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Transcription:

東京都港区南青山 2-5-20 TEL: 03-5775-3163 URL:http://www.tdb.co.jp/ ワインメーカー 山梨県 が 69 社で全国最多 ~ ワインブームでワイナリーは増収も ブドウの安定確保などが課題 ~ ~ はじめにユネスコ無形文化遺産に登録され ヘルシーさなどで世界的に 和食 人気が高まるなか 海外では和食にマッチする酒類として 日本ワイン の存在感が高まっている 日本ワイン は 国産ブドウを 100% 使用して国内で醸造されたワインのことで 近年では日本固有のブドウ 甲州 で醸造された日本ワインが国際コンクールで上位入賞を果たすなど 国際的な評価も獲得している 国内市場でも 2015 年のワイン消費数量が過去最高の約 37 万 kl を記録するなど ワインの人気が高まっている こうしたなか 2019 年 4 月からチリ産輸入ワインの関税が完全撤廃されるほか 日 EU 経済連携協定 ( 日 EU EPA) ではワインなど酒類の関税を即時撤廃することで大枠合意した これにより安価なチリ産や フランスやイタリアなど EU 産輸入ワインが増加することで国内ワイン市場の活性化が期待できる半面 日本ワインなど国産ワインとの競争激化も予想される 帝国データバンクは 信用調査報告書ファイル CCR や外部情報などを基に抽出したワイン製造業者のうち 2017 年 8 月時点の企業概要データベース COSMOS2 に収録されている 206 社を抽出 分析した 本調査では 葡萄酒醸造を行う企業全てを ワインメーカー として分析 このうち 果実酒醸造業 を主業とし 葡萄酒醸造を専門に行っている企業を ワイナリー として分析した 調査結果 ( 要旨 ) 1. ワインメーカーは全国に 206 社 このうちワイナリーは 138 社判明 本社所在地別でワインメーカーが最も多かったのは 山梨県 の 69 社 ( 33.5%) で このうち 甲州市 (33 社 ) 笛吹市 (14 社 ) 山梨市 (12 社 ) の 3 市に集中 2. ワイナリー 138 社のうち 2000 年以降に設立されたワイナリーが 36 社 ( 26.1%) となり 全体の約 4 分の 1 を占めている 3. 規模別では 従業員数 20 人以下の小規模ワイナリーが 119 社となり 全体の 8 割強を占める 売上高規模別にみると 最も多かったのは 1~10 億円未満 の 52 社 ( 37.7%) 4. ワイナリーのなかで 2016 年に 増収 となったワイナリーは約半数 増益 となったワイナリーは全体の約 6 割を占めた 一方 ブドウ価格上昇で 減益 のワイナリーもみられた 1

1. 本社所在地別 ~ 山梨県 など上位 3 道県で全体の約 5 割を占める ~ ワイン醸造を行うワインメーカーは全国に 206 社判明 本社所在地別にみると 最多は 山梨 県 の 69 社 ( 33.5%) なかでも ワインリゾート構想 などで特にワイン産業が集積し ている 甲州市 (33 社 ) 笛吹市 (14 社 ) 山梨市 (12 社 ) の 3 市に集中している 以下 長野県 の 19 社 ( 同 9.2%) 北海道 の 18 社 ( 同 8.7%) と続き 上位 3 道県で全 体の約 5 割を占めた 山梨県の 甲州 長野県の メルロー 北海道の ピノ ノワール な ど 上位 3 道県はいずれも国内有数のブドウ栽培地 銘醸地でもあり こうした高品質なブドウ 栽培 ワイン醸造に適した環境のほか ワイン特区 1 などの行政による支援が ワイナリーの 集積に影響している トップとなった山梨県では 県内ワインメーカー大手のマンズワイン や シャトー勝沼など ワ イン醸造を主業とする大手醸造メーカーが名を連ねている このほか 惣菜製造を主業とするフ ジッコ の子会社であるフジッコワイナリー や 自社工場を改修してワイナリー設備を導 入 ワイン醸造を開始した半導体部品加工の 塩山製作所など 本業とは別の事業としてワイ ン醸造を手がける企業もみられた また 5 位の東京都ではメルシャン や 富士 山ワイナリーなど大手ワイン専業メーカーのほ か サッポロビール 2 やニッカウヰスキー など の大手酒類メーカーがみられた 都道府県別 ( 上位 5 都道県 ) ワインメーカー ( ワイナリー名 ) 都道府県別ワインメーカー数 ( 上位 5 県 ) 都道府県 社数 参考 都道府県別醸造用ブドウ生産量 生産量 ( 単位 :t) 甲州市 33 16.0 長野県 6,276.2 44.0 笛吹市 14 6.8 山梨県 3,365.0 23.6 山梨市 12 5.8 北海道 1,534.5 10.8 その他 10 4.9 山形県 977.0 6.8 山梨県 長野県 北海道 山形県 東京都 69 33.5 宮崎県 369.1 2.6 19 9.2 18 8.7 14,266.7 100.0 12 5.8 平成 26 年産特産果樹生産動態等調査 10 4.9 ぶどう用途別仕向実績調査 ( 農林水産省 ) 206 100.0 都道府県 山形県 (12 社 ) 高畠ワイン ( 高畠ワイナリー ) 朝日町ワイン北海道 (18 社 ) 札幌酒精工業 ( 富岡ワイナリー ) 北海道ワイン ( 鶴沼ワイナリー ) 長野県 (19 社 ) サンクゼール ( サンクゼール ワイナリー ) アルプス 東京都 (10 社 ) サッポロビール ( グランポレール勝沼ワイナリー ) メルシャン ( シャトーメルシャン ) 0 ワイ 山梨県 (69 社 ) マンズワイン ( 勝沼ワイナリー ) サントネージュワイン ( サントネージュワイナリー ) 塩山製作所 (MGVs ワイナリー ) 30( 社 ) 20 10 5 1 2002 年に募集が始まった構造改革特区の一つ 酒類の製造免許取得には年間の最低製造数量制限 (6kL) に達することが求め られるが 果実酒では区域内の原料を使用すれば同制限が 2kL まで緩和される 2 サッポロワイン が 平成 28 年 1 月 1 日付で親会社のサッポロビール に吸収合併されたため 2

2. ワイナリー 138 社の分析 ワインメーカー 206 社のうち 果実酒醸造業 を主業とし 葡萄酒醸造を専門に行っている ワ イナリー 138 社を集計 分析した 2.1. 設立年代別 ~ ワイン特区制度などを背景に 2000 年代 が上位 ~ 設立年代別にみると 最も多かったのは 2000 年代 の 23 設立年代別社 ( 16.7%) で 2010 年代 の 13 社 ( 同 9.4%) と合わせると 2000 年以降に設立されたワイナリーが全体の約 4 分の 1 を占める 2000 年代に全国へ拡大した ワイン特区 制度が ワイナリーの新規参入を後押ししていることも要因の一つに挙げられる このほか 1964 年の東京五輪をはじめとする国際交流を通じ 本格的なワインに対する認知度が高まり 飲用が広まった 1960 年代 (18 社 同 13.0%) などが上位となった 社数 1899 年以前 9 6.5 1900 年代 2 1.4 1910 年代 3 2.2 1920 年代 7 5.1 1930 年代 17 12.3 1940 年代 10 7.2 1950 年代 6 4.3 1960 年代 18 13.0 1970 年代 6 4.3 1980 年代 13 9.4 1990 年代 11 8.0 2000 年代 23 16.7 2010 年代 13 9.4 138 100.0 2.2. 従業員数別 ~ 従業員 20 人以下の小規模ワイナリーが約 8 割を占める ~ 従業員数別にみると 最も多かったのは 5 人以下 の 75 従業員数別社数社 ( 54.3%) 次いで 6 人 ~20 人 の 44 社 ( 同 31.9%) が続き 従業員数 20 人以下の小規模ワイナリーが全体の 5 人以下 75 54.3 6 人 ~20 人 44 31.9 86.2% を占めた これらの小規模ワイナリーの中には 自社 21 人 ~50 人 14 10.1 畑に特化し ブドウ栽培 醸造を一貫して行うドメーヌ型の 51 人 ~100 人 4 2.9 101 人以上 1 0.7 ワイナリーや 家族経営による極小規模なワイナリーもみられた 138 100.0 一方 従業員数が 51 人以上のワイナリーは 5 社 ( 同 3.6%) にとどまっており ワイン醸造は 少人数で構成された小規模ワイナリーが多い 2.3. 代表者年代別 ~ 50 代以上が全体の約 8 割を占める ~ 代表者年代別にみると 最も多かったのは 60 代 と 70 代以上 の 34 社 ( 29.6%) 50 代 の 27 社 ( 同 23.5%) がこれに続き 50 代以上で全体の約 8 割を占めている 代表者年代別 社数 30 代以下 6 5.2 40 代 14 12.2 50 代 27 23.5 60 代 34 29.6 70 代以上 34 29.6 115 100.0 代表者年齢が判明した企業のみ 3

2.4. 売上高規模別 ~ 1 億円未満が全体の 56.5% を占める ~ 売上高規模別にみると 最も多かったのは 1~10 億円未満 の 52 社 ( 37.7%) 以下 5000 万円未満 の 50 社 ( 同 36.2% ) 5000 万 ~1 億円未満 の 28 社 ( 同 20.3%) と続き 全体では約 6 割のワイナリーが売上高 1 億円未満となった 売上高規模別 社数 5000 万円未満 50 36.2 5000 万 ~1 億円未満 28 20.3 1~10 億円未満 52 37.7 10 億円以上 8 5.8 138 100.0 2.5. 売上高動向 ~ ワインブームを背景に 増収 企業が 45.5% を占める ~ ワイナリーの売上高動向をみると 2016 年 (1 月期 ~12 月期 ) は 増収 となったワイナリー が 45.5% を占めた 近年のワインブームを背景に日本ワインなどの増産を行ったことで 増収と なったワイナリーが多かった ワイナリーの売上高動向 一方 減収 となったワイナリー は 21.2% となった 原料ブドウの購 2012 増収 43.6% 横ばい 33.3% 減収 23.1% 入量減少により出荷本数が抑制され 2013 44.3% 31.1% 24.6% たケースや 輸入ワインとの競争激 化 天候不順を背景とした観光客減 2014 57.3% 27.4% 15.3% 少などが要因となり 減収となった ワイナリーもみられた 2015 40.3% 34.9% 24.8% 2016 45.5% 33.3% 21.2% ( 年 ) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 2.6. 収益動向 ~ 原料ブドウの価格上昇で 利益確保が困難なケースも ~ ワイナリーの収益動向をみると 2016 年で最も多かったのは 増益 の 57.1% 一方 減益 となったワイナリーは約 3 割となり 2 年連続で赤字を計上した 赤字 のワイナリーも約 1 割に上る こうしたワイナリーでは 初期投資負担のほか 日本ワイン 人気に伴う国産ブドウの調 達価格上昇により 利益の確保が難しくなっているケースがみられた また 低価格帯のテーブルワインなどを主力とするワイナリーの中には 安価な輸入ワインとの競争で利 2012 2013 増益 57.8% 45.5% ワイナリーの収益動向 36.4% 減益 33.3% 2.3% 横ばい 0.0% 赤字 8.9% 15.9% 0.0% 益が圧迫されているケースもみられ 2014 52.9% 37.3% 9.8% た 0.0% 2015 40.4% 50.0% 9.6% 2.0% 2016 57.1% 30.6% 10.2% ( 年 ) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 1 増益 は 比較年において赤字から黒字転換した企業を含む 2 減益 は 比較年において黒字から赤字転落した企業を含む 3 赤字 は 比較年において連続赤字を計上した企業 4

3. まとめ調査の結果 ワイン醸造を手がけるワインメーカーは 206 社判明し このうち約 3 割が山梨県に本社を置く企業だった また ワイン醸造を主業とするワイナリーでは小規模で 特にワイン特区制度が広がった 2000 年代以降に設立された企業が多いことが分かった 業績をみると 近年のワインブームを背景に増収企業が 45.5% を占めるものの 設備投資負担のほか ブドウの育成 醸造状況によって収益が左右されているケースもみられた こうした経営動向は 装置産業的 農業的な性格を持つワイナリーの特徴と言えよう 今後も 国内ワイン市場の安定した成長や 日 EU EPA 交渉による EU 側の酒類市場開放などで日本ワインの需要拡大が予想されるなど 日本ワイン産業の発展に追い風となることが期待されている しかしながら ワイナリーの多くが原料となるブドウを契約栽培や購入に依存しているほか 自社農園でのブドウ調達は約 1 割 3 に留まっており 量的 価格的に安定した国産ブドウの確保が課題となる これに加え 高付加価値ワインを追求するワイナリーでは EU 産ワインに比肩するブランド化が求められる テーブルワインなど低価格帯を主力とするワイナリーにおいても 価格面で優勢な輸入ワインとの競争がさらに激化することが予想され 対策が急がれよう こうした国内外におけるワイン市場の動向に加え 2018 年 10 月から施行される 日本ワイン の法的規制 4 などにより これまでのワインラベル表示内容が使用できなくなるワインも少なくないとみられ 事業環境への影響も想定される また ワイン産業への新規参入においても 経営規模が小さく収益力に乏しいワイナリーが多いなか ワイナリー建設など多額の設備投資資金や 経営が軌道に乗るまでの安定した収入確保 醸造したワインの販路開拓といった課題がある 一方 ワイン産業にはワインツーリズムなどをはじめとする観光産業の発展など 地域経済への波及効果も大きい そのため 生産面 経済面 PR 面等の課題を解決する行政や地域金融機関の支援など 安定したワイン産業発展のための官民一体となる継続的なサポートが求められよう 3 国内製造ワインの概況( 平成 27 年度 ) ( 国税庁課税部酒税課 2016 年 11 月 ) 4 正式名称は 果実酒等の製法品質表示基準 で 2018 年 10 月施行予定 国内で収穫されたブドウのみを 100% 使用し 日本国内で醸造されたワインのみが 日本ワイン として認められるなどの定義などが定められた 5

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