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キサーに2 分配されます ミキサーを駆動するには +7dbm 必要です HMC833 の出力レベルと分配による損失を補うためにアンプ ( 使用デバイス :MGA-81563) を計 4つ挿入しています また HMC833 のダブラ使用時の基本波を除去するために 3.1GHz の LPF を挿入しています 3.5GHz 生成時は 1.75GHz の基本波 5GHz 生成時は 2.5GHz の基本波が出ますが どちらの場合も 3.1GHz の LPF で除去するようにしています 10MHz を 10 逓倍する PLL と HMC833 はどちらも SPI 通信で制御します SPI 通信での制御と 10MHz の内部 / 外部切り替え用にマイコンを搭載しています 以下に今回試作した周波数拡張アダプタの仕様をまとめます 拡張周波数範囲 3.5 ~ 5.0GHz / 5.0 ~ 6.5GHz の 2 バンド対応 ローカル信号源 5.0GHz( BAND-A ) もしくは 3.5GHz( BAND-B ) TG ミキサー変換損失 7dB ~ 12dB RF ミキサー変換損失 10dB ~ 16dB RF および TG 最大入力 +5dBm 入 出力コネクタ SMA 型メス 外部同期入力 10MHz AC 結合ハイインピーダンス 電源 DC 7V~9V 450mA DC ジャックセンタープラス 2.1mm 径 付属品 AC アダプタ ( DC9V ) 2. 周波数拡張アダプタの製作 製作した周波数拡張アダプタの写真を図 2 に示します ローカル信号源とミキサーを一体化させ 10cm 10cm の小型サイズに収めることができました 基板は FR-4 の 4 層基板としました FR-4 では 3.5GHz/5GHz のローカ ル信号の伝送損失が大きくなりますが アンプでロスを補います TG の周波数変換後と RF の周波数変換前は最大 で 6.5GHz の信号が通過しますし アンプでロスの補正もしていません TG の周波数変換後と RF の周波数変換前 の信号はロスが小さくなるようにできるだけ短い距離で配線しました 基板には DIP スイッチが搭載されており 10MHz リファレンスの内部 外部切り替えおよび HMC833 の発振周波数の 3.5GHz 5GHz の切り替えをするこ とができます 100MHz を発生させる PLL と HMC833 の 2 つの PLL が搭載されていますが 常に PLL ロック を監視しておりロック状態を LED で表示します 今回の試作で使用した IC(HMC833 ADF4001 MGA-81563 など ) については特に注意点はありません WEB で入手できるメーカのデータシートに外付け部品や基板レイアウトなど設計に必要な情報がすべて記載されていま すので それをもとに設計を行いました HMC833 と ADF4001 を動作させるにはレジスタ設定が必要ですが レ ジスタ設定についてもデータシートに詳細が記載されています 2 つの PLL はリファレンス周波数と発振周波数は ビートによりスプリアスが発生しないように発振周波数を選んでいます ADF4001 のループ帯域は 10Hz HMC833 のループ帯域は 200kHz として設計しました 今のところ HMC833 が正常にロックしない不具合が解決しきれていませんが 電源を再投入することでこの問題 は回避することができます

図 2: 製作した周波数拡張アダプタ

3. 周波数拡張アダプタを試用 RIGOL DSA815TG( 9kHz~1.5GHz TG 内蔵スペアナ ) で 5.2GHz~6.2GHz の DUT( フィルタ ) の測定した例を紹介いたします スペアナの周波数スパンを 200MHz~1.2GHz にセットして TG モードにします スペアナ TG-OUT と拡張アダプタの TG-IN スペアナ RF-IN と拡張アダプタの RF-OUT を接続します 拡張アダプタの TG-OUT と RF-IN の間にアッテネータ フィルタを挿入します アッテネータ フィルタを挿入する目的は後述いたします 拡張アダプタに AC アダプタを接続し DIP スイッチで BAND-A( ローカル信号源 5.0GHz ) を選択します スペアナ TG 出力が 5.0GHz のローカル信号により 5.2GHz~6.2GHz に変換されます 一方 RF-IN に入った 5.2GHz~6.2GHz は 200MHz~1.2GHz に変換されます 外部同期が必要な場合は 10MHz 入力に外部 10MHz を接続し DIP スイッチで 10MHz_EXT を選択します スペアナの TG レベルを 0dBm にセットします 3dB のアッテネータを挿入した場合 ミキサーとアッテネータのロスにより-30dBm~-20dBm の RF レベルが得られます 次にノーマライズを実行してアッテネータとミキサーのロスを補正します ( )RIGOL DSA815TG で TG=0dBm 設定とした時に ノーマライズ実行後に測定し DUT を外した際に ノイズフロアが画面中心から右側で上昇する症状が 2 台で確認出来ました RF 入力には何も接続されていないので 本体固有の原因と思われます この場合は TG レベルを-1dBm 以下に下げてください

ノーマライズ前 ノーマライズ後 TG-OUT と RF-IN の間に DUT( フィルタ ) を挿入します スペアナの画面に DUT の通過特性が表示されます ローカル信号源の 5GHz を スペアナの周波数読み値に加 算してください 4. ミキサーの特性と測定のコツ周波数拡張アダプタのミキサーからはイメージ周波数およびハーモニック周波数が現れますし DUT とのミスマッチでミキサーの特性が変化します 通常のスペアナではこれらのミキサーの特性は補正されて画面表示されますが 周波数拡張アダプタはミキサーの特性が補正されていませんのでミキサーの特性を頭において測定する必要があり

ます 慣れないうちは面倒ですが ミキサーの癖を知り尽くして使いこなすのは 簡易的な装置で測定をする醍醐 味でもあります イメージ周波数について たとえばローカル信号 5GHz で TG から 500MHz を入れるとミキサーからは 4.5GHz と 5.5GHz が現れます イメ ージ周波数除去のためにフィルタを挿入します ハーモニック周波数について たとえばローカル信号 5GHz で TG から 500MHz を入れるとミキサーからは 9.5GHz と 10.5GHz が現れます ハーモニック除去のためにフィルタを挿入します

DUT とのミスマッチについて DUT とのミスマッチでミキサーの特性が変動します ミスマッチ緩和のためにアッテネータを挿入します 5. まとめと今後のテーマワンチップの PLL-IC を使用することで 10cm 10cm の小さなサイズの基板でスペアナの周波数拡張を実現できることができました 今回の測定を行ったフィルタでは ローカル信号源の周波数の正確さや位相雑音は 測定結果への影響は少ないと思われます 今後は 高度な位相精度を必要とする無線通信の周波数コンバータにローカル信号源を応用し ローカル信号源の周波数正確さや位相雑音がどのように通信品質へ影響するか検証したいと考えております 6. 試作した周波数拡張アダプタの販売について今回製作しました周波数拡張アダプタを 49800 円にて販売いたします 販売について詳しくはモリサカ研究所もしくは マイクロパワー研究所の WEB サイトをご覧下さい また イメージ除去として使用したフィルタをオプションとして発売予定 ( 予価 4000 円 ) です 設計 製作 : モリサカ研究所 ( http://morisaka-lab.jp/ ) 販売 : マイクロパワー研究所 ( http://mpl.jp/ )