3. 国民所得 : どこから来てどこへ行くのか (1) 基礎マクロ経済学 1
概要 1. 今回のねらい 2. 長期と短期 3. 経済諸部門の相互関係 4. 供給の決定 5. 生産関数の典型的仮定 6. 企業の利潤最大化行動 7. 完全競争市場における企業利潤 8. 確認問題 基礎マクロ経済学 2
1. 今回のねらい ここまでの講義では GDP 消費者物 価指数 失業とは何かについて学んだ 今回から数回を使って これら 3 つのデータが理論的にどう決定されるかを考える 基礎マクロ経済学 3
1. 今回のねらい 今回と次回の講義では需要と供給の均衡を通じた GDP の決定について学ぶ 特に今回の狙いは 経済全体の相互関係をつかむ マクロ経済の供給について理解する 基礎マクロ経済学 4
2. 長期と短期 価格の調整 現実にはモノの価格は需給の変化を受けてすぐ動くだろうか? 例 : 需要の増える夏でもコーラの価格は冬とそう変わらない 実は 価格が伸縮的か硬直的かによって経済政策の効果など 大きく異なってくる 基礎マクロ経済学 5
長期と短期の価格伸縮性 長期と短期で価格の伸縮性は異なる 長期 : 価格は伸縮的 ( 古典派的な経済 ) 短期 : 価格は硬直的 ( ケインズ的な経済 ) と考えて良いだろう 本講義では 価格が伸縮的な長期の経済について学ぶ 基礎マクロ経済学 6
3. 経済諸部門の相互関係 需要や供給などの細かいことを学ぶ前に まず我々のいる経済を俯瞰し 様々な経済主体の相互関係についてイメージを持っておく 基礎マクロ経済学 7
経済における貨幣のフロー循環図 所得 生産要素市場 要素費用支払い 民間貯蓄 金融市場 家計 租税 政府赤字 政府 投資 企業 消費 政府購入 財 サービス市場 企業収入 基礎マクロ経済学 8
経済主体と市場 経済 ヒト モノ カネの動き と言われることがある 前スライドの図を見ると 経済主体同士がヒトの市場 ( 要素市場 図では労働市場と一致 ) モノの市場 ( 財 サービス市場 ) カネの市場 ( 金融市場 ) でつながれていることが分かる 経済主体を市場がつなぐことでマクロ経済が成り立っている 基礎マクロ経済学 9
4. 供給の決定 財 サービスの総生産 ( 供給 ) は何によって決まるか? 生産要素の投入量 企業の持つ生産技術 生産要素 : 資本や労働等で製品を作る 生産技術 : 一定の生産要素を使ってどれだけの生産量を実現できるか 基礎マクロ経済学 10
生産要素 生産要素とは 財の生産に必要な投入物のこと 最も一般的なものは資本 (K) と労働 () 中間財なども考えられるが ここでは省略 経済に存在する資本と労働 : K K K のとき 資本と労働は完全利用 基礎マクロ経済学 11
生産技術 生産技術とは 生産要素を製品に作 りかえる企業の技術のこと (input output) 経済学ではこれを以下のような生産 関数を用いて表現する Y F( K, ) コブ ダグラス型生産関数 :Y F( K, ) AK 1 基礎マクロ経済学 12
要素完全利用の例 仮に経済の資本と労働がすべて使わ K K れており であるとする このときの生産量は Y F( K, ) Y よくある例で言えば :Y AK 1 基礎マクロ経済学 13
三面等価と生産 所得の一致 所得 分配面 民間貯蓄 要素市場 金融市場 要素費用支払い 一致! Y は所得として解釈できる 家計 租税 政府赤字 政府購入 政府 投資 生産面 企業 消費 財 サービス市場 企業収入 基礎マクロ経済学 14
5. 生産関数の典型的仮定 規模に関する収穫一定 すべての要素投入量を z 倍にすると 生産量も z 倍になる 限界生産力逓減 生産要素を一単位追加的に増やしたときの生産量増分は 要素投入を増やすたび 段々小さくなる 基礎マクロ経済学 15
規模に関する収穫一定 すべての要素投入量を z 倍にすると 生産量も z 倍になる zy F( zk, z) よくある例 ( Y F( K, ) AK 1 ) で言えば F ( zk, z) A( zk ) ( z 1 ) zak 1 zy 基礎マクロ経済学 16
限界生産力逓減 生産要素を一単位追加的に増やした ときの生産量増分は 要素投入を増 やすたび 段々小さくなる コピー機の例 コピー機一台 + 労働者一人 : 多くのコピーが可能 コピー機一台 + 労働者二人 : 混雑して二人目の生産力は一人目よりも低くなる 基礎マクロ経済学 17
限界生産力逓減 F(K,1) Y F(K,2) Y F( K, ) F( K,2) F( K,1) F(K,1) 0 1 F( K,2) F( K,1) F( K,1) : 要素投入 生産量の増大幅 基礎マクロ経済学 18 2
微分としての限界生産力 Y Y F( K, ) F( K, 1 ) 限界生産力 生産関数の接線の傾き 0 1 F( K, ) が労働の限界生産力 基礎マクロ経済学 19
6. 企業の利潤最大化行動 企業は利潤を最大化するように 生産要素の投入量を決定する 生産物価格を P 賃金を W 資本レンタル料を R とすれば 利潤は PY W RK で表される ここで 競争的企業の仮定を置き 企業にとって W R は所与の価格であるとする 基礎マクロ経済学 20
競争企業の仮定と要素価格決定 P 財需要 財供給 競争企業の仮定 0 W 均衡価格 労働供給 Y 一企業が非常に小さい 一企業の行動は市場の需給に影響なし 一企業の行動は市場価格に影響なし ( プライステイカー ) 労働需要 0 均衡賃金 企業にとって は所与 P W 基礎マクロ経済学 21
基礎マクロ経済学 22 企業の利潤最大化行動 利潤は を最大化するように企業はとを決定する 一階条件は RK W K PF ), ( K 0, ), ( R K K F P K 0 ), ( W K F P, ), ( P R K K F P W K F ), ( 資本の限界生産力 (MPK, Marginal Product of Capital) 労働の限界生産力 (MP, Marginal Product of abor)
限界生産力 実質要素価格 の意味 限界生産力 > 実質要素価格 のとき 要素投入を増やせば コスト以上に売上を増やすことが出来る ( 要素投入を増やせば利潤が増える ) 限界生産力 実質要素価格 まで要素投入を増やす 限界生産力 < 実質要素価格 のとき 要素投入を減らせば 売上の低下以上にコストを減らすことが出来る ( 要素投入を減らせば利潤が増える ) 限界生産力 実質要素価格 まで要素投入を減らす 限界生産力 実質要素価格 が最適な要素投入条件 基礎マクロ経済学 23
7. 完全競争市場における企業利潤 生産要素はその限界生産力に等しいだけの実質要素費用を受取る MPK R P, MP W P Y F( K, ) だけの生産が行なわれるときの 資本 労働それぞれの実質受取り総額は以下 MPK K, MP これらは企業にとっての資本 労働コスト 基礎マクロ経済学 24
企業の利潤 企業の実質利潤は以下 企業利潤 Y ( MP + MPK K) オイラーの定理 生産関数 F が規模に関して収穫一定のとき Y F( K, ) MP + MPK K or Y ( MP + MPK K) 0 ここで考える企業の利潤はゼロ!! 基礎マクロ経済学 25
基礎マクロ経済学 26 参考 ) オイラーの定理の例 Y AK MP K MPK AK MP AK K MPK AK MP AK MPK AK Y + 1 1 1 1 1 1 ) (1, ) (1, Y MP K MPK +
なぜ企業利潤がゼロになるのか? ここで置いている三つの仮定が鍵 収穫一定の生産関数 企業の利潤最大化行動 競争的市場 競争的市場では 利潤が稼げる限り企業が参入を繰り返す 結果 利潤はゼロとなる 基礎マクロ経済学 27
8. 確認問題 1. コブ ダグラス型生産関数が 規模に関する収穫一定を満たすことを示せ 2. コブ ダグラス型生産関数が 限界生産力逓減法則を満たすことを示せ 3. 価格を P 生産関数を F(K,) 賃金を W 資本レンタル率を R として 企業の利潤最大化条件を導出せよ 4. 完全競争市場 & 規模に関する収穫一定の生産関数の場合において 企業利潤がゼロになることを示せ 基礎マクロ経済学 28