3. 感染症の予防策 (1) 標準予防策の考え方 標準予防策 ( スタンダード プリコーション ) とは CDC( 米国疾病対策セ ンター ) が提唱した病院向け感染予防のガイドラインです 誰もが何らかの感染症をもっている可能性がある と考えて すべての患 者に対して 感染の可能性があるもの への接

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事例を通して考える 感染拡大防止対策

感染対策の基礎知識 1 感染対策の原則 感染成立の 3 要因への対策と 病原体を 1 持ち込まない 2 持ち出さない 3 拡げないが基本です 感染成立の 3 要因と感染対策 感染症は 1 病原体 ( 感染源 )2 感染経路 3 宿主の 3 つの要因が揃うことで感染します 感染対策においては これらの

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はじめに 高齢者施設等で抵抗力が低い利用者をケアするには 介護スタッフの感染予防が必要です 施設は重度の利用者が中心になり さまざまな基礎疾患を抱えているため 感染しやすい状態の方が急増しています 介護スタッフが感染源にならないための予防策と 介護スタッフ自身の安全なケアの方法が重要となってきます

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標準予防策

2019 年 7 月 4 日 ( 木 ) 愛知県保健医療局健康医務部健康対策課感染症グループ担当内田 久野内線 ダイヤルイン 手足口病警報を発令します!! 愛知県では 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 に基づき 県内の小児科を標榜する

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42 HBs 抗原陽性で HBe 抗原陰性の変異株が感染を起こした場合は, 劇症肝炎を起こしやすいので,HBs 抗原陽性 HBe 抗原陰性血に対しても注意が必要である. なお, 透析患者では, 感染発症時にも比較的 AST(GOT),ALT(GPT) 値が低値をとること,HCV 抗体が出現しにくいこ

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6. 具体的対応 施設において感染の発生が疑われる場合 感染の予防や拡大を防ぐ対応が必要です (1) 排泄介助のポイント 感染症が疑われる場合は 排泄係を決め 給食係を可能な限り兼任しないようにすることがすすめられます 必要物品 使い捨てエプロン 使い捨てマスク 使い捨て手袋 ビニール袋 ( 大 小

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水いぼ ( 伝染性軟属腫 ) ウイルスによる感染症で, 主に 7 歳以下の乳幼児がかかります いぼの中身はウイルスと変質した皮膚からなる白い塊です 掻いてつぶれると広がります 症状潜伏期間は 14~50 日 1~3mm 程度の水っぽい光沢のあるいぼがわきの下, わき腹, 首, 肘などにきますが, か

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るとされている また 人から人への感染は極めて稀であり 家族内での感染が 過去数例報告されている (5) 季節性インフルエンザ季節性インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染して起こる病気で 風邪よりも 比較的急速に悪寒 高熱 筋肉痛 全身倦怠感を発症させるのが特徴である 我が国では例年 12 月

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風邪とインフルエンザの特徴と違い 風邪 インフルエンザ 症状の現れ方 緩やか 急激 発熱 37~38 程度 38 以上発熱急激な発熱 症状の出現部位 局所 ( 鼻や喉など上気道が中心 ) 全身 主な体調変化 くしゃみ 鼻水 鼻づまり 咳 咽頭痛などの呼吸器症状が中心 足腰や関節痛の強い痛み 悪寒など

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医療安全対策 医療安全のため 高血圧と歯科診療上の注意 必要な問診事項について確認を行った 下記についてすぐ対応できるか確認した 1 血圧測定など 2 緊急時の対処 3 必要な薬剤の準備 4 その他 患者さんへの歯科診療上の注意事項 特に外科処置時

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感染拡大攻略法 ~流行前から備えるべし~

汚染された手指は様々な場所に病原体を伝播させる可能性がある 実際に 感染を引き起こす病原体の多くは汚染された医療従事者の手指を介して伝播 手洗い及び手指消毒により手を衛生的に保つことは 最も基本的な感染防止の手段 参考 :WHO. Guidelines on Hand Hygiene in Heal

衛生法規に関する知識 問題 1 クリーニング業法に規定する営業者の衛生措置についての記述のうち 誤ってい るものはどれか 一つ選んでその番号を回答欄に記入しなさい 1 洗たく物の洗たくをするクリーニング所に 業務用の機械として 洗たく機 及び乾燥機をそれぞれ少くとも一台備えなければならない 2 クリ

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4) アウトブレイクに介入している 5) 検査室データが疫学的に集積され, 介入の目安が定められている 4. 抗菌薬適正使用 1) 抗菌薬の適正使用に関する監視 指導を行っている 2) 抗 MRSA 薬の使用に関する監視 指導を行っている 3) 抗菌薬の適正使用に関して病棟のラウンドを定期的に行って

ノロウイルス感染対策マニュアル

(2) 清掃 い a. 日常的 清掃 各 原則 日 回 式清掃 気 空気 入 え 行い乾燥 必要 応 床 消毒 行い う 使用 雑巾 洗浄 乾燥 う 汚 い場合 新 汚 発生 い場合 入 者 職員 接触 多い部 回数 増 見 目 汚 置 い う 汚 発生 い場合 失禁 伴う 痢 入 者咳 喀痰 多い

感染症対策

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1 施設設備の衛生管理 1-1 食品取扱室の清掃及び保守点検 < 認証基準 > 床 内壁 天井 窓 照明器具 換気扇 手洗い設備及び排水溝の清掃手順 保守点検方法が定められていること 床及び排水溝の清掃は1 日に1 回以上 その他の清掃はそれぞれ清掃の頻度の記載があること 保守点検頻度の記載があるこ

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10/3~10/9 今週前週今週前週 インフルエンザ 7 1 百日咳 1 0 RS ウイルス感染症 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 急性出

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Transcription:

3. 感染症の予防策 (1) 標準予防策の考え方 標準予防策 ( スタンダード プリコーション ) とは CDC( 米国疾病対策セ ンター ) が提唱した病院向け感染予防のガイドラインです 誰もが何らかの感染症をもっている可能性がある と考えて すべての患 者に対して 感染の可能性があるもの への接触を最低限にすることで 患者 スタッフ双方の感染の危険性を少なくする方法です 日本の医療機関 福祉施 設の感染症予防対策でも この考え方を取り入れています 保育の現場でも この考え方を取り入れることができます 保育をするうえ でも 誰もが何らかの感染症をもっているかもしれない と考えて 標準予防 策を取り入れましょう スタンダード プリコーション ( 標準予防策 ) とは? 疾病管理予防センター ( 米国 ) が感染対策ガイドライン提唱 すべての患者の血液 体液 分泌液 排泄物 創傷皮膚 粘膜などに は 感染する危険性があるものとして取り扱わなければならない とい う考え方が基本 感染の可能性があるもの として取り扱わなければならないもの 血液 体液 ( 精液 膣分泌液 ) 汗を除く分泌物 ( 鼻水 目やに 痰 唾液 母乳 ) 排泄物 ( 便 嘔吐物 尿 ) 傷や湿疹などがある皮膚 粘膜 ( 口 鼻の中 肛門 陰部 ) ( 例 ) 血液処理 傷の手当てをするときは使い捨て手袋を着用する こぼれた血液は 使い捨て手袋をして 布やペーパータオル等で吸い取る 血液が付着した場所はきれいに拭き 水拭き後にアルコールや次亜塩素酸ナトリウム溶液等で消毒する 9

血液が付着したゴミは 使い捨て手袋をしてビニール袋に入れ 口をよく縛って廃棄する 汚物と同じ扱いで 使い捨て手袋も汚物のゴミ箱に捨てる 血液処理を行った後には手洗いを行う (2) 標準予防策の実際 1 手指衛生 ( 手指消毒 手洗い ) 感染症予防対策の基本です 保育の現場では 子どもや職員の手を介して 病原体が人から人へと感染することが多く見られます 手洗いをして 感染経路を遮断することが大切です なお 正しい手指衛生の方法を実践しなければ意味がありません 手指消毒の方法や手洗いの方法を訓練し いつでも正しい手指衛生ができるようにすることが大切です また 手指衛生は 必要な時に行うことが重要です いつでも どんな時でも手を消毒しなければならないということではありません 手を洗うタイミング ( 例 ) 子ども: 登園時 退園時 遊び ( 外遊び 散歩 製作活動など ) の後 トイレの後 食事の前 職員 : 登園時 退園時 遊び ( 外遊び 散歩 製作活動など ) の後 トイレの後 清潔にすべきもの ( 食べ物 飲み物 ) を扱う前 食事の前子ども等の粘膜に触れる可能性のある場合の前 ( 歯磨き指導 外傷の手当てなど ) 不潔なもの ( 汚染の可能性があるものを含む ) に触れた後 ( 特にオムツ交換後 トイレ介助後 嘔吐物処理後 傷処置後など ) 使い捨て手袋を外した後も行いましょう 2 手袋 マスク エプロン等の適切な使用 手袋 マスク エプロンなど感染を防御するために個人ごとに使用するものを PPE( 個人防護具 :Personal Protective Equipment) といいます PPE の使用で大切なことは どのような時に どこで 何を どのようにつけるかということ またさらに重要なことは どこで どのように外すかがポイントになります 10

汚染の拡大防止と 対応する人への直接的な汚染防止のために使用しますが 汚染がゼロになるわけではなく 最小限に抑えるために使用します 使用後の PPE は汚染されているわけですから その汚染が拡大しないように外す 脱ぐことに注意しなければなりません 3 咳エチケット 1) 咳やくしゃみの症状があるときは マスクを着用すること 2) マスクをしていないときは 必ず人から顔をそむけてすること 3) マスクをしていないときは できる限りティッシュで口と鼻を覆うこと 4) 使用後のティッシュはふたのついたごみ箱等に捨てること 5) その後手指衛生を行うこと ( 手洗い 手指消毒 ) 6) マスクやティッシュがない場合 手で口や鼻を覆わず 腕で覆うこと これらはエチケットとしてスタンダードプリコーション ( 標準予防策 ) の一 部となっています 子どもの時からの習慣づけが必要です 4 日常の清掃 いざ消毒が必要な時にその効果が得られるためにも 日常の清掃を欠かしてはいけません 普段の整理整頓と日常の清掃がなされていないと 消毒しにくいこともありますし 消毒薬の効果が減じる恐れもあります 玩具や遊具 文房具 食器 あるいは衣服やタオル 寝具等その使用前 使用後の清潔管理も必要になります その物の使用方法を考慮して 消毒が必要なもの 洗浄だけで良いものなど分けて考えることが大事です また消毒も材質や構造により 消毒方法を適切に選択する必要があります 参考 うがい うがいをして口の中を清潔にしましょう うがいをするタイミング 登園時 遊び( 散歩 ) の後 子ども 職員にかぜの症状があるとき かぜやインフルエンザの流行期には特にうがいを頻回にしましょう 11

正しいうがいの方法について 1) コップに水またはぬるま湯を準備します 2) まずは ブクブクうがい食物のカスなどを取り除く目的で 比較的強く口をゆすぎます 3) 次に ガラガラうがい上を向いてのどの奥まで液が回るように うがいをします 4)3) と同様のうがいを何回か繰り返します ガラガラうがいのできない年齢の場合は ブクブクうがいだけでもよいでしょう うがい に関しては感染の防御に効果があるのか否かについて まだ十 分な検証がされたわけではありませんが 今までに 感染予防に役立つと の小規模な報告は見られます (3) 拡大予防策の考え方 通常は標準予防策を実施することが大切ですが いざ何らかの感染症が発生し拡大してしまった あるいは拡大のおそれがある場合は 標準予防策の徹底と その感染症の感染方法つまり感染経路を考慮した予防策を追加します これを拡大予防策といいます 接触感染する感染症 標準予防策 + 接触感染予防策 飛沫感染する感染症 標準予防策 + 飛沫感染予防策 (+ 接触感染予防策 ) 空気感染する感染症 標準予防策 + 空気感染予防策 (+ 飛沫感染予防策 + 接触感染予防策 ) (4) 拡大予防策の実際 1 接触感染予防策 最も重要な対策は 手洗い などの手指衛生です (( 5) 手指衛生の方法を参照 ) 12

液体石けんを使用した手洗いが推奨されています また タオルの共用は絶対にしないようにします 手袋を必要に応じ積極的に使用します おう吐物や下痢便等が付着している箇所については 直接触れないよう手袋やガウン等の PPE( 個人防護具 ) を使用します 汚物が残っていると消毒の効果が低下するため きれいに取り除いてから消毒を行います 当該感染症に適した消毒方法により 通常より汚染の可能性を広く考慮した消毒範囲や 定期的な消毒箇所については通常回数より消毒回数を多く設定します 2 飛沫感染予防策 基本は病原体を含む飛沫を浴びて吸い込まないようにすることです 咳やくしゃみ等の症状がある場合は サージカルマスクを着用しましょう 本来サージカルマスクは 咳やくしゃみが出るなどの患者が着けるべきものです 予防のために使用することは 100% の効果を期待できるものではありません しかし鼻や口等の粘膜に手が触れることを避けたり 直接的な飛沫を浴びた場合の一つの防御策と考えられます 咳エチケットを徹底します ( 参照 :(2) 標準予防策の実際 3 咳エチケット ) 感染症の症状を呈する乳幼児は 医務室等の別室で保育します 3 空気感染予防策 基本は 発病者の隔離 と 部屋の換気 です 麻しん 水痘 乳幼児の重症結核 ( 結核性髄膜炎や粟粒結核等 ) への有効な対策として 事前にワクチン接種を受けるという方法もあります 13

(5) 手指衛生の方法 手指衛生とは 手をきれいにすることです つまり流水と石けんで手を洗うか アルコール性の手指消毒薬を擦り込み 消毒する方法があります 消毒薬を使用する際は 有機物が付着していると消毒薬の効果を著しく低下させるので 汚れをよく落としてから使用します 1 手洗い ( 流水と石けんによる手洗い ) 水は必ず流水を用いて30 秒以上かけて洗いましょう 溜めた水は決して使用してはいけません 手洗いの方法を次に示します 子どもも職員も習慣づけることが大切です 1 両手のひらを擦り合わ せる 2 手の甲もよくこすり洗 いする 3 指先は特に入念に 4 指の間もくまなく洗う 5 親指と手のひらもてい ねいに 6 手首も忘れずに また 手洗い時は洗い残しやすい場所に留意して 手洗いの方法を習慣づけることが大切です 一般にペーパータオルを使用することが望ましいのですが そうでないときは個人ごとのタオルを使用し タオルの共有は絶対に避けなければなりません 14

洗い残しやすい部分 指先や爪の間 指の間 親指の周り 手首 手のしわ 時計や指輪は外しましょう 2 手指消毒 ( アルコール性擦式手指消毒薬による手指消毒 ) 1 少し丸めて受けてもあふれるほど十分な量の消毒薬を手にとります ( 通常のポンプタイプのものは 1 回押します ) 携帯用のものは 1 回のプッシュでは十分な量が得られないことがあります 2 最初に片方の手の指を浸し 次に液 を反対側の手に移し替え 同様に指先 を浸します 3まずは手の平から行い 消毒薬をまんべんなく擦り込みます 4 次に手の甲 5 手を替えて 6 指の間 7 親指 8 手首 1 回であふれてしまう場合は 片手ずつのつもりで 2 回行います 15

乾くのを待ってから次の行為に移ることが大事です 乾燥させるためにペーパータオルを用いることはしてはいけません 大人の場合 通常のポンプタイプのものは 1 回しっかり押し 約 3ml の消毒液を手にとります 一般に液タイプのものは3ml を適量とするものが多いですが ジェルタイプなどでは適量が液タイプより少ないことがありますので 製品の取り扱い説明書をよく読み 使用しましょう (6)PPE の使用方法 ( マスク 手袋 エプロン ) PPE(Personal Protective Equipment) とは個人防護具で感染予防のために使用する マスク 手袋 エプロン等のほかゴーグル シューカバーなど種々の道具をいいます 保育施設では一般にマスク 手袋 エプロン等の使用が想定されます 1 手袋 手袋は使い捨ての滅菌手袋や無滅菌手袋のほか 一般家庭で用いる掃除用のゴム手袋等があります 手袋の着脱では 外すときに注意しなければなりません 使用後の手袋の表面は汚染されているため その汚染が拡がらないように外す必要があるからです 16

手袋の外し方 1 手首に近い縁の外側を つかむ 2 手袋の内側が表になる ように外す 3 手袋を着用している手 で外した手袋を握る 4 手袋の 手首の内側に 指を入れる 5 握っている手袋に覆い かぶせるように 内側が 表になるように外す 6 廃棄し 手洗いをする 2 マスク 通常マスクはインフルエンザ等の飛沫感染する感染症の患者が着けるものです つまり咳やくしゃみで病原体を含む飛沫が広く遠くまで飛ぶことを防止するために着けるものです では予防のためには意味があるかということには十分な結論は出ていないものの 患者からの直接的な飛沫を浴びることを防止することや 汚染された可能性の高い手指が口や鼻に触れることを防止するなど 一定の効果はあると思われます また 流行時には潜伏期間中に前もってマスクを着けるという意味もあります なお 通常はサージカルマスクを使用します またマスクも適切な使用方法が大切です 17

マスクの着け方 1 ヒダが下向きになるように装着する 2 あごまで覆うようにヒダを伸ばす 3 ノーズワイヤーを押さえ 鼻の形に 合わせる 4 口 鼻が覆われ 頬などに隙間がな いよう調整する マスク着脱の注意点 ワイヤーは鼻梁にフィットするように曲げます この時片手で行うと鋭角に曲がることがあり 隙間ができるので 両手の指で押さえた方がよいでしょう マスクのひだ ( 蛇腹 ) を伸ばして 鼻 口 あご部分まで覆うようにします 耳にかけるゴムやひもは長さを調節できるものはしっかりフィットするように調節します 調節できないゴムの場合 ゆるくてフィットしない時は少し結んで調節するとよいでしょう 使用時にマスクの面体に極力手が触れないようにしなければなりません 18

マスク外す時も面体に手指が触れないように 耳かけのひもの部分を持ち 外して捨てます その後手指衛生を行います 基本的にマスクは使い捨てです 3 エプロン ここでいうエプロンは感染症予防のためのエプロンでプラスチックやビニール製のものを指します 保育時に通常使用する布製などのエプロンのことではありません 嘔吐物や排泄物の処理時等には基本的に使い捨てのプラスチックエプロンを使用します 他の PPE と同様 脱ぐ時に注意が必要です エプロンの外し方 1 両手で首にかけた紐の 部分を握る 2 紐を切る 3 腰紐を結んだまま内側 が表になるように上から 下へ折る 4 裾を握り 内側から腰 紐の高さまで下から上へ 持ち上げ 折り込む 5 手前に引いて腰紐を切 る 6 廃棄し 手洗いをする 外側が中に入るようにまるめて処分します 脱いだ後の手指衛生は他と同様必ず行わなければなりません 19