Untitled

Similar documents
負荷試験 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時 )

2006 PKDFCJ

平成14年度研究報告

fpj

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

脂肪滴周囲蛋白Perilipin 1の機能解析 [全文の要約]

Untitled

低カルシウム/低リン血症の成因

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

<4D F736F F D EA95948F4390B3817A938C91E F838A838A815B835895B68F F08BD682A082E8816A5F8C6F8CFB939C F

ページ、インデント

免疫学的検査 >> 5C. 血漿蛋白 >> 5C146. 検体採取 患者の検査前準備検体採取のタイミング記号添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料採取量測定材料ネ丸底プレイン ( 白 ) 尿 9 ml 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60

学位論文の要約

Microsoft Word - FHA_13FD0159_Y.doc

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

-119-

Microsoft Word docx

日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

症例 A: 30 歳 女性 半年くらい前から徐々に全身倦怠感が増強 診察時の検査で BUN 130 mg/dl ( 正常値 : 9~20) クレアチニン 11.4 mg/dl ( 正常値 : 0.5~1.0) である 症例 B: 38 歳 男性 10 年前から高血圧を指摘され 6 年前から高血圧が悪

(Microsoft PowerPoint - ASC-WTQ[\223\307\202\335\216\346\202\350\220\352\227p] [\214\335\212\267\203\202\201[\203h])

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

<4D F736F F D208A7788CA90528DB895F18D908F912097E996D893DE8C8E2E646F63>

糸球体で濾過されたブドウ糖の約 90% を再吸収するトランスポータである SGLT2 阻害薬は 尿糖排泄を促進し インスリン作用とは独立した血糖降下及び体重減少作用を有する これまでに ストレプトゾトシンによりインスリン分泌能を低下させた糖尿病モデルマウスで SGLT2 阻害薬の脂肪肝改善効果が報告

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

Case 高カルシウム血症と腎不全の78歳の男性 ケースのプレゼンテーション博士Sahirカリム(医学)は:78歳の男性があるため、高カルシウム血症および腎不全のこの病院に入院しました。患者は現在の入院前に約4ヶ月まで、彼のいつも健康にしていました。彼はその後、呼吸困難、咳、肋骨の痛み、脇腹の痛みのこの病院に入院していた、とありました血尿の1つのエピソードが伝えられる1週間早く発生しました。検査では、バイタルサインは正常でした。肺や収縮期駆出性雑音(グレード2/6)の両方のベースでラ音

エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン そして時期に関して, まだまだ検討すべき課題が多く残っていると言わざるをえない. しかし, 血清リン高値と死亡リスク上昇の関係は確かなものであり b), 推奨度は C とした. 文献検索 PubMed( キーワード :phosphorus OR phos

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

別紙様式 2( 第 3 条関係 ) No.1 光科学研究科光科学専攻 学籍番号 :D 学位論文要旨 氏 名 : 伊藤哲平 赤外イメージング 赤外二色性イメージングによる新規骨形態計測法の開発と慢性腎臓病の病態解析 研究背景 骨の健康指標である骨強度は 原発性骨粗鬆症や骨軟化症など骨疾患

2015 年度 SFC 研究所プロジェクト補助 和食に特徴的な植物性 動物性蛋白質の健康予防効果 研究成果報告書 平成 28 年 2 月 29 日 研究代表者 : 渡辺光博 ( 政策 メディア研究科教授 ) 1

TDM研究 Vol.26 No.2

問 85 慢性腎不全による透析導入基準について正しいのは次のうちどれか 1 透析導入基準の点数が 60 点以上になれば透析導入の判断となる 2 腎機能評価ではクレアチニンが評価項目である 3 血管合併症があれば基準点に加算される 4 視力障害は透析導入基準の評価には含まれない 5 日常生活の障害に関

メディカルスタッフのための腎臓病学2版

Microsoft Word - 学位論文内容の要旨 .doc

ピルシカイニド塩酸塩カプセル 50mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにピルジカイニド塩酸塩水和物は Vaughan Williams らの分類のクラスⅠCに属し 心筋の Na チャンネル抑制作用により抗不整脈作用を示す また 消化管から速やかに

スライド 1

H29_第40集_大和証券_研究業績_C本文_p indd

者における XO 阻害薬の効果に影響すると予測される 以上の議論を背景として 本研究では CKD にともなう FX および尿酸の薬物体内動態 ( PK ) 変化と高尿酸血症病態への影響を統合的に解析できる PK- 薬力学 (PD) モデルを構築し その妥当性を腎機能正常者および CKD 患者で報告さ

使用上の注意改訂のお知らせ スピーゲル

<4D F736F F D F4390B38CE3816A90528DB88C8B89CA2E646F63>

Microsoft Word - 11福本.doc

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

現況解析2 [081027].indd

1 ムを知ることは, 治療介入時の注意点を知る上で重要である. つまり, 臓器の組織還流を維持するために腎での水と Na 保持作用は重要な代償機構である. 利尿薬投与によって体液量を減少させれば, 浮腫は減少するが, 同時に組織還流も減少するため, その程度によっては臓器障害をきたしうることをよく理

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

1治療 かっていたか, 予想される基礎値よりも 1.5 倍以上の増加があった場合,3 尿量が 6 時間にわたって 0.5 ml/kg 体重 / 時未満に減少した場合のいずれかを満たすと,AKI と診断される. KDIGO 分類の重症度分類は,と類似し 3 ステージに分けられている ( 1). ステー

犬の糖尿病は治療に一生涯のインスリン投与を必要とする ヒトでは 1 型に分類されている糖尿病である しかし ヒトでは肥満が原因となり 相対的にインスリン作用が不足する 2 型糖尿病が主体であり 犬とヒトとでは糖尿病発症メカニズムが大きく異なっていると考えられている そこで 本研究ではインスリン抵抗性

H26_大和証券_研究業績_C本文_p indd

本文1-5.indd

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを


関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

Microsoft Word - 3.No._別紙.docx

第 Ⅰ 部 総論 11 第 Ⅰ 部 総論

卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

九州大学病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(慢性重症虚血肢(閉塞

(2) 健康成人の血漿中濃度 ( 反復経口投与 ) 9) 健康成人男子にスイニー 200mgを1 日 2 回 ( 朝夕食直前 ) 7 日間反復経口投与したとき 血漿中アナグリプチン濃度は投与 2 日目には定常状態に達した 投与 7 日目における C max 及びAUC 0-72hの累積係数はそれぞれ

検査項目情報 6154 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4E. 副腎髄質ホルモン >> 4E016. カテコールアミン3 分画 カテコールアミン3 分画 [ 随時尿 ] catecholamines 3 fractionation 連絡先 : 3764 基本情報 4E016

市民公開講座(2011/04/16)


研究目的 1. 電波ばく露による免疫細胞への影響に関する研究 我々の体には 恒常性を保つために 生体内に侵入した異物を生体外に排除する 免疫と呼ばれる防御システムが存在する 免疫力の低下は感染を引き起こしやすくなり 健康を損ないやすくなる そこで 2 10W/kgのSARで電波ばく露を行い 免疫細胞

Microsoft Word - Ⅲ-11. VE-1 修正後 3.14.doc

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

0724

Wnt3 positively and negatively regu Title differentiation of human periodonta Author(s) 吉澤, 佑世 Journal, (): - URL Rig

福岡大学薬学部薬学疾患管理学教授

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

Microsoft Word - (最終版)170428松坂_脂肪酸バランス.docx

H24_大和証券_研究業績_p indd

Microsoft Word 内藤.docx

( 様式甲 5) 氏 名 忌部 尚 ( ふりがな ) ( いんべひさし ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲第 号 学位審査年月日 平成 29 年 1 月 11 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Benifuuki green tea, containin

博第265号

第15回日本臨床腫瘍学会 記録集

Untitled

<4D F736F F D208FBC F95B65F90528DB88C8B89CA97768E7C2E646F63>

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

研究成果報告書

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

平成24年7月x日

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

腎動脈が瘤より分枝し腎動脈再建を要した腹部大動脈瘤の3手術例

BSA(m 2 )= 体重 (kg) 身長 (cm) =1.27m 2 となり 173.6mL/min/1.73m 2 を 1.27m 2 である患者個人の腎機能に換算 ( で補正を外すと ) すると 127.4mL/min になりますが これでも実測 CCr

妊婦甲状腺機能検査の実施成績 東京都予防医学協会母子保健検査部 はじめに て乾燥させたろ紙血液を検体とする 検体は本会の 妊婦の甲状腺機能異常による甲状腺ホルモンの 過不足は 妊娠の転帰に影響を与えるばかりでなく 代謝異常検査センターに郵送される 2 検査項目と検査目的および判定基準 生まれてくる子

研究成果報告書

デベルザ錠20mg 適正使用のお願い

研究成果の概要ビタミンCを体内で合成できない遺伝子破壊マウス (SMP30/GNL 遺伝子破壊マウス ) に1 水素 (H2) ガスを飽和状態 (0.6 mm) まで溶かした水素水 ( 高濃度水素溶解精製水 ) を与えた群 2 充分なビタミンCを与えた群 3 水のみを与えた群の 3 群に分け 1 ヶ

日本内科学会雑誌第105巻第4号

Untitled


検査項目情報 1174 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4F. 性腺 胎盤ホルモンおよび結合蛋白 >> 4F090.HCGβ サブユニット (β-hcg) ( 遊離 ) HCGβ サブユニット (β-hcg) ( 遊離 ) Department of Clinical Lab

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

Transcription:

上原記念生命科学財団研究報告集, 23(2009) 175. 破骨細胞阻害因子 (OPG) とリン調節ホルモンの相互作用の解明 大城戸一郎 Key words:fibroblast growth factor 23(FGF-23), 破骨細胞分化阻止因子, リン * 東京慈恵会医科大学医学部内科学 緒言生体内のリン代謝調節は, 腎臓からの排泄 腸管からの吸収 骨との交換 細胞膜における輸送のバランスにより行われているが, 血中リン濃度を規定している主たる因子は腎臓からのリン排泄で, 吸収されたリンの 90% が糸球体から濾過され, その 80 90% が尿細管で再吸収され尿中へ排泄される. ほとんど近位尿細管の管腔側の Na-Pi cotransporter type IIa(NaPi IIa) による再吸収によって決まっている. このため, 腎機能が正常であれば高リン血症はほとんど生じない. しかし, 腎機能が低下するとリンが蓄積し,1α,25(OH) 2 D 3 活性化障害が生じる. このことが, 低 Ca 血症を介して間接的にあるいは直接的に副甲状腺ホルモン ( 以下 PTH) の合成分泌を刺激する. これが, 二次性副甲状腺機能亢進症の病態形成の仮説であった. しかし, 近年 fibroblast growth factor 23(FGF-23) と高い破骨細胞分化阻止因子 (OCIF:Osteoclast inhibitory factor / OPG :Osteoprotegerin) が二次性副甲状腺機能亢進症の病態形成に重要な役割を演じていることが想定されている. FGF-23 は常染色体優性遺伝性低リン血症性くる病 (ADHR) の家系の検討から低リン血症の原因因子として同定されたリン利尿ホルモンである. 一方,OPG は尿毒症病態における骨の抵抗性に関与していると考えられている. 保存期腎不全患者の血中 OPG 濃度は, 腎機能に反比例して上昇し, 透析患者では in vitro で十分に破骨細胞形成抑制効果を示す濃度に達していると報告され, 腎不全患者の血中で増加している OPG が PTH による破骨細胞性骨吸収促進作用を抑制するならば骨芽細胞機能は正常でも破骨細胞に PTH 作用に対する抵抗性が存在する可能性がある. さらに FGF-23 と OPG が腎不全患者の骨病変に関与するだけでなく, 血管石灰化などの生命予後に深く関わる病態とも関連することが明らかになってきている. また, 近年では FGF-23 の産生部位は骨細胞であることから,OPG が骨代謝を介して FGF-23 の合成分泌に影響を与えている可能性がある. しかしながら,FGF-23 や OPG が PTH あるいは 1α,25(OH) 2 D 3 調節系と如何なるネットワークを形成しているかは不明な点が多い. そこで我々は OPG ノックアウトマウスを用いて二次性副甲状腺機能亢進症あるいは血管石灰化病態下での, 新しい液性因子の挙動を明らかにする. 方法 10 週齢の雄性 OPG ノックアウトマウスを通常食群と高リン食群の 2 群にわけて飼育した. 通常食群はリン含有量 0.6% とし, 高リン食群は 1.2% として, いずれも自由摂食とした. 食事中のカルシウム含有量は両群とも 0.6% とした. コントロールとして wild-type マウス (C57BL/6J 雄性マウス ) を用い, これも同様に 2 群にわけて飼育した ( 各群とも n=8).22 週齢時に血液および尿のサンプルを採取し, 生化学的検査を行った. サンプル採取後,diethylether の過量投与によって安楽死させ,Northern blot と免疫組織学的検査のために片腎を採取した. 血清 intact PTH (ipth) 濃度はマウス intact-pth ELISA キット (Immutopics Inc.,San Clemente,CA,USA) によって測定し, 血清 FGF-23 濃度は full-length FGF-23 ELISA キット (Kainos Inc.,Tokyo,Japan) によって測定した. * 現所属 : 東京慈恵会医科大学医学部腎臓高血圧内科 1

結果 22 週齢における各群の血清リン濃度, 血清カルシウム濃度, 血清クレアチニン濃度にはいずれも有意差は認められなかっ た (Table 1). Table 1. Serum biochemical data of the mice at 22 weeks of age a p < 0.05 vs. other groups; bp < 0.05 vs. WT Pi = 0.6%; cp < 0.01 vs. WT Pi = 0.6%; dp < 0.01 vs. OPG. Wild-type マウスの通常食投与群は, 他の 3 群に比して有意に体重が重かった.Wild-type マウスでも OPG ノックアウトマウスでも, 高リン食を投与した群では通常食を投与した群に比して %TRP は有意に低下しており,wild-type マウスでは通常食群では 83.0±2.9% であったのに対し, 高リン食群では 51.8±7.24% に低下していた. しかしながら OPG ノックアウトマウスでは, 通常食群で 87.41±3.74% であったのに対して高リン食群では 68.43±8.38% と,%TRP は有意に低下していたものの,OPG ノックアウトマウスでは比較的軽度の低下にとどまった. NaPi2a mrna は通常食投与時には wild-type マウスと OPG ノックアウトマウスの間で有意な差は認められなかった. しかし,wild-type マウスでは高リン食投与によって有意に減少したのに対し,OPG ノックアウトマウスでは有意な変化は認められなかった (Fig. 1). 2

Fig. 1. The NaPi2a mrna and GAPDH expressions were detected by Northern blot analysis a) The NaPi2a mrna and GAPDH expressions were detected by Northern blot analysis (n = 8 for each group). b) According to the NaPi2a/GAPDH ratio, NaPi2a mrna expressions did not differ between WT mice and OPG KO mice in normal diet. It was suppressed in WT mice, but it was not significantly suppressed in OPG KO mice under high-phosphate diet. また mrna と同様に wild-type マウスでは高リン食投与群で通常食投与群に比して有意に発現量が低下していたのに対し, OPG ノックアウトマウスではその変化が認められなかった. リン代謝調節因子についての検討では, 血清 ipth 濃度は wildtype マウスにおいて高リン食投与時に増加する傾向がみられたが有意な変化ではなく, 血清カルシトリオール濃度も 4 群間で有意差を認めなかった (Table 1). 一方で, 血清 FGF-23 濃度は,wild-type マウスでは高リン食投与群 (216.7±31.6pg/ml) において通常食投与群 (71.1±13.1pg/ml) よりも有意に高値を示していたのに対して,OPG ノックアウトマウスでは通常食投与群 (46.6±11.7pg/ml) と高リン食投与群 (89.7±17.4pg/ml) との間で有意差はみられなかった (Fig. 2) 3

Fig. 2. Serum levels of fibroblast growth factor-23. Serum levels of fibroblast growth factor-23 in wild-type (WT) (A) and osteoprotegerin (OPG) knockout (KO) mice fed a high phosphate (Pi) diet (B) (n = 8 for each group). Serum FGF23 levels significantly elevated by oral phosphate load in WT mice, though the levels did not change in OPG KO mice. 考察 Wild-type マウス,OPG ノックアウトマウス両者では, 経口リン負荷をしても血清リン濃度は通常食時と変化しておらず, 主に腎からの排泄を増加させることによって血清リン濃度が一定に保たれていたと考えられた. しかしながら,%TRP の抑制率は wild-type マウスに比して小さく,NaPi2a の発現に関する検討では,mRNA の発現量も蛋白の発現量も経口リン負荷による変化はみられなかった. このことから,OPG ノックアウトマウスでは経口リン負荷に対する反応性が変化していると考えられた. 血清 ipth 濃度は wild-type マウスで経口リン負荷時に上昇する傾向が見られたが有意ではなく,4 群間で有意差は認められなかった. カルシトリオールも同様に有意な変化はみられなかった.wild-type マウスでは経口リン負荷によって血清 FGF-23 濃度が著明に上昇していたのに対し,OPG ノックアウトマウスでは変化がみられなかった. このことから,wild-type マウスでは経口リン負荷時は血清 FGF-23 濃度が上昇して腎尿細管におけるリン再吸収を抑制し, リン排泄量を増加させることによって血清リン濃度を一定に保つ機構が働くが,OPG ノックアウトマウスではリン負荷に対する FGF-23 の反応性が消失しており, 結果として血清リン濃度は一定に保たれたものの腎における NaPi2a 発現量の変化はなく, リン再吸収率の低下も軽度にとどまっていたと考えられた 1). 本研究の共同研究者は, 東京慈恵会医科大学の各務志野, 横山啓太郎である. 4

文献 1) Kagami, S., Ohkido, I., Yokoyama, K., Shigematsu, T. & Hosoya, T. : Osteoprotegerin affects the responsiveness of fibroblast growth factor-23 to high oral phosphate intake. Clin. Nephrol., 70:306-311, 2008. 5