資料 4 臨床側が目指すゲノム医療 (TOP-GEAR プロジェクト ) 国立がん研究センター企画戦略局長 同 中央病院 副院長 ( 研究担当 ) 乳腺 腫瘍内科 藤原 康弘 National Cancer Center Hospital

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COI開示及び免責事項 発表者名 矢花直幸 演題発表に関連し 開示すべきCOI関係にある企 業などはありません また本講演の内容は発表者の個人的見解を含む ものであり PMDAの公式の見解ではありません 2

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ゲノム解読による腫瘍の理解 n どの遺伝子異常が起こる? どういった分子経路の異常が腫瘍発生に寄与するのか? n どの遺伝子異常が治療標的となりうるか? 治療法の開発 n どういったゲノム異常が起こっているのか? 発がん要因の解明と予防法の開発 2

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するものであり 分子標的治療薬の 標的 とする分子です 表 : 日本で承認されている分子標的治療薬 薬剤名 ( 商品の名称 ) 一般名 ( 国際的に用いられる名称 ) 分類 主な標的分子 対象となるがん イレッサ ゲフィニチブ 低分子 EGFR 非小細胞肺がん タルセバ エルロチニブ 低分子 EGF

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

2. PleSSision( プレシジョン ) 検査の内容について 網羅的ながん遺伝子解析とは? 月 木新患外来診療中 現在 がん は発症臓器 ( たとえば肺 肝臓など ) 及び組織型( たとえば腺がん 扁平上皮がんなど ) に基づいて分類され 治療法の選択が行われています しかし 近年の研究により

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ANSWER CANCER BIOMARKERS 自分の病気を理解するために 担当医に質問してみましょう 私のがんについて 治療選択に関わる バイオマーカーがありますか バイオマーカーを調べる 目的と利点を教えてください バイオマーカーは どうやって調べるのですか バイオマーカーを調べる際 痛みや不

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がんの遺伝が心配な方 がんの 2 つのゲノム医療 正常細胞 ( 持って生まれた体質 ) の臨床ゲノム検査 ( クリニカル シークエンシング ) 早期発見 治療 発がん抑制による個別化予防 がんの薬物療法が必要な方 ( 診療科支援 ) 治療の副作用予防 効果予測 がん組織 ( 病変部位 ) の臨床ゲノ

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小児の難治性白血病を引き起こす MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見 ポイント 小児がんのなかでも 最も頻度が高い急性リンパ性白血病を起こす新たな原因として MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見しました MEF2D-BCL9 融合遺伝子は 治療中に再発する難治性の白血病を引き起こしますが 新しい

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付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

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平成 30 年 2 月 5 日 若年性骨髄単球性白血病の新たな発症メカニズムとその治療法を発見! 今後の新規治療法開発への期待 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 門松健治 ) 小児科学の高橋義行 ( たかはしよしゆき ) 教授 村松秀城 ( むらまつひでき ) 助教 村上典寛 ( むらかみ

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検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 P EDTA-2Na( 薄紫 ) 血液 7 ml RNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60 氷 MINテイリョウ. 採取容器について 0

本日の内容 1. 本邦におけるコンパニオン診断システムの規制 2. NGSを用いたコンパニオン診断システム 1 規制上の取扱い 2 評価の考え方と検討課題 3. NGSを用いた遺伝子検査システムに関連した課題 2

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

ける発展が必要です 子宮癌肉腫の診断は主に手術進行期を決定するための子宮摘出によって得られた組織切片の病理評価に基づいて行い 組織学的にはいわゆる癌腫と肉腫の2 成分で構成されています (2 近年 子宮癌肉腫は癌腫成分が肉腫成分へ分化した結果 組織学的に2 面性をみる とみなす報告があります (1,

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資料2 ゲノム医療をめぐる現状と課題(確定版)

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8 整形外科 骨肉腫 9 脳神経外科 8 0 皮膚科 皮膚腫瘍 初発中枢神経系原発悪性リンパ腫 神経膠腫 脳腫瘍 膠芽腫 頭蓋内原発胚細胞腫 膠芽腫 小児神経膠腫 /4 別紙 5( 臨床試験 治験 )

1. 研究の名称 : 芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍の分子病理学的研究 2. 研究組織 : 研究責任者 : 埼玉医科大学総合医療センター病理部 准教授 百瀬修二 研究実施者 : 埼玉医科大学総合医療センター病理部 教授 田丸淳一 埼玉医科大学総合医療センター血液内科 助教 田中佑加 基盤施設研究責任者

スライド 1

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

再発小児 B 前駆細胞性急性リンパ性白血病におけるキメラ遺伝子の探索 ( この研究は 小児白血病リンパ腫研究グループ (JPLSG)ALL-B12 治療研究の付随研究として行われます ) 研究機関名及び研究責任者氏名 この研究が行われる研究機関と研究責任者は次に示す通りです 研究代表者眞田昌国立病院

公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研

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法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

皮的肺生検 ) で遺伝子変異が特定できる可能性がある場合に 血液検査後に 気管支鏡検査 ( または経皮的肺生検 ) を受けたい と回答したのは 130 名 (87.8%) でした 確定診断の検査時にて辛い思いをされた 92 名の方においても 82 名 (89.2%) が再度その辛い思いをした検査を受

原発不明がん はじめに がんが最初に発生した場所を 原発部位 その病巣を 原発巣 と呼びます また 原発巣のがん細胞が リンパの流れや血液の流れを介して別の場所に生着した結果つくられる病巣を 転移巣 と呼びます 通常は がんがどこから発生しているのかがはっきりしている場合が多いので その原発部位によ

4. 研究の背景 : エストロゲン受容体陽性で その増殖にエストロゲンを必要とする Luminal A [3] と呼ばれるタイプの乳がんは 乳がん全体の約 7 割を占め 抗エストロゲン療法が効果的で比較的予後良好です しかし 抗エストロゲン剤の効果が低く手術をしても将来的に再発する高リスク群が 約

環境変化への業界側取組  ~CU制度に係るパイロット試験での経験から~

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の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

平成 28 年 12 月 12 日 癌の転移の一種である胃癌腹膜播種 ( ふくまくはしゅ ) に特異的な新しい標的分子 synaptotagmin 8 の発見 ~ 革新的な分子標的治療薬とそのコンパニオン診断薬開発へ ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 消化器外科学の小寺泰

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小児がん中央機関からの報告 1 情報提供 ( 院内がん登録 ) 国立がん研究センターがん対策情報センター センター長若尾文彦 1

大規模ゲノム解析から明らかとなった低悪性度神経膠腫における遺伝学的予後予測因子 ポイント 低悪性度神経膠腫では 遺伝子異常の数が多い方が 腫瘍の悪性度 (WHO grade) が高く 患者の生命予後が悪いことを示しました 多数検体に対して行った大規模ゲノム解析の結果から 低悪性度神経膠腫の各 sub

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結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

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解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

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6 月 25 日胸腺腫 胸腺がん患者の情報交換会 & 勉強会質疑 応答 奥村教授にお聞きしたいこと 奥村教授の話 1 特徴 (1) 胸腺腫 胸腺がん カルチノイドの違いについて 胸腺腫はがんの種類か 病理学的には胸腺腫はがんではなくて正常と区別つかず機能を残したまま腫瘍化したもの 一部 転移するもの

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

094 小細胞肺がんとはどのような肺がんですか んの 1 つです 小細胞肺がんは, 肺がんの約 15% を占めていて, 肺がんの組 織型のなかでは 3 番目に多いものです たばことの関係が強いが 小細胞肺がんは, ほかの組織型と比べて進行が速く転移しやすいため, 手術 可能な時期に発見されることは少

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検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 P EDTA-2Na( 薄紫 ) 血液 7 ml DNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 JAK2/CALR. 外 N60 氷 採取容器について

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大腸癌術前化学療法後切除標本を用いた免疫チェックポイント分子及び癌関連遺伝子異常のプロファイリングの研究 

1 分子標的治療薬概論 分子生物学の進歩により, がんの特性が徐々に明らかになるにつれ, がん薬物療法における新しい抗悪性腫瘍薬の開発戦略は大きく変わってきている. 本邦においても 2001 年に CD20 に対する抗体であるリツキシマブが B 細胞リンパ腫の治療薬として認可されて以来, 様々な分子

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第71巻5・6号(12月号)/投稿規定・目次・表2・奥付・背

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号添加物 ( キャップ色等 ) 採取容器採取材料採取量測定材料ノ他材料 DNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 JAK2/CALR. 外 N60 氷 採取容器について その他造血器 **-**

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研究から医療へ より医療への実利用が近いもの ゲノム医療研究推進ワーキンググループ報告書 (AMED) 臨床ゲノム情報統合データベース公募 対象疾患の考え方の方向性 第 1 グループ ( 主に を目指す ) 医療への実利用が近い疾患 領域の着実な推進 単一遺伝子疾患 希少疾患 難病 ( 生殖細胞系列

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鑑-H リンゼス錠他 留意事項通知の一部改正等について

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

EGFR-TKI を使用した場合と第 2 世代 EGFR-TKI を使用した場合とでその後のタグリッソの効果が同等であるかは明らかではありません 両者の間で EGFR 以外の癌に関する遺伝子の状態にも違いが生じている可能性もあります そこで今回私たちは EGFR-TKI に対する耐性獲得時に T79

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外来在宅化学療法の実際

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資料 4 臨床側が目指すゲノム医療 (TOP-GEAR プロジェクト ) 国立がん研究センター企画戦略局長 同 中央病院 副院長 ( 研究担当 ) 乳腺 腫瘍内科 藤原 康弘 National Cancer Center Hospital

国立がん研究センター中央病院はこちらも体制整備 臓器別に対応してきたがん診療 他の医療機関の遺伝診療部 がん細胞の多様性に合わせた個別化医療の時代 体細胞遺伝子検査 がんの個性を知る患者さんからがん細胞を取り出し遺伝子異常を知る 生殖細胞系列遺伝子検査 個人の体質を知る血液 毛髪 唾液などから遺伝子異常を知る 新たな治療の可能性 適した治療薬の可能性 適した治療薬の可能性 予防的治療 SCRUM-JAPAN TOP-GEAR (TOPICS-1 試験 ) 治験 グリベック ハーセプチン イレッサ ゼルボラフ 慢性骨髄性白血病 BCR-ABL 非小細胞肺癌 乳癌 HER2 EGFR 悪性黒色腫 BRAF 抗がん剤の代謝酵素を調べるタモキシフェンと CYP2D6 (TARGET 試験 ) 発症リスクを把握 BRCA-1,2 National Cancer Center Hospital 2

日本における 乳癌患者さんの 日常診療での ゲノム情報に基づく診療実態 National Cancer Center Hospital 3

1 マンマプリント 乳癌の術後抗がん剤投与の要否を 判断する際に使用 National Cancer Center Hospital 4

腫瘍径 5cm 未満の乳癌患者さんにおける 70 遺伝子発現プロフィールによる生命予後の予測 従来から使われている病理診断 ( 免疫染色も含む ) で再発しやすい ( 術後の抗がん剤治療が必要 ) と思われていた人でも Good Signature 再発しにくい ( 術後の抗がん剤治療不要 ) 人がいる Poor Signature (Nature 415: 530, 2002, N Engl J Med 347: 1999, 2002) 2007 年 4 月米国 FDA 承認 ( マンマプリント Agendia 社 ) National Cancer Center Hospital 5

http://www.dna-chip.co.jp 国内でも 2008 年 3 月より検査可能 早期ステージ Ⅰor Ⅱ エストロゲン受容体陽性 陰性いずれも可 およびリンパ節転移なしの乳癌術後が検査の対象 National Cancer Center Hospital 6

2 オンコタイプ Dx 乳癌の術後抗がん剤投与の要否を 判断する際に使用 National Cancer Center Hospital 7

Oncotype DX Recurrence Score ( 再発スコア ) RESULTS 結果報告書 Recurrence Score = 11 CLINICAL EXPERIENCE Patients with a Recurrence Score of 11 in clinical validation study had an Average Rate of Distant Recurrence at 10 years of 7.4% (95% CI: 4.9%, 9.8%) National Cancer Center Hospital 8

日本では 2007 年 2 月から検査可能 ただし 世界中の検体が米国の一カ所の検査所に集められて検査が実施されている National Cancer Center Hospital 9

3 BRCAAnalysis Dx BRCA 遺伝子変異を持った卵巣癌に抗がん剤 ( オラパリブ ) の投与の要否を判断する際に使用 National Cancer Center Hospital 10

オラパリブ ( 商品名 Lynparza) という BRCA 遺伝子変異を持つ種々の治療後の 卵巣癌 患者さんを適応とする分子標的薬 ( 抗がん剤 ) が 2014 年 12 月 19 日承認された その BRCA 遺伝子変異は米国で検査されている 米国添付文書の 14 CLINICAL STUDIES National Cancer Center Hospital 11

BRCA Analysis CDx BRCA-1,2 遺伝子変異を持つ卵巣癌に対する分子標的薬 ( 新抗がん剤 ) の投与可否を判断する体外診断薬 ( コンパニオン診断薬 ; CDx) BRACAnalysis は FDA が LDT を CDx として認めた最初の例 Myriad 社の CLIA 認証検査所 ( ソルトレイクシティー ドイツ )2 カ所でのみ検査実施可能な LDT National Cancer Center Hospital 12

ゲノム医療を日常診療に導入するために国立がん研究センター中央病院が行ってきた網羅的遺伝子解析を用いた臨床研究プロジェクト TOP-GEAR プロジェクト Trial of Onco-Panel for Gene-profiling to Estimate both Adverse events and Response by cancer treatment National Cancer Center Hospital 13

TOP-GEAR プロジェクトの歴史 2013 年 7 月 2014 年 10 月 2015 年 10 月 2016 年 1 月 研究所 NCC オンコパネルの開発 NCC オンコパネルプラットフォームの改編 改良 中央病院 TOPICS-1 試験 TOPGEAR プロトコルでのシークエンス TOPICS-2 試験以外のシークエンス 中央病院 ( 臨床検査科 ) 品質保証の必要性 院内品質保証ラボ ハード面の整備 ソフト面の整備 TOPICS-2 試験 開所式 AYA 世代へも対象を拡大 National Cancer Center Hospital 14

Trial of Onco-Panel for Gene-profiling to Estimate both Adverse events and Response by cancer treatment がん治療に伴う臨床効果と副作用を予測する NCC Onco-Panel を用いた遺伝子プロファイリング研究 ( 前向きコホート研究 ) 説明と同意 TOP-GEAR プロジェクト NCC Onco-panel 網羅的遺伝子解析 標準的治療法に効果が得られなくなった固形がん患者 がん組織の用意 解析可能 130 症例にいたるまで前向きに登録 治療選択に有効な遺伝子異常が見つかった症例数? National Cancer Center Hospital 臨床第 I 相試験未承認薬により治療可能であった症例数? 遺伝子異常と分子標的薬の標的分子がマッチしている症例数? 治療効果が得られた症例数 15

国立がん研究センター中央病院 オリジナルの遺伝子パネル 治療標的となりうる約 100 遺伝子 ( 遺伝子変異, 遺伝子増幅, 融合遺伝子 ) 微小な腫瘍検体を用いて 1 回で網羅的に解析可能. 90 遺伝子変異, 遺伝子増幅 ( 全エクソン解析 ) 10 融合遺伝子 ABL1 BRCA2 EZH2 JAK3 NOTCH1 RAC2 ALK AKT1 CCND1 FBXW7 KEAP1 NOTCH2 RAD51C RET AKT2 CDK4 FGFR1 KIT NOTCH3 RAF1 ROS1 AKT3 CDKN2A FGFR2 KRAS NRAS RB1 FGFR2 ALK CHEK2 FGFR3 MAP2K1 NRG1 RET FGFR3 APC CREBBP FGFR4 MAP2K4 NT5C2 ROS1 AKT3 ARID1A CTNNB1 FLT3 MAP3K1 PALB2 SETD2 BRAF ARID2 CUL3 HRAS MAP3K4 PBRM1 SMAD4 RAF1 ATM DDR2 IDH1 MDM2 PDGFRA SMARCA4 NOTCH1 AXIN1 EGFR IDH2 MET PDGFRB SMO NRG1 BAP1 ENO1 IGF1R MTOR PIK3CA STAT3. BARD1 EP300 IGF2 MYC PIK3R1 STK11. BIM ERBB2 IL7R MYCN PTCH1 TP53. BRAF ERBB3 JAK1 NF1 PTEN TSC1. BRCA1 ERBB4 JAK2 NFE2L2 RAC1 VHL. National Cancer Center Hospital NCC Onco-panel 100 遺伝子領域 DNA 濃縮 最新の次世代シーケンス技術 16

解析結果レポート Expert Panel 報告書 Expert Panel 日 :2014 年 4 月 22 日 TOP-GEAR 番号 :0089 検体番号 :OC09-1665 性別 : 女性同意取得時年齢 :68 歳 診療科 : 乳腺 腫瘍内科 担当医 : 温泉川真由文書同意日 :2013 年 12 月 13 日 臨床診断 : 卵巣がん 再発 遠隔転移部位 : 肝 肺 腹膜 リンパ節 骨 脳 その他 ( ) PS:1 保険 : 国保 臓器機能にかかわる問題点 : 前治療 レジメン 放射線 治療開始日 治療終了日 コース数 最良効果 中止理由 dd CBDCA+PTX 2009.7 2010.2 6 Pazopanib 2010.4 2011.10 6 CBDCA+PTX 2011. 2012. 6 CBDCA+Doxil 2013.3 2013.9 6 検体情報 検体組織 採取法 組織型 切片の大きさ (cm) 腫瘍細胞率 (%) 卵巣 ( 原発 ) 手術 漿液性腺癌 2.5 1.4 60-70% * 通常よりホルマリン固定期間が長かった ( 過固定 ) 可能性あり Qubit 測定 DNA 量 (µg) DNA 品質 (qpcr/qubit 比 ) 4.08 0.20 遺伝子異常情報 変異遺伝子 変異アレル頻度 CDS 変化 アミノ酸変化 COSMIC ID TP53 62.8 Exon5:c.C380T p.s127f 44226 BRCA1 73.0 Exon19:c.C5251T p.r1751x - 増幅遺伝子 補正リード数比 ( 遺伝子コピー数比 ) MYC 6.99 CCND1 4.74 Expert Panel からの意見 TP53 変異 :COSMIC データベースに多数の登録があり 機能欠失変異である可能性が高い 対応する治験薬なし BRCA1 変異 : 短縮型変異であり 機能欠失変異と考えられる PARP 阻害剤は候補にあがる が 当院に P1 候補薬なし 生殖細胞系列変異の可能性があり 濃厚な家族歴があれば 遺伝相 談外来に相談 MYC 増幅 :PIM 阻害剤について検討の余地がある CCND1 増幅 :CDK4/6 阻害剤が候補に挙がる 候補となる治験薬 :CDK4/6 阻害剤 (LEE011 LY2835219) PIM 阻害剤 (AZD1208) 報告書作成日 :2014/4/22 確認サイン : National Cancer Center Hospital 17

TOP-GEAR TOPICS-1 試験結果 解析患者 2013 年 7 月 ~2014 年 10 月 解析患者数 (n=131) 5 8 1520 50 35 乳がん Breast 胃がん Gastric 8 13 卵巣がん Ovarian 1214 肺がん Lung 胆管がん Bile duct 30 21 48 35 子宮頸がん Cervical その他 Other National Cancer Center Hospital 18

肺転移部位 -1 肺転移部位 -1 分子標的薬に著効した 1 例 治療前治療後 268 日目 38 歳の女性 卵巣がん, 多発肺転移 標準的治療法 ( 抗がん剤 ) が効かなくなり, 有効な治療がなくなった TOP-GEAR 試験により AKT1 E17K 遺伝子変異を同定 某製薬メーカーのAKT 阻害剤の第 I 相試験 ( 治験 ) に参加 投与後 3 か月後 腫瘍径が 47% の縮小 以後 2 年以上 縮小を継続 Davies B, Kodaira M, Tamura K et al. Mol Cancer Ther. 2015 19

院内クリニカルシークエンスによる診療の将来像 担当医 病理医 院内 担当医による検査の説明 担当医による結果の説明治療選択 生殖細胞系の異常の場合遺伝カウンセリングも 解析試料採取 品質保証遺伝子検査室 臨床情報検体 検体 結果 検体 検査をしてから レポート返却 結果が出るまで 約 2 週間 クリニカルシークエンス部門医 病理情報 レポート原案 承認 解析情報 エキスパートパネル ( 医師 生命倫理専門家など ) 結果 生命情報学専門家 ( バイオインフォマティクス ) 20