製品コード MK421 研究用 Influenza Virus Typing Set 説明書
インフルエンザウイルスには A, B, C の 3 つの型があります 現在 インフルエンザウイルスで流行を起こすのは A 型の H1 亜型 ( ソ連かぜ ) H3 亜型 ( 香港かぜ ) そして B 型の 3 種類です ウイルスの構造を図 1 に模式的に示します インフルエンザウイルスの型は核蛋白質 (NP) の抗原性の違いによって分類され それらはさらに ウイルス表面蛋白質であるヘマグルチニン (haemagglutinin: 以下 HA と略す ) とノイラミニダーゼ (neuraminidase: 以下 NA と略す ) の抗原性の違いによって亜型に分類されます ちなみに死者のでる A 型 : ソ連かぜは H1N1 型 A 型 : 香港かぜは H3N2 型です H2N2 型は 1968 年以降日本での分離例はありません インフルエンザ A 型ウイルスの HA は 球状部領域 (head region) と幹領域 (stem region) の 2 つに分けられます 球状部領域は ウイルスが標的細胞に結合するためのレセプター結合部位を含んでいます また幹領域は ウイルス膜と標的細胞の細胞膜と膜融合に必要な融合ペプチド配列を含んでいます インフルエンザの HA の球状部領域は特に抗原性が強く 生産される抗体のほとんどはこの領域を認識するものです しかし この領域は特に変異が起こりやすいので ワクチン接種の効果を左右する大きな要因となっています さらにインフルエンザは短期間のうちに広がるので 迅速なタイピングが重要となっています 本製品はインフルエンザウイルスの亜型のタイピングを行うためのキットです 各種のビオチン化抗体 (A 型ウイルスの亜型を区別できるモノクローナル抗体 2 種 すべての A 型ウイルスに結合するモノクローナル抗体 1 種 すべての B 型ウイルスに結合するモノクローナル抗体 1 種 A 型と B 型の両方に結合するポリクローナル抗体 1 種 ) と POD 標識ストレプトアビジンを組み合わせて用いることにより タイピングを行います 検出感度は PAP 法と同等と思われます 主として ウイルス検体を 96 穴マイクロプレート上の培養細胞に感染 増殖させてから 同定を行うのに便利なように調製してあります 図 1. インフルエンザウイルスの模式図 I. キットの内容 ラベル番号 (1)Biotinylated-C179 100 μl 1 本ビオチン化抗インフルエンザ A 型 (H1N1, H2N2) 抗体 (2)Biotinylated-F49 100 μl 1 本ビオチン化抗インフルエンザ A 型 (H3N2) 抗体 (3)Biotinylated-C111 100 μl 1 本ビオチン化抗インフルエンザ A 型抗体 (4)Biotinylated-9D6 100 μl 1 本ビオチン化抗インフルエンザ B 型抗体 (5)Biotinylated-Anti Influenza A, B 100 μl 1 本ビオチン化抗インフルエンザ A 型 B 型抗体 (6)Avidin-POD 500 μl 1 本 POD 標識ストレプトアビジン (7)Diluent( 4) 100 ml 2 本抗体希釈液 ( 4) * 使用時に PBS で 4 倍希釈して用いる 2
II. キット以外に必要な試薬および装置 99% エタノール ( 特級 ) 0.1% アビジン溶液 (20 mm Tris-buffered saline 中 ) 0.01% ビオチン溶液 (20 mm Tris-buffered saline 中 ) 推奨品 DAKO. code:x0590biotin Blocking System ピペット マイクロピペットおよびピペットチップ 洗浄用緩衝液:0.1% Tween/PBS [PBS の調製には PBS 錠剤タイプ ( 製品コード T900) が便利です ] 発色基質:DAB(3, 3'-Diaminobenzidine Tetrahydrochloride)1 mg/ml ( クエン酸緩衝液 ph5 中 ) 光学顕微鏡 III. 抗体の特異性 (1) 抗インフルエンザ A 型 (H1N1, H2N2) 抗体 :C179 インフルエンザ A 型 (H1N1) 型と (H2N2) 型の HA 幹領域で共通に保存された立体構造を認識する抗体です 抗原変異に左右されることなく H1 亜型と H2 亜型に反応します (2) 抗インフルエンザ A 型 (H3N2) 抗体 :F49 インフルエンザ A 型 (H3N2) 型の HA 幹領域を特異的に認識する抗体です (3) 抗インフルエンザ A 型抗体 :C111 インフルエンザ A 型ウイルスのマトリックス蛋白質 (M1) を認識する抗体です A 型ウイルスの亜型に関係なく すべての A 型に反応します (4) 抗インフルエンザ B 型抗体 :9D6 インフルエンザ B 型ウイルスの核蛋白質 (NP) を認識する抗体です 広範囲の B 型インフルエンザウイルスに特異的に反応します (5) 抗インフルエンザ A 型 B 型抗体 : ウサギポリクローナル抗体インフルエンザウイルス (A 型 : 北京株 H1N1 武漢株 H3N2 B 型 : 三重株 広東株 ) の HA 抗原を免疫して作製されたウサギ抗血清です A 型ウイルス B 型ウイルスに同程度反応します 3
各抗体のウイルス株に対する反応性の一覧表を以下に示します 表 1. 種々のインフルエンザ A 型および B 型ウイルスに対する各モノクローナル抗体の反応性 Virus type and strain C179 F49 C111 Staininng Neutraizing Staininng Staininng (H1N1) A/PR/8/34 ー A/Bangkok/10/83 ー A/Yamagata/120/86 ー A/Yamagata/120/86 ー A/Osaka/930/88 ー A/Suita/1/89 ー (H2N2) A/Okuda/57 ー A/Adachi/2/57 ー A/Kaizuka/2/65 ー A/Izumi/5/65 ー A/Takatsuki/4/65 ー (H3N2) A/Aichi/2/68 ー ー A/Fukuoka/C29/85 ー ー A/Sichuan/2/87 ー ー A/Ibaraki/1/90 ー ー A/Suita/1/90 ー ー (H3N8) A/Budgreiger/Aichi/1/77 ー ー (H4N6) A/Duck/Czechoslovakia/1/56 ー ー (H5N3) A/Whistling swan/shimane/476/83 ー (H5N9) A/Turkey/Ontario/7732/66 ー (H6N5) A/Shearwater/Australia/1/72 ー ー (H6N6) A/Whistling swan/shimane/37/80 ー ー (H7N7) A/Tufted duck/shimane/124r/80 ー ー ー (H8N4) A/Turkey/Ontario/6118/68 ー ー ー (H9N2) A/Turkey/Wisconsin/66 ー (H10N7) A/Chiken/Germany"N"/49 ー ー (H11N6) A/Duck/England/56 ー ー ー (B) B/Nagasaki/1/87 ーーーー Virus type and strain B/Lee/40 B/Osaka/2/70 B/Gifu/2/73 B/USSR/100/84 B/Tokyo/676/84 B/Norway/1/84 B/Ibaragi/2/85 B/Victoria/2/78 B/Nagasaki/1/87 B/Aichi/5/88 B/Honkon/22/89 B/Mie/1/93 B/Kanton/5/94 9D6 Staining 4
IV. 操作法 1. 96 穴マイクロプレートで単層培養した MDCK 細胞 (Madin-Darby canine kidney) にウイルスを接種する これは以下のようにして行う ( 各種検査機関において独自の洗練された方法がある場合はこの限りではない ) 採取した鼻汁を Hank's 培地もしくは PBS などに懸濁し 4 10, 000 g で 5 分間遠心し その上清をウイルス液とする 血清含有培地を用いて 96 穴プレート中で 80% 飽和まで培養した MDCK 細胞から培養上清を除き 200 μl の PBS でウェルを 1 回洗浄する ウェルから液を充分に除いた後 ウイルス液で細胞に感染させる 次に 血清含有培地をその上に 100 μl 添加し 15 20 時間培養を続ける 2. 細胞の固定ウイルスを感染させた MDCK 細胞の培養液から培地を除く 次に 100 μl の 99% エタノールをウェルに加え 室温で 10 分間放置して 細胞を固定する ( 取り除いた培地には感染性ウイルス粒子が存在しているので 取り扱いに注意する ) 固定後 PBS で各ウェルを 3 回洗浄し 液を捨てる 3. 内因性ビオチンのブロッキング 0.1% アビジン溶液を各ウェルに 100 μl 加え 10 分間放置する 液を捨てた後 0.01% ビオチン溶液を各ウェルに 100 μl 加え 10 分間放置する 次に PBS で 3 回洗浄し 液を捨てて次の操作へ移る 4. 非特異的結合部位ブロッキング操作 (7) の溶液を PBS で 4 倍希釈する その液を各ウェルに 200 μl ずつ加え 室温で 30 分間放置してブロッキングをする 液を捨て プレートを裏返してペーパータオルの上に置き 液を切る なお (7) の溶液およびその 4 倍希釈液はいずれも防腐剤を含まないので 使用後の残液は凍結保存すること 5. ビオチン化抗体反応各抗体を (7) の 4 倍希釈液で 100 倍希釈して抗体溶液を必要量だけ調製する ブロッキング操作を行ったプレートの所定のウェルに 各抗体溶液を 100 μl ずつ添加し 37 で 30 分間反応させる ( この際 1 つの抗体を 1 つのウェルに加えるようにする ) 反応後 洗浄用緩衝液 (0.1% Tween/PBS) で各ウェルを 4 回洗浄する 液を捨て ペーパータオル上で液を切る 6. POD 標識ストレプトアビジン結合反応 (6) の POD 標識ストレプトアビジンを (7) の 4 倍希釈液で 100 倍希釈して希釈酵素溶液を必要量だけ調製する この溶液をプレートの各ウェルに 100 μl ずつ添加し 37 で 30 分間反応させる 反応後 洗浄用緩衝液 (0.1% Tween/PBS) で各ウェルを 4 回洗浄する 液を捨て ペーパータオル上で液を切る 7. 発色反応発色基質 ( 自家調製した または市販の調製済み DAB 基質を用いる ) を各ウェルに 100 μl ずつ添加し 室温で発色させる 顕微鏡で各ウェルを観察し 充分な発色が得られた時点で基質液を捨て 各ウェルに 100 μl ずつの PBS を 100 μl ずつ加える 染色結果のパターンからインフルエンザウイルスのタイピングを行う 5
V. 試薬の保存方法 1. 各ビオチン化抗体 ((1) (5)) および POD 標識ストレプトアビジン ((6)) は防腐剤を含んでいるので有効期限内は冷蔵で保存できる 長期保存には分注して - 20 で凍結する 2. (7) の抗体希釈液およびその 4 倍希釈溶液は防腐剤を含んでいないので 開封 使用後は凍結保存すること 3. 希釈した抗体およびぺルオキシダーゼ標識物はその日のうちに使用すること VI. 使用上の注意 1. ウイルスの感染や拡散を避けるため 検体サンプルの取扱いには充分注意すること 2. 廃棄物はすべてオートクレーブで滅菌してから所定の規則に従って廃棄すること 3. 発色基質は有害性があるので 取扱い 廃棄の方法に充分注意すること VI. 参考文献 1)Okuno, Y. et al. (1993) J. Virol. 67, 2552-2558. 2)Okuno, Y. et al. (1994) J. Virol. 68, 517-520. 3) 植田稔 奥野良信 (1997) 日本胸部臨床 56 巻 11 号 :S116-S121. 4)Ueda, M. et al. (1998) J. Clin. Microbiol. 36, 340-344. 5)Nakagawa, N. et al. (1999) J. Virol. Methods 79, 113-120. VII. 注意 本製品は研究用として販売しております ヒト 動物への医療 臨床診断用には使用しないようご注意ください また 食品 化粧品 家庭用品等として使用しないでください タカラバイオの承認を得ずに製品の再販 譲渡 再販 譲渡のための改変 商用製品の製造に使用することは禁止されています 6
NOTICE TO PURCHASER: LIMITED LICENSE [M53] Anti-human influenza antibody This product is covered by the claims of U.S. Patent Nos. 5,589,174 and 5,631,350 and their foreign counterpart patent claims. 7
200909