2016/10/11 小児科専門医セミナー腎臓 学校検尿二次 三次検診の対応 ( 新しい学校検尿システムの運用について ) 群馬大学小児科腎臓グループ 小林靖子
学校検尿 の項目 学校検尿の歴史と成果 群馬県の学校検尿の現状 検尿の評価の仕方 学校検尿のすべて 改訂での変更点
学校検尿の歴史と成果 群馬県の学校検尿の現状 検尿の評価の仕方 学校検尿のすべて 改訂での変更点
学校検尿開始の背景 戦後 衛生環境の改善により学童 3 大疾患である 結核 トラコーマ 寄生虫が激減 腎臓病 心臓病 気管支喘息が台頭 1969 年の調査で 年間 50 日以上長期欠席者の 46000 人のうち約 7000 人 (15%) を腎臓病が占め, 第一位であった 当時小児では透析 移植は不可能で早期発見 早期治療により管理するよりなかった
学校検尿の歴史 1973 年 ( 昭和 48 年 )6 月 6 日学校保健法施行規則改正発令 1974 年 4 月より全国で実施 1979 年 4 月より全学年 毎年施行が始まる 群馬県では 1977 年に腎臓検診検討委員会が発足 ( 学校保健法に定められているのは蛋白 糖のみ 潜血は 併せて検査することが望ましい の表記 )
学校検尿の効果 1999 年には学校検尿世代の 45 歳以下で糸球体腎炎による末期腎不全の率が明らかに減少し このような減少は米国ではみられていない (Yamagata et al. Am J Kidney Dis, 43:433-443, 2004) 小児で末期腎不全に至る率が欧米に比し明らかに少なく 末期腎不全の原因疾患に腎炎が占める割合が学校検尿施行前後で 50% から 2% に激減した ( 服部ら Annual Review 腎臓 2006 136-141)
末期腎不全原因疾患の変化 期間症例数原疾患 糸球体疾患糸球体腎炎先天性腎尿路疾患 1968-1979 720 81.6% 49.5% 7.5% 1980-1986 710 60.6% 33.1% 14.7% 1998-2003 347 29.1% 2.3% 50.4% 服部新三郎小児慢性腎不全患者の経年変化 Annual Review 腎臓 2006, 136-141
学校検尿の限界 問題点 腎疾患の発見を目的とした場合の陽性率 の低さ 疑陽性の問題 早期発見が困難な疾患の存在両側低形成腎逆流性腎症両側水腎症嚢胞性腎疾患 生理的尿異常への対応女児の生理中の採尿厳格な早朝安静尿の採取 新しい検査項目が必要 尿中 β2 ミクログロブリン ( 偽陰性が多い ) 超音波検査 ( 手技が煩雑 )
学校検尿の歴史 評価 群馬県の学校検尿の現状 検尿の評価の仕方 学校検尿のすべて 改訂での変更点
群馬県学校検尿のシステム 一次検査 ( 蛋白 潜血 糖 PH) 異常なし 尿糖以外異常あり 尿糖異常 異常なし 異常あり 二次検診 ( 校医 主治医 ) 三次検診 ( 指定医療機関 ) 結果報告 ( 診断名 管理指導区分 )( 学校へ提出 ) 教育委員会児童生徒腎臓疾患対策委員会
割合 二次検診受診割合 1.00 0.90 0.80 0.70 0.60 0.50 0.40 0.30 小学校中学校高等学校特別支援総計 0.20 0.10 0.00 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22
大阪府立学校腎検診実績 16 年度 17 年度 21 年度 22 年度 1 次検尿 126,305 123,239 121,371 125,811 2 次検尿 7,747 5,984 6,719 6,985 尿蛋白 クレアチニン比測定 1,129 1,111 要精検 2,969 2,436 293 308 受診者 1,371 999 198 201 新規発見腎炎不明 7 11 9 大阪市では尿蛋白 クレアチニン比を 2 次検尿時に入れて, 沈渣を無くし, 精検者は少なくなり, 精度を上げた 大阪府立腎検診判定委員会中間報告書平成 24 年 3 月
学校検尿の歴史と成果 群馬県の学校検尿の現状 検尿の評価の仕方 学校検尿のすべて 改訂での変更点
尿異常の分類とその評価 血尿のみ 蛋白尿のみ 血尿 & 蛋白尿 尿糖 白血球尿
検尿と慢性腎疾患 慢性腎疾患の発見の確率 小学生で 1 万人に 3-5 人, 中学生で 5-10 人 尿所見別の慢性腎疾患の確率 新 学校検尿のすべて (2003 年 ) 蛋白尿 + 血尿の 69.3%, 蛋白尿単独の 9.4%, 血尿単独の 4.7% 安保和俊, 土屋正己, 村上睦美, 山本正生 : 小児会誌 :103,543-548,1999 蛋白尿 + 血尿の慢性腎疾患のうち 70% は IgA 腎症 Murakami M et al. Kidney Int, 67(suppl 94): S23-S27, 2005 Lee YM et al. Acta pediatrica 9: 849-853, 2006
群馬県の症例集積での評価 1982 年 6 月 ~2002 年 5 月の 20 年間に学校検尿で尿異常を指摘され 群馬大学小児科及び群馬県立小児医療センター内科を受診した 345 名
尿異常の内訳 (345 名 ) 血尿 蛋白尿群 142 名 (41%) 血尿単独群 126 名 (37%) 蛋白尿単独群 77 名 (22%)
実際の尿異常の割合 平成 11 年度東京都学校検尿要二次精査 血尿 84% 蛋白尿 12% 血尿 蛋白尿 4% 平成 22 年度群馬県学校検尿二次検診有所見者 血尿 45% 蛋白尿 36% 血尿 蛋白尿 10%
血尿単独群 (126 名 ) Alport 症候群 (1%) 無症候性急性腎炎 (2%) 腎結石 (2%) 特発性高 Ca 尿症 (4%) Nutcracker 現象 (4%) 良性家族性血尿 (10%) 微少変化型 IgA 腎症増殖性腎炎基底膜菲薄 特発性腎出血 (11%) 無症候性血尿 (68%)
血尿単独群 問診が大事 : 家族歴 月経の有無 肉眼的血尿の既往 殆どの場合 緊急に問題になることはない 運動制限は原則不要 しかし 定期的な検尿は必要 尿沈渣赤血球の形態に注意 : 糸球体性? 非糸球体性?
蛋白尿単独群 (77 名 ) 腎下垂 (3%) 嚢胞腎 (4%) 尿細管性蛋白尿 (6%) 低形成腎 (12%) 若年性ネフロン癆 (1%) ネフローゼ症候群 (1%) 爪膝蓋骨症候群 (1%) 持続性蛋白尿 (14%) 体位性蛋白尿 (58%)
体位性蛋白尿 診断基準 安静臥床で尿蛋白陰性 立位で尿蛋白陽性となる 一般身体状態が正常である 腎 心 血管疾患の既往がない 血圧の上昇がない 腎機能は正常であり 血液所見 尿沈渣などに異常を認めない 尿路系に異常がない ( 先天奇形 遊走腎などがない ) その他蛋白尿を来すような異常がみられない 尿蛋白の性状としては Alb 主体の糸球体性蛋白尿尿蛋白分画は β γ 分画の上昇 ( 血清のものに類似する?) 腎循環障害による腎鬱血説が有力予後は良好
蛋白尿単独群 起立性蛋白尿の除外がとても大切 そのために厳密な早朝尿 ( 前日就寝直前排尿 翌朝一番尿提出 ) の評価を行う 起立性蛋白尿が除外されたら画像や尿細管性蛋白尿を含め精査が必要
血尿 蛋白尿群 (142 名 ) 半月体形成性腎炎 (1%) リポ蛋白糸球体症 (1%) ループス腎炎 (2%) 巣状糸球体硬化症 (3%) 膜性腎症 (5%) 微少変化群 (2%) 膜性増殖性腎炎 (12%) 増殖性腎炎 (27%) IgA 腎症 (47%)
血尿蛋白尿群 この状態が続く場合 腎生検が必要 多くの場合 糸球体腎炎で本格的な治療が必要
学校検尿の歴史 評価 群馬県の学校検尿の現状 検尿の評価の仕方 学校検尿のすべて 改訂での変更点
平成 23 年度に日本学校保健会により改訂された 学校検尿のすべて 変更点 暫定診断名の変更 専門医紹介基準の追加 生活管理の指導区分
暫定診断
暫定診断 旧 異常なし 腎炎の疑い 微少血尿 無症候性血尿 無症候性蛋白尿 尿路感染症の疑い 尿糖 異常なし 無症候性蛋白尿 体位性蛋白尿 無症候性血尿 無症候性血尿 蛋白尿 腎炎の疑い 白血球尿 尿路感染症の疑い 尿糖 新
体位性蛋白尿 診断基準 安静臥床で尿蛋白陰性 立位で尿蛋白陽性となる 一般身体状態が正常である 腎 心 血管疾患の既往がない 血圧の上昇がない 腎機能は正常であり 血液所見 尿沈渣などに異常を認めない 尿路系に異常がない ( 先天奇形 遊走腎などがない ) その他蛋白尿を来すような異常がみられない 尿蛋白の性状としては Alb 主体の糸球体性蛋白尿尿蛋白分画は β γ 分画の上昇 ( 血清のものに類似する?) 腎循環障害による腎鬱血説が有力予後は良好
群馬のプロトタイプ
専門医紹介基準 1. 早朝尿蛋白および尿中蛋白 / クレアチニン比がそれぞれ 1+ 程度 0.2~0.4 は 6~12ヶ月程度で紹介 2+ 程度 0.5~0.9は 3~6ヶ月程度で紹介 3+ 程度 1.0 以上は1~3ヶ月程度で紹介 ただし 上記を満たさない場合も含めて 下記の2~6が出現 判明すれば 早期に専門医に相談または紹介する 2. 肉眼的血尿 ( 遠心後肉眼的血尿を含む ) 3. 低蛋白血症 : 血清アルブミン3.0g/dl 未満 4. 低補体血症 5. 高血圧 ( 白衣高血圧は除外する ) 6. 腎機能障害の存在
運動管理区分改訂について 血尿の記載がなくなった 蛋白尿定量の記載がなされた 運動制限が大幅に緩和された
尿異常者の運動制限 海外の教科書での記載 Pediatric Kidney Disease(Edelmann) ネフローゼ症候群では 運動制限はエビデンスがなく, 制限によって受けるいかなる利益も, 正常な活動をすることによる心理的な有益性を超えない IgA 腎症では 運動制限やベッド上安静は効果がなく, 心理的ダメージを引き起こす 急性糸球体腎炎では どの研究も長期のベッド上安静の効果は否定的で, 高血圧や浮腫のないかぎり, 情緒的, 心理的問題から制限は不要 Pediatric Nephrology(Baratt) ネフローゼ症候群, 急性糸球体腎炎でベッド上安静は避けるべき
CKD 診療ガイド 2012 ( 日本腎臓学会編 ) 小児 CKD 患者診療のエッセンス 2012 (12-2 生活指導 ) より
管理区分の改訂 改訂前 症状が安定していない 浮腫 高血圧などがあること 改訂後
学校検尿まとめ 検尿は偽陰性 偽陽性がつきものであり 採尿方法や採尿時期についてはよく確認する必要がある 血尿単独症例における糸球体腎炎の頻度は数 % であり 管理指導が過剰にならぬように気をつける 但し定期受診はしてもらう 蛋白尿症例の半数は体位性蛋白尿であるが それ以外は先天性腎症や糸球体腎炎の可能性が高く注意が必要である 血尿蛋白尿合併例は殆どが糸球体腎炎であり腎生検を施行して診断をつけた上で治療を行う必要がある 尿異常者の運動制限については学校生活管理指導のしおりを参考に過度な制限を控えることが重要