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第 7 章砂防 第 1 節 砂防の概要 秋田県は 北に白神山地の二ツ森や藤里駒ヶ岳 東に奥羽山脈の八幡平や秋田駒ヶ岳 南に鳥海山など 1,000~2,000m 級の山々に三方を囲まれています これらを水源とする米代川 雄物川 子吉川などの上流域は 荒廃地が多く 土砂の発生源となっています また 本県

第 7 章砂防第 1 節砂防の概要 秋田県は 北に白神山地の二ツ森や藤里駒ケ岳 東に奥羽山脈の八幡平や秋田駒ヶ岳 南に鳥海山など 1,000~2,000m 級の山々に三方を囲まれています これらを水源とする米代川 雄物川 子吉川などの上流域は 荒廃地が多く 土砂の発生源となっています また 本県の地

~ 二次的な被害を防止する ~ 第 6 節 1 図 御嶽山における降灰後の土石流に関するシミュレーション計算結果 平成 26 年 9 月の御嶽山噴火後 土砂災害防止法に基づく緊急調査が国土交通省により実施され 降灰後の土石流に関するシミュレーション結果が公表された これにより関係市町村は

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平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中

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近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

土砂災害防止法よくある質問と回答 土砂災害防止法 ( 正式名称 : 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関 する法律 ) について よくいただく質問をまとめたものです Ⅰ. 土砂災害防止法について Q1. 土砂災害は年間どれくらい発生しているのですか? A. 全国では 年間約 1,00

スライド 1

重ねるハザードマップ 大雨が降ったときに危険な場所を知る 浸水のおそれがある場所 土砂災害の危険がある場所 通行止めになるおそれがある道路 が 1 つの地図上で 分かります 土石流による道路寸断のイメージ 事前通行規制区間のイメージ 道路冠水想定箇所のイメージ 浸水のイメージ 洪水時に浸水のおそれが

ハザードマップポータルサイト広報用資料

土砂災害防止法ホームページの改造について

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溶結凝灰岩を含む火砕流堆積物からなっている 特にカルデラ内壁の西側では 地震による強い震動により 大規模な斜面崩壊 ( 阿蘇大橋地区 ) や中 ~ 小規模の斜面崩壊 ( 南阿蘇村立野地区 阿蘇市三久保地区など ) が多数発生している これらの崩壊土砂は崩壊地内および下部に堆積しており 一部は地震時に

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土砂災害防止法制定の背景 土砂災害は毎年のように全国各地で発生しており 私たちの暮らしに大きな影響を与えています また その一方で 新たな宅地開発が進み それに伴って土砂災害の発生するおそれのある危険な箇所も年々増加し続けています そのような全ての危険箇所を対策工事により安全な状態にしていくには 膨

鬼怒川緊急対策プロジェクト 鬼怒川下流域 茨城県区間 において 水防災意識社会 の再構築を目指し 国 茨城県 常総市など 7市町が主体となり ハードとソフトが一体となった緊急対策プロジェクトを実施 ハード対策 事業費合計 約600億円 ソフト対策 円滑な避難の支援 住民の避難を促すためのソフト対策を

避難勧告等の 判断 伝達マニュアル ( 土砂災害編 ) ひと 緑がかがやく田園と交流のまち 安全に安心して暮らせるまちの実現に向けて ( 概要版 ) 平成 26 年 9 月 1 日 北海道長沼町

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ii 8. 河川法と漁港法との調整に関する協定 ( 抄 ) 運輸省港湾局と農林省水産庁生産部とに関連ある港湾災害復旧事業の処理について 76 第 2 漁港関係災害関連事業 Ⅰ 補助金交付要綱 1. 漁港関係災害関連事業等補助金交付要綱 77 Ⅱ 災害関連漁業集落環境施設復旧事業 1. 災


新潟県連続災害の検証と復興への視点

実施概要 平成 5 年度第 回災害対策等緊急事業推進費 ( 主な対策の ). 梅雨前線に伴う豪雨により被害を受けた地域における対策 5 件 674 百万円 ( 国費 ) 具体的には ()~(5) のとおり () 河川 ( 補助 ) (5) 国道 ( 直轄 ) よどがわすいけいふるかわ 平成 5 年

SABO_97.pdf

災害復旧制度の目的と沿革 目的 自然災害により被災した公共土木施設を迅速 確実に復旧する 対象施設 河川 海岸 砂防設備 林地荒廃防止施設 地すべり防止施設 急傾斜地崩壊防止施設 道路 港湾 漁港 下水道 公園 沿革 古くは明治 14 年より予算補助の形での国庫補助 明治 32 年 災害準備基金特別

2.2 既存文献調査に基づく流木災害の特性 調査方法流木災害の被災地に関する現地調査報告や 流木災害の発生事象に関する研究成果を収集し 発生源の自然条件 ( 地質 地況 林況等 ) 崩壊面積等を整理するとともに それらと流木災害の被害状況との関係を分析した 事例数 :1965 年 ~20

Microsoft Word - 02.H28秋 重点提言本文【合本】1110.doc

2. 急流河川の現状と課題 2.1 急流河川の特徴 急流河川では 洪水時の流れが速く 転石や土砂を多く含んだ洪水流の強大なエネルギー により 平均年最大流量程度の中小洪水でも 河岸侵食や護岸の被災が生じる また 澪筋 の変化が激しく流路が固定していないため どの地点においても被災を受ける恐れがある

国土技術政策総合研究所 研究資料

新潟県連続災害の検証と復興への視点

里山の復旧に向けて 新潟県中越地震の概要 平成 16 年 10 月 23 日 17 時 56 分頃 新潟県中越地方を震源とするM6.8の直下型地震 ( 深さ13km) が発生し 旧川口町の震度 7を最大として 小千谷市 旧山古志村 旧小国町で震度 6 強を 長岡市 十日町市 旧栃尾市 魚沼市 刈羽村

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熊本地震の緊急調査報告

SABO 建設省河川局砂防部

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平成31年度予算概算決定額 森林整備事業 治山事業 林野公共事業 (平成30年度1次補正予算額5,199百万円 182, ,049 百万円 平成30年度第2次補正予算額 32,528百万円) 臨時 特別の措置 として31年度概算決定額44,128百万円を別途措置 対策のポイント 林業の成

 

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平成 29 年 7 月九州北部豪雨における流木被害 137 今回の九州北部における豪雨は 線状降水帯 と呼ばれる積乱雲の集合体が長時間にわたって狭い範囲に停滞したことによるものである この線状降水帯による記録的な大雨によって 図 1 に示す筑後川の支流河川の山間部の各所で斜面崩壊や土石流が発生し 大

地区概況 7-6 ( 旧 ) 平三小学校 大字 平蔵 米原 小草畑 概要市の南東部に位置し 長南町 大多喜町に接している 丘陵地と平蔵川沿いの低地からなり 丘陵地にはゴルフ場が複数立地し 低地では 民家や農地が分布する 地区を南北に国道 297 号が通り 国道 297 号沿いには小規模な造成宅地があ

ため池の管理に関する行政評価 監視の結果に基づく通知 ( 概要 ) 調査の背景 中国地方には ため池が 45,608 か所あり 全国 (197,742 か所 ) の 23.1% を占めている 平成 26 年 3 月現在 広島県 :19,609 か所 ( 全国 2 位 ) 山口県 :9,995 か所

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水防法改正の概要 (H 公布 H 一部施行 ) 国土交通省 HP 1

7 制御不能な二次災害を発生させない 7-1) 市街地での大規模火災の発生 7-2) 海上 臨海部の広域複合災害の発生 7-3) 沿線 沿道の建物倒壊による直接的な被害及び交通麻痺 7-4) ため池 ダム 防災施設 天然ダム等の損壊 機能不全による二次災害の発生 7-5) 有害物質の大規模拡散 流出

別添フロー 地すべり 事業着手の前年度まで 全体計画と構造協議の流れ 事業着手年度以降 ( 整備計画や事業実施計画に位置付け ) 時間の経過 事前協議に必要な地質調査等の実施 詳細設計を実施するための 地すべりブロックの特定 対策工の概略設計 追加調査の実施 事前協議 事業の必要性 費用対効果 交付

2 6.29災害と8.20災害 空中写真による災害規模の比較 5 土石流流出位置 災害時の空中写真 3 3 平成26年8月豪雨による広島土砂災害 三入の雨量グラフ 災害時の空中写真 可部地区 山本地区 八木 緑井地区 三 入 では雨量 強度 8

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一太郎 10/9/8 文書

新潟中越地震における行政機関の初動対応.doc

平成29年7月九州北部豪雨の概要 7月5日から6日にかけて 停滞した梅雨前線に暖かく 湿った空気が流れ込んだ影響等により 線状降水帯 が形成 維持され 同じ場所に猛烈な雨を継続して 降らせたことから 九州北部地方で記録的な大雨と なった 朝倉では 降り始めから10数時間のうちに500ミリを 超える豪

労働災害発生状況

県土整備部施設台帳DB等開発協議(第2回) 要求定義検討


1. 市街化調整区域における地区計画ガイドライン策定の目的市街化調整区域は 市街化を抑制すべき区域であるとともに 豊かな自然環境を育成 保全すべき区域である そのため 都市計画法において開発行為や建築行為が厳しく制限されている 本市都市計画マスタープランにおいても 将来都市構造の基本的な考え方の一つ

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アンケート調査の概要 目的東南海 南海地震発生時の業務継続について 四国内の各市町村における取り組み状況や課題等を把握し 今後の地域防災力の強化に資することを目的としてアンケート調査を実施 実施時期平成 21 年 11 月 回答数 徳島県 24 市町村 香川県 17 市町 愛媛県 20 市町 高知県

あなたの宅地は大丈夫か -地震による谷埋め盛土造成地被害事例と安全性調査方法-

第 5 章ソフト事業関係関係 指定地 指定地ほかほか 災害情報の収集 提供及び提供及び維持管理 第 1 節ソフト事業関係 1. 砂防基礎調査と土砂災害警戒区域等の指定 砂防事業においては 堰堤の計画または砂防全体計画の作成時に施設効果を見込んで特別警戒区域の見直しを行い 工事完了後所定の手続きを経て

建築物等震災対策事業について

目次 1. はじめに 1 2. 協議会の構成 2 3. 目的 3 4. 概ね5 年間で実施する取組 4 5. フォローアップ 8

プレゼンテーションタイトル

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激甚災害制度について

<ハード対策の実態 > また ハード対策についてみると 防災設備として必要性が高いとされている非常用電源 電話不通時の代替通信機能 燃料備蓄が整備されている 道の駅 は 宮城など3 県内 57 駅のうち それぞれ45.6%(26 駅 ) 22.8%(13 駅 ) 17.5%(10 駅 ) といずれも

試行の概要 試行の目的石狩川滝川地区水害タイムライン ( 試行用完成版 ) を試行的に運用することにより 対応行動や実施手順を確認するとともに 運用結果を検証し 同タイムラインを精査することを目的とする 試行の概要 実施時期 : 平成 29 年出水期 (8 月 ~10 月ごろ ) 実施場所 : 各主

土砂災害対策の強化に向けて 提言 平成 26 年 7 月 土砂災害対策の強化に向けた検討会

22年2月 目次 .indd

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資料 2 東海管内における農業水利施設の防災 減災の取組 ( 農村地域防災減災事業 海岸事業 ) 平成 27 年 2 月東海農政局整備部防災課

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中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書【神奈川県】

宮城県総合防災情報システム(MIDORI)

新川水系新川 中の川 琴似発寒川 琴似川洪水浸水想定区域図 ( 計画規模 ) (1) この図は 新川水系新川 中の川 琴似発寒川 琴似川の水位周知区間について 水防法に基づき 計画降雨により浸水が想定される区域 浸水した場合に想定される水深を表示した図面です (2) この洪水浸水想定区域図は 平成

試行の概要 試行の目的石狩川滝川地区水害タイムライン ( 試行用完成版 ) を試行的に運用することにより 対応行動や実施手順を確認するとともに 運用結果を検証し 同タイムラインを精査することを目的とする 試行の概要 実施時期 : 平成 30 年出水期 (8 月 ~10 月ごろ ) 実施場所 : 各主

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浸水深 自宅の状況による避難基準 河川沿いの家屋平屋建て 2 階建て以上 浸水深 3m 以上 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難 浸水深 50 cm ~3m 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難上階に垂直避難 浸水深 50 cm未満 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難 自宅に待

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平成 31 年度 税制改正の概要 平成 30 年 12 月 復興庁

地すべり176号

NMM-DDAによる弾塑性解析 およびその適用に関する研究

特集大規模自然災害からの復旧 復興 参考 警察が検視により確認している死者数 50 名 災害による負傷の悪化または避難生活等における身体的負担による死者数 106 名 6 月 日に発生した豪雨による被害のうち熊本地震と関連が認められた死者数 5 名建物被害全壊 8,360 棟, 半壊 3


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地盤に関連した法律の出来た背景 立法の契機 立法の推移 1950 建築基準法 ( 中規模の地震対応 ) 1957 集中豪雨による地すべり災害 1958 地すべり等防止法 1961 集中豪雨で宅地造成地の崖崩れ災害 1961 宅地造成等規制法 乱開発 スプロール化 1968 都市計画法 ( 開発許可制

第 4 章特定産業廃棄物に起因する支障除去等の内容に関する事項 4.1 特定支障除去等事業の実施に関する計画 (1) 廃棄物の飛散流出防止ア廃棄物の飛散流出防止対策当該地内への雨水浸透を抑制し 処分場からの汚染地下水の拡散防止を図るとともに 露出廃棄物の飛散流出防止を図るため 覆土工対策を実施する

図-2 土砂移動発生箇所 国土地理院の判読結果 4による 図-3 傾斜区分と土砂移動発生箇所 国土地理院の判読結果 4に よる の関係 根谷川 AMeDAS三入観測点 太田川 可部東地区 広島市安佐北区 八木地区 緑井地区 広島市安佐南区 地質区分 産業技術総合研究所シームレス地質図より関 図-4

はじめに 宅地造成等規制法が昭和 36 年に制定されてからおよそ半世紀を経過しました この間 平成 18 年には同法制定以来初めての抜本改正が行われています この改正は 阪神 淡路大震災 ( 平成 7 年 ) 新潟県中越地震 ( 平成 16 年 ) などで被災例が多かった大規模盛土造成地に対応するの

本書の目的介護保険サービス事業所は, 高齢者の方が多く利用しており, 災害発生時には避難等の援助が必要となるため, 事業者は, 災害発生時に迅速かつ適切な行動をとれるように備えておく必要があります 本書は, 介護保険サービス事業所が災害対応マニュアルを作成する際に特に留意する点についてまとめています

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国土技術政策総合研究所 研究資料

Microsoft PowerPoint - 参考資料 各種情報掲載HPの情報共有

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第 6 節砂防施設の復旧 1 被害の特徴 震度 7の地震により中山間地を中心に地盤災害受け 地すべりや斜面崩壊などの土砂災害が多数発生し 空中写真から判読された斜面崩壊箇所数は3,791 箇所 うち362 箇所は崩壊幅 50m 以上の大規模崩壊であった また 芋川をはじめとして地震によって崩れた土砂が河道を閉塞した現象が多数発生した さらには 住宅宅地の擁壁等が転倒 倒壊したり クラックが発生するなどの被害が多数生じ 小規模な宅地地盤の被災も多数発生した 2 復旧対策の特徴 土石流や地すべり がけ崩れの発生箇所においては 再度災害の防止と民生の安定を確保する必要から以下の事業対応を行った また 多数発生した宅地擁壁等の崩壊災害に対しては 特例措置により補助要件が緩和されて対策を行った 復旧工事種別 1 公共土木施設災害復旧工事 * 県事業 2 災害関連緊急事業 ( 砂防施設 地すべり防止施設 急傾斜崩壊防止施設 ) * 県事業 3 災害関連地域防災がけ崩れ対策事業 * 市町村事業 4 小規模急傾斜地崩壊対策工事 * 表 5-6-1 災害関連緊急事業 事業 箇所数 事業費 災害関連緊急砂防事業 6 20.2 災害関連緊急地すべり事業 52 174.4 災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業 13 26.7 災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業 ( 特例 ) 7 6.5 合計 78 227.8 ( 億円 ) 特例 : 補助要件を緩和し, 宅地擁壁に特例適用が認められた. 3 砂防設備等の復旧事例 表 5-6-2 市町村事業 事業 箇所数 事業費 災害関連地域防災がけ崩れ対策事業 20 6.8 災害関連地域防災がけ崩れ対策事業 ( 特例 ) 22 4.0 小規模急傾斜地崩壊対策事業 184 11.9 合計 226 22.7 ( 億円 ) 災害関連地域防災がけ崩れ対策事業 [ 小規模ながけ崩れ災害箇所 ( 保全対象人 家 2 戸 ~4 戸 ) について実施する市町村事業を県が補助 (90%, ただし国からの 間接補助が 50% あり )] 特例 : 補助要件を緩和し, 高さ 3m 以上の宅地擁壁に特例適用が認められた. 地震により被災した砂防設備等を 公共土木施設災害復旧事業により復旧した 施設区分 事業箇所 決定額 ( 百万円 ) 砂防設備 油夫川 ( 山古志村 ) など計 40 箇所 1,991 地すべり防止施設 川口 ( 川口町 ) など 計 21 箇所 558 急傾斜地崩壊防止施設 薭生 ( 小千谷市 ) など 計 13 箇所 556 計 74 箇所 3,105 5-111

(1) 油夫川砂防災害復旧事業の事例一級河川朝日川の左支渓流油夫川では 地すべりに伴う崩壊土砂により砂防施設災害が発生し 砂防施設 ( 砂防えん堤 4 基 床固工 3 基 計 7 基 ) が完全に埋塞した 崩壊土砂量は約 23 万m3と推定され 流路延長約 1.1km の流路が閉塞した 堆砂の深さは深いところで15.0m 以上と推定され 掘削を伴う原形復旧工事が極めて困難であるため 現在 これら崩壊土砂の下流への流出を防止するためにいくつかの砂防対策を進めている 工事概要砂防えん堤 1 基 (H=14.5m,W=121.0m) 床固工 18 基盛土工 350,000m 3 堰堤 H=9.0m 山古志中学校 床固工 H=3.0m 堰堤 H=10.0m 堰堤 H=14.0m 山古志村役場 油夫川 写真 5-6-1 油夫川の崩壊斜め写真 写真 5-6-2 7 砂防えん堤 H=9.0m 上 : 県砂防台帳写真より ( 被災前撮影 ) 下 : 完全に埋塞している状況 (H16.12.7 撮影 ) 写真 5-6-3 砂防えん堤施工状況 ( 高さ 14.5m, 幅 121.0m) 写真 5-6-4 床固工 (5,6,7 群 ) 5-112

4 地すべり対策施設の復旧事例 (1) 虫亀地区 ( 長岡市 ) 工事概要開渠工 114m 大型ふとん籠工 37m 横孔ボーリング工 250m 写真 5-6-5 虫亀地区 (2) 村中地区 ( 長岡市 ) 工事概要横孔ボーリング工 6 群排水路工 77m 写真 5-6-6 虫亀地区 写真 5-6-7 村中地区 5 急傾斜地崩壊防止施設の復旧事例 (1) 浦ノ山地区 ( 小千谷市 ) 工事概要アンカー工 51 本 写真 5-6-8 村中地区 写真 5-6-9 浦ノ山地区 写真 5-6-10 浦ノ山地区 5-113

(2) 樽沢雪崩予防柵 ( 十日町市 ) 工事概要雪崩予防柵 2 基 写真 5-6-11 樽沢雪崩予防策 写真 5-6-12 樽沢雪崩予防策 6 災害関連緊急砂防事業の事例 (1) 法師ヶ沢川災害関連緊急砂防事業の事例中越地震により 小千谷市小栗山地内を流れる法師ヶ沢川本川上流部と下流にて合流する支川に沿って複数の斜面崩壊が発生し 河道内に土砂が流入 堆積した この河道内の不安定土塊が土石流となり下流域の寺沢地区に流出し 人家 4 戸が破損 国道 291 号上に堆積し 一時通行止めとなった 工事概要砂防えん堤 2 基 ( 本川 :H=14.0m,L=108m) ( 支川 :H= 9.0m,L=50.0m) 床固工 2 基 写真 5-6-13 法師ヶ沢川崩壊状況 ( 小千谷市小栗山地区 H16.10.26 撮影 ) 写真 5-6-14 本川えん堤等 (H18.12.25 撮影 ) 5-114

(2) 相川川災害関連緊急砂防事業の事例当河川は川口町の魚野川左岸側に位置する砂防指定の一級河川である 中越地震により右岸川斜面で発生した地すべり土塊が県道山の相川内ヶ巻停車場線を乗り越え 相川川に達した これにより 既設砂防えん堤 1 基を巻き込んだ河道閉塞による土石流発生により被害を受ける危険性の高い小高集落の32 戸 131 人に避難勧告が出された 工事概要砂防えん堤 1 基 (H=14.0m,W=56.0m) 写真 5-6-15 河道閉塞状況 ( 川口町小高地区 H16.11.8 撮影 ) 写真 5-6-16 (H18.12.25 撮影 ) (3) 三石川災害関連緊急砂防事業の事例長岡市 ( 旧山古志村 ) 桂谷地内を流れる三石川上流では 中越地震により尾根付近の急斜面における崩壊が河川沿いに多数発生して河道に流入し異常堆積した その後 これらの土砂が流下し 県道柏崎高浜堀之内線を寸断した これにより竹沢集落と虫亀集落を往来するためには 大きく迂回しなくてはならなくなった 工事概要砂防えん堤 1 基 (H=14.5m,L=60.0m) 写真 5-6-17 崩壊状況 ( 長岡市桂谷地区 H16.10.30 頃撮影 ) 写真 5-6-18 (H18.12.25 撮影 ) 5-115

7 災害関連緊急地すべり対策事業の事例 (1) 油夫川油夫地区 ( 長岡市 ) 当地区は 一級河川信濃川水系油夫川の右岸斜面に位置し 馬蹄形の地すべりブロックが複数並列する 斜面内には人家 18 戸が立地するほか 頂部に山古志中学校と山古志村役場資料庫の公共施設がある 中越地震により これらの地すべりブロック群が一斉に滑動したため 斜面中腹部にあった人家 6 戸が全壊した また 地すべりによる亀裂は尾根頂部まで達しており 他の人家や中学校 役場資料庫にも亀裂が生じる等の被害が発生した 地すべりの規模幅 500m 長さ 250m 移動土塊量約 125 万 m3 工事概要盛土工 470,000m3 集水井工 4 基横孔ボーリング工 6,400m 法枠工 10,600 m2グラウンドアンカー工 180 本植生工 16,000 m2 写真 5-6-19 油夫川地区 写真 5-6-20 油夫川地区 5-116

(2) 樽沢地区 ( 十日町市 ) 当地区は一級河川信濃川水系樽沢川の左岸斜面 信濃川左岸側河岸段丘上部に位置する 中越地震により大規模地すべりが発生し 人家 6 戸一部損壊 市道 700mの多大な被害を受けた また 唯一のアクセス道である市道の被災による樽沢地区の孤立化 樽沢川の河道閉塞による被害拡大の恐れなどから 避難指示が発令された このため県では 当該事業により対策工事を早急に実施し 地すべりの安定を図ることとし 工事により地区の安全が確保された平成 17 年 10 月 25 日に避難指示は解除された 地すべりの規模幅 740m 長さ 200m 土砂量 160 万 m3 工事概要集水井工 4 基横孔ボーリング工 2,615m 法枠工 11,400 m2グラウンドアンカー工 635 本ロックボルト工 269 本植生工 9,300 m2 写真 5-6-21 樽沢地区 写真 5-6-22 樽沢地区 5-117

8 災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業の事例 (1) 滝谷北地区 ( 長岡市 ) 工事概要法枠工 2,600 m2鉄筋挿入工 270 本植生基材吹付け 1,430 m2 写真 5-6-23 滝谷北地区 写真 5-6-24 滝谷北地区 (2) 上ノ山 3,5 丁目地区 ( 特例小千谷市 ) 工事概要 法枠工 842 m2 グラウンドアンカー 45 本 厚層基材吹付け 454 m2 大型ふとん籠 35m 水路工 54m 明暗渠 51m 写真 5-6-25 上ノ上 3,5 丁目地区 写真 5-6-26 上ノ上 3,5 丁目地区 5-118

9 災害関連地域防災がけ崩れ対策事業の事例 (1) 一日市地区 ( 魚沼市 ) 工事概要法枠工 256 m2厚層基材吹付け 151 m2落石防護柵 19m 水路工 10m 写真 5-6-27 一日市地区 (2) 丸山町地区 ( 特例十日町市 ) 工事概要法枠工 93 m2鉄筋挿入工 50 m2水路工 18m 写真 5-6-28 一日市地区 写真 5-6-29 丸山町地区 写真 5-6-30 丸山町地区 5-119

10 急傾斜地対策に関する特例対応 この震災により多くのがけ崩れが発生し 被害は過疎化 高齢化が急速に進んでいる中山間地に集中したため 自力での再建が困難な状況となった また 都市部でも丘陵地や河岸段丘の斜面に展開する住宅宅地の擁壁等が転倒 倒壊したり クラックが発生するなど 住宅そのものの被害に加え 宅地擁壁被害の復旧が個人の大きな負担となり自力再建が困難な箇所が多数発生した ここでは 国と県におけるこれらの災害への対応を述べる (1) 国土交通省による対応国土交通省は, 従来から実施されている災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業及び災害関連地域防災がけ崩れ対策事業に特例を設け 擁壁等の崩壊対策を事業の対象とすることとした ( 表 -5-6-3, 表 -5-6-4) この特例措置により 県内 29 箇所における対策事業が採択された 新潟県では, 新潟県災害関連地域防災がけ崩れ対策事業補助金交付要網 及び 急傾斜地崩壊危険区域指定要領 についても一部改正し, 平成 17 年 2 月 1 日に各市町村長へ通知した 新潟県中越地震に係る特例措置の概要 表 -5-6-3 災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業 項目現行新潟県中越地震に係る特例措置 表 -5-6-4 災害関連地域防災がけ崩れ対策事業 項目現行新潟県中越地震に係る特例措置 斜面 自然斜面を対象 自然斜面に加え, 人工斜面 ( 宅地擁壁等 ) も対象 斜面 自然斜面を対象 自然斜面に加え, 人工斜面 ( 宅地擁壁等 ) も対象 がけ高 10m 以上人家に被害があった箇所は 5m 以上 人家に被害があり, 更に周辺住民に二次的被害を生じるおそれがある場合は,3m 以上 がけ高 5m 以上 人家に被害があり, 更に周辺住民に二次的被害を生じるおそれがある場合は,3m 以上 保全対象人家 5 戸以上現行と同じ 保全対象人家 2 戸以上現行と同じ その他 ライフライン等の公共施設等に被害のおそれがあること その他 ライフライン等の公共施設等に被害のおそれがあること (2) 県による対応国土交通省では特例措置を講じたものの 被害の程度が比較的小さいことや 保全対象人家が基準に満たない等の理由から 採択されなかった箇所が相当数存在した 関係市町村からこれらの被災箇所について強い救済要望があったこと またこれらを放置すれば 移転等による集落人口の減少 消滅及び隣地への崩壊拡大などにより 地域コミュニティの再生が不可能となり復興計画に支障を来すことから県は関係市町村と連携して対応することとした 具体的には 補助事業に採択されない箇所に対し 市町村が事業主体となって行うがけ崩れ対策工事に対し その1/2を補助する 小規模急傾斜地崩壊防止事業補助金 によ 5-120

り対応した この事業は がけ高 5m 以上かつ 保全人家 2 戸以上 5 戸未満となる事業の他に 必要な場合は保全人家 1 戸の事業についても対象とすることが認められている これに加え 国土交通省の特例に準じて 人工がけや 高さ 5m 未満 (3m~5m) のがけに対しても 同様に特例扱いの事業対象とし 平成 18 年度末までに 184 箇所において約 12 億円の工事を実施した 11 災害に強い砂防施設の形成方針 (1) 生活基盤の復旧 ( 土砂災害の復旧 ) 中山間地域で特に全国有数の地すべり多発地域において強い地震が発生したことにより 地盤災害に加えて中山間地における斜面災害が顕著であった そこで 復興の基礎となる安全 安心な生活基盤を確保するために 地震により発生した地すべり がけ崩れ 土石流等の土砂災害対策については 被災地の復興計画 集落再生計画等と調整を図りながら 早期の完成を目指し事業を推進する 具体的には 県事業では災害関連緊急事業 ( 砂防 地すべり対策 急傾斜地崩壊対策 ) 等を実施し 市町村事業では災害関連地域防災がけ崩れ対策事業 小規模急傾斜地崩壊対策事業を実施する また 緊急事業をフォローする特定緊急砂防事業等を引き続き実施する また 油夫地区においては地すべり対策の押さえ盛土として山古志地区の建設発生土約 35 万 m3 を受け入れ 油夫地区集落再生計画により盛土地の有効活用を図る (2) 災害に強い県づくり ( 防災基盤施設整備と強化 ) 近年多発する局地的な豪雨や 地震により広域的に同時多発するおそれのある土砂災害などに備えた防災事業を着実に推進する また 災害による被害を軽減 ( 減災 ) し 県民の生命 財産を守るために ハザードマップの作成や土砂災害に関する防災情報の提供や伝達手段の充実を図る 具体的には 総合流域防災事業の基礎調査によりハザードマップの基図を作成し 市町村を支援している また 土砂災害防止法に基づき土砂災害 ( 特別 ) 警戒区域を指定し 土砂災害の危険を周知 警戒避難態勢の整備 住宅等の新規立地の抑制等のソフト対策を実施する 5-121