎葉散布除草剤剤名使用時期使用方法希釈倍数 使用量散布液量本剤使用回数備考 ハーモニー 75DF 水和剤 播種後 ~ 節間伸長前 ( 但しスズメノテッポウ 5 葉期まで ) 雑草茎葉散布 ( 又は全面土壌散布 ) 5~10g 100L 散布後に降雨が予想されるときには散布を避ける 適用土壌は砂土を除く全土壌 エコパートフロアブル 節間伸長開始期まで ( 広葉雑草 2~4 葉期 ヤエムグラ 2~6 節期まで ) 但し 収穫 45 日前まで 雑草茎葉散布 50~100ml 但し小麦 4 葉期以降 止葉抽出期までは 50~75ml 100L 2 回以内 - MCP ソーダ塩 幼穂形成期 ( 但し収穫 45 日前まで ) 70~100L 雑草茎葉散布 200~300g 以内 - 備考欄は平成 27 年度宮城県農作物病害虫 雑草防除指針より抜粋

3 月 ~5 月が散布の目安となる薬剤出穂時期や雑草の生育状態を考えると, 小麦では穂ばらみ期 (5 月上旬位 ) までが除草剤を使用できる限界といえます 表 7 麦類に登録のある茎葉散布除草剤 ( その2) 剤名使用時期使用方法希釈倍数 使用量散布液量本剤使用回数備考 アクチノール乳剤 穂ばらみ期まで ( 雑草生育初期 ) 雑草茎葉散布 100~200ml 70~100L イネ科雑草及びコニシキソウには効果が劣る 2 回以内 広葉雑草は雑草発生揃期 ~6 葉期に散布する 但しヤエムク ラは 4 節期までに散布する バサグラン液剤 小麦の生育期 ( 雑草の 3~6 葉期 ) 但し収穫 45 日前まで 雑草茎葉散布 100~200ml 70~100L - 備考欄は平成 27 年度宮城県農作物病害虫 雑草防除指針より抜粋 使用前には最新の登録内容を確認して下さい 3 適切な施肥 麦は肥料で取る と言われ, 多量の窒素栄養を必要とします また, 追肥はその時期によって期待する効果が異なりますので, 時期を逃さないよう施用します なお, シラネコムギ ゆきちから両品種ともに 減数分裂期に穂揃期分の追肥 ( 窒素量 ) も合わせて行い,3 回目を省略することが可能です 表 8 小麦標準施肥体系 施用時期 10 月上 ~ 中旬 2 月上 ~ 中旬 3 月中 ~4 月上旬 4 月中 ~ 下旬 5 月上 ~ 中旬 基肥株直し追肥幼穂形成期追肥減数分裂期追肥穂揃い期追肥 栽培品種 シラネコムギ ゆきちから 肥料形態 目的 : 葉色の維持 目的 : 穂数増加 目的 : 一穂粒数を多くする 目的 : 千粒重, タンパク含量を高める < 幼穂形成前 > < 幼穂長 1mm~> < 幼穂長 3~5cm> <80~90% が出穂 > 窒素成分量 7~9kg 基本的に行わない 2.5kg 5kg 2.5kg 硫安 ( 現物量 ) 40~50kg 12kg 24kg 12kg 窒素成分量 8~10kg 基本的に行わない 2.5kg 5kg 5kg 硫安 ( 現物量 ) 50~60kg10a 12kg 24kg 24kg 尿素燐加安 777 号の場合