平成 25 年度分析分科会年会第 45 回分析技術討論会 銅電解重量法の応用 ~ 依頼試験や分析技術共同研究の分析事例紹介 本日の発表内容 分析法 ( 銅電解重量法 ) の紹介 分析事例純銅 Sn Bi 含有銅合金 Al 合金銀ろう 硫酸銅フタロシアニン 過去の共同研究データを集計 神奈川県産業技術センター化学技術部城田はまな 2013.12.5.Thurs. 1
分析法の概略 銅電解重量法とは試料中の銅の含有率を求める方法試料を酸で分解後 白金電極を用いて電解を行い 陰極に金属銅を析出させ 陰極の増量分をはかる分析元素銅 (Cu) 分析時間 - 試料処理数時間 ~ 数日 - 電解数時間 ~ 一晩利点原理や分析方法が簡易 精度よく幅広い濃度範囲で応用可能注意を要する点電解時に 陰極にCuとともに電着する元素 Bi, Sb, As, Ag, Snなど 見かけ上 Cu 含有量が多くなる 含まれる場合は 除去するための前処理が必要 2013.12.5.Thurs. 2
分析法の特徴 他の元素分析法 ( 機器分析法 ) との比較 分析法利点難点 ICP 発光分光分析 (ICP-AES) 原子吸光分析 (AAS) 銅電解重量法 多元素を分析可能短時間で測定 ( 溶液 ) 精度がよい (Cu99.99% の分析可能 ) 精度が劣る ( 有効数字 2 桁程度 ) 専用の装置 Pt 電極分析者の技能 主成分であるCuの分析には最適な方法他元素の分析をICP-AESなどで行うことにより試料中の無機成分について 全量分析が可能純銅中のCu 分析 ( 純度分析 ) が可能である点が特徴として挙げられる ( 次頁参照 ) 2013.12.5.Thurs. 3
分析法の特徴 地金の純度分析法の比較 (2012 時点 ) 金属 種類 純度の規格 主成分 分析法 主な不純物 主な JIS 規格 ( 地金 分析法 ) Ag 1 種 >99.99% 差数法 Pb, Bi, Cu, Fe H2141, H1181 Al 99.9995 >99.9995% 差数法 Si, Fe, Cu, Mn, Zn, Ti, Ga, V H2102, H1303 Cd 1 種 >99.99% 差数法 Cd, Pb, Cu, Zn, Fe H2113, H1161 Cu C1011 >99.99% 電解重量法 P, O, Pb, Zn, Bi, Cd, Hg, S, Se, Te H2123, H1101 Mg 1 種 A >99.95% 差数法 Al, Mn, Zn, Si, Cu, Fe, Ni, Pb H2150, H1322 Ni N0 >99.98% 差数法 Fe, Cu, Pb, Mn, C, S, Si, Co H2104, H1151 Pb 特種 >99.99% 差数法 Ag, Cu, As, Sb, Sn, Zn, Fe, Bi H2105, H1121 Sn 特種 A >99.99% 差数法 Pb, Sb, As, Cu, Fe H2108, H1141 Zn 最純 >99.995% 差数法 Pb, Fe, Cd, Sn H2107, H1113 Cu 以外は差数法を用いる (100wt% から不純物を差し引く ) 2013/03/21 改正にて 差数法を追加 2013.12.5.Thurs. 4
電解分析装置 白金電極 電解分析装置 AES-2D 型 ヤナコ機器開発研究所製 白金電極 陰極 ( 左側 ) に銅が析出 2013.12.5.Thurs. 5
分析法の紹介 1 本分析法の模式図 1 1 試料秤量 2 試料を酸で溶解 3 電解液中に さしいれる 陰極 陽極 試料 天秤 試料 電解液 銅を含む 白金陰極も 先に秤量しておく 2013.12.5.Thurs. 6
分析法の紹介 2 本分析法の模式図 2 5 白金陰極を秤量 電解装置 ( 増分が銅 ) 4 電解 電極を引き上げる ( 数時間 ~ 一晩 ) 残った電解液中の銅を メスフラスコで定容後 ICP-AES 又はAASで測定 天秤 2013.12.5.Thurs. 7
本分析法の原理模式図 分析法の紹介 3 Cu 2+ 2e - 陰極に銅が析出 Cu 陽極から泡が出る 陰極 Cu 2+ + 2e - Cu 陽極 H 2 O 2H + + 1 / 2 O 2 + 2e - 2013.12.5.Thurs. 8
事例 1 純銅の分析 純銅の種類 JIS H 2121 電気銅地金 JIS H2123 形銅 など Cu 分析方法 JIS H 1051 銅及び銅合金中の銅定量方法 JIS H 1101 電気銅地金分析方法 電解重量法のみ 分析方法の詳細 表面を希酢酸で洗浄 乾燥 試料秤量 純銅の場合 表面の酸化や汚れの影響を除くため 表面の洗浄が必要試料量 Cu 99.30% 以上 5.00g 99.30% 未満 1.00g 試料を溶解 (HNO 3 H 2 SO 4 ) 電解操作銅電解重量法 + (ICP-AES or AAS) 2013.12.5.Thurs. 9
事例 1 純銅の分析 分析事例 試料純銅 ( 純度 99.99% 以上 ) チップ状試料量 5g 分析結果 ( 単位 :wt%) 回数 電解重量法 ICP-AES 計 1 99.9914 0.0013 99.9927 2 99.9888 0.0032 99.9920 平均 99.9923 繰り返し精度もよく 良好な結果 (>99.99%) 電極の方に大半の Cu が析出 電解残液中の Cu はわずか 2013.12.5.Thurs. 10
事例 2 Sn, Bi 含有銅合金の分析 銅合金の種類 JIS H 3100 銅及び銅合金の板並びに条 JIS H 5120 銅及び銅合金鋳物 JIS H 5121 銅合金連続鋳造鋳物 など H15 水道法の新水質基準 ( 鉛 <0.01mg/L <0.05mg/L) やRoHS 規制などに対応した新しい銅合金が開発 最近追加された合金 (JISH5120 2006 年及び 2009 年改正 ) 記号 種類 合金系 特色 主な用途 CAC408 青銅鋳物 8 種 Cu-Sn-Zn-Pb 系 低鉛 (Pb2.0~4.0) バルブ ポンプ胴体 羽根車 給水栓など CAC411 青銅鋳物 11 種 ( 硫化物分散 ) Cu-Sn-Zn-Ni-S 系 鉛フリー (Pb<0.25) 水道用器具など CAC804 シルジン青銅鋳物 4 種 Cu-Si-Zn 系 鉛フリー (Pb<0.25) 水道用器具など CAC901 ビスマス青銅鋳物 1 種 Cu-Sn-Zn-Bi 系 鉛フリー (Pb<0.25) 水道用器具など CAC902 ビスマス青銅鋳物 2 種 Cu-Sn-Zn-Bi 系 鉛フリー (Pb<0.25) 水道用器具など CAC903A ビスマス青銅鋳物 3 種 A Cu-Sn-Zn-Bi 系 鉛フリー (Pb<0.25) 水道用器具など CAC903B ビスマス青銅鋳物 3 種 B Cu-Sn-Zn-Bi 系 鉛フリー (Pb<0.25) 水道用器具など CAC904 ビスマス青銅鋳物 4 種 Cu-Sn-Zn-Bi 系 鉛フリー (Pb<0.25) 水道用器具など CAC911 ビスマスセレン青銅鋳物 1 種 Cu-Sn-Zn-Bi-Se 系 鉛フリー (Pb<0.25) 水道用器具など CAC912 ビスマスセレン青銅鋳物 2 種 Cu-Sn-Zn-Bi-Se 系 鉛フリー (Pb<0.25) 水道用器具など 2013.12.5.Thurs. 11
事例 2 Sn, Bi 含有銅合金の分析 Cu 分析方法 JIS H 1051 銅及び銅合金中の銅定量方法 銅電解重量法のみが規定 HNO 3 H2SO 4 法新しい銅合金へ対応するため HNO 3 HF H 3 BO 3 法 2005 年に追加された方法 参考法附属書 1( 参考 ) アンチモン セレン すず ビスマス分離電解重量方法 分析事例 試料ビスマス青銅鋳物 4 種 (CAC904 Cu-Sn-Zn-Bi-Ni 系 ) Cu 分析方法銅電解重量法 - 上記の参考法による Cu 以外の化学成分もあわせて分析した 2013.12.5.Thurs. 12
事例 2 Sn, Bi 含有銅合金の分析 分析方法の詳細 試料 (1g) を秤量後 HNO 3 H 2 SO 4 溶解 HBr 酸により Sb, Se, Sn を揮散 前処理 ( 分離操作 ) が複雑 Sn 揮散 Bi 沈殿分離 前処理のみで最低 2 日要する NH 4 Fe(SO 4 ) 2 溶液及びNH 3 水により Biなどを水酸化鉄 (III) と共沈ろ液沈殿を硫酸溶解 NH 3 水で再共沈あわせたろ液をろ液電解操作沈殿をHClで溶解銅電解重量法 + 電解残液溶液を電解残液と合わせ (ICP-AES or AAS) 2013.12.5.Thurs. 13
事例 2 Sn, Bi 含有銅合金の分析 分析結果 ( 単位 :wt%) <Cu> 回数 電解重量法 ICP-AES 計 1 85.099 0.064 85.163 2 85.135 0.032 85.167 平均 85.165 Cu 繰り返し精度もよく JIS 規格の規定を満足 分析元素の合計 >99 % 分析値 JIS 規格 Cu Sn Zn Bi Ni Pb Fe Sb P Al Se Si 計 85.2 3.3 8.3 1.2 1.7 0.079 0.094 0.009 0.022 <0.001 0.003 0.002 99.909 82.5-87.5 3.0-5.0 6.0-9.0 1.0-2.0 Cu 以外の分析法 Si : 吸光光度法その他 :ICP 発光分光分析法 1.5-2.5 <0.05 <0.3 <0.2 <0.05 <0.01 <0.10 <0.01-2013.12.5.Thurs. 14
事例 3 アルミニウム合金の分析 アルミニウム合金の種類 JIS H 4000 アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条 など Cu 分析方法 JIS H 1354 アルミニウム及びアルミニウム合金中の銅定量方法 電解重量法の他 滴定法 吸光光度法を規定さらに 他の JIS 規格において 発光分光分析 AAS ICP-AES も規定 分析方法の詳細 試料秤量 (1g) 試料溶解 試料の溶解法は 2 通り NaOH 溶液 H 2 O 2 分解 -H 2 SO 4 HNO 3 酸性溶解 HClO 4 HNO 3 分解 沈殿を HF 処理で回収 電解操作銅電解重量法 + (ICP-AES or AAS) 2013.12.5.Thurs. 15
事例 3 アルミニウム合金の分析 分析事例 試料 Al 合金 (2014) 今回 共同分析 (S, Cu, Fe) 用の試料を使用 試料量 1g 試料溶解法 NaOH 溶液 H 2 O 2 分解 -H 2 SO 4 HNO 3 酸性溶解 分析結果 ( 単位 :wt%) Si Fe Cu Mn Mg Cr Zn Ti Al 分析値 0.61 0.28 4.5 0.44 0.41 - - 0.020-0.50 3.9 0.40 0.20 JIS 規格 <0.7-1.2-5.0-1.2-0.8 <0.10 <0.25 <0.15 残部 Cu 以外の分析法 Fe, Ti : 吸光光度法 Si : 二酸化けい素重量法その他 :ICP 発光分光分析法 分析した結果は 全て JIS 規格を満足 2013.12.5.Thurs. 16
事例 3 アルミニウム合金の分析 分析結果 <Cu> ( 単位 :wt%) 回数 電解重量法 ICP-AES 計 1 4.4633 0.0319 4.4952 2 4.4698 0.0250 4.4949 平均 4.4950 共同分析結果 ( 平均値 RSD% は棄却後の値 ) 分析方法 件数 平均値 RSD% 棄却前棄却後 原子吸光法 3 3 4.680 3.19 ICP-AES 60 56 4.458 2.69 蛍光 X 線法 7 7 4.411 6.13 電解重量法 3 3 4.495 0.456 その他 1 1 4.401 - 計 74 70 4.464 3.24 Cu 繰り返し精度もよく 他分析法と比較して 問題ない結果 2013.12.5.Thurs. 17
事例 4 銀ろうの分析 銀ろうとは Ag-Cu-Zn 系合金 その他 Cd, Ni, In, Sn などを添加 JIS 規格 JIS Z 3261 銀ろう JIS Z 3901 銀ろう分析方法 分析方法の詳細 試料秤量 (1g) HNO 3 で溶解 HCl で沈殿 (AgCl) を作る 前処理として Ag 除去 (Ag 定量が可能 ) AgをAgClとしてろ別沈殿を秤量 ( 塩化銀重量法 ) ろ液電解操作電解残液を用いて銅電解重量法 + (ICP-AES or AAS) Zn, Niなどの定量が可能 ( 重量法 滴定法など ) 2013.12.5.Thurs. 18
分析事例 事例 4 銀ろうの分析 試料銀ろう試料量 1g (Ag 及びCu) Ag, Cu 以外の分析法 In ICP 発光分光分析法 Ag, Cu とも 繰り返し精度よく 分析結果 良好な結果 ( 単位 :wt%) Ag Cu Zn In 分析値 34.3 34.9 残部 1.0 規格 ( 目安の値 ) 34 35 30 1 <Ag> 回数塩化銀重量法 1 34.2602 2 34.2631 平均 34.2616 <Cu> 回数 電解重量法 ICP-AES 計 1 34.8964 0.0024 34.8988 2 34.8922 0.0001 34.8923 平均 34.8955 2013.12.5.Thurs. 19
事例 5 硫酸銅フタロシアニンの分析 硫酸銅フタロシアニンとは 青色 緑色顔料として用いられる銅フタロシアニンを硫酸化して水溶性を高めた製品今回 共同分析 (S, Cu, Fe) 用の試料を使用 Cu 分析方法 試料秤量 (1g) 試料が有機物であるため 試料溶解に時間と技量が必要 試料溶解 - 開放系 ( コニカルビーカー ) での酸分解 (H 2 SO 4 HNO 3 ) 電解操作銅電解重量法 + (ICP 発光分光分析法で残液回収 ) Cu 以外の分析法 S Fe : 高周波誘導加熱炉燃焼 - 赤外線吸収法 : ICP 発光分光分析法 2013.12.5.Thurs. 20
事例 5 硫酸銅フタロシアニンの分析 分析結果 ( 単位 :wt%) 共同分析 S Cu Fe 分析値 11.52 4.691 0.04264 平均値 11.03 4.580 0.04143 RSD% 5.29 4.21 8.93 件数 ( 棄却後 ) 59 60 63 <Cu> 分析方法 件数 平均値 RSD% 棄却前棄却後 滴定法 1 1 4.730 - 原子吸光法 4 3 4.706 1.94 ICP-AES 57 53 4.580 4.13 蛍光 X 線法 1 1 4.100 - 電解重量法 2 2 4.583 3.33 計 65 60 4.580 4.21 電解重量法の結果は良好高濃度 Cu 含有の有機物試料にも応用可能 2013.12.5.Thurs. 21
まとめ 1 銅電解重量法 銅電解重量法は精度よく分析可能専用の装置や分析者の技能などが必要共存元素の影響を考慮する必要 分析対象の試料として純銅の分析も可能近年開発されたSn Bi 含有銅合金も分析可能また 銅合金だけでなく アルミニウム合金 銀ろう 有機物試料 ホワイトメタルなども可能 2013.12.5.Thurs. 22
分析技術共同研究 分析技術共同研究 1957 年 ( 昭和 32 年 ) より続き 今年度で56 回目金属 セラミックス 有機物試料などを分析対象とし 無機元素を中心として共同分析を開催 今回報告する内容過去の共同研究の報告から データを集計 解析し 分析方法と分析精度について検討を加えた事例 : 銅合金 SUS 鋼 共同研究にて分析試料を金属とした回数 金属 Fe Cu Zn Al その他 回数 15 回 4 回 3 回 7 回 Ni, Ti, Mgなど 2013.12.5.Thurs.
共同研究事例 1 銅合金 分析試料を銅合金とした年 開催年 分析試料 分析元素 1958 黄銅 Cu, Pb, Fe, Zn 1966 黄銅板 Cu, Pb, Fe, Zn 1982 アルミニウム黄銅管 Cu, Fe, Al, As, Si 1997 アルミニウム青銅 Cu, Fe, Mn, Ni, Al 2013.12.5.Thurs.
共同研究事例 1 銅合金 銅の分析方法別の報告件数推移 [1966 年 1982 年 ] 電解重量法が大半 [1997 年 ] 電解重量法 その他 26 件 25 件 2013.12.5.Thurs.
まとめ 2 共同研究事例より 銅合金中の銅の分析 1966 年 1982 年の時は重量法がほとんどだったが 1997 年では その他の分析法が半分を占めるステンレス鋼の分析本年度の報告はICP-OES が半数以上を占める以前は 重量法 容量法 吸光光度法が多かった 分析法の比較 重量法 容量法の方が ICP-OES に比べて ばらつきが少ない 2013.12.5.Thurs. 26