1. はじめに 薬の作用たった一つの薬が 熱を下げてくれる痛みを抑えてくれる命を救うこともある 基本的な事柄を学ぶ なぜ 薬が効くのか? 薬はどのように作用するのか?
2. 薬は病気を治してくれる? 医薬品は必ずしも病気を根本的に治療するものではない 病気を根本的に治してくれる薬は圧倒的に少ない 多くの薬は 病気の症状を抑える対症療法 として働く 例 ) 糖尿病や高血圧の薬 一生飲み続ける薬 糖尿病や高血圧が完治するわけではない 根本的に病気を治療する薬として抗菌薬がある
2. 復習 多くの薬は対症療法によって治療する 医薬品は必ずしも病気を根本的に治療するものではない 薬は病気の改善に大きく貢献している 薬の発見により 病気に対する見方が変わることもある
3. くすりの正体 全ての物質の最小単位 : 原子 酸素 窒素 O O N N 酸素原子 窒素原子
3. くすりの正体 アスピリンとペニシリンの構造式 薬はとても小さな物質である
3. アスピリンの歴史 アスピリンの歴史紀元前古代ギリシャ時代までさかのぼるサリチル酸の単離ヤナギの木から解熱鎮痛作用をもつ有効成分を単離サリチル酸として用いられる 副作用として 胃腸障害 を引き起こす サリチル酸をもとに アセチルサリチル酸を合成 サリチル酸の副作用を軽減
3. 復習 全ての物質は原子で構成されている 空中を浮遊している埃から私たちを構成している細胞まで 小さく分解すれば最終的には原子にたどり着く 薬も同じように原子から構成されている 医薬品はとても小さい物質である 一つの細胞であっても何百 何千兆個の原子で構成されている
4. 薬と受容体 手を動かす 痛みを感じる 物事を記憶する
4. 受容体の活性化 薬が作用 受容体の活性化 眠りを引き起こす物質 眠りを引き起こす物質
4. 受容体の阻害 血圧を上げる物質 血圧上昇 血圧を下げるためには 血圧を上昇させる物質 が作られないようにする酵素の阻害 血圧を上昇させる物質 が受容体に作用しないようにする受容体の阻害 血圧を上昇させる物質 の関与が重要となる
4. 受容体の阻害 血圧を上昇させる物質 薬が作用 受容体の遮断 血圧の上昇 血圧の上昇
4. 酵素とは 酵素とは ある物質を他の物質へと変換させる工場 酵素 痛み物質を作る酵素 痛み物質 痛み物質を作る酵素 痛み物質 薬物 阻害
4. 酵素の阻害 酵素 血圧を上げる物質 酵素 阻害 薬物
4. 復習 ( 受容体の活性化と遮断 ) 通常の状態 受容体の活性化 受容体の遮断
4. 復習 ( 酵素の阻害 ) 酵素 酵素 阻害 薬物
5. 医薬品の種類 医薬品 医療用医薬品 医師の処方せんに基づいて交付 一般用医薬品誰でも買うことができる医薬品 一般用医薬品の種類 第一類医薬品 第二類医薬品 第三類医薬品 リスク 高 中 低 患者さんへの情報提供 書面による情報提供 努力義務 規定なし 販売できる人 薬剤師 薬剤師 登録販売者 薬剤師 登録販売者 医薬品の種類 発毛剤 一部の胃腸薬 風邪薬 鎮痛剤 漢方薬 ビタミン剤 整腸薬
5. スイッチ OTC 医療用医薬品 スイッチ OTC 一般用医薬品へスイッチ 禁煙補助剤 : ニコチン胃腸薬 : ファモチジン (H2 ブロッカー ) シップ剤 : インドメタシン解熱鎮痛剤成分 : イブプロフェン ロキソプロフェンナトリウム
5. 復習 医薬品の種類 医療用医薬品 と 一般用医薬品 の二種類がある 一般用医薬品の分類 リスクに応じて三つに分かれる スイッチ OTC 医療用医薬品から一般用医薬品へとスイッチした医薬品
6. 薬はどのように開発されるか たった一つの医薬品開発 200~300 億円以上の費用 一人のサラリーマンが一生かけて稼ぐお金が 2 億円程度 研究開発費の割合 製薬企業の場合 : 15~20 % 程度 他業種の場合 : 3~8 % 程度
6. 医薬品開発の流れ 承認 申請 見つける 薬のタネを 動物実験 第一相試験 第二相試験 第三相試験 市販後調査 有機化学バイオテクノロジー 前臨床試験臨床試験 ( 治験 ) 発売
6. 臨床試験 ( 治験 ) の流れ 第一相試験 少数の健常男子で行う 新薬の大まかな概要を把握 第二相試験 少数の患者さんで行う 投与量や使い方を決定 第三相試験 多数の患者さんで行う 新薬の有効性や副作用を検討
6. 医薬品開発のリスク 見つける 薬のタネを 動物実験 ( 治験 ) 臨床試験 発売 成功確率 : 2 万分の 1 開発年数 : 10~20 年程度
6. 医薬品開発に携わる人たち 製薬企業の研究員 一生のうち開発で一つ薬を開発した経験があるなら とても運が良い 医薬品開発 成功率が低い 開発年数が長い その代わり 開発に成功すれば 何万人もの人を救うことができる 地球の裏側の人にまで笑顔を届けることができる
6. 10~20 年後を見据えた開発 医薬品開発 : 10~20 年もの年月がかかる 10~20 年後を見据えた医薬品開発が必要 現在 生活習慣病に関係する薬が売上の上位を占める では 20 年後はどうなる? 将来は 肥満化させる薬 が必要になるかも
6. 復習 医薬品の研究開発費 一つの医薬品開発には 200~300 億円以上が必要 医薬品開発の流れ 承認 申請 見つける 薬のタネを 動物実験 第一相試験 第二相試験 第三相試験 市販後調査
6. 復習 医薬品開発のリスク 開発の成功率が低い : 成功確率は 2 万分の 1 開発に長い年月を必要とする : 10~20 年程度 医薬品開発に携わる人たち 多くの人で 医薬品を開発することがない 医薬品を開発するためには 10~20 年後を見据える必要がある
7. 薬の有効率 効果が表れる人 薬の有効率 有効率 80 % 100 人中 80 人 効果が表れない人 100 人中 20 人 有効率 10 % 未満の薬も存在する 例 ) 抗がん剤など
7. アルコールの強い弱い 酵素酵素アルコールアセトアルデヒド酢酸 悪酔いの原因物質 酵素の働き 酒の強い人と弱い人を比較した場合 アルコール分解に関わる酵素の働きが何百倍も違う
7. 試験管レベルでの薬の効果 有効率 80 % 有効率 100 %
7. 復習 薬の有効率は 100% ではない それまで生きてきた環境は人によって異なる 薬の有効率の低い薬としては 抗がん剤などがある
8. プラセボ効果 ( プラシーボ効果 ) 全く効果のない偽薬 ( プラセボ ) を投与 病気の症状が改善 プラセボ効果 プラセボ効果の強さ 一つの薬 多薬くのす数るを 注射をする < < < 手術をする 見せ掛けの
8. プラセボ効果 ( プラシーボ効果 ) 世の中にはびこる宣伝 飲むヒアルロン酸 コラーゲン配合 これらの健康食品には全く効果がない 効果の多くはプラセボ効果によるもの 医薬品として使用されるヒアルロン酸の種類 注射として 直接患部に注入する
8. なぜ 私達は騙されるのか? DHMO(Dihydrogen monoxide : 一酸化二水素 ) DHMO( 一酸化二水素 ) は無色透明 無味無臭の物質水酸の一種であり 酸性雨の主な成分である地球温暖化の原因となっている海岸の浸食を起こす要因となっている多くの金属を腐食 錆びつかせる末期がんの悪性腫瘍から検出される現在 DHMO を規制する法律はない みなさんは DHMO の規制に賛成ですよね?
8. 復習 プラセボ効果 効果のない薬でも 症状が改善する 健康食品 サプリメントの効果 薬のように病気を改善する訳ではない なぜ私達が騙されるのか 専門用語を並べられれば 私たちは信じるしかない
9. 体の中での薬の動き 薬物動態学 ( やくぶつどうたいがく ) 体の中での薬の動きを知る学問
9. 体の中での薬の動き ( 吸収 ) 口から飲んだ薬が作用するためには 腸管から吸収されて血液中にのる必要がある 腸から吸収される必要のない薬注射薬 : 直接体内へ投与坐剤 : 直腸からの吸収を考慮舌下錠 : 口から素早く吸収便秘改善薬 整腸薬 : 腸そのものへ作用
9. 体の中での薬の動き ( 分布 ) 心臓病の薬 : 心臓に作用する必要がある 骨粗しょう症の薬 : 骨に作用する必要がある 目的とする部位に薬が到達しなければいけない 勃起改善薬 : バイアグラ もともとは狭心症の治療薬として開発 狭心症への効果は乏しかったが 勃起改善作用を発見
9. 体の中での薬の動き ( 分布 ) 血液脳関門 (BBB : Blood-Brain Barrier) 化学物質から脳を守る保護機能 脳に作用する薬眠気を起こす 睡眠導入剤 脳内の神経伝達物質を是正する 抗うつ薬 など血液脳関門を通過するように設計 アルコールは血液脳関門を容易に通過できる
9. 体の中での薬の動き ( 分布 ) 標的とする臓器へピンポイントで薬物を届ける技術ドラッグ デリバリー システム (DDS) ドラッグ デリバリー システム (DDS) の応用例 ) 抗がん剤 薬を包んだ粒子 正常な細胞の膜 がん細胞の膜
9. 体の中での薬の動き ( 代謝 ) 有害物質の無効化 解毒化 : 肝臓が行う 肝臓が行っている 薬を一回だけ投与 薬を複数回投与 血液中の薬物濃度 血液中の薬物濃度 薬物投与 薬物投与 薬物投与 時間 時間
9. 体の中での薬の動き ( 代謝 ) 素早く代謝 排泄される場合 代謝 排泄が遅い場合 血液中の薬物濃度 薬の効果が表れる有効域 血液中の薬物濃度 副作用発現 副作用が消失しない 時間 時間
9. 復習 ( 吸収 ) 薬が体の中に入った後にたどる経路吸収 分布 代謝そして排泄口から飲む経口薬の多くは腸から吸収される服用した全ての薬が作用するとは限らない腸からの吸収を考える必要のない薬もある 注射薬坐剤舌下錠整腸薬 投与した全ての薬が体内へ入る直腸から吸収される口から吸収されるそもそも 腸から吸収される必要がない
9. 復習 ( 分布 ) 腸から吸収されて全身を巡った薬 標的とする臓器に到達して作用 腸からの吸収を考える必要のない薬もある 心臓病の薬 骨粗しょう症の薬 心臓に到達して作用 骨に到達して作用 脳に作用する薬 血液脳関門を考慮 ドラッグ デリバリー システム (DDS) 抗がん剤を例にして紹介
9. 初回通過効果 血液を通って肝臓へ 栄養の吸収 ( 有害物質も含む ) 腸から吸収された薬は肝臓を通り代謝される 初回通過効果
9. 体の中での薬の動き ( 排泄 ) 薬物の主な排泄機構 糞中排泄 : 便と一緒に排泄される 尿中排泄 : 尿と一緒に排泄される 糞中排泄薬の代謝消化管排泄肝臓が大きく関与 尿中排泄 尿を作る 未代謝でも排泄可能 腎臓が大きく関与
9. 体の中での薬の動き ( 排泄 ) 健常な人の場合 肝臓 腎臓の弱い人 血液中の薬物濃度 時間 薬同をじ投量与の 血液中の薬物濃度 時間
9. 半減期 半減期の概念 15 血液中の薬物 ) 濃度 (mg / ml 10 5 0 0 2 4 6 時間 (h)