書類が整理できない ~ 書類 書類棚の 5S~ 書類が整理できない 岐阜赤十字病院看護部係長会小柳葉子村瀬彩はじめに当院は 平成 25 年度より 業務 KAIZEN 活動 (QC サークル活動 ) を開始し 毎年 20 前後のチームが活動に取り組んでいる 看護部係長会も 当初から 5S 班 を結成し 部署を超えて改善活動を行っている 職場環境の標準化を目指して問題点の洗い出しをする中 病棟毎に引き出しの配置が異なる書類棚と書類の多さに着目した 従来 病棟の書類棚は 同一規格であるものの 病棟毎のレイアウトで使用し 書類の配置が異なっていた そのため 新人看護師や病棟を異動した看護師から 必要な書類の場所が分からない 書類が多く探すのに時間がかかる という声や 医師から 病棟によって書類の位置が違う できれば書類の配置を統一して欲しい との意見があった しかし 書類の種類と数が非常に多いことや 部署を超えて取り組まねばならないことから なかなか着手することができなかった 今回 平成 28 年 1 月の電子カルテ導入を機に 長年の課題であった書類の整理に取り組んだ 1. テーマの選定 全病棟の書類 書類棚の 5S 2. 現状の把握各病棟の現状を写真で比べてみると A 病棟とB 病棟のように 同じ書類棚を使用しているにも関わらず 書類の収納位置が統一されていなかった ( 図 1) また ラベル表示が不明確で 引き出しの中に何の書類が収納されているのか分からなかったり ( 図 2) 古くからある様々な収納ケースが自由な配置で使用されていたりした ( 図 3) これでは 書類を探すのに時間がかかると言われるのも当然のことである 更に 書類の種類も非常に多く 病棟のスタッフでも 自部署に何種類の書類があるかを把握しきれない状況であった ( 図 4) 図 1 病棟の書類 1 棚
現状の把握 図 2 引き出しのラベル表示 図 3 古くから使用していた収納ケース 現状の把握 図 4 書類の種類 2
書類棚に収納されている書類の内訳は 入院時に必要な書類が3 種類 ( 入院申込書 基準寝具貸出書 CS セット ) 全科共通で患者の署名を求めるもの8 種類 ( 手術 検査同意書 抗菌剤問診票 輸血同意書 身体抑制の同意書 外出泊届出書 個室申込書 ) 患者の署名が不要なもの3 種類 ( 褥瘡対策 栄養評価表 転棟転落アセスメントスコアシート ) 以外に 独自に作成された検査 処置 麻酔 手術同意書などが 146 種類あった 書類の作成や管理についての基準がないために 個人や各検討会などで作成され公になっていない書類が増えている状況であった これらの現状から 以下の問題が明らかになった 1 書類を探す時間 用紙 保管場所に無駄がある 2 基準に沿って管理されていない書類が大量にあり 責任の所在が不明確である 3 類似した書類が原因のヒヤリ ハット事例が発生している 加えて 電子カルテの導入が間近となり 書類の選別 スリム化が必要であった このような現状から書類棚の整理のみでなく 書類自体の整理が必要であると考えた 3. 活動計画の作成 平成 26 年 12 月の対策立案から実施に向かう段階で 対策不足があると考え 計画修正を行った 4. 目標の設定目標 : 電子カルテ導入までに 全病棟にある書類を分類し整理する 全病棟の書類棚の引き出しの位置を統一する 診療記録以外の書類についての一覧表を作成する 5. 要因の解析スタッフ 棚 保管場所 管理 運用に分けて要因分析を行った ( 図 5) スタッフの要因では 重複して引き出しをつくる 正しい保管場所に収納しない 必要以上に書類を増やす 棚 保管場所では 書類が多い 保管場所が多い 管理 運用では 書類管理の基準がない 3
書類の分類 整理ができていない 書類を管理する部門がない 等の要因が挙げられた 保管場所が多数ある 引き出しが多い 物 ( 棚 保管場所 ) 人 ( スタッフ ) 重複して引出し引出しの表示をつくるがバラバラ 古い棚も使用している パソコン内に保管している書類もある 保管のルールがない 書類管理の基準がない 書類を管理する部門がない 紙の書類が多い 書類の追加 修正 削除の基準がない PC にデータであるものも 紙で保管している 捨てられない 保管管理は各部署で決めている 様式の異なる説明書 同意書がある 不要な書類がある 書類が多い 紙で保管する書類もある 保管場所は各部署にあり 比較することが少ない 書類の監査がされていない 正しい保管場所に収納しない 方法 機械 ( 管理 運用 ) 書類の種類を把握しきれない 古いものと新しいものの区別がつきにくい 書類を自由に作成できる 保管場所を覚えきれない 間違える 書類整理に対する問題意識が低い 書類の一覧表がない 知らない間に書類の種類が増える 全体を把握する人がいない 書類の分類 整理ができていない 必要以上に書類を増やす 余分にコピーする コピーが手間 書類の種類が多く 統一されていない 図 5 特性要因図 6. 対策 立案要因の中から 重要要因を抽出し 対策を立案した ( 表 1) 全病棟にある書類を洗い出して分類したが 診療記録に関しては 電子カルテ準備委員会で管理することになったため 看護に関わる書類及び書類棚の管理について対策を検討した 表 1 対策立案 効果 実現性 取り組み安さ 点数判定対策 書類の洗い出し 75 3 書類の分類 75 4 診療記録以外の看護に関わる書類をPC 内に収納 75 5 紙でしか残せない書類を書類棚に収納 75 6 不要な書類を破棄 125 1 書類の一覧表の作成 75 7 書類の追加 修正 削除の方法の統一 75 8 書類棚の引き出しの位置の統一 125 2 全ての書類の整理 ( 診療記録など ) 15 判定 : 5 点 :3 点 :1 点 4
7. 対策の検討と実施紙で保管されている書類だけでなく データで保管されている書類も含めてすべての書類を洗い出した 全ての書類は 1486 種類あり その中で診療記録 (914 種類 ) と診療記録以外 不要な書類 (527 種類 ) に分類した 診療記録に関する 914 種類の書類は 電子カルテ導入委員会へ依頼した 診療記録に含まれる書類は 電子カルテ内に収納し それ以外の書類を紙でしか残せないもの (29 種類 ) データーで保存できるもの (286 種類 ) 不要な書類(212 種類 ) に分類した 診療記録以外の物で看護に関わるものを整理し PC にフォルダを作成し保存した PC 内に保存できないものに関しては紙として書類棚に統一して収納することにした 不要な書類 212 種類については廃棄した 書類棚に残す文書 29 種類については 1 入院時 2 手術 検査 治療 3 管理の3つに分類して 全病棟の書類棚の引き出しの位置を統一し 日にちを決めて一斉に整理して収納することにした ( 図 6) データで保存する書類に関しては 共通のフォルダにカテゴリーごとに分類し 通し番号を付け収納した ( 図 7) さらに一覧表を作成し 全病棟に配布して 探し易くした 図 6 書類棚の Before After 図 7 PC 内保存データの管理 5
図 8 書類棚への収納状況 8. 効果の確認書類棚には全病棟書類の位置を統一して収納した 75 段の引き出しのうち 29 段の使用となった ( 図 8) また PC 内でのデータ管理も電子カルテ導入まで終えることができた 改善後は 病棟看護師より 書類棚の書類が減り 位置が決まっているので探しやすくなった 医師からは 必要な書類は PC 内に保存されたため書類棚を探すことはなくなった との意見が聞かれた 似たような書類でのヒヤリ ハット報告はされていない 9. 標準化と管理の定着岐阜赤十字病院看護部書類管理マニュアルを作成し 看護部のマニュアルとして位置づけた このマニュアルは 1 書類の住所録 2 追加 修正 削除のためのルール 3 監査チェックリスト 監査方法の 3 つの項目で成り立っている 追加 修正 削除は必ず係長会を通して行うことと決めた また 各病棟で書類棚の整理 整頓をする担当者を決め 維持できるようにした 現在 マニュアルに沿った書類棚の監査を毎月実施し 各病棟に監査結果をフィードバックしている 10. 反省と今後の対応対策が不十分であったため 実施期間が長期に渡ってしまった また 改善の指標と目標値の設定があいまいであったために 十分な評価を行うことが出来なかった 以上が反省点として挙げられる 書類を探す時間の無駄を省くことと 似たような書類や更新されていない古い書類によるヒヤリ ハットを防止するように 活動を継続していく必要があると考える 今後も監査結果をフィードバックすることで スタッフへ意識づけできるような働きかけを行っていきたい この活動は 現段階では看護部の取り組みであるが 将来的には 病院全体で全ての書類を管理 運用する部門ができるように働きかけていきたい 6