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様式 F-19 科学研究費助成事業 ( 学術研究助成基金助成金 ) 研究成果報告書 平成 25 年 5 月 15 日現在 機関番号 :32612 研究種目 : 挑戦的萌芽研究研究期間 :2011~2012 課題番号 :23659836 研究課題名 ( 和文 ) 細胞凝集塊形成による線維芽細胞からの遺伝子操作を加えない幹細胞の作成研究課題名 ( 英文 ) Making stem cells from fibroblasts by sphere formation 研究代表者貴志和生 (KISHI KAZUO) 慶應義塾大学 医学部 教授研究者番号 :40224919 研究成果の概要 ( 和文 ): われわれはマウス成獣由来の培養線維芽細胞を非接着性培養皿で培養を行い細胞凝集塊を形成することで マウス成獣皮膚由来の線維芽細胞を用いて毛包の再生を可能とした 本研究はマウス成獣由来培養線維芽細胞を非接着性培養皿を用いることで 細胞どうしを強制的に凝集させて培養することで 遺伝子操作を行うことなく 線維芽細胞を未分化な状態の幹細胞にし またどの程度の未分化な状態の幹細胞にまで変化させることができるかどうかを検討した 研究成果の概要 ( 英文 ):By culturing adult murine fibroblasts on non-adhesive condition, it became possible to regenerate hair follicles. The present study tried to show how to make stem cells from fibroblasts by culturing non-adhesive culturing dish and make spheroids. 交付決定額 ( 金額単位 : 円 ) 直接経費 間接経費 合計 交付決定額 2,800,000 840,000 3,640,000 研究分野 : 医歯薬学科研費の分科 細目 : 外科系臨床医学 形成外科学キーワード : 組織培養 移植学 1. 研究開始当初の背景 真皮の中に存在する Skin derived Skps はその後の研究から様々な細胞に分化することが示されているが われわれは precursors(skps) は 培養皿底面に接着せず 細胞同士が細胞凝集塊を形成する これは培地に増殖因子を添加することで in vitro で表皮幹細胞や造血幹細胞の幹細胞の特徴であるコロニーを形成する能力を有している細胞を選択的に分離する手技と解釈される このことから Skps は真皮由来の幹細胞であると考えられている Skps の幹細胞性によりコロニーを形成し細胞凝集塊を形成するのか あるいは最初に細胞凝集塊を形成する結果 幹細胞性を獲得するのかという疑問に至った 後者の観点からわれわれは 細胞が培養皿底面に接着しないように 超親水性の培養皿を用いることで細胞に強制的に細胞凝集塊を形成させて その動態を探っている

Skps の niche は毛乳頭であるされていて ともに毛包誘導能を有している このことから発展し われわれはマウス成獣由来の培養線維芽細胞を非接着性培養皿で培養を行い 従来培養を重ねていない毛乳頭細胞や Skps でしか観察されなかった毛包誘導を 細胞凝集塊を形成することで 培養を行ったマウス成獣皮膚由来の線維芽細胞を用いても再現することが出来た つまり線維芽細胞が底面に接着せず 細胞凝集塊を形成することで幹細胞に近い性質を持つに至ったのではないかと予測した 2. 研究の目的本研究はマウス成獣由来培養線維芽細胞を非接着性培養皿を用いることで 細胞同士を強制的に凝集させて培養することで 遺伝子操作を行うことなく 線維芽細胞を未分化な状態の幹細胞にし またどの程度の未分化な状態の幹細胞にまで変化させることができるかどうかを検討した 3. 研究の方法毛包誘導能の獲得ということは 未分化の状態に戻るということである 本研究では 2 次元培養で増殖させたマウス成獣皮膚由来線維芽細胞を一定期間 超親水性培養皿で培養を行うことで細胞凝集塊を作成し 経時的にこれまで報告されている様々な幹細胞で発現している遺伝子発現の検討を行った マウス成獣由来線維芽細胞を 非接着性培養皿を用いて細胞凝集塊の作成を行った 凝集塊作成後 さまざまな時間の後にRNAを採取し real time PCR を用いてさまざまな未分化幹細胞で特異的に発現している遺伝子の発現を観察した C57bl/6J マウス成獣皮膚組織から線維芽細胞を 10%FBS 添加 DMEM 培地を用い て 増殖させる 15-20 継代培養を行った後に 細胞を回収し超親水性培養皿 ( 住友ベークライト スミロンセルタイトX ) 上で培養を開始する これまでの研究から 非接着性培養皿に変更後に同様に血清添加培地を用いていると 細胞が脂肪に分化することが分かっているので 培地は Skps の培養と同様の bfgf(40ng/ml),egf(20ng/ml) を添加した HamF-12 無血清培地に変更した 非接着性培養皿で培養を開始し 同じく 2 次元培養で培地のみ無血清培地に交換をしたものから RNA を抽出し cdna に変換した後に real time PCR により これまでに報告されている様々な未分化幹細胞で発現しているとされる遺伝子発現につき 経時的な変化を検討した また タンパクも同様に回収を行い 変化のあった遺伝ににつき Western blotting を用いてタンパクレベルでの変化を確認した C57bl/6Jマウス胎生 17 日胎仔由来の真皮間葉系細胞を 10%FBS 含有のDMEM 培地で接着培養を行い 8-10 継代目の細胞を トリプシン処理で浮遊させ EGF, bfgf, B27を添加したDMEM/F12 混合培地で寒天上に播種し 細胞凝集塊を形成させた 経時的に実態顕微鏡で形態を観察するとともに 最長 4カ月間培養を行った後 再び二次元接着培養に戻し 細胞の生存の有無を確認した また 細胞凝集塊形成後 1 週の細胞を トリプシン処理で個々の細胞に分解した後 poly-l-lysinでコートした培養皿に播種し NGF, NT3, BDNFを添加したDMEM/F12 混合培地で 神経細胞への分化誘導を試みた また 経時的に細胞凝集塊からタンパクを抽出し Western blottingにより N-cadherin, E-cadherin, β -catenin, α -smooth muscle actin (α-sma) の発現の観察を行った 凝集塊形成後 1 週の細胞を4% パラフォルムアルデヒド固定後に Alexa-488

Cholera toxin B subunit (Molecular Probes, Inc., Carlsbad, CA) を用いてlipid raft の観察を rabbit anti-phospho-akt (Upstate Cell Signaling, Charlottesville, VA) を用いて活性化 Aktの観察を コンフォーカル顕微鏡により行った さらに 経時的に細胞凝集塊を採取し total RNAを抽出しcDNAに変換した その後 real time PCRにより 未分化な細胞で発現しているさまざまな因子のうち klf4, oct3/4, sox2, c-myc, cxcr4, CD133, nanog, pou5f1の発現を検討した 4. 研究成果凝集塊を形成し 無血清培地で培養を続けた間葉系細胞は 徐々に形が小さくなりながらも 凝集塊を形成し続けた 細胞ひとつひとつの形態を観察すると 核に比べて細胞質の割合が徐々に少なくなってゆく現象が観察された 一方で 高栄養の 10%FBS 入りの DMEM 培地を用いて培養を行うと 徐々に細胞質内に脂肪滴を含有し 浮遊し培養皿から消失していった 細胞凝集塊を形成した状態で4ヶ月間培養し その後トリプシン処理により単一の細胞に分解し 二次元接着培養を行ったところ 細胞は細胞皿底面に接着し 増殖した このことから細胞凝集塊の状態で 細胞が生存していたことが確認された 二次元培養再開初期の細胞は小型で分裂速度も遅かったが 次第に細胞は増大するとともに 増殖能も回復した このことから 細胞が本培養条件下で冬眠状態であったことが示唆された 冬眠関連因子の二次元培養細胞と細胞凝集塊を比較したところ 細胞凝集塊では細胞表面に lipid raft の形成がみられ 活性化 Akt は核に集積しなかった また Notch1 は 細胞凝集塊を形成した一部の細胞の表面に観察された 神経細胞への分化誘導を行ったところ 細胞凝集塊を形成した細胞の一部でニューロンへの分化を認めた SKPs の神経細胞への分化誘導と比較したところ 神経細胞への分化は SKPs の方が有意であった 細胞凝集塊の形成は 培地に EDTA を添加することで完全に凝集が抑制されたので カルシウム依存性と考えられた そこでカドヘリンに着目し発現を観察したところ 古典的 Wnt シグナルを制御する因子であるカドヘリン類の中で 神経幹細胞での発現上昇が報告されている N-cadherin や β-catenin が 細胞凝集塊形成後に著明な発現の上昇を認めた 逆に α-sma は二次元接着培養の際は強く発現しているが 細胞凝集塊形成後に発現が低下した 各種幹細胞において発現が報告されている未分化マーカーのうち sox-2 CD133 cxcr4 が凝集塊形成後に二次元培養に比べ発現が上昇した pou5f1 も細胞凝集塊形成により相対的に発現の上昇を認めた 凝集塊は 4カ月の長期にわたり無血清培地で生存することが確認できたが 10%FBS 添加の培地で培養すると 次第に細胞質内に脂肪滴を有し 浮遊し培地交換の際に消失していった SKPs は同じ条件で培養を行うと脂肪分化することが示されているので 2 非接着培養で得られた細胞凝集塊も SKPs と同様に脂肪分化したものと考えられた 神経系への分化を観察したところ 神経細胞への分化は認められたが SKPs と比較するとその数は少なかった 本実験は 細胞凝集塊形成後 1 週間という比較的短期間の培養後に行ったので 培養期間の差が関与している可能性はある 今後さらなる検討を行いたい

造血細胞や表皮角化細胞は分化の指標となるマーカーは詳細に研究されているが 間葉系細胞は 分化マーカーは詳細には判明していない その中で Gabbiani らは 線維芽細胞は分化してα-SMA 陽性の筋線維芽細胞になると報告している 3 培養皿底面に接着すると間葉系細胞はα-SMA を有するが 細胞凝集塊を形成するとα-SMA の発現は消失した この細胞凝集はカルシウム依存性であることから 接着の原因となっている因子につき検討を行ったところ N-cdherin とβ -catenin が上昇していた N-cdherin は 未分化性維持との関係は不明であるが 未分化神経幹細胞での発現は示されている これらのことから 二次元接着培養を行っていると間葉系細胞はαSMA を細胞骨格として有し 分化 した状態となっているが 浮遊し細胞同士が接着すると細胞骨格が変化し これとともに N-cadherin が発現が上昇した カドヘリンの発現が上昇することで β -catenin が細胞膜に固定され 古典的 Wnt シグナルが減少することも考えられたが β -catenin のタンパク量自体も細胞凝集塊形成後に上昇していた このようなことから 細胞骨格の変化が 接着因子の変化を引き起こし Wnt シグナルを含めたシグナル伝達系に影響を与えた可能性も考えられた 山中 4 因子を含め さまざまな幹細胞で発現している未分化マーカーについて発現を観察したところ sox2, CD133, cxcr4 が二次元培養に比べ著しく上昇していた また pou5f1 も二次元培養に比べ発現が上昇していた 今回調べたその他の Klf4, Oct3/4 については上昇が認められなかった 冬眠関連因子の発現と考え合わせると 非接着性培養皿で細胞凝集塊を形成させることで 培養を行った間葉系細胞が未分化な幹細胞様の細胞に変化 または培養によりこれらの細胞が 選択された可能性が示唆された 5. 主な発表論文等 ( 研究代表者 研究分担者及び連携研究者には下線 ) 雑誌論文 ( 計 3 件 )1: Kishi K, Okabe K, Shimizu R, Kubota Y. Fetal skin possesses the ability to regenerate completely: complete regeneration of skin. Keio J Med. 2012 Dec;61(4):101-8. PubMed PMID: 23324304. 査読有 2: Shimizu R, Kishi K. Skin graft. Plast Surg Int. 2012;2012:563493. doi: 10.1155/2012/563493. Epub 2012 Feb 6. PubMed PMID: 22570780; PubMed Central PMCID: PMC3335647. 査読有 3: Shimizu R, Okabe K, Kubota Y, Nakamura-Ishizu A, Nakajima H, Kishi K. Sphere formation restores and confers hair-inducing capacity in cultured mesenchymalcells. Exp Dermatol. 2011 Aug;20(8):679-81. doi: 10.1111/j.1600-0625.2011.01281.x. Epub 2011 Apr 27. PubMed PMID: 21521371. 査読有 学会発表 ( 計 0 件 ) 図書 ( 計 0 件 ) 産業財産権 出願状況 ( 計 0 件 ) 取得状況 ( 計 0 件 )

その他 ホームページ等 6. 研究組織 (1) 研究代表者貴志和生 (KISHI KAZUO) 慶應義塾大学 医学部 教授研究者番号 :40224919 (2) 研究分担者なし (3) 連携研究者なし