我が国の測位衛星システムの 全体構成に関するケーススタディ 11 年 2 月 日 内閣官房宇宙開発戦略本部事務局
我が国が目指すべき測位衛星システムの基本構成のケース スタデイ ( 案 ) 第 3 回政務官 PT( 平成 22 年 11 月 12 日 ) の 資料 2 3 ページの表 1. で提示 静止衛星機数 0 機 1 機 2 機 3 機 注記 : / は 準天頂衛星の機数 / 静止衛星を加えた全体衛星数 自立性 =GPS 衛星を用いずに測位を行える可能性 : 自立可能 : 一部制約あり : 可能性なし 準天頂衛星機数 3 機 4 機 機 機 4/4 / 自立性 自立性 時間 時間 3/3 自立性 時間 3/4 自立性 時間 3/ 自立性 時間 3/ 自立性 時間 4/ 自立性 時間 4/ 自立性 時間 4/7 自立性 時間 / 自立性 時間 /7 自立性 時間 / 自立性 時間 / 自立性 時間 /7 自立性 時間 / 自立性 時間 /9 自立性 時間 時間 = 測位衛星システムを利用可能な時間 (70 度以下となる低仰角の時間を含む可能性あり ) :24 時間 3 日切れ目なく利用可能 ( バックアップ機を運用し 途切れないサービスを提供 ) :24 時間利用可能であるが 衛星の軌道修正等メンテナンスのために使用できない時間帯が発生 ( の評価は 厳密な技術データに基づいたものではなく 今後 専門家 WG において詳細な技術検討を行う予定 ) 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 1
ケーススタディに関する評価ポイント 測位精度 指標 仰角 ( 衛星を見た視線が水平面となす角 ) DOP ( 参考資料 23 ページ参照 ) 評価ポイント ( 受信には ) 高い方が良い ( 精度をよくするには (= 下記 DOPを小さくする ) 為には ) 仰角の低い衛星も必要 小さい方が良い 安定している方が良い 軌道維持運用軌道維持メンテナンス時の性能維持サービス提供地域 軌道維持運用の頻度が少ない方が良い ( 一般的にインド洋上空から離れるほど頻繁に軌道維持運用が必要 ) メンテナンスを行わないと 衛星軌道はインド洋上空に自然に移動してしまうので 当初の軌道に戻すために 定期的な軌道維持メンテナンスが必要 上記の仰角や DOP の劣化が小さい方が良い 日本国内で予定されるサービスが確実に提供されることが基本 上記の基本要件が満たされているのであれば これに加えてアジア太平洋地域における同種のサービスが提供できることが望ましい 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 2
ケーススタディの概要 本ケーススタディは ( 財 ) 衛星測位利用推進センターの協力を得て実施した 準天頂 3 機準天頂 4 機準天頂 機準天頂 機 静止 0 機 静止 1 機 静止 2 機 静止 3 機 持続測位 持続測位 持続測位 (@ 北海道 ) 持続測位 / 精度 持続測位 / 精度 持続測位 持続測位 / 精度 持続測位 / 精度 持続測位 / 精度 持続測位 / 精度 持続測位 / 精度 持続測位 / 精度 持続測位 / 精度 持続測位 / 精度 持続測位 / 精度 持続測位 / 精度 ( 北海道で ) 持続測位 / 精度 ( ただしメンテナンス時の仰角が低下 ) 持続測位 / 精度 持続測位 / 精度 持続測位 / 精度 持続測位 / 精度 凡例 1 : 準天頂衛星 : 静止衛星 凡例 2 持続測位 とは : サービスエリア内で4 機が常に可視である持続測位 とは : サービスエリア内で4 機が常に可視であるとは限らない 凡例 3 精度 とは : サービスエリア内で安定して DOPが 以下である精度 とは : サービスエリア内でDOPが 以下である 精度 とは : サービスエリア内で多くの時間でDOPが 以下であるが 一時的に DOPがさらに大きくなる時間がある ( 注 ) 静止衛星は の字軌道の東西に配置し 3 機目はの字軌道の中に配置してスタディを実施 ( 位置は解析の実施上便宜的に設定したものであり 必ずしもこれで決定するものではない ) 持続測位 の意味については 4ページの注を参照 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 3
解析結果の区分 以下の 2 通りに方向性を大別し それぞれについて解析結果を検討した 持続測位 * が可能な機数構成 GPS の補完 補強 が可能な機数構成 ( ただし 持続測位は不可 ) *) 本資料において 持続測位 とは 他国の測位衛星が使用できない場合でも 我が国のシステムのみで最低限の測位サービスの提供を持続できる状態をいう 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 4
解析結果 1 持続測位 が可能な機数構成 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ
解析結果の要約 準天頂 3 機準天頂 4 機準天頂 機準天頂 機 静止 0 機 持続測位 静止 1 機 通常は持続測位 1 機メンテナンスで持続測位 C 通常は持続測位 1 機メンテナンスでも持続測位 静止 2 機 B 静止 3 機 A 通常は持続測位 1 機メンテナンスでも持続測位 機数が多い 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ
解析結果の考察 赤色で囲った部分 持続測位ができない 黄色で囲った部分 持続測位は可能 メンテナンス時に持続測位ができなくなる 空色で囲った部分 持続測位は可能 メンテナンス時でも持続測位が可能 なお 準天頂衛星 3 機の場合は いずれの場合もメンテナンス時に仰角が著しく低下する時間帯がある ( 参考資料 2 ページ参照 ) 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 7
持続測位が可能な機数構成に係る 選択肢抽出の考え方 ケーススタデイの結果 持続測位を実現するためには 機 (1+3 +1 のケース又は 1+4 のケース ) 又は 機以上が必要と評価 ( の数字は静止衛星の数 左から の字軌道の西 東 ) ただし 機又は 機の場合は以下の問題がある 1 機メンテナンス時に良好な持続測位が実現できない そのため 常時持続測位を実現するためには 最低 7 機が必要 7 機の場合 以下の3つの選択肢がある A:1+4+1+1 (の字軌道の東に1 西に1 及びの字軌道内の1) B:1++1 (の字軌道の東に1 西に1) C:1+3+3 又は 1+(の字軌道の西に1) 1+3+3 は1 機メンテナンス時に仰角が低下する 1+ は 静止衛星がメンテナンス時に良好な持続測位が維持できない 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ
持続測位が可能な機数構成に係る 2 つの選択肢 持続測位を実現する場合 前記の3つの選択肢から ケースCは性能要件を満たさない したがって 以下のケースAとケースBの2つが 持続測位を実現する上で最適な選択肢と考えられる ケース A:1+4+1+1 DOP 要件 : 通常時のDOPは極めて良く 1 機がメンテナンス時でもDOP の劣化量は小さい 仰角要件 :QZS1 機メンテナンス時に仰角の劣化が限定的 ( 約 度 ) 静止衛星が3 機であるので相乗り相手が探しやすい ケース B:1++1 DOP 要件 : 通常時のDOPは極めて良いが 静止衛星のメンテナンス時にはDOPが大きく劣化する場合がある 仰角要件 :QZS1 機メンテナンス時でも仰角は70 度を維持する ( 東京 ) 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 9
ケース A の性能 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ
ケース A( 準天頂衛星メンテナンス時 ) の性能 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 11
ケース A( 静止衛星メンテナンス時 ) の性能 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 12
ケース B の性能 衛星可視図 ( 東京 ) NORTH 0 0 40 30 WEST 30 0 0 30 EAST Latitude [deg] 0 - - -30 最低仰角 deg SOUTH -40-0 -0 0 90 0 1 1 130 140 10 170 10 190 0 2 2 Longitude [deg] 40 PDOP プロファイル ( 東京 ) 3 30 2 PDOP [-] 1 0 0 12 1 24 time [hour] latitude [deg] 0 40 0 - -40-0 4 4 Contour map of average PDOP 4 4 4 0 0 1 140 10 0 longitude [deg] 1 1 14 12 4 2 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 13
ケース B( 準天頂衛星メンテナンス時 ) の性能 衛星可視図 ( 東京 ) NORTH 0 0 40 30 WEST 30 0 0 30 EAST Latitude [deg] 0 - - -30 最低仰角 deg SOUTH -40-0 -0 0 90 0 1 1 130 140 10 170 10 190 0 2 2 Longitude [deg] 40 PDOP プロファイル ( 東京 ) 3 30 2 PDOP [-] 1 0 0 12 1 24 time [hour] latitude [deg] 0 40 0 - -40-0 Contour map of average PDOP 4 4 4 4 0 0 1 140 10 0 longitude [deg] 1 1 14 12 4 2 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 14
ケース B( 静止衛星メンテナンス時 ) の性能 衛星可視図 ( 東京 ) NORTH 0 0 40 30 WEST 30 0 0 30 EAST Latitude [deg] 0 - - -30 最低仰角 deg SOUTH -40-0 -0 0 90 0 1 1 130 140 10 170 10 190 0 2 2 Longitude [deg] 40 PDOP プロファイル ( 東京 ) 3 30 2 PDOP [-] 1 0 0 12 1 24 time [hour] latitude [deg] 0 40 0 - -40-0 Contour map of average PDOP 0 0 1 140 10 0 longitude [deg] 1 1 14 12 4 2 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 1
解析結果 2 GPS 補完 補強 が可能な機数構成 ( ただし 持続測位は不可 ) 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 1
解析結果の要約 静止 0 機 静止 1 機 静止 2 機 準天頂 3 機準天頂 4 機準天頂 機準天頂 機 アイウ 持続測位 GPS 補完 補強は エ GPS 補完 補強が可能だが持続測位ができない機数構成は 以下に示す4つのケースがある ケースア 0+3 静止 0 機 + 準天頂 3 機ケースイ 0+4 静止 0 機 + 準天頂 4 機ケースウ 0+ 静止 0 機 + 準天頂 機ケースエ 1+3 静止 1 機 + 準天頂 3 機 静止 3 機 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 17
4 つの選択肢 1 ケースア ( 0+3 ) 通常は 24 時間 7 度以上の高仰角サービスを実現できる ただし 1 機メンテナンス時においては 準天頂衛星は2 機になることから 全体システムとしての仰角は約 30 度にまで大きく低下することがあり 準天頂衛星の高仰角特性が失われる ( 参考資料 2 ページ参照 ) [ 補強機能はメンテナンス中の衛星でも継続使用可能 ] 実用的な持続測位システムへの発展性や拡張性が見込まれない ( 一度 3 軌道面で構築すると 4 軌道面または 軌道面への移行はできない ) 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 1
4 つの選択肢 2 ケースイ ( 0+4 ) 通常は 24 時間 7 度以上の高仰角サービスを実現できる ただし 1 機メンテナンス時においては 準天頂衛星は3 機になるが 全体システムとしての仰角低下は限定的 ( 仰角 度程度は確保 ) で 高仰角特性は維持可能 ( 参考資料 2ページ参照 ) [ 補強機能はメンテナンス中の衛星でも継続使用可能 ] 前述の持続測位システム ( ケース A) への発展性や拡張性がある 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 19
4 つの選択肢 3 ケースウ ( 0+ ) 通常は 24 時間 7 度以上の高仰角サービスを実現できる ただし 1 機メンテナンス時においては 準天頂衛星は4 機あることから 全体システムとしての仰角低下は極めて限定的で 高仰角特性は70 度以上を維持可能 ( 参考資料 2ページ参照 ) [ 補強機能はメンテナンス中の衛星でも継続使用可能 ] 前述の持続測位システム ( ケース B) への発展性や拡張性がある 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ
4 つの選択肢 4 ケースエ ( 1+3 ) 通常は 24 時間 7 度以上の高仰角サービスを実現できる ただし 1 機メンテナンス時においては 準天頂衛星は2 機になることから 全体システムとしての仰角は約 30~0 度 ( 静止衛星の位置による ) まで低下することがあり 準天頂衛星の高仰角特性が失われる ( 参考資料 2ページ参照 ) [ 補強機能はメンテナンス中の衛星でも継続使用可能 ] 実用的な持続測位システムへの発展性や拡張性が見込まれない ( 一度 3 軌道面で構築すると 4 軌道面または 軌道面への移行はできない ) 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 21
参考資料 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 22
DOP( 精度指標 ) について 位置 航法精度 = DOP 測距精度 DOP(Dilution of Precision 精度の希釈 ) とは 衛星の配置による精度への影響を示す指標で 衛星と受信機間の測距精度が最終的な位置を決める精度にどの程度影響するかを示すもの 一般的に 精度低下率 と考えて良い DOP が悪い =DOP 値が大きい ( 例えば ~0) 測位衛星が偏っている状態 DOP 値は大きくなり 位置 航法精度は劣化する DOP が良い =DOP 値が小さい ( 例えば 2~) 最良の配置とは 1 機の測位衛星が頭上にあり 他の 3 機が水平線に 1 度均等に見える状態 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 23
準天頂衛星の の字軌道の説明 準天頂衛星が 3 機の場合 1 度間隔で地球を取り囲んだ 3 つの軌道面にそれぞれ 1 機が周回している 3 機の準天頂衛星の軌道面内位相 ( 飛翔時刻 ) を例えば 3 機共に 3 時間程度早めたと仮定すると : 3 機の地表面軌跡は 地球自転の 3 時間相当前の経度に 同様の の字軌跡を描く 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 24
仰角について 東京での仰角 90 度 0 度 70 度 0 度 0 度 静止衛星 ( 内 ) 40 度 静止衛星 ( 東 ) 30 度 静止衛星 ( 西 ) 度 度 0 度 4 機の場合 0 時 3 時 時 9 時 12 時 1 時 1 時 21 時 0 時 1 機メンテナンス時でも仰角低下は限定的 1 機メンテナンス時でも高仰角特性を維持 東京での仰角 90 度 0 度 70 度 0 度 0 度 静止衛星 ( 内 ) 40 度 静止衛星 ( 東 ) 30 度 静止衛星 ( 西 ) 度 度 0 度 機の場合 0 時 3 時 時 9 時 12 時 1 時 1 時 21 時 0 時 準天頂衛星 1 準天頂衛星 2 準天頂衛星 3 準天頂衛星 4 準天頂衛星 1 準天頂衛星 2 準天頂衛星 3 準天頂衛星 4 準天頂衛星 東京での仰角 90 度 0 度 70 度 0 度 0 度 40 度 30 度 度 度 3 機の場合 0 度 0 時 3 時 時 9 時 12 時 1 時 1 時 21 時 0 時 準天頂衛星 1 準天頂衛星 2 準天頂衛星 3 1 機メンテナンス時 仰角は大きく低下 準天頂衛星の高仰角特性が失われる 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 2
各国の測位衛星システム整備の現状 米国 (GPS) グローバルなシステムを整備済み 14 年からブロック Ⅲ と呼ばれる新しい世代の機種 ( 発信電波の種類を増やし 多用途に対応 ) に順次更新予定 EU( ガリレオ ) 現在は 2 機の実験機を運用中 11 年に実証機を 4 機打上げ 14~1 年までに 1 機を運用し 限定的にサービス提供 1~17 年までに計 30 機を配備し グローバルサービスを提供予定 ロシア ( グロナス ) グローバルなシステムをほぼ整備済み ( 年 12 月に 3 機投入で完成予定だったが 打上げ失敗 ) 本年 3 月までに予備機 2 機及びグロナス K と呼ばれる新世代機 1 機を打上げ予定 以後順次新世代機に更新予定 中国 ( 北斗 -2/ コンパス ) 07 年の実用初号機の打上げ以降 現在までに 7 機稼働 ( 年は 1 年間に 機打上げ ) 12 年を目途として まずアジア太平洋地域でサービス開始予定 その後 年頃までにグローバルに展開 計 3 機 ( 静止 機 中軌道周回 27 機 準天頂 3 機 ) でグローバルサービスを目指す インド (IRNSS) 11 年後半に初号機を打上げ 14 年までに全体システムを完成予定 計 7 機 ( 静止 3 機 準天頂 4 機 ) でインドを中心としたアジア地域 ( 西アジア ~ 東南アジア ) でサービス提供予定 各国政府の公式情報 ( ウェブ 国際会議資料 ) または各種報道資料に基づいて記載 11/2/ 第 4 回準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ 2