スピン流で観る物理現象 大阪大学大学院理学研究科物理学専攻 新見康洋
スピントロニクスとは スピン エレクトロニクス メモリ産業と深くつなが ている メモリ産業と深くつながっている スピン ハードディスクドライブの読み取りヘッド N 電荷 -e スピンの流れ ピ の流れ スピン流 S 巨大磁気抵抗効果 ((GMR)) from http://en.wikipedia.org/wiki/disk_readand-write_head M. N. M N Baibich, Baibich A. A Fert, Fert et al., al PRL 1988; G. Binasch, P. Grünberg, et al., PRB 1989. 1
スピン流 スピン流 : スピン角運動量の流れ 1. スピン偏極電流 F N F 2. 純スピン流 = Baibich et al., Phys. Rev. Lett. 61, 2472 (1988). スピンと電荷両方の流れ e - : 電荷 : スピン I : スピンアップ電流 e - I c ( = I + I ) 0 I s ( = I -I ) 0 スピンのみの流れ I : スピンダウン電流 強磁性体金属 巨大磁気抵抗効果 = I c ( = I + I ) ) = 0 I s ( = I -I ) 0 スピン軌道相互作用の強い非磁性体 トポロジカル絶縁体 3. スピン波スピン流 I s 磁性絶縁体 Y. Kajiwara et al., Nature 464, 262 (2010). 2
スピン流 純スピン流とスピン波スピン流は正味の電荷の流れを伴っていない!!! 1. 低消費電力素子への応用 ( 応用という観点で重要 ) 2. スピン構造に敏感なプローブとして利用 ( 基礎研究 特に複雑なスピン構造をもつ物性の解明に役立つ ) スピン流は 保存量ではない!! 観測するためには 保存量に変換する必要がある 3
スピンホール効果 ホール効果 B ローレンツ力 : F = ev F B e - e - e - e - e - e- 金属 ( 非磁性体 ) V 電流 : l C スピンホール効果 純スピン流 : I s I I 0 B = 0 V V H =0!! 金属 ( 非磁性体 ) 電流 : l C スピン軌道相互作用 によってアップスピンとダウンスピンの散乱方向が異なる 4
l c ls ls スピンホール効果の電気的検出 正スピンホール効果 逆スピンホール効果 (DSHE) (ISHE) I I S C S 非磁性体中では V H = 0 電圧として観測できる 変換効率 : スピンホール角 α J J S H = C ρ ρ SHE xx 5
金属中でのスピンホール効果の観測 逆スピンホール効果の電気的検出スピンポンピング法を用いた手法ピ V SH /I (mω) S. O. Valenzuela and M. Tinkham, Naure 442, 176 (2006). E. Saitoh et al., Appl. Phys. Lett. 88, 182509 (2006). 6
μ 非局所スピン流注入 μ ε F N N N N I c 強磁性体 μ 非磁性体 λ sf = Dτ sf 2 x 1 2 λ ( μ μ ) = ( μ μ ) λ sf x 7
スピン吸収法を用いた逆スピンホール効果の測定 逆スピンホール効果 Py (Ni 81 Fe 19 ) I S スピンホール物質 Y. Niimi et al., Phys. Rev. B 89, 054401 (2014). I c Cu V H 8
スピン吸収法を用いた正スピンホール効果の測定 正スピンホール効果 Py (Ni 81 Fe 19 ) I S スピンホール物質 Y. Niimi et al., Phys. Rev. B 89, 054401 (2014). Cu V H I c 電流端子と電圧端子を入れ替えるだけで 正スピンホール効果の測定も可能 9
逆スピンホール効果 CuBi I c Cu 外因性スピンホール効果 (Cu+Bi) Py Py 1 μm H R SHE (mω Ω) 0.1 0.05 0-0.05 Cu 2ΔR SHE Cu 99.5 Bi 0.5 DSHE ISHE Y. Niimi et al., PRL 2011. Y. Niimi et al., PRL 2012. Y. Niimi et al., PRL 2013. V 正スピンホール効果 V (mω) -0.1 T = 10 K CuBi I c Cu Py 1 μm Py H R Py 85-10000 0 10000 H (Oe) α H CuBi = 24(±9)% Bi ΔR = Δ ISHE R DSHE Onsager の相反定理 10
3 つの研究例 超伝導スピンホール効果 スピンホール効果で観るフラストレート磁性ト磁性 強磁性体転移温度近傍でのスピン揺らぎ 11
超伝導スピントロニクス e - 電荷 スピン スピン 1 重項状態 スピン流 クーパー対 s 波超伝導体 共存できる? 強磁性体やスピンデバイス 12
超伝導スピンホール効果 T. Wakamura, Y. N. et al., Nat. Mater. 2015. 13
超伝導スピンホール効果 T. Wakamura, Y. N. et al., Nat. Mater. 2015. Py に流す電流を小さくするだけで 2000 倍に! 14
準粒子流 超伝導スピンホール効果のメカニズム ~1~ Cu NbN λ Q 準粒子はλ Q (~1 μm) まで生き残れる λ Q よりも十分距離を離すと 信号が消滅! 準粒子の抵抗は ρ xx からρ qp = ρ xx /f 0 (Δ) = ρ xx (exp(δ/k B T)+1) に増大する 15
超伝導スピンホール効果のメカニズム ~2~ 非局所電流と電子温度 電荷不均衡 非局所電流 I と電子温度 T は等価 ジュール熱のエネルギー 電子比熱 T I 2 T 2 16
3 つの研究例 超伝導スピンホール効果 スピンホール効果で観るフラストレート磁性ト磁性 強磁性体転移温度近傍でのスピン揺らぎ 17
フラストレート系 ( スピングラス ) Cu 100-x Mn x S. Nagata et al., Phys. Rev. B 19, 1633 (1979). FC FC ZFC ZFC Mnの分布がランダム RKKY 相互作用がランダム 強磁性体と反強磁性体とが競合する系 Mn フラストレートした系に純スピン流を注入するとどうなるか? 18
Cu 97 Mn 3 のスピンホール効果 R SHE (m mω) 0.1 0.05 0-0.05 T = 10 K ISHE DSHE -0.1-5000 0 5000 H (Oe) スピンホール効果は観測されない! スピンホール効果を観測するためには スピンを散乱させる機構が必要 ピだからBiをスピン散乱体として加える! 19
CuMnBi の磁化測定 0.28 T g emu/cm m 3 ) M ( 0.27 0.26 0.25 Cu 98Mn 15 1.5Bi 05 0.5 FC ZFC 0.24 0 10 20 30 T (K) Bi を添加しても T g = 10 K で典型的なスピングラス状態を示す g 20
Cu 98 Mn 1.5 Bi 0.5 のスピンホール効果 02 0.2 02 0.2 R SHE (mω Ω) 0.15 01 0.1 0.05 Cu 99.5 Bi 0.5 DSHE ISHE R SHE (mω Ω) 0.15 01 0.1 Cu 98 Mn 1.5 Bi 0.5 DSHE ISHE 0.05 Cu 99.5 Bi 0.5 DSHE ISHE Cu 98 Mn 1.5 Bi 0.5 DSHE ISHE 2ΔR SHE 0 T = 10 K 0 T = 30 K -0.05-10000 0 10000 H (Oe) 0.2-0.05-10000 0 10000 H (Oe) R SHE (mω) 0.15 0.1 0.05 Cu 99.5 Bi 0.5 DSHE ISHE Cu 98 Mn 1.5 Bi 0.5 DSHE ISHE 0 T = 20 K -0.05-10000 0 10000 H (Oe) CuBi の ΔR SHE は温度に対して一定 一方 CuMnBi の ΔR SHE は温度変化する 21
T T* T g ΔR SHE vs T ΔR R SHE (m mω) 0.08 0.06 0.04 0.02 Cu 99.5 Bi 05 0.5 DSHE ISHE Cu 98 Mn 1.5 Bi 0.5 DSHE ISHE 0 0 20 40 60 80 100 T (K) T = 50 Kでは CuBiとCuMnBiに違いはない このことは Bi 不純物による外因性スピンホール効果を意味している T g よりも高い温度 T* から減衰はすでに始まっている!!! 22
Mn 濃度依存性 0.08 ΔR R SHE (m mω) 0.06 0.04 0.02 Cu 99.5 Bi 0.5 Cu 99Mn 0.5Bi 0.5 Cu 98.5 Mn 1 Bi 0.5 Cu 98 Mn 1.5 Bi 0.5 0 0 20 40 60 80 100 T (K) Mn 濃度を減らすと T* も低温側にシフトする スピンホール効果の減衰は 明らかに Mn 不純物の特性に起因している 23
スピンホール効果減衰のメカニズム z(τ sk,ν (T T)) G z t 0 = 0.5 t 0 = 1 t 0 = 2 スピン流から電流への変換は Bi 不純物で起こり 変換時 Mnモーメントは揺らいでいる T/T g 高温だと 揺らぎが激しいため 伝導電子とカップルしない T g に近づくにつれて 伝導電子は Mn モーメントの揺らぎを感じて スピンの向きがランダムになる 定性的に実験結果を再現できる r J C r J S r s 24
まとめ 純スピン流は スピン角運動量のみの流れ 特に基礎研究には スピン構造を探るプローブスピン構造を探るプローブとして利用できる 超伝導体にスピン流を注入すると 準粒子の抵抗が増大することが要因となり 指数関数的にスピンホール抵抗が増大する フラストレート磁性の典型例であるスピングラスにスピン流を注入すると 伝導電子と局在磁性の揺らぎのために スピンホール抵抗が減衰する 25