Microsoft Word - M 平成30年度診療報酬改定の基本方針

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問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

( 参考 ) 平成 29 年度予算編成にあたっての財務大臣 厚生労働大臣の合意事項 ( 平成 29 年 12 月 19 日大臣折衝事項の別紙 ) < 医療制度改革 > 別紙 (1) 高額療養費制度の見直し 1 現役並み所得者 - 外来上限特例の上限額を 44,400 円から 57,600 円に引き上

介護保険制度改正の全体図 2 総合事業のあり方の検討における基本的な考え方本市における総合事業のあり方を検討するに当たりましては 現在 予防給付として介護保険サービスを受けている対象者の状況や 本市におけるボランティア NPO 等の社会資源の状況などを踏まえるとともに 以下の事項に留意しながら検討を

2 保険者協議会からの意見 ( 医療法第 30 条の 4 第 14 項の規定に基づく意見聴取 ) (1) 照会日平成 28 年 3 月 3 日 ( 同日開催の保険者協議会において説明も実施 ) (2) 期限平成 28 年 3 月 30 日 (3) 意見数 25 件 ( 総論 3 件 各論 22 件


中医協総 平成 30 年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理 ( 案 ) 留意事項 この資料は 平成 30 年度診療報酬改定に向けて これまでの議論の整理を行ったものであり 今後の中央社会保険医療協議会における議論により 必要な変更が加えられることとなる なお 項

下の図は 平成 25 年 8 月 28 日の社会保障審議会介護保険部会資料であるが 平成 27 年度以降 在宅医療連携拠点事業は 介護保険法の中での恒久的な制度として位置づけられる計画である 在宅医療 介護の連携推進についてのイメージでは 介護の中心的機関である地域包括支援センターと医療サイドから医

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2025 年に向けた医療制度 介護制度の改革 医療制度 介護制度は 人生 100 年時代の国民生活を支える重要な基盤 一方 我が国は 75 歳以上人口の急増 生産年齢人口の減少など 制度を取り巻く構造的な変化に直面 将来にわたる国民生活の安心を確保するため こうした課題に正面から取り組む必要 団塊の

2 基本理念と基本目標 本市のまちづくりの指針である 第 2 次柳井市総合計画 は 平成 29 年 3 月に策定 されました この総合計画では すべての市民が健康で安心して暮らせる 人にやさ しいまちづくり を健康 福祉分野の基本目標に掲げ その実現を目指しています これは 高齢者も含めた全ての市民

高齢化率が上昇する中 認定看護師は患者への直接的な看護だけでなく看護職への指導 看護体制づくりなどのさまざまな場面におけるキーパーソンとして 今後もさらなる活躍が期待されます 高齢者の生活を支える主な分野と所属状況は 以下の通りです 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 脳卒中発症直後から 患者の

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平成 30 年度診療報酬改定に向けた検討について H29/1/16WG 厚労省提出資料 平成 30 年度診療報酬改定に向けた検討の方向性 平成 30 年度診療報酬改定に向けて 以下の遠隔医療形態モデルも参考に 委員からご指摘のあった初診に関する取扱いも含め 対面診療に比べて患者に対する医療サービスの

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京都府がん対策推進条例をここに公布する 平成 23 年 3 月 18 日 京都府知事山田啓二 京都府条例第 7 号 京都府がん対策推進条例 目次 第 1 章 総則 ( 第 1 条 - 第 6 条 ) 第 2 章 がん対策に関する施策 ( 第 7 条 - 第 15 条 ) 第 3 章 がん対策の推進

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リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

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2 経口移行加算の充実 経口移行加算については 経管栄養により食事を摂取している入所者の摂食 嚥 下機能を踏まえた経口移行支援を充実させる 経口移行加算 (1 日につき ) 28 単位 (1 日につき ) 28 単位 算定要件等 ( 変更点のみ ) 経口移行計画に従い 医師の指示を受けた管理栄養士又

つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

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制度 後期高齢者医療制度とは 3 資格 被保険者 4 被保険者証 保険証 5 保険料の算定 6 保険料の納付方法 7 保険料の軽減と納付相談 8 お医者さんにかかるときの自己負担割合 10 療養費 12 接骨院 整骨院 柔道整復 のかかり方 13 訪問看護療養費 移送費 13 高額療養費 14 特定

山梨県地域医療再生計画 ( 峡南医療圏 : 救急 在宅医療に重点化 ) 現状 社保鰍沢病院 (158 床 ) 常勤医 9 名 実施後 社保鰍沢病院 峡南病院 (40 床 ) 3 名 市川三郷町立病院 (100 床 ) 7 名 峡南病院 救急の重点化 県下で最も過疎 高齢化が進行 飯富病院 (87 床

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

2. 各検討課題に関する論点 (1) 費用対効果評価の活用方法 費用対効果評価の活用方法について これまでの保険給付の考え方等の観点も含め どう考 えるか (2) 対象品目の選定基準 1 費用対効果評価の対象とする品目の範囲 選択基準 医療保険財政への影響度等の観点から 対象となる品目の要件をどう設

高齢者を取り巻く状況 将来人口 本市の総人口は 今後も減少傾向で推移し 平成32年 2020年 には41,191人程度にまで減少し 高齢 者人口については 平成31年 2019年 をピークに減少に転じ 平成32年 2020年 には15,554人程度 になるものと見込まれます 人 第6期 第7期 第8

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4 月 17 日 4 医療制度 2( 医療計画 ) GIO: 医療計画 地域連携 へき地医療について理解する SBO: 1. 医療計画について説明できる 2. 医療圏と基準病床数について説明できる 3. 在宅医療と地域連携について説明できる 4. 救急医療体制について説明できる 5. へき地医療につ

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チェック式自己評価組織マネジメント分析シート カテゴリー 1 リーダーシップと意思決定 サブカテゴリー 1 事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている 事業所が目指していること ( 理念 ビジョン 基本方針など ) を明示している 事業所が目指していること ( 理念 基本方針

厚生労働省における医療 ICT 化の取り組み 日本の医療が抱える課題 医療需要 財政負担の増加高齢化の進行 疾病構造の変化医療改革の方向性 健康の維持増進 疾病の予防及び早期発見の促進 医療機能の分化 連携の推進 地域包括ケアシステムの構築 解決ツールとしての医療 ICT 化 健康づくり ビッグデー

7 対 1 10 対 1 入院基本料の対応について 2(ⅲ) 7 対 1 10 対 1 入院基本料の課題 将来の入院医療ニーズは 人口構造の変化に伴う疾病構成の変化等により より高い医療資源の投入が必要となる医療ニーズは横ばいから減少 中程度の医療資源の投入が必要となる医療ニーズは増加から横ばいにな

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入院時生活療養費の見直し内容について(厚生労働省保険局保険課:H29.4.7)

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医療費適正化計画の概要について 国民の高齢期における適切な医療の確保を図る観点から 医療費適正化を総合的かつ計画的に推進するため 国 都道府県は 医療費適正化計画を定めている 根拠法 : 高齢者の医療の確保に関する法律作成主体 : 国 都道府県計画期間 :5 年 ( 第 1 期 : 平成 20~24

第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

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< 現行 > 対象者医療区分 Ⅰ(Ⅱ Ⅲ 以外の者 ) 1 * 医療の必要性の低い者医療区分 Ⅱ Ⅲ 1 2 * 医療の必要性の高い者 ( 指定難病患者を除く ) 3 指定難病患者 2 生活療養標準負担額のうちにかかる部分 1 日につき32 1 日につき 1 日につき < 見直し後 > 対象者医療区

Transcription:

平成 30 年度診療報酬改定の基本方針 平成 29 年 12 月 11 日 社会保障審議会医療保険部会 社会保障審議会医療部会 1. 改定に当たっての基本認識 ( 人生 100 年時代を見据えた社会の実現 ) 我が国は 国民皆保険や優れた保健 医療システムの成果により 世界最高水準の平均寿命を達成し 超高齢社会が到来している 100 歳以上人口も6 万人を超えており こうした状況を踏まえて 人生 100 年時代を見据えた社会の実現が求められている 今後 2025 年にはいわゆる団塊の世代が全て 75 歳以上の高齢者となり 2040 年にはいわゆる団塊ジュニア世代が 65 歳以上の高齢者となる等 人口の高齢化が急速に進展する中で 活力ある社会を実現することが必要である そのためにも 国民一人一人の予防 健康づくりに関する意識を涵養し 健康寿命の延伸により長寿を実現するとともに 世界に冠たる国民皆保険の持続可能性を確保しながら あらゆる世代の国民一人一人が状態に応じた安心 安全で質が高く効果的 効率的な医療を受けられるようにすることが必要である あわせて 我が国の医療制度は 人口減少の中での地域医療の確保 少子化への対応といった様々な課題に直面しており さらには 災害時の対応や自殺対策など 個々の政策課題への対応も求められている こうした多面的な課題にも総合的に対応する必要がある ( どこに住んでいても適切な医療 介護を安心して受けられる社会の実現 ( 地域包括ケアシステムの構築 )) 地域の実情に応じて 可能な限り住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 地域包括ケアシステムを構築し 今後の医療ニーズや技術革新を踏まえた 国民一人一人の状態に応じた安心 安全で質が高く効果的 効率的な医療を受けられるようにすることが重要である 特に 平成 30 年度の改定は 6 年に一度の診療報酬と介護報酬の同時改定であり 団塊の世代が全て 75 歳以上の高齢者となる 2025 年に向けた道筋を示す実質的に最後の同時改定となるため 医療 介護両制度にとって重要な 1

節目となる 今回の改定では 医療機能の分化 強化 連携や 医療と介護 の役割分担と切れ目のない連携を着実に進めることが重要である ( 制度の安定性 持続可能性の確保と医療 介護現場の新たな働き方の推進 ) 今後 人口減少 少子高齢化が進む中で 制度の安定性 持続可能性を確保しつつ国民皆保険を堅持するためには 消費税率の引上げにより得られた財源も活用しつつ 国民皆保険を支える国民各層の給付 負担の両面にわたる制度の理解を深めることが不可欠である そのためにも 経済財政運営と改革の基本方針 2017 や 未来投資戦略 2017 等を踏まえつつ 保険料などの国民負担 物価 賃金の動向 医療機関の収入や経営状況 保険財政や国の財政に係る状況等を踏まえるとともに 無駄の排除 医療資源の効率的な配分 医療分野におけるイノベーションの評価等を通じた経済成長への貢献を図ることが必要である また 今後の医療ニーズの変化や生産年齢人口の減少 医療技術の進歩等も踏まえ 制度を支える医療現場の人材確保や働き方改革の推進が重要である 我が国の医療制度が直面する様々な課題に対応するためには 診療報酬のみならず 医療法 医療保険各法等の制度的枠組みや 補助金等の予算措置など 総合的な政策の構築が不可欠である 2. 改定の基本的視点と具体的方向性 (1) 地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化 強化 連携の推進 重点課題 ( 基本的視点 ) 患者の状態等に応じて質の高い医療が適切に受けられるとともに 必要に応じて介護サービスと連携 協働する等 切れ目のない医療 介護提供体制が確保されることが重要である このためには 医療機能の分化 強化 連携を進め 効果的 効率的で質の高い医療提供体制を構築するとともに 地域包括ケアシステムを構築していくことが必要である ( 具体的方向性の例 ) 地域包括ケアシステム構築のための取組の強化 2

医療機関間の連携 ( 病病連携 病診連携 診診連携 ) 周術期口腔管理等の医科歯科連携 服用薬管理等の病診薬連携 栄養指導や 介護 障害保健福祉 母子保健 児童福祉等との連携など 地域包括ケアシステムを構築し 患者 利用者の状態に応じて真に必要なサービスを適時適切に提供するため 地域の関係者間の多職種連携の取組等を推進 患者が救急時の対応を含めて安心 納得して入退院し 住み慣れた地域での療養や生活を継続できるようにするための取組を推進 介護施設入所者等に対する適切な医療提供や口腔管理 医療 介護間の切れ目のない継続的なリハビリテーションの提供など 適切な役割分担に基づく医療 介護サービスの提供を推進 かかりつけ医 かかりつけ歯科医 かかりつけ薬剤師 薬局の機能の評価 複数の慢性疾患を有する患者に対し 療養上の指導 服薬管理 健康管理等の対応を継続的に実施するなど 個別の疾患だけでなく 患者の療養環境や希望に応じた診療が行われるよう かかりつけ医の機能を評価 歯科医療機関を受診する患者像が多様化する中 地域の関係者との連携体制を確保しつつ 口腔疾患の重症化予防や口腔機能の維持 向上のため 継続的な口腔管理 指導が行われるよう かかりつけ歯科医の機能を評価 患者に対する薬物療法の有効性 安全性を確保するため 服薬情報の一元的 継続的な把握とそれに基づく薬学的管理 指導が行われるよう かかりつけ薬剤師 薬局の評価を推進 その際 薬剤調製などの対物業務に係る評価や いわゆる門前薬局 同一敷地内薬局の評価を適正化 医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価 人口構造や疾病構造の変化に伴い 入院医療ニーズも多様化する中 地域において必要な入院医療が効果的 効率的に提供されるよう 医療機能や患者の状態に応じた評価を行い 医療機能の分化 強化 連携を推進 外来医療の機能分化 重症化予防の取組の推進 大病院受診時定額負担の見直しを含め 大病院と中小病院 診療所の機能分化を推進 生活習慣病の増加等に対応できるよう 情報通信技術 (ICT) の有効活用や かかりつけ医と専門医療機関等との連携 医療機関と保険者 地方公共団体等との連携等を含め 質の高い医学管理や 効果的 効率的な重症化予防の取組を評価するなど 疾患の進展の阻止や合併症の予防 早期治療の取組を推進 3

質の高い在宅医療 訪問看護の確保 多様化しながら増大する在宅医療ニーズに対応できるよう 地域の状況 患者の状態 医療内容 住まい 住まい方等に応じた 効果的 効率的で質の高い訪問診療 訪問看護 歯科訪問診療及び訪問薬剤管理等を評価 国民の希望に応じた看取りの推進 住み慣れた自宅や介護施設など 国民が望む場所において看取りを行うことができるよう 人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン の普及を含め 患者本人の意思を尊重したサービスの提供のための取組を推進 (2) 新しいニーズにも対応でき 安心 安全で納得できる質の高い医療の実 現 充実 ( 基本的視点 ) 国民の安心 安全を確保する観点から 今後の医療技術の進展や疾病構造の変化等を踏まえ 第三者による評価やアウトカム評価など客観的な評価を進めながら 適切な情報に基づき患者自身が納得して主体的に医療を選択できるようにし また 新たなニーズにも対応できる医療を実現するとともに 我が国の医療の中で重点的な対応が求められる分野を時々の診療報酬改定において適切に評価していくことが重要である ( 具体的方向性の例 ) 重点的な対応が求められる医療分野の充実 緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価 認知症の者に対する適切な医療の評価 地域移行 地域生活支援の充実を含む質の高い精神医療の評価 難病患者に対する適切な医療の評価 小児医療 周産期医療 救急医療の充実 口腔疾患の重症化予防 口腔機能低下への対応 生活の質に配慮した歯科医療の推進 医薬品 医療機器 検査等におけるイノベーションを含む先進的な医療技術の適切な評価 ICT 等の将来の医療を担う新たな技術の着実な導入 データの収集 利 4

活用の推進 最新の技術革新を取り込むことにより 医療の質を向上させるため 遠隔診療の適切な活用や 医療連携を含めたICT 等の有効活用を進めるとともに データを収集 利活用し 実態やエビデンスに基づく評価を推進 アウトカムに着目した評価の推進 質の高いリハビリテーションの評価をはじめとして アウトカムに着目 した評価を推進 (3) 医療従事者の負担軽減 働き方改革の推進 ( 基本的視点 ) 医療従事者の厳しい勤務環境が指摘されている中 医療の安全の確保や地域医療の確保にも留意しつつ 医療従事者の負担の軽減を図り あわせて 各々の専門性を発揮でき 柔軟な働き方ができるよう 環境の整備 働き方改革を推進することが必要である ( 具体的方向性の例 ) チーム医療等の推進 ( 業務の共同化 移管等 ) 等の勤務環境の改善 専門職の柔軟な配置や 業務の共同化 移管等を含む多職種によるチーム医療の推進等 勤務環境を改善 業務の効率化 合理化 保険医療機関や審査支払機関の業務を効率化 合理化し 負担を軽減す る観点から 診療報酬に関する届出 報告等を簡略化 ICT 等の将来の医療を担う新たな技術の着実な導入 最新の技術革新を取り込むことにより 医療の質を向上させるため 遠隔診療の適切な活用や 医療連携を含めたICT 等の有効活用を推進 ( 再掲 ) 地域包括ケアシステム構築のための多職種連携による取組の強化 医療機関間の連携 周術期口腔管理等の医科歯科連携 服用薬管理等の病診薬連携 栄養指導 医療 介護連携など 地域包括ケアシステムを構築し 患者 利用者の状態に応じて真に必要なサービスを適時適切に提供するため 医療 介護関係者間の多職種連携の取組等を推進 ( 再掲 ) 5

患者が安心 納得して入退院し 住み慣れた地域での療養や生活を継続 できるようにするための取組を推進 ( 再掲 ) 外来医療の機能分化 大病院受診時定額負担の見直しを含め 大病院と中小病院 診療所の機 能分化を推進 ( 再掲 ) (4) 効率化 適正化を通じた制度の安定性 持続可能性の向上 ( 基本的視点 ) 国民皆保険を維持するためには 制度の安定性 持続可能性を高める不断の取組が求められ 医療関係者が共同して 医療サービスの維持 向上と同時に 医療の効率化 適正化を図ることが必要である ( 具体的方向性の例 ) 薬価制度の抜本改革の推進 薬価制度の抜本改革に向けた基本方針 を踏まえ 国民皆保険の持続性 と イノベーションの推進 を両立し 国民負担の軽減 と 医療の質の向上 を実現できるよう 薬価制度の抜本改革を推進 後発医薬品の使用促進 後発医薬品の使用について 経済財政運営と改革の基本方針 2017 で掲げられた新たな目標 ( 平成 32 年 9 月までに後発医薬品の使用割合を 80% とし できる限り早期に達成 ) を実現するための取組を推進 医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価 人口構造や疾病構造の変化に伴い 入院医療ニーズも多様化する中 地域において必要な入院医療が効果的 効率的に提供されるよう 医療機能や患者の状態に応じた評価を行い 医療機能の分化 強化 連携を推進 ( 再掲 ) 外来医療の機能分化 重症化予防の取組の推進 大病院受診時定額負担の見直しを含め 大病院と中小病院 診療所の機能分化を推進 ( 再掲 ) 生活習慣病の増加等に対応できるよう ICTの有効活用等を含め 質の高い医学管理や 効果的 効率的な重症化予防の取組を評価するなど 6

疾患の進展の阻止や合併症の予防 早期治療の取組を推進 ( 再掲 ) 費用対効果の評価 試行的導入の対象となっている医薬品 医療機器について 試行的な費用対効果評価の結果を踏まえた価格を設定するとともに 費用対効果評価の本格導入に向けた取組を推進 医薬品の適正使用の推進 医師 薬剤師の協力による取組を進め 長期投薬等による残薬 不適切 な重複投薬や多剤投薬等の削減を推進 効率性等に応じた薬局の評価の推進 服薬情報の一元的 継続的な把握等の本来的役割が期待される中 薬局の収益状況 医薬品の備蓄等の効率性も踏まえ いわゆる門前薬局 同一敷地内薬局の評価の適正化を推進 医薬品 医療機器 検査等の適正な評価 医薬品 医療機器 検査等について 市場実勢価格を踏まえた適正な評価を行うとともに 相対的に治療効果が低くなった技術については置き換えが進むよう 適正な評価について検討 3. 将来を見据えた課題 団塊の世代が全て 75 歳以上の高齢者となる 2025 年 団塊ジュニア世代が 65 歳以上の高齢者となる 2040 年と 今後急速に高齢化が進展することに伴う 医療ニーズの変化や生産年齢人口の減少に対し 将来にわたって対応可能な医療提供体制と持続可能な医療保険制度を構築していくことが求められており 診療報酬をはじめとして総合的に取組を実施していくことが不可欠である 地域包括ケアシステムの構築に向けて 基盤整備の状況を踏まえつつ 質 の高い在宅医療 訪問看護の普及や ICT の活用による医療連携や医薬連携 等について 引き続き検討が求められる 患者が安心 納得できる医療を受けられるようにするためには 診療報酬 7

制度を分かりやすくするとともに 受けた医療を分かりやすくする明細書無料発行等の取組を進めることが求められる また それと同時に 国民全体の医療制度に対する理解を促していくことも重要であり 普及啓発も含め 国民に対する丁寧な説明が求められる 予防 健康づくりやセルフケア等の推進が図られるよう 医療関係者 保 険者 地方公共団体 企業など関係主体が一体となって国民に必要な支援を 行うとともに 国はこうした取組に向けた環境整備を行うことが期待される 8