第 2 章 産業社会の変化と勤労者生活

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第 3 章 雇用管理の動向と勤労者生活 ては 50 歳台まで上昇する賃金カーブを描いており 他の国々に比して その上昇テンポも大きい また 第 3 (3) 2 図により勤続年数階級別に賃金カーブをみても 男女ともに 上昇カーブを描いており 男性において特に その傾きは大きくなっている なお 女性につ

労働市場分析レポート第 43 号平成 26 年 10 月 31 日 マッチング指標を用いたマッチング状況の分析 労働市場における労働力需給調整を評価するための指標として 就職率や充足率があるが 求人倍率が上昇する時には 就職率が上昇し充足率が低下するなどの動きがみられ それぞれ単独の利用には注意が必

( 情報化がもたらす仕事の変化 ) 情報化が急速に進展した 21 世紀初頭において 企業における情報関連投資の目的をみると 業務のスピード向上や全体的な情報共有化のためが多く 次いでコスト削減となっている ( 付 2 (1) 2 表 ) 企業の情報関連投資は 人員削減などのコスト抑制を目的としたもの

H30情報表紙 (H30年度)

29付属統計表(全体)

ニュースリリース 中小企業の雇用 賃金に関する調査結果 ( 全国中小企業動向調査 2013 年 月期特別調査 ) 年 4 月 8 日株式会社日本政策金融公庫総合研究所 3 割の企業で正社員は増加 3 社に 1 社で給与水準は上昇 従業員数 2013 年 12 月において

2. 利益剰余金 ( 内部留保 ) 中部の 1 企業当たりの利益剰余金を見ると 製造業 非製造業ともに平成 24 年度以降増加傾向となっており 平成 27 年度は 過去 10 年間で最高額となっている 全国と比較すると 全産業及び製造業は 過去 10 年間全国を上回った状況が続いているものの 非製造

28付属統計表(全体)

1 概 況

宮崎労働局 宮崎労働局発表平成 26 年 8 月 29 日解禁 報道関係者各位 雇用失業情勢 ( 平成 26 年 7 月分 ) Press Release 照会先 宮崎労働局職業安定部 部 長 上村有輝 職業安定課長 森山成人 労働市場情報官 多田真理子 ( 代表電話 )0985(38)8823 平


平成 22 年国勢調査産業等基本集計結果 ( 神奈川県の概要 ) 平成 22 年 10 月 1 日現在で実施された 平成 22 年国勢調査 ( 以下 22 年調査 という ) の産業等基本集計結果が平成 24 年 4 月 24 日に総務省統計局から公表されました 産業等基本集計は 人口の労働力状態

以前 製造業 食料品製造業 畜産食料品製造業

2. 建設産業で働く人の高齢化平成 22 年の国勢調査により産業別に就業者の年齢構成をみると 他の産業に比べ 55~59 歳層 6~64 歳層の構成比が際立って大きい ( 図 6) これらの世代は 高度経済成長期に若くして入職した世代であり また 昭和の終わりから平成にかけ建設業が拡張する過程で 中

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障害者雇用率発表資料

[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

平成 21 年経済センサス 基礎調査確報集計結果 (2) 産業分類別 - 従業者数 ( 単位 : 人 %) 北海道 全国 従業者数従業者数 (*2 (*2 A~S 全産業 A~R 全産業 (S 公務を除く )

都道府県別有効求人倍率 ( 季節調整値 ) 令和元年 5 月 広島 東京 岡山 福井 岐阜 愛知 富山 石川 香川 大阪 鳥取 群馬 三重 長野 新潟 島根 宮城 愛媛 京都 茨城 山口 熊本 福岡 大分 静岡 徳島 山形 福島 宮崎 秋田 奈良 栃木 和歌山 兵庫 岩手 山梨 千葉 鹿児島 埼玉

( その 2 鉱業 ) 寄附金交際費等寄附金支出額交際費等支出額損金算入法人数金額法人数金額法人数金額限度額 100 万円以下 万円超 万円 万円 20

第 10 表 産業大中分類別, 性別, 常用労働者の1 人平均月間現金給与額 規模 5 人以上 TL 調査産業計 年次及び月次 平成 17 年 313, , ,854 50, , ,534 61, , ,321 36,193 平

過去 10 年間の業種別労働災害発生状況 ( 大垣労働基準監督署管内 ) 令和元年 4 月末現在年別 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 H31 対前年比全産業 % (6

職業別 求人 求職バランスシート ( パート除く常用 ) 平成 30 年 8 月内容 ハローワーク旭川パート除く常用 有効求人数有効求職者数 1,400 有効求人倍率 ,200 1, ,

職業別 求人 求職バランスシート ( パート除く常用 ) 平成 30 年 9 月内容 有効求人数有効求職者数 1,400 ハローワーク旭川パート除く常用有効求人倍率 ,200 1, ,

職業別 求人 求職バランスシート ( パート除く常用 ) 平成 31 年 3 月内容 有効求人数有効求職者数 1,400 ハローワーク旭川パート除く常用有効求人倍率 , , ,

30付属統計表(全体)

Microsoft PowerPoint - ★グラフで見るH30年度版(完成版).

職業別 求人 求職バランスシート ( パート除く常用 ) 令和元年 6 月内容 有効求人数有効求職者数 1,400 ハローワーク旭川パート除く常用有効求人倍率 ,200 1, ,

28付属統計表(全体)

以前 製造業 食料品製造業 畜産食料品製造業

目次 調査結果の概要 1 小企業編 中小企業編 概況 3 概況 15 調査の実施要領 4 調査の実施要領 16 業況判断 5 業況判断 17 売上 1 売上 2 採算 11 利益 21 資金繰り 借入 12 価格 金融関連 22 経営上の問題点 13 雇用 設備 23 設備投資 価格動向 14 経営

製造業 食料品製造業 畜産食料品製造業


平成 25 年 3 月 19 日 大阪商工会議所公益社団法人関西経済連合会 第 49 回経営 経済動向調査 結果について 大阪商工会議所と関西経済連合会は 会員企業の景気判断や企業経営の実態について把握するため 四半期ごとに標記調査を共同で実施している 今回は 2 月下旬から 3 月上旬に 1,7

第 3 節食料消費の動向と食育の推進 表 食料消費支出の対前年実質増減率の推移 平成 17 (2005) 年 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 24 (2012) 食料

平成 22 年国勢調査 < 産業等基本集計結果 ( 大阪 平成 24 年 5 月 大阪市計画調整局

News Release 2018 年 8 月 1 日 香川県内民間企業の 2018 年夏季ボーナス支給見込み アンケート調査結果について 百十四銀行 ( 頭取綾田裕次郎 ) では 香川県内に本社または主工場をもつ民間企業 640 社を対象として 2018 年夏季ボーナスの支給予想について アンケー

第 10 表 産業大中分類別, 性別, 常用労働者の1 人平均月間現金給与額 規模 5 人以上 TL 調査産業計 年次及び月次 平成 20 年 300, , ,080 48, , ,954 60, , ,246 32,505 平

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労働力調査(詳細集計)平成24年平均(速報)結果の要約

C 労働 (1) 総数 ( 単位人 ) 年齢 (5 歳階級 ) 総 総数主に仕事 C-1 労働力状態 (8 区分 ), 年齢 家事のほか仕事 通勤のかたわら仕事 休業者 98,762 59,160 56,303 45,585 8,703 1, ~19 歳 6,689 1,108 9

第 2 章 我が国における IT 関連産業及び IT 人材の動向 1. IT IT IT 2-1 IT IT 大分類 A 農業, 林業 B 漁業 C 鉱業, 採 業, 砂利採取業 D 建設業 E 製造業 F 電気 ガス 熱供給 水道業 G 情報通信業 H 運輸業, 郵便業 I 卸売業, 小売業 J

2. 有期契約労働者を雇用しているか 設問 1 パート アルバイト 契約社員 嘱託 派遣社員などの有期契約労働者を雇用していますか 選択肢 1 雇用している 2 雇用していないが 今後雇用する予定 3 雇用していないが 以前雇用していた 4 雇用しておらず 今後も雇用しない予定 全体

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我が国中小企業の課題と対応策

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製造業3. 東北の産業構造 ( 製造業 ) (1) 製造業 1 概況 製造品出荷額等は 16 兆 7,600 億円で前年比 6.2% の増加 平成 26 年の東北地域の製造品出荷額等は 16 兆 7,600 億円で前年比 6.2% と3 年連続の増加となった また 全国に占める割合は5.5% と前年

08飯山(__26.2月).xls

平成 29 年度下期新潟市景況調査 ( 本報告 ) Ⅳ テーマ別調査結果 93

ユースフル労働統計2012 労働統計加工指標集

ワークス採用見通し調査

30.3 福島労働局有効求職有効求人有効求人倍率職業別 ( 常用計 ) 計一般パート計一般パート計一般パート 職業計 29,424 21,042 8,382 39,498 28,229 11, A 管理的職業

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ヒューマンタッチ総研 Monthly Report 平成 27 年 11 月 ヒューマンタッチ総研 Monthly Report 平成 27 年 11 月 ヒューマンタッチ総研レポートでは 建設業に特化して人材関連の様々な情報 最新の雇用関連データを月に 1 回のペー スで発信していきます ご愛読い

(Microsoft Word - 20\212T\220\340.doc)

2015 年 6 月 19 日 ジェトロバンコク事務所 タイ日系企業進出動向調査 2014 年 調査結果について ~ 日系企業 4,567 社の活動を確認 ~ 1. 調査目的 タイへの日系企業の進出状況については 2008 年当時の状況について ( 独 ) 中小企業基盤 整備機構が タイ日系企業進出

波及効果の具体的計算方法 直接効果の推計 1 ( 需要増加額の推計 ) 合計額 ( 単位 : 百万円 ) 開催運営費 10.0 来場者支出額 90.0 飲食費 0.6 交通輸送費 3.0 広報関連経費 1.5 施設 機器レンタル料 1.0 アルバイト人件費 1.6 警備料 2.3 宿泊費

企業経営動向調査0908

⑤資料4~8高卒状況の推移

指数でみた卸売業の動き

2. 中途採用をしたことがあるか 中途採用をしたことがある企業は 全体の 95% で あった 調査対象を 右表の 7 つの業種グループに 分類してそれぞれの傾向を分析すると 建設業 運 輸業 サービス業ではすべての企業が中途採用をし たことがあると回答した その他の業種グループで も 9 割前後の企


経済センサス活動調査速報

事業所

Ⅰ 事業所に関する集計 1 概況平成 26 年 7 月 1 日現在の本道の事業所数 ( 国及び地方公共団体の事業所を含む 事業内容不詳の事業所を含む ) は 25 万 3,139 事業所 従業者数は 245 万 7,843 人となっており 全国順位は 事業所数 従業者数ともに 東京都 大阪府 愛知県

平成 27 年 11 月 27 日公表 平成 27 年 10 月分

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平成10年7月8日

平成 28 年度エネルギー消費統計における製造業 ( 石油等消費動態統計対象事業所を除く ) のエネルギー消費量を部門別にみると 製造部門で消費されるエネルギーは 1,234PJ ( 構成比 90.7%) で 残りの 127PJ( 構成比 9.3%) は管理部門で消費されています 平成 28 年度エ

2 継続雇用 の状況 (1) 定年制 の採用状況 定年制を採用している と回答している企業は 95.9% である 主要事業内容別では 飲食店 宿泊業 (75.8%) で 正社員数別では 29 人以下 (86.0%) 高年齢者比率別では 71% 以上 ( 85.6%) で定年制の採用率がやや低い また

平成 25 年 7 月 30 日公表 平成 25 年 6 月分

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結  果  の  概  要

中小企業の雇用・賃金に関する調査結果(全国中小企業動向調査(中小企業編)2015年10-12月期特別調査)

Ⅲ 卒業後の状況調査 1 中学校 (1) 卒業者数平成 29 年 3 月の中学校卒業者数は 7 万 8659 人で 前年度より 655 人 (0.8%) 減少している [ 表 57 図 25 統計表 ] 専修学校 ( 一般課程 ) 等入学者 58 人 (0.1%) 専修学校 (

経済センサス活動調査速報

3.HWIS におけるサービスの拡充 HWISにおいては 平成 15 年度のサービス開始以降 主にハローワーク求人情報の提供を行っている 全国のハローワークで受理した求人情報のうち 求人者からインターネット公開希望があったものを HWIS に公開しているが 公開求人割合は年々増加しており 平成 27

健康保険・船員保険          被保険者実態調査報告

3 地域別の業種リストを確認 対象業種の判断は 日本標準産業分類のに基づいて行われます 経営力向上計画の 2 事業分野と事業分野別指針 欄の 事業分野 ( ) が 次ページ以降の7 都府県別の業種リストにおける対象業種 ( ) に該当するかどうかを確認して下さい 経営力向上計画の 事業分野 ( )

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

鎌倉市

⑤資料4~8高卒状況の推移(更新)_

平成 31 年 3 月 25 日公表 資料第 号 広島県 Hiroshima Pref. 広島県の賃金, 労働時間及び雇用の動き ( 基幹統計毎月勤労統計調査地方調査結果 ) 平成 31 年 1 月分 ( 速報 ) 調査対象事業所の入替について平成 30 年 1 月分から第一種

イ適用税率別の数と税割課税額税割は資本金の額により適用する税率を決めているので 適用税率別に集計することで資本規模による違いがわかります 税割の税率は標準税率 9.7%(12.3%) と制限税率 12.1%(14.7%) の 2 段階です 9.7% の税率は資本金の額が 1 億円以下のや資本金を有し

業種別会社形態一覧 ( 東証上場企業 現在 ) 大分類中分類社数割合社数割合社数割合 水産 農林業水産 農林業 % 0 0.0% % 鉱業鉱業 % % % 建設業建設業 % %

参考文献 経済産業省 (2010) 産業構造ビジョン 2010~ 我々はこれから何で稼ぎ 何で雇用するか~ 男女共同参画会議 少子化と男女共同参画に関する専門調査会 (2005) 少子化と男女共同参画に関する社会環境の国際比較報告書 日本経済研究センター中期予測班 (2015) 第 41 回中期経済

1 はじめに

ヒューマンタッチ総研 Monthly Report 平成 28 年 12 月 ヒューマンタッチ総研 Monthly Report 平成 28 年 12 月 ヒューマンタッチ総研レポートでは 建設業に特化して人材関連の様々な情報 最新の雇用関連データを月に 1 回のペー スで発信していきます ご愛読い

< 業種別 > D.I. 2 製造業主要判断 D.I. の推移 製造業 30/ /9 見込 /12 予想 < 製造業 > 当期 は 24.5( 前期比 +0.8) と景況感は横ばいであった

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平成 23 年北海道産業連関表について 北海道開発局 1 北海道産業連関表作成の趣旨 北海道開発局では 北海道の経済 社会動向を的確に把握し 北海道総合開発計画を立案 推進するための基礎資料として 昭和 30 年表からおおむね 5 年ごとに 北海道産業連関表 を作成しています なお 北海道産業連関表

1 15 歳以上人口の就業状態 富山県の 15 歳以上人口 人のうち 有業者は 人 ( 全国 6621 万 3 千人 ) と 平成 24 年と比べると 人減少しています 有業率 (15 歳以上人口に占める有業者の割合 ) についてみると 59.5%( 全国 5

ISO 9001 ISO ISO 9001 ISO ISO 9001 ISO 14001

平成27年版自殺対策白書 本文(PDF形式)

お金をめぐる最近の動き

平成 22 年度エネルギー消費統計結果概要 経済産業省資源エネルギー庁平成 24 年 4 月 エネルギー種別に見ると 最終エネルギー消費総量の 37.5% が燃料 54.8% が電力 7.4% が熱となっています 調査の対象となった非製造業 製造業 ( 石油等消費動態統計対象事業所を除く ) 業務部

ふくい経済トピックス ( 就業編 ) 共働き率日本一の福井県 平成 2 2 年 1 0 月の国勢調査結果によると 福井県の共働き率は % と全国の % を 1 1 ポイント上回り 今回も福井県が 共働き率日本一 となりました しかし 2 0 年前の平成 2 年の共働き率は

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第 2 章 産業社会の変化と勤労者生活

戦後日本経済と産業構造 1 節 2 第章産業社会の変化と勤労者生活 1950 年代から 70 年代にかけ 急速な工業化を通じて高度経済成長を達成した我が国経済第は その後 サービス化 情報化を伴いながら進展する ポスト工業化 の時代の中を進んでいる ポスト工業化 社会では 社会の成熟化に伴い 物質的な豊かさだけでなく精神 1 節第的な充足も重視され 企業には 柔軟で多様な付加価値創造能力が要求されることとなった しかし バブル崩壊以降の我が国社会は 必ずしも産業社会のありようを見通せていたとはいえず 生産力の高い産業分野が雇用を削減する一方 生産力が停滞する分野が非正規雇用を増やし 人件費を抑制しながら事業を拡張する傾向を強めるなど 産業間の労働力配置機能も低下した 今後は 2009 年春頃からの景気の持ち直しの動きを新たな成長へとつなげるため 雇用の維持や賃金調整に取り組んだ今までの対応から 将来の産業社会を見すえた新たな対応へと切り替え 産業 技術動向に即した採用の拡大 すそ野の広い技術 技能の向上など 2010 年代の新たな経済 社会を展望することが求められている 第 1 節戦後日本経済と産業構造戦後 我が国経済は 技術進歩に伴う生産力の向上 所得増加に伴う生活スタイルの変化などの影響を受け 産業構造を大きく変化させてきた 本節では 戦後経済における産業構造の変化を 就業者構成 付加価値構成などをもとに振り返るとともに 経済成長に伴う所得 消費の拡大と消費費目構成の変化が 産業構造に投影されてきたことを分析する また あわせて 新規学卒者を中心に若年者の入職行動について分析することによって 雇用動向も加味しながら我が国の産業構造を展望する 1) 産業 雇用構造の長期的な推移 ( 戦後日本の産業構造の変遷 ) 戦後 我が国の産業構造は 技術進歩と経済成長に伴う消費費目の変化によって大きく変化してきた 産業構造の長期的な推移を見るため 第 2-(1)-1 図により 付加価値額に占める産業の構成割合の推移をみると 第一次産業 ( 農林漁業 ) の割合は 1955 年の21.0% から 2008 年の 1.6% まで継続して低下する中で 第二次産業 ( 鉱業 建設業 製造業 ) の割合は 1955 年の 36.8% から 1970 年には 46.4% まで上昇した 一方 第三次産業 ( サービス業 卸売 小売業など ) の割合は 1955 年の42.2% から2008 年には69.6% まで上昇し 第二次産業の割合は 2008 年には 28.8% まで低下した 我が国は 1950 年代後半以降 高度経済 85

第 2 章 産業社会の変化と勤労者生活 第 2-(1)-1 図産業の構成割合の推移 成長を経て急速に工業化が進展し 第二次産業の割合が大きく上昇したが 1970 年代後半以降は 第二次産業の割合は徐々に低下し 代わって第三次産業のウェイトが高まった ( 製造業におけるリーディング産業の展開 ) 産業大分類でみると 製造業の付加価値額 ( 国内総生産 ) は大きく 付加価値創造能力を牽引する産業分野としても引き続き主要な役割を担っている 第 2-(1)-2 図により 製造業の構成割合の推移を出荷額をもとにみると 1955 年には繊維 衣服が17.5% と高い割合を示していたが その後 継続的に低下した 1960 年代から 70 年代はじめにかけては 鉄鋼 非鉄金属 化学が高い割合を示し 一般機械や電気機械などの機械工業も急速に拡大した 高度経済成長の中で 繊維工業から重化学工業にウェイトが移り さらに 機械工業の成長が始まったことがわかる 1970 年代後半以降は 鉄鋼などの割合が低下する中で 工作機械などの一般機械や自動車などの輸送用機械 家電製品や半導体などの電気機械などの割合が高まり 特に 80 年代後半から 2000 年代はじめにかけては電気機械 2000 年代以降は輸送用機械が高い割合をを示した また 2000 年代には 鉄鋼業や化学の割合の上昇がみられるなど 新しい動きもある このように 製造業内の産業動向は一様ではなく 成長し ウェイトを高める産業分野は時代の状況を映しながら大きく変化してきた 生産力を高め その時代の付加価値生産の伸びを牽引する産業分野を リーディング産業 と呼ぶことができるが 我が国の製造業をみると リーディング産業は 繊維 鉄鋼 非鉄金属 化学 一般機械 電気機械 輸送用機械と 主役を交替させながら我が国の産業構造の高度化を推し進めてきた 86 平成 22 年版労働経済の分析

87 第1 節第 1 節 第 2-(1)-2 図製造業の構成割合の推移 戦後日本経済と産業構造

第 2 章 産業社会の変化と勤労者生活 ( 第三次産業におけるサービス分野の拡大 ) 第 2 -(1)- 3 図により 第三次産業内の構成割合の推移をみると 1950 年代半ばから 60 年代半ばにかけて 卸売 小売業 不動産業の割合が上昇し 運輸 通信業も高い割合を示した 工業化が一巡し 第二次産業の構成比が低下し始めた 1970 年代後半以降は 卸売 小売業や運輸 通信業の伸びも停滞し 代わってサービス業が拡大した サービス業の拡大傾向は 2000 年代に入っても続き 第三次産業に占めるサービス業の割合は 2008 年には 35.9% となった 工業化とともに商品流通経路が発達し 卸売 小売業や運輸 通信業の拡大がみられたが ポスト工業化のもとで サービス分野の拡大が続いている ( 就業者構成の変化 ) 第 2 -(1)- 4 図により 産業別就業者構成割合の推移をみると 1950 年は農林漁業が 48.5% を占め 製造業は 15.8% 卸売 小売業は 11.1% サービス業は 9.2% であった その後 高度経済成長を通じて 農林漁業はその割合を大きく低下させ 1970 年には 製造業 第 2-(1)-3 図第三次産業の構成割合の推移 88 平成 22 年版労働経済の分析

1 節 第 2-(1)-4 図 産業別就業者構成割合の推移 ( 男女計 ) 節第 2-(1)-5 職業別就業者構成割合の推移 ( 男女計 ) で 26.1% 卸売 小売業で 19.3% サービス業で 14.6% まで上昇した その後 製造業はそ の割合を低下させていくが サービス業は拡大を続け 1990 年代に卸売 小売業の割合を 超えて最も構成比の高い産業となった このように 我が国の産業別就業者構成をみると 農林漁業中心の構造から 製造業の拡 大を経て サービス業の拡大へと続いており 先に見たような付加価値構成の変化に応じて 就業者構成が変化していることがわかる また 第 2 -(1)- 5 図により 職業別就業者構成割合の推移をみると 1950 年代は農 林漁業作業者の割合が最も大きく 全体の 48.0% を占めていたが その後は低下を続け 戦後日本経済と産業構造

第 2 章 産業社会の変化と勤労者生活 2009 年には 4.1% となった 高度経済成長を通じて 生産工程 労務作業者 販売従事者 事務従事者などが増加し 特に 生産工程 労務作業者は 1970 年に 32.4% となった 生産工程 労務作業者は その後 徐々に割合を低下させていくが 2009 年でも26.7% を占め 就業者の中でも最も高い割合を示す職業である 販売従事者は 1995 年に15.2% まで上昇したが その後低下し 2009 年には 13.6% となった また 専門的 技術的職業従事者は 1950 年の4.8% から2009 年の15.4% まで 保安職業 サービス職業従事者は 1950 年の6.1% から2009 年の12.8% まで継続的に上昇している ( 就業者増加を牽引する産業の展開 ) 第 2 -(1)- 6 図により 就業者数の増加率と産業別の寄与度をみると 1950 年代 60 第 2-(1)-6 図 就業者数の増加率 ( 年率換算 ) と産業別寄与度 90 平成 22 年版労働経済の分析

年代は製造業 卸売 小売業 飲食店の増加の寄与が大きく これらの産業が就業者の増加を牽引した 1970 年代には 卸売 小売業 飲食店 サービス業の増加の寄与が大きく 1980 年代以降は サービス業の寄与が大きかった また 2000 年代には 運輸 通信業でも就業者の増加寄与がみられた また 第 2 -(1)- 7 図により 就業者数の増加率と職業別の寄与度をみると 1950 年代 60 年代は生産工程 労務作業者の増加の寄与が大きく 事務従事者も拡大している 1970 年代 80 年代に入ると 生産工程 労務作業者の増加寄与は小さくなり 事務従事者 専門的 技術的職業従事者 販売従事者の増加寄与が大きかった 1990 年代は 就業者全体の伸びが鈍化する中 生産工程 労務作業者や農林漁業作業者で減少寄与が大きかったが 専門的 技術的職業従事者や保安職業 サービス職業従事者の増加寄与は大きかった 2000 年代は 専門的 技術的職業従事者 事務従事者 保安職業 サービス職業従事者で増加寄与がみられるが 生産工程 労務作業者は90 年代に引き続き減少した 第 2-(1)-7 図 就業者数の増加率 ( 年率換算 ) と職業別寄与度 戦後日本経済と産業構造 91 第1 節第 1 節

第 2 章 産業社会の変化と勤労者生活 近年の就業者の増減を産業と職業の相互の関連からみるため 第 2-(1)-8 図により 産業別就業者数の増加率に対する職業別の寄与度 (2000 年代 ) をみると 就業者数を増加させている産業では 運輸 通信業は 専門的 技術的職業従事者 事務従事者の増加の寄与が大きく サービス業は 専門的 技術的職業従事者 保安職業 サービス職業従事者の増加の寄与が大きい 一方 就業者数を減少させている産業では 農林漁業は農林漁業作業者の減少の寄与が大きく 建設業及び製造業では生産工程 労務作業者の減少の寄与が大きい 卸売 小売業 飲食店では 販売従事者が減少に寄与する一方 事務従事者は増加している 第 2-(1)-8 図産業別就業者数の増加率 ( 年率換算 ) と職業別寄与度 (2000 年代 ) 92 平成 22 年版労働経済の分析

( 雇用者比率の増加と農業における雇用の拡大 ) 第 2-(1)-9 図により 就業者構成の推移をみると 家族従業者や自営業主の割合は 1950 年代以降 継続的に低下している一方 雇用者の割合 ( 雇用者比率 ) は上昇し 1953 年の 42.4% から 2009 年には 86.9% となった 先の 2 -(1)- 6 図と同様の方法で 雇用者数の増加率と産業別寄与度をみると 2000 年代では 就業者数でみて増加していた運輸 通信業 サービス業は 雇用者数でみても増加している一方 就業者数でみると減少していた農林漁業や卸売 小売業 飲食店でも雇用者数は増加している ( 付 2-(1)-1 表 ) 第 2-(1)-9 図就業者構成の推移 戦後日本経済と産業構造 93 第1 節第 1 節