JAMT 技術教本シリーズ 呼吸機能検査症例集 監修一般社団法人日本臨床衛生検査技師会 RESPIRATORY FUNCTION

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末梢気道障害 : 無 COPD の病期分類 : 正常肺活量 (VC): 3.73 努力肺活量 (FVC): 秒量 (FEV1.0): 秒率 (FEV1%): 肺年齢 : 95 歳以上評価コメント :C 肺疾患の疑い ( 要精検 ) 詳細コメント :COPD の

Ⅱ 章背景知識 2 呼吸不全の病態生理 呼吸とは, 酸素 (O 2 ) を外気から摂取し細胞内に移送するとともに, 細胞内で産生された二酸化炭素 (CO 2 ) を外気に排出することである 外気と血液間の O 2 CO 2 交換を外呼吸, 血液と細胞間の O 2 CO 2 交換を内呼吸と呼ぶ 肺は,

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JAMT 技術教本シリーズ 呼吸機能検査症例集 監修一般社団法人日本臨床衛生検査技師会 RESPIRATORY FUNCTION

1 章 閉塞性肺疾患 1. 1 慢性閉塞性肺疾患 1. 慢性閉塞性肺疾患とは 慢性閉塞性肺疾患 (COPD) とは従来, 肺気腫や慢性気管 支炎とよばれてきた疾患の総称である 肺気腫とは 終末細気管支から末梢の肺胞が異常に拡張するか, あるいは肺胞壁が破れて隣り合う肺胞が融合し, 容積を増した状態である という病理学的, 病理形態学的な概念にもとづいた疾患である 一方, 慢性気管支炎は 持続性あるいは反復性の痰を伴う咳が少なくとも連続して過去 年以上, 毎年 3カ月以上続くもの この定義からわかるように慢性気管支炎は 病歴 から診断することができる ( 正確には気管支拡張症や結核といった他の気管支病変を否定しなければいけない ) このような定義は社会医学的な定義である この両者を鑑別することは困難なこともあるため,COPD という疾患概念が使われるようになった 1~3) COPDの新しい疾患概念に影響を与えたガイドラインは 001 年に発表され,00 年,011 年に改訂された国際ガイドライン Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD) である ) GOLD の定義では COPDとは完全に可逆的ではない気流閉塞を特徴とする疾患である この気流閉塞は通常進行性で, 有害な粒子またはガスに対する異常な炎症性反応と関連している と定義し, あえて肺気腫と慢性気管支炎の疾患名では定義されていない 00 年には日本呼吸器学会によるガイドライン第 版, 5) ) 009 年に第 3 版,013 年に第 版が発行された その中でCOPDとは タバコ煙を主とする有害物質を長期に 気腫型 ( 肺気腫病変優位型 ) 大 胸部単純 X 線および胸部 CT で気腫性陰影が優位に認められる 図 1.1.1 COPD の病型 COPD 肺気腫病変 非気腫型 ( 末梢気道病変優位型 ) 小 胸部単純 X 線および胸部 CT で気腫性陰影が無いか微細に留まる 表 1.1.1 呼吸困難 ( 息切れ ) を評価する修正 MRC(mMRC) 質問票 グレード分類 あてはまるものにチェックしてください (1 つだけ ) 0 激しい運動をした時だけ息切れがある 1 平坦な道を早足で歩く, あるいは緩やかな上り坂を歩く時に息切れがある 息切れがあるので, 同年代の人よりも平坦な道を歩くのが遅い, あるいは平坦な道を自分のペースで歩いている時, 息切れのために立ち止まること がある 3 平坦な道を約 0m, あるいは数分歩くと息切れのために立ち止まる 息切れがひどく家から出られない, あるいは衣服の着替えをする時にも息切れがある 呼吸リハビリテーションの保険適用については, 旧 MRCのグレード 以上, 即ち上記 mmrc のグレード 1 以上となる ( 日本呼吸器学会 COPD ガイドライン第 版作成委員会 :COPD( 慢性閉塞性肺疾患 ) 診断と治療のためのガイドライン第 版, メディカルレビュー社,013より引用) 吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患である と記載され, 喫煙との因果関係をより明確にし, 気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に作用する と明記し, 末梢気道病変と気腫性病変を同列に扱いCOPDの病型を提唱している ( 図 1.1.1) また,COPD を全身疾患として捉える視点が導入され, 重症度は気流閉塞の重症度に加えて, 労作時呼吸困難の程度 ( 表 1.1.1), 運動耐容能, 栄養状態, 全身併存症なども加味して判断されるべきものとした このようにCOPDはすべての病変を包括する概念であるとされている. 検査所見 COPDの鑑別診断 病型 病態把握には呼吸機能検査, 胸部 X 線画像, 喀痰検査などが有用である ( 表 1.1.) (1) 呼吸機能検査スパイロメトリーによる気流閉塞の検出が必要であり, 気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーで 1 秒率 (FEV1/FVC) が70% 未満であればCOPDと診断する ( 表 1.1.3) ただし, 画像診断や精密呼吸機能検査により種々の疾患を除外することが必要である ( 表 1.1.) 診断にはFEV1/FVCを用いるが, 病期分類 ( 表 1.1.5) は予測 1 秒量に対する比率 (%FEV1) を用いる 基本的には気流閉塞の程度による分類であり, 重症度の分類は %FEV1 用語 慢性閉塞性肺疾患 (chronic obstructive pulmonary disease;copd),1 秒率 (forced expiratory volume in 1 second/forced vital capacity; FEV1/FVC),1 秒量 (forced expiratory volume in 1 second;fev1)

1. 1 慢性閉塞性肺疾患 表 1.1. 鑑別, 病型分類, 病態把握に有用な検査 表 1.1. 鑑別を要する疾患 1.精密肺機能検査 1) 肺拡散能力検査 (DLCO) ) 体プレスチモグラフ法やガス希釈法による肺気量測定 3) 呼吸筋力測定 ) 広域周波オシレーション法による呼吸インピーダンス測定 5) クロージングボリウム.動脈血ガス分析 3.肺高分解能 CT 検査.肺換気 血流シンチグラム 5.運動負荷検査 ( 分間歩行検査, シャトル歩行試験, 多段階運動負荷試験 ).夜間睡眠時呼吸モニター 7.心電図, 心エコー, 心カテーテルなどによる肺高血圧, 肺性心評価.質問票による QOL( 生活の質 ) ADL( 日常生活動作 ) の評価 9.喀痰 ( 細胞診, 好中球および好酸球数, 培養, 塗抹 ).呼気ガス分析 ( 代謝測定,NO および CO 測定 ) 11.末梢血液検査 表 1.1.3 診断基準 1.気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーで 1 秒率 (FEV1/FVC) が 70% 未満であること.他の気流閉塞をきたし得る疾患を除外すること だけでなく, 労作時呼吸困難などの症状, 運動耐容能, 併存症の有無, 増悪の程度などから総合的に判断すべきである したがって,%FEV1 による病期分類は必ずしも COPD の重症度を反映するものではない FEV1は, およそ30 歳から減少しはじめ, 非喫煙者ではそれほど急激ではないが, 中年の喫煙者で, すでにFEV1 が少ない人は, その後さらに急速に減少していく FEV1 1. 喘息. びまん性汎細気管支炎 3. 先天性副鼻腔気管支症候群. 閉塞性細気管支炎 5. 気管支拡張症. 肺結核 7. 塵肺症. リンパ脈管筋腫症 9. うっ血性心不全. 間質性肺疾患 11. 肺癌 表 1.1.5 COPD の病期分類 病期 定義 Ⅰ 期 軽度の気流閉塞 %FEV1 0% Ⅱ 期 中等度の気流閉塞 50% %FEV1<0% Ⅲ 期 高度の気流閉塞 30% %FEV1<50% Ⅳ 期 きわめて高度の気流閉塞 %FEV1<30% 気管支拡張薬投与後の 1 秒率 (FEV1/FVC)70% 未満が必須条件 が約 1L 以下に減少すると, 患者は日常生活の活動で呼吸困難を生じる フローボリューム曲線は, 呼気曲線において下行脚が下に凸なパターンを示す () 画像検査胸部 X 線画像は, 他の疾患を除外し, 進行したCOPD の気腫性病変および気道病変を診断するのに有用であるが, 早期 COPDの検出は難しいとされている HRCTは早期 COPDの検出に有用とされる 低吸収域 (LAA) や, 気道壁の肥厚が認められる 用語 低吸収域 (low attenuation area;laa) 3

1 章 閉塞性肺疾患 症例 1:COPD 病期分類 Ⅰ 期 1 70 歳台, 男性 身長 173.3cm, 体重 7.3kg,BSA 1.1m 主 訴 : 自覚症状はとくになし 現病歴 : 健康診断の呼吸機能検査で異常値を指摘され精査目的にて受診 既往歴 : 胃潰瘍 (0 歳台 ) 喫煙歴 :0 本 / 日 50 年 1カ月前から禁煙 服 薬 : なし アレルギー歴 : とくになし 呼吸音 : 異常なし mmrc:0 胸部 X 線 : 心, 肺血管陰影は正常範囲 胸部 CT: 軽度の気腫性変化を認める 呼吸機能検査所見と解説 ( 図 1.1.~1.1.) 1 肺気量分画 フローボリューム曲線 %VCは.% であり正常 FEV1/FVC は.9% と軽度低下し, 閉塞性換気障害を示す フローボリューム曲線は, 下に凸の閉塞性障害パターンを呈しており,MMF,V 50, V 5 は低下,V 50/V 5 は3.05と軽度末梢気道の障害が疑われる COPD 病期分類は,%FEV1 は 9.7% と 0% 以上であるためⅠ 期となる %TLCや残気率(RV/TLC) は正常範囲内であり, 過膨張所見は認めない 肺拡散能力 %DLCO7. 9 % と軽度低下,D LCO/VA が.mL/min/mmHg/L と低下し軽度拡散障害を認める 3 肺内ガス分布 Nは.% と上昇し, 肺内ガス分布障害を示している 気道可逆性検査 FEV1の変化率は5.%, 変化量はmLであり改善を 認めない 5 呼吸抵抗検査周波数依存を認めない 呼吸抵抗可逆性検査著明な改善は認めない 7 一酸化窒素濃度 (FeNO) 検査 19ppbであり正常 自覚症状もとくになく, 現時点では経過観察となる 検診で異常を指摘されてから, 禁煙を行っているのでサポートを行うこととなった 軽度の気流閉塞では無症状であることが多く, 医療機関への自発的な受診は労作時などの呼吸困難や日常生活に支障を来すときに多い 本症例のように, 健康診断での呼吸機能検査により, 早期発見, 診断 治療することで, 疾患になった後の負担を大幅に軽減することが可能である 肺機能検査報告書 Ⅰ 肺気量分画 残気量項目 単位 実測値 予測値 % 予測値 VC L.0 3.93. TV L 0.9 ERV L 1. 1.33 11.7 IRV L 1.5 IC L.57 FRC L 3. 3.51 1 RV L.03.1 93. TLC L.3 5.91 5.5 RV/TLC % 3. 37. 7.5 強制呼出曲線 フローボリューム 項目 単位 実測値 予測値 % 予測値 FVC L.03 3. 5. FEV1 L.7 3. 9.7 FEV1/FVC %.9 0.7 5. FEV3 L 3.7 3.7 9. MMF L/sec 1.9 3.19 53.0 AT % 3.99 PEF L/sec.1.37 97.0 V 75 L/sec.5 7.50 3.3 V 50 L/sec 1.99 3. 51. V 5 L/sec 0.5 1.39.9 V L/sec 0.3 V 50/V 5 3.05 V 5/Ht L/sec/m 0.37 1.0 35. 肺拡散能力 (single breath) 項目 単位 実測値 予測値 % 予測値 D LCO ml/min/mmhg 13.95 15 77. D LCO/V A ml/min/mmhg/l..39.3 DLCO ml/min/mmhg 1. 15 7.9 DLCO/VA ml/min/mmhg/l..39.3 クロージングボリューム項目 単位 実測値 予測値 % 予測値 CV L 1.0 CC L 3.11 CV/VC % 33.71 5.77 130. CC/TLC(CV) % 53. 9.90. N %/L. 1. 19.0 FEV1/FVC 拘束 70%.0 混合 正常 閉塞.0 0 0% %VC.0 0 30 0 50 0 Flow[L/S] 1.0 1.0 -.0 -.0.0.0 * 図 1.1. 症例 1: 呼吸機能検査

1. 1 慢性閉塞性肺疾患 肺機能検査報告書 ( 薬剤投与後比較 ) 肺気量分画 残気量 単位 投薬前 投薬後 変化率 (%) VC L.0.3 3. TV L 0.9 0.9 3.5 ERV L 1. 1. 1.3 IRV L 1.5 1. 1. IC L.57.51. FRC L 3. 3.77 3.0 RV L.03 1.95. TLC L.3. 0. RV/TLC % 3. 30.99 5.0 強制呼出曲線 フローボリューム単位 投薬前 投薬後 変化率 (%) FVC L.03.31.9 FEV1 L.7.9 5. FEV1/FVC %.9 7. 1. FEV1/VC %. 7.7 1. MMF L/sec 1.9 1.75 3. AT % 3.99 0.5 5.5 PEF L/sec.1.30.1 V 50 L/sec 1.99.79 0.1 V 5 L/sec 0.5 0.7 17. V 50/V 5 3.05 3.5 19.5 V 5/Ht L/sec/m 0.37 0.3 17. クロージングボリューム 単位 投薬前 投薬後 変化率 (%) CV L 1.0 1.1 1.5 CC L 3.11.71 1.7 CV/VC % 33.71.13 1.5 CC/TLC(CV) % 53. 7.. N %/L. 1.9. 肺拡散能力 1 回呼吸法 単位 投薬前 投薬後 変化率 (%) D LCO ml/min/mmhg 13.95 1.9.7 D LCO/V A ml/min/mmhg/l. 3.05.1 DLCO ml/min/mmhg 1. 15.37 7. DLCO/VA ml/min/mmhg/l. 3.05.1 吸入前 FeNO 測定値 = 19ppb 吸入後 FeNO 測定値 = ppb.0.0.0 30 0 50 0 Flow[L/S] 1.0 投薬前 1 投薬後.0 -.0-0 投薬前投薬後.0.0.0 図 1.1.3 症例 1: 呼吸機能検査可逆性試験 報告書 B.D. 測定有効データ比較 (1) B. D. Ave 通常 Ave 改善率 B. D. Ex In 通常 Ex In 改善率 R5 [cmh0/l/s] 1.0 1.3 17.1 0.13 0.1 7.1 R0 [cmh0/l/s] 1. 1. 1.1 9 15.0 R5 R0 [cmh0/l/s] 5 0. X5 [cmh0/l/s] 0.17 0. Fres [Hz] 5.70.79 1.1 0.7 0.7.5 ALX [cmh0/l] 0.31 0.55 3. 0.1 0.3.5 X5 [cmh0/l/s] 0.19 0.9 0. Fres [Hz] 7.. 5.7 5 0.1 91. ALX [cmh0/l] 0. 1.19. 0.13 0. 71.7 TV [L] 0.5 0.3 3.5 9 0 通常 :No.( パルス ) B.D. :No.1( パルス ) 周波数 :1Hz/DIV Rrs, Xrs :1cmH0/L/s/DIV 時間経過 :0.5sec/DIV 呼気 吸気 0 Rrs 0 - - - - - Xrs 図 1.1. 症例 1: 呼吸抵抗検査可逆性試験 5

. 特発性肺線維症. 特発性肺線維症 1. 特発性肺線維症とは 特発性肺線維症 (IPF) は慢性かつ進行性の経過をたどり, 高度の線維化が進行して不可逆性の蜂巣肺形成を来す予後不良の疾患である IIPsの中でもIPFは頻度が高く, 有効な治療法が乏しいため, 特別に他のIIPsと区別して取り上げなければならない 病理組織型は通常型間質性肺炎 (UIP) である したがって,UIPという病理組織を持つ原因不明の特発性間質性肺炎を IPF という 3. 検査所見 (1) 呼吸機能検査スパイロメトリーは,VCやTLCなどが減少し拘束性換気障害が認められる DLCOは低下することが多く, 通常では肺活量や全肺気量の減少よりも先にみられる 喫煙者では非喫煙者に比べ, 気腫性病変を併発し, 肺の縮小が妨げられることから比較的肺気量が保たれ, 拘束性換気障害を呈さないことがある. 臨床症状 発症時の主症状は乾性咳嗽や労作時呼吸困難 肺底部の捻髪音 (fine crackles,velcro ラ音 ) は,0~90% に認められる また, ばち状指は 30~0% 前後に認められる () 画像検査 HRCTで肺底部と胸膜直下優位に浸潤影, すりガラス影, 蜂巣肺形成を認める. 治療 進行すると, 在宅酸素療法 (HOT) を用いる 進行の程度が速い場合, 抗線維化薬を用いる 症例 11: 特発性肺線維症 (IPF) 0 歳台, 男性 身長 15.0cm, 体重 9.0kg,BSA 1.5m 主訴 : 呼吸困難 現病歴 : 5, 年前から歩行時呼吸困難あり, 徐々に悪化 近医を受診し肺線維症を疑われ, 当院呼吸器内科受診 1カ月前より労作時呼吸困難が悪化しているとのこと 既往歴 : 高血圧, 胃潰瘍 家族歴 : 父喘息, 腎疾患 母大腸癌 喫煙歴 :0 本 / 日 50 年,13 年前より禁煙 アレルギー歴 : なし 呼吸音 : 両側下肺野, 吸気時にfine crackle SpO:~9%(room air) HR:11 回 /min. sinus 胸部 X 線 : 両側胸膜下に間質影広がっている 胸部 CT: 両側肺, 下肺優位に, 典型的な蜂巣肺を認める 気腫あり 縦隔リンパ節の腫大を認める ( 図..1) 血液検査 :KL-, 肺サーファクタント高値 動脈血液ガス (room air): 表..1 用語 特発性肺線維症 (idiopathic pulmonary fibrosis;ipf), 通常型間質性肺炎 (usual interstitial pneumonia ;UIP), 在宅酸素療法 (home oxygen therapy;hpt) 33

章 拘束性肺疾患 呼吸機能検査所見と解説 ( 図..) 1 肺気量分画 %VCは55.% であり低下を認め, 拘束性換気障害である さらに %TLCも.3% であり低下を認める フローボリューム曲線 FEV1/FVCは9.37% であり正常 フローボリューム曲線は上に凸の拘束性障害パターンを呈す 3 肺拡散能力 %DLCO は1.7%,DLCO/VA は0.7mL/min/mmHg/Lで 胸部 X 線で両側肺に網状影,CT で両側肺, 下肺優位に蜂巣肺を認めた 呼吸機能検査では拘束性換気障害, 拡散能力低下を認め, 血液ガス検査では,Ⅰ 型呼吸不全を認めた 抗線維化薬は光線過敏症の副作用があるため, 日常生活における苦痛を考え服用を拒否された 労作時呼吸苦, 低酸素血症を認めており, 心負荷軽減や耐運動能の改善に HOT 使用となり, 以降外来にてフォローとなった あり拡散能力の低下を認める また,A ado が39.1Torr であり, 拡散障害による開大を認める 表..1 症例 11: 動脈血液ガス (roomair) ph 7.3 PaCO(Torr) 0.7 PaO(Torr) 59. HCO3 (mmol/l) 7. BE(mmol/L).9 OCT(mL/dL) 19. OSAT(%) 91.9 A ado(torr) 39.1 図..1 症例 11:CT 画像 肺機能検査報告書 Ⅰ 肺気量分画 残気量項目 単位 実測値 予測値 % 予測値 VC L 1. 3.7 55. TV L 0.5 ERV L 0.7 1.17 57.3 IRV L 0.1 IC L 1.15 FRC L. 3. 71.5 RV L 1.79.7 7. TLC L 3.1 5.1.3 RV/TLC % 9.5 3.7 113. 強制呼出曲線 フローボリューム 項目 単位 実測値 予測値 % 予測値 FVC L 1.5 3.1 5. FEV1 L 1..5 7. FEV1/FVC % 9.37 7. 15.7 FEV3 L 1.5 3.0 MMF L/sec.1.7 9.1 AT % 1.5 PEF L/sec.9 7.59.1 V 75 L/sec.5.95 9.7 V 50 L/sec.9.91 15.7 V 5 L/sec.19 0.3 5 V L/sec 1.13 V 50/V 5 1.50 V 5/Ht L/sec/m.53 0.9 70.7 肺拡散能力 (single breath) 項目 単位 実測値 予測値 % 予測値 D LCO ml/min/mmhg.01. 1.5 D LCO/V A ml/min/mmhg/l 0.7.05 1. DLCO ml/min/mmhg.03. 1.7 DLCO/VA ml/min/mmhg/l 0.7.05 1. FEV1/FVC.0 拘束 70% 混合 正常閉塞 1.0 0 0% %VC 0 30 0 50 0 Flow[L/S] 1.0 1.0 -.0-1.0.0 3.0.0 * 図.. 症例 11: 呼吸機能検査 [ 藤澤義久 ] 参考文献 1) 日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断 治療ガイドライン制作委員会 : 特発性間質性肺炎の診断 治療ガイドライン, 南江堂, 東京,011. 3

章 リンパ脈管筋腫症 症例 : リンパ脈管筋腫症 (LAM)( 進行例 ) 0 歳台, 女性 身長 15.0cm, 体重 5.1kg 主訴 : 労作時呼吸困難 既往歴 : 結節性硬化症 喫煙歴 : なし 現病歴 : TSC-LAM( 結節性硬化症 (TSC) に伴って発生する肺 LAM)(VATS 下肺生検で確定診断 ),HOT 導入中 ( 安静時 0L, 労作時 3L) 臨床経過と検査所見 ( 図.1.3,.1.) %VCおよびFEV1/FVCが低下し混合性換気障害を示し, %FEV1 は19.3% であり著明な低下を認める %D LCO, %D LCO/V A も低下し高度な拡散障害を示している 肺気量分画ではTLCが増加, 残気率の上昇と過膨張所見があり, 呼吸機能検査だけでみると肺気腫と非常に似ている所見である 胸部 CTでは, 両側全肺野びまん性に, 多発する薄壁が明瞭な嚢胞性変化を認める 血液ガス分析では, 低酸素血症を呈している ( 表.1.) 表.1. 症例 : 血液ガス分析 (roomair) ph 7.3 PaCO(Torr) 3.1 PaO(Torr) 57.0 SaO(%) 9 HCO3(mmol/L) - 3.1 1. スパイログラム項目 単位 測定値 予測値 % 予測値 VC L 1..3 1. IRV L 0.1 TV L 0.9 ERV L 0.97 0.91 5.9 IC L 0.5 FVC L 1..9.9 FEV1 L 0.39.0 19.3 FEV1/FVC %.11. フローボリュームカーブ 項目 単位 測定値 予測値 % 予測値 PEF L/s 1.71 5.57 30. V 50 L/s 0.15.95 5. V 5 L/s 0.15 1.07 1. V 50/V 5 1.00 AT % 0 5. 肺気量 項目 単位 測定値 予測値 % 予測値 TLC L 5.15 3.7 133. FRC L.13.5 1. RV L 3. 1.51 7.0 RV/TLC L.3 3.7 11.0 VC L 1.73.3 5.7 IRV L 0.3 TV L 0. ERV L 0.71 IC L 1.0. 肺拡散能力 項目 単位 測定値 予測値 % 予測値 DLCO ml/min/mmhg.9 1.9 3. DLCO/VA ml/min/mmhg/l 1.17. 5. D LCO ml/min/mmhg 3.37 1.9. D LCO/V A ml/min/mmhg/l 1.17. 5. Flow[L/S] [FVC][T-V] 1.0 1.0 -.0 -.0.0.0 He[%] [FRC] 1 11 9 9 7 5 7 3 5 1 Time[min] 図.1.3 症例 : 呼吸機能検査 用語 結節性硬化症 (tuberous sclerosis complex;tsc), 胸腔鏡下手術 (video-assisted thoracic surgery;vats)

. 1 リンパ脈管筋腫症 図.1. 症例 :CT 画像 検査室ノート 胸腔鏡下手術 (VATS) VATS は, 複数の小さな傷 ( ポート ) から胸腔鏡 ( カメラ ) や鉗子類を入れ, モニターに映し出される映像を見ながら手術を行う方法 ( 図.1.5.a) 開胸術に比べ低侵襲という利点がある 肺癌の摘出術にも用い られるが, 間質性肺炎などのびまん性肺疾患の確定診断には病理学的な組織診が必要なため,VATS 下で肺生検を行う 図.1.5.b は間質性肺炎の確定診断目的に行った肺生検 鉗子 (a) カメラ, 鉗子の挿入例 (b)vats 下肺生検 ( 間質性肺炎 ) 参考情報 VATS は,video-assisted thoracic surgeryの略 図.1.5 VAT S [ 藤澤義久 山本雅史 ] 参考文献 1) 難病情報センターホームページ診断 治療指針 : 呼吸器系疾患調査研究班 ( 呼吸不全 ) 作成. ) 林田美江, 久保惠嗣, 瀬山邦明, 他 : リンパ脈管筋腫症 lymphangioleiomyomatosis(lam) 診断基準, 日呼吸会誌,00;(). 9