【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

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現物配当に係る会計上 税法上の取扱い Profession Journal No.11(2013 年 3 月 21 日 ) に掲載 日本税制研究所研究員朝長明日香 平成 22 年度税制改正において適格現物分配が組織再編成の一形態として位置づけられたことにより 完全支配関係のある法人間で現物分配を行った場合には その現物分配に係る資産の譲渡損益の計上を繰り延べることとされました 従来 商法において現物配当の可否についての明確な規定は設けられていませんでしたが 平成 18 年に施行された会社法においては 株主総会での決議を経ることにより 現物配当が可能とされています ( 会法 4541 一 ) しかし 本稿においても述べるとおり 現物配当に係る会計上の取扱いは 現物分配に係る税法上の取扱いと異なるケースがあるため 両者を混同しないよう注意しなければなりません 法人税法に規定する現物分配とは 次のⅰ 又はⅱをいい ( 法法 2 十二の六括弧書き ) 本稿においては ⅰに該当する現物配当が行われたものとして会計上の取扱いを述べることとします 法人税法上の 現物分配 ⅰ 利益剰余金を原資とする剰余金の配当等による金銭以外の資産の移転 ( 本稿で解説する 現物配当 ) ⅱ みなし配当事由に基づく金銭以外の資産の移転 以下 企業集団外の企業間で現物配当を行った場合と企業集団内の企業間で現物配当を行った場合の会計上の取扱い ( 下記 1) および 完全支配関係のない法人間で現物分配を行った場合と完全支配関係のある法人間で現物分配を行った場合の法人税法上の取扱い ( 下記 2) を述べることとします なお 現物分配 という用語は法人税法独自の用語であるため 以下の会計上の取扱いの解説に当たっては 現物配当 という用語を用いることとし 源泉徴収については考慮しないものとします 1

1 現物配当に係る会計上の取扱い (1) 企業集団外の企業間で現物配当を行った場合 1 現物配当を行った会社における会計処理金銭以外の資産を配当財産として剰余金の配当を行った場合には 配当の効力発生日 ( 会法 4541 三 ) における配当財産の時価をもって繰越利益剰余金を減額し その時価と適正な帳簿価額との差額は 配当の効力発生日の属する期の損益とされます ( 自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針 ( 以下 自己株式等適用指針 といいます )10) 現物配当を行った会社の会計仕訳は 次のとおりです 当社の5% の株式を有するA 社に対し 土地 ( 時価 :1,200,000 円 帳簿価額 : 1,000,000 円 ) を配当財産として配当をした 繰越利益剰余金 1,200,000 円 / 土地 1,000,000 円 / 配当差益 ( 譲渡益 )200,000 円 繰越利益剰余金と配当財産の帳簿価額との差額を 譲渡利益 とする見解もあります ( 日本公認会計士協会東京会編 グループ経営と会計 税務 ( 清文社 )) 2 現物配当を受けた株主における会計処理金銭以外の資産を配当財産として剰余金の配当を受けた場合には 交換等の一般的な会計処理の考え方に準じて会計処理をすることが適当であると考えられており 原則として これまで保有していた株式が実質的に引き換えられたものとみなされ 配当直前のその株式の適正な帳簿価額を合理的に按分した金額を 株式の帳簿価額から減額することとされています ( 事業分離等に関する会計基準 ( 以下 事業分離等会計基準 といいます )52 143) 合理的な按分方法には 次のような方法があり 実態に応じて適切に用いることとされています ( 企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 295) ⅰ 関連する時価の比率で按分する方法 ⅱ 時価総額の比率で按分する方法 ⅲ 関連する帳簿価額の比率で按分する方法 また 移転を受けた配当財産は 時価により計上することとされており 合理的に按分した株式の帳簿価額との差額は その期の損益とすることとなります ( 事業分離 2

等会計基準 15 16) 現物配当を受けた株主の会計仕訳は 次のとおりです 当社が5% の株式を有するB 社から 土地 ( 時価 :1,200,000 円 帳簿価額 :1,000,000 円 ) を配当財産として配当を受けた B 社株式の直前の帳簿価額は 2,000,000 円であり 合理的に按分した金額は 500,000 円である 土地 1,200,000 円 / B 社株式 500,000 円 / 受取配当金 700,000 円 配当財産の取得価額と株式の帳簿価額との差額を 交換損益 とする見解もある ( 日本公認会計士協会東京会編 グループ経営と会計 税務 ( 清文社 )) 下記(2) 2において同じ (2) 企業集団内の企業間で現物配当を行った場合 1 現物配当を行った会社における会計処理会社が企業集団内の企業に現物配当を行った場合には 企業結合における共通支配下の取引に準ずることとされており 配当の効力発生日における配当財産の適正な帳簿価額をもって繰越利益剰余金を減額することとなります ( 自己株式等適用指針 10 (3) 38) 企業集団内の企業に現物配当を行った場合の会計仕訳は 次のとおりです 当社の 100% の株式を有する A 社に対し 土地 ( 時価 :1,200,000 円 帳簿価額 : 1,000,000 円 ) を配当財産として配当をした 繰越利益剰余金 1,000,000 円 / 土地 1,000,000 円 2 現物配当を受けた株主における会計処理 ( 子会社からの現物配当の場合 ) 現物配当をした会社が子会社である場合にも 上記 (1)2と同様に 株式の一部が実質的に引き換えられたものとみなされ 合理的に按分した金額を株式の帳簿価額から減額することとなります ( 事業分離等会計基準 52) ただし 移転を受けた配当財産は 移転直前の適正な帳簿価額により計上することとされており 合理的に按分した株式の帳簿価額との差額は 原則として その期の損益とされます ( 同前 14) 子会社から現物配当を受けた株主の会計仕訳は 次のとおりです 当社が 100% の株式を有する B 社から 土地 ( 時価 :1,200,000 円 帳簿価額 :1,000,000 円 ) を配当財産として配当を受けた 3

B 社株式の配当直前の帳簿価額は 2,000,000 円であり 合理的に按分した金額は 500,000 円である 土地 1,000,000 円 / B 社株式 500,000 円 / 受取配当金 500,000 円 < 参考 > 現物配当を受けた株主の会計処理に関して 投資後に生じた利益の分配など投資が継続しているとみなされる中でその投資の成果として金銭以外の資産の分配が行われた場合には その分配された財産の時価をもって収益として計上することが合理的であると考えられています ( 事業分離等会計基準 144) 2 現物分配に係る税法上の取扱い (1) 完全支配関係のない法人間で現物分配が行われた場合 ( 非適格現物分配の場合 ) 1 現物分配法人における税務処理完全支配関係のない法人間で行われた現物分配による資産の移転は 無償による資産の譲渡 ( 法法 222) に該当し 資産の譲渡益の額又は譲渡損の額は 益金の額又は損金の額に算入することとなります 非適格現物分配に係る現物分配法人の税務仕訳は 次のとおりです 当社の5% の株式を有するA 社に対し 剰余金の配当として土地 ( 時価 :1,200,000 円 帳簿価額 :1,000,000 円 ) を交付した 利益積立金額 1,200,000 円 / 土地 1,000,000 円 / 譲渡益 200,000 円 2 被現物分配法人における税務処理金銭以外の資産の移転により剰余金の配当を受けた場合においても その配当は通常の配当と何ら変わりはなく 受取配当等の益金不算入制度 ( 法法 23) の適用を受ける場合には 一定額が益金不算入となります また 移転を受けた資産の取得価額は 時価によることとなります 非適格現物分配に係る被現物分配法人の税務仕訳は 次のとおりです 当社が 5% の株式を有する B 社から 剰余金の配当として土地 ( 時価 :1,200,000 円 4

帳簿価額 :1,000,000 円 ) の交付を受けた 土地 1,200,000 円 / 受取配当金 1,200,000 円 別表四 : 受取配当等の益金不算入額 600,000 円 ( 減算 社外 ) ( 注 ) 会計上 上記 1(1)2 の処理をしていた場合には B 株式計上もれ 500,000 円 ( 加算 留保 ) の税務調整も必要となります (2) 完全支配関係のある法人間で現物分配が行われた場合 ( 適格現物分配の場合 ) 1 現物分配法人における税務処理完全支配関係のある法人間で行われる現物分配は 適格現物分配に該当し 現物分配法人は 被現物分配法人に対し 資産を適格現物分配直前の帳簿価額により譲渡したものとされます ( 法法 62 の53) このため 資産を移転したことによる譲渡損益は繰り延べられることとなります 適格現物分配に係る現物分配法人の税務仕訳は 次のとおりです 当社の 100% の株式を有する A 社に対し 剰余金の配当として土地 ( 時価 :1,200,000 円 帳簿価額 :1,000,000 円 ) を交付した 利益積立金額 1,000,000 円 / 土地 1,000,000 円 2 被現物分配法人における税務処理適格現物分配により資産の移転を受けたことにより生ずる収益も 配当を受けたことによる収益であることは明らかですが この収益に関しては 法人税法 62 条の5 第 4 項において全額益金不算入とされ 同額の利益積立金額が増加することとなります ( 法令 91 四 ) また 移転を受けた資産の取得価額は 適格現物分配直前の帳簿価額に相当する金額とされています ( 法令 123 の61) 適格現物分配に係る現物分配法人の税務仕訳は 次のとおりです 当社が 100% の株式を有する B 社から 剰余金の配当として土地 ( 時価 :1,200,000 円 帳簿価額 :1,000,000 円 ) の交付を受けた 土地 1,000,000 円 / 利益積立金額 1,000,000 円 別表四 : 適格現物分配に係る収益の益金不算入額 1,000,000 円 ( 減算 社外 ) ( 注 ) 会計上 上記 1(2)2 の処理をしていた場合には B 株式計上もれ 500,000 円 ( 加算 留保 ) の税務調整も必要となります 5