(2) 従業員や取扱器具の衛生管理に関するマニュアル 従業員の衛生管理マニュアル食中毒菌に感染した従業員を介して食品が汚染され, 食中毒が発生した事例がこれまでに数多く報告されています 定期的な健康診断や検便, 毎日の健康チェックで従業員の健康状態を把握しましょう また, 問題がある場合は責任者に必ず申告するよう, 従業員に徹底させましょう 毎日の健康状態を記録することは従業員に対して自己管理の重要性を啓発することにもつながります その他, 入室時の規定として施設への不要品の持込の禁止, 履物の履き替え, 服装や髪, つめのチェック, 手洗いの方法等を定め, 従業員に徹底させます とくに手洗いは食中毒予防に重要であり, 手洗い器の前に正しい手洗いを定めたマニュアル ( 写真や図付のものがよいです ) を掲示して従業員に確実に実行させましょう 従業員入室時に関するマニュアル作成のポイント 従業員の入室時の服装等の衛生管理の担当者 ( 責任者 ) を決める 従業員が確認すべき項目, 施設内のルールを具体的に定める 記録の方法を定める 点検で不適だった場合の対応について定める - 27 -
従業員の衛生管理マニュアル ( 例 ) 実施時期責任者 作業開始前, 作業中 入室時の点検項目 従業員は 1 から 9 について記録用紙に記入し, 問題がない場合, 作業に従事する 従業員は 2 人組となり, 互いに確認する 1 人で入室する場合は鏡を使い, 衣服の乱れを確認する 責任者は記録用紙を確認する 1 下痢, 腹痛, 吐き気, 嘔吐等の症状がないこと 2 皮膚に外傷がないこと 3 その他, 体調に異常がないこと 4 衣服 ( 作業衣, エプロン, 帽子, マスク, 履物 ) に乱れがないこと 5 毛髪がはみ出していないこと 6 爪がのびていないこと ( マニキュア等もつけない ) 7 装飾品等, 不要物を身につけていないこと 8 ローラーがけがきちんと行われていること 9 手洗いが正しく実施されていること 1~3 に異常がある者は, 責任者に申告し, 食品を直接取り扱う作業に従事しない 4~9 に異常がある者は, 責任者が改善を確認してから作業に従事する 作業時のルール 1 原材料の下処理後, 廃棄物の処理後, 食品取扱場へ入室時は手の洗浄 消毒を実施する 2 食品取扱場で着替え, 喫煙, 飲食を行わない 3 手指及び食品を取り扱う器具で髪, 鼻, 口等に触れない 4 責任者は作業室内の従業員の衛生面に目を配る < 休憩時 休憩後 > 1 個別に休憩する場合は, 責任者にその旨を伝えること 2 食品取扱場から退室する際は, エプロンをエプロン掛けにかけること 3 休憩後, 入室する際は作業開始時のルールを遵守すること 4 責任者は, 入室した従業員の服装等を点検すること < 作業後 > 更衣後, 責任者は作業衣を回収し, 洗濯係に引き渡す その他毎年 6 月, 従業員に対する健康診断と検便 ( 項目 : サルモネラ, 赤痢 ) を実施する 検便の結果, 陽性だった従業員は医療機関を受診し, 検便の結果が陰性になるまでの間, 食品を直接取り扱わない業務に配置転換する - 28 -
従事者の衛生点検記録 課長責任者担当者 ( 年月 ) 氏名 項目 1( 月 ) 2( 火 ) 3( 水 ) 4( 木 ) 5( 金 ) 6( 土 ) 7( 日 ) 体調指の傷髪 爪衣服装飾品ローラー手洗い確認者体調指の傷髪 爪衣服装飾品ローラー手洗い確認者体調指の傷髪 爪衣服装飾品ローラー手洗い確認者体調指の傷髪 爪衣服装飾品ローラー手洗い確認者体調指の傷髪 爪衣服装飾品ローラー手洗い確認者体調指の傷髪 爪衣服装飾品ローラー手洗い確認者 措置 責任者 - 29 -
機械器具の衛生管理マニュアル 包丁, まな板といった食品に直接触れる器具や, 冷蔵庫や冷凍庫, 製造に使用する機械について, どの程度の頻度で, どんな方法で洗浄 消毒し, どのように保管するかを明記します 合わせて消毒剤のつくり方も明記するとよいでしょう 機械 器具の衛生管理に関するマニュアル作成のポイント 衛生管理の担当者 ( 責任者 ) を明記する 洗浄 消毒方法を具体的に記載する 消毒液を希釈する場合は希釈方法まで指示する 使用済みと使用前のものを区別できるよう保管方法を記載する 作業の実施状況を確認するため, 記録用紙を作成する 器具に破損等がある場合はその対応について, 記載する 消毒剤について機械 器具に有機物 ( 油やタンパク質などの汚れ ) が付着したままでは消毒剤の効果が十分に発揮できないことがあります 機械 器具は洗剤でよく洗浄した後, 消毒しましょう また, アルコール系消毒剤や塩素系の消毒剤は揮発しやすく, とくに夏場は適正な濃度を維持できないことが多いです こまめに補充する, または作り直す必要があります 消毒剤の種類と特性 効果 消毒剤の種類 塩素系消毒剤 陽イオン界面活性剤 特徴 有機物が存在すると著しく効力が減少する 金属腐食性がある 最適 ph は 7~9 通常 0.02~ 0.1% 程度の濃度で使用する アルカリ性で安定だが, 酸性で揮発し, 呼吸器や目に刺激性がある グラム陽性菌 黄色ブドウ球菌 栄養型細菌 グラム陰性菌大腸菌サルモネラ属菌カンピロバクター 芽胞菌 セレウス菌ウエルシュ菌 エンベロープあり インフルエンザウイルス ウイルス エンベロープ無し ノロウイルス 真菌 ( カビ ) 逆性石けん 有機物の存在下では著しく効力が低下する 皮膚刺激性がなく毒性も低い 酵母 糸状菌 両性界面活性剤 フェノール類 アルコール類 陽イオンの殺菌効果と陰イオンの洗浄力を有する 刺激性 毒性のすくない消毒剤のため, 手指や器具などの消毒に用いられている 有機物の存在下でも効力の減少が比較的少ないので 2~3% 溶液として床, 壁や排泄物の消毒等に用いられる ただし, 強い臭気と毒性があるので, 皮膚など生体の消毒には用いない 毒性が少ないので, 皮膚の消毒に用いられる 70~80% の濃度で効果がある - 30 -
機械器具の衛生管理マニュアル (1) 洗浄 消毒 保管 ( 例 ) 実施時期責任者 毎日, 作業終了後 洗浄 消毒のルール 汚れが残っていると消毒剤の効果が弱まるのでよく洗浄してから, 消毒すること 消毒剤は揮発しやすいので毎日作り直すこと 洗剤は原液をそのまま使用する 消毒剤は次亜塩素酸 Na 液を 200ppm に薄めたものを使用する 希釈方法 12L ペットボトルの半分まで水を入れる 2 市販品を 10mL( ペットボトルキャップ 2 杯分 ) 加え, 軽く混ぜる 3 水を全体で 2L となるように加えてよく混ぜて完成 場所 包丁まな板 調理器具食器類 作業台 手順 方法等下処理用は赤テープを, 仕上げ用は青テープを貼り区別する 1 付着した残渣を取り除き, 水で汚れを除去する 2 洗剤とスポンジで洗浄し, 水で洗剤を洗い流し, 水切りする 3いずれかの方法で消毒する 80 以上の湯で5 分以上殺菌し, 乾燥させる 200ppmの次亜塩素酸 Na 液に5 分以上浸漬する 200ppmの次亜塩素酸 Na 液を浸み込ませたタオルで拭く 4 次亜塩素酸 Naで消毒した場合は, 消毒後に流水ですすぐ 作業中, 汚れた場合は12を実施する 保管 下処理用は上部の戸棚, 仕上げ用は殺菌庫に保管する 1 付着した残渣を取り除き, 水で汚れを除去する 2 洗剤とスポンジで洗浄し, 水で洗剤を洗い流し, 水切りする 3 いずれかの方法で消毒する 80 以上の湯で 5 分以上殺菌し, 乾燥させる 200ppm の次亜塩素酸 Na 液に 5 分以上浸漬する 4 次亜塩素酸 Na で消毒した場合は, 消毒後に流水ですすぐ 保管 器具類は流し台上部の戸棚に保管する 菜箸, 計量スプーン等は食器棚の引き出しに保管する 使用前に消毒用アルコールを噴霧してから使用する 1 残渣を取り除き, 水で汚れを除去する 2 洗剤とスポンジで洗浄し, 水で洗剤を洗い流し, 水切りする 3200ppm の次亜塩素酸 Na を染み込ませたタオルで拭く 作業中, 汚れた場合は 12 を実施する 担当者 - 31 -
機械器具の衛生管理マニュアル (2) 洗浄 消毒 保管 ( 例 ) 実施時期責任者 毎日, 作業終了後 場所 ふきんタオル たわしスポンジ 冷蔵庫冷凍庫 機械類 洗剤消毒剤 清掃用具 手順 方法等 使用済みのふきん, タオルは使用済みバケツに入れる 1 付着した残渣を取り除く 2 洗濯機で洗剤を用いて洗浄し, すすぎをする 3200ppm の次亜塩素酸 Na 液に 5 分以上浸漬し, 消毒する 4 脱水, 乾燥させる 保管 収納引き出しに畳んでしまう 1 水で汚れを取り除く 2 洗剤で十分に泡立てた後, 洗剤を洗い流す 3 煮沸した湯で 5 分以上殺菌する 保管 流し横のスポンジ入れに収納する 庫内の整理整頓を行う 1 薄めた中性洗剤に浸しかたく絞った雑巾で拭く 2 清潔な雑巾で水拭きし, 乾拭きする 3 消毒用アルコールを染み込ませたペーパータオルで拭く 1 機械を分解し, 部品は床に直置きせず, 容器に入れる 2 部品の破損, 欠損等がないか確認する 破損, 欠損があるときは直ちに責任者に報告する 3 洗剤とスポンジで洗浄し, 水で洗剤を洗い流し, 水切りする 4 いずれかの方法で消毒する 80 以上の湯で 5 分以上殺菌し, 乾燥させる 200ppm の次亜塩素酸 Na 液に 5 分以上浸漬する 5 次亜塩素酸 Na で消毒した場合は, 消毒後に流水ですすぐ 保管 部品を機械横の専用ボックスに保管する 組み立て 使用直前に消毒用アルコールを噴霧してから組み立てる 保管 在庫がそれぞれ 2 本をきったら新しく発注する 流し台下の戸棚に保管する 1 清掃後, 用具を洗剤で洗浄し, 乾燥させる 保管 作業室入り口横の専用ロッカーに保管する 担当者 - 32 -
機械器具の洗浄 消毒 保管記録 課長責任者担当者 ( 年月日 ~ 月日 ) 1 ( 月 ) 2 ( 火 ) 3 ( 水 ) 4 ( 木 ) 5 ( 金 ) 6 ( 土 ) 7 ( 日 ) 備考 包丁 まな板 器具類 冷蔵庫 冷凍庫 機械類 作業台 ふきん タオル たわしスポンジ 洗剤消毒剤 清掃用具 責任者サイン 器具等に破損はないか 適切に洗浄 消毒したか 適切な保管状況か - 33 -