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生食用鮮魚介類等の加工時における殺菌料等の使用について 平成 25 年 3 月食品安全部 1. 経緯食品への添加物の使用については 食品衛生法第 11 条第 1 項に基づく 食品 添加物等の規格基準 ( 昭和 34 年厚生省告示第 370 号 以下 規格基準 という ) の第 2 添加物の部において ヒトが摂取した際の安全性や必要性等の観点から必要な使用基準が定められている 一方 個別食品の規格基準を定めている第 1 食品の部において 生食用鮮魚介類 冷凍食品 ( 生食用冷凍鮮魚介類に限る ) 及び生食用かき ( 以下 生食用鮮魚介類等 という ) については その食品の本質から食品添加物は原則使用すべきではないとの考えから 現在 加工基準において 例外として殺菌料である次亜塩素酸ナトリウムを除き化学的合成品たる添加物を使用してはならない旨が規定されてきた 平成 14 年 6 月に食品添加物として指定された次亜塩素酸水について 関係団体より生食用鮮魚介類等に対して 使用も認めるよう平成 21 年 8 月に要請があった ( 参考 2-1) このため 平成 21 年 8 月 19 日に開催された薬事 食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会において改正要望の内容に関する説明を聴取した上で 平成 23 年 3 月 10 日に食品安全委員会に対して 既に添加物として使用が認められていることから さらに食品健康影響評価を行うことは必要でないことの確認を求めたところ 最終製品の完成前に除去しなければならない とする次亜塩素酸水の使用基準が引き続き適用され 人の健康に影響を及ぼすものではないと考えられることから 食品健康影響評価を行うことが明らかに必要でないときに該当する旨の回答を得た ( 参考 3) また 平成 25 年 2 月 1 日に亜塩素酸水が食品添加物として指定されたことを踏まえ 関係業者から生食用鮮魚介類等の加工時に亜塩素酸水の使用を認めるよう要請があった ( 参考 2-2) その他にも 次亜塩素酸ナトリウムを使用する際の水素イオン濃度調整剤として塩酸の使用を認めるよう要請があった ( 参考 2-3) 今般 次亜塩素酸ナトリウムに加え 食品添加物として指定されている殺菌料などについて 生食用鮮魚介類等の加工時に使用を認めることについて厚生労働大臣から薬事 食品衛生審議会長あてに平成 25 年 3 月 1 日付けで諮問された 1

2. 次亜塩素酸ナトリウム 次亜塩素酸水 亜塩素酸水及び塩酸の使用基準 指定日食品添加物対象食品 昭和 25 年 4 月 1 日 平成 14 年 6 月 10 日 平成 25 年 2 月 1 日 昭和 32 年 7 月 31 日 次亜塩素酸ナトリウム ごまに使用してはならない 使用量の最大限度 次亜塩素酸水 - - 亜塩素酸水 精米 豆類 野菜 ( きのこ類を除く ) 果実 海藻類 鮮魚介類 ( 鯨肉を含む ) 食肉 食肉製品 鯨肉製品並びにこれらを塩蔵 乾燥その他の方法によって保存したもの - 亜塩素酸として 0.40g/kg 以下 ( 浸漬液又は噴霧液 1kg につき ) 塩酸 - - 使用制限 - 最終食品の完成前に除去しなければならない 最終食品の完成前に分解し 又は除去しなければならない 最終食品の完成前に中和又は除去しなければならない 3. 次亜塩素酸水 ( 次亜塩素酸 (HClO) を主成分とする水溶液 ) について ( 参考 4) 次亜塩素酸水は殺菌料の一種である ( 殺菌効果を有する分子種 :HClO 塩素ガス(Cl 2 ) 及び次亜塩素酸イオン (ClO - )) 塩酸又は塩化ナトリウム水溶液を電解することにより得られる次亜塩素酸を主成分とする水溶液であり 平成 14 年 6 月に食品添加物として指定され 平成 24 年 4 月に成分規格が改正されている 次亜塩素酸水には 強酸性次亜塩素酸水 弱酸性次亜塩素酸水及び微酸性次亜塩素酸水があり 使用基準に対象食品や使用量は定められていないが 使用制限として 最終食品の完成前に除去しなければならない とされている 食品添加物としての指定や改正の審議の際 大腸菌 黄色ブドウ球菌 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 サルモネラ菌 緑膿菌 レンサ球菌 枯草菌 ( 芽胞 ) カンジダ菌 黒コウジカビに対して効果があることを確認している 現在は野菜などの洗浄及び殺菌に用いられている 次亜塩素酸水は 食品に注入 混和するものではなく 食品の殺菌洗浄として使用し 飲用適の水ですすぐため 食品に残留することはない また 強酸性次亜塩素酸水で食品を洗浄し 食品に残留した残留塩素濃度を測定したところ検出限界 (0.5mg/kg) 以下であった したがって 食品中への残留性は低いことが示されている 4. 亜塩素酸水 ( 亜塩素酸 (HClO2) を主成分とする水溶液 ) について ( 参考 5) 亜塩素酸水は殺菌料の一種である ( 殺菌効果を有する分子種 :HClO 2 亜塩素酸イオン (ClO 2- ) 二酸化塩素 (ClO 2 in water phase)) 飽和塩化ナトリウム溶液に塩酸を加え 酸性条件下で無隔膜電解槽 ( 隔膜を隔てられていない陽極及び陰極で構成されたものをいう ) 内で電解して得られる水溶液に 硫酸を加えて強酸性とし 生成する塩素酸に過酸化水素水を加えて反応させて得られる水溶液であり 平成 25 年 2 月 1 日に食品添加物として指定された 2

使用基準により 対象食品 使用量 使用制限が定められている 食品添加物としての指定の審議の際 亜塩素酸水は 弱酸性域で特に安定し 広い範囲で殺菌効果があり 大腸菌 腸管出血性大腸菌 (O157:H7) 黄色ブドウ球菌 サルモネラ菌 カンピロバクター菌 腸炎ビブリオ菌 乳酸菌 セレウス菌 ( 栄養細胞及び芽胞 ) 真菌類( 酵母やカビ ) に対して効果があることを確認している 現在は野菜などの洗浄及び殺菌に用いられている 亜塩素酸の食品中への残留については 野菜を分析試料として亜塩素酸濃度を測定した結果 水道水ですすぎ洗いしたものについては 亜塩素酸は検出されなかったことから 亜塩素酸水を食品の洗浄に用いたとしても その後に水道水で水洗いすることにより 食品に亜塩素酸が残留する可能性は低いと考えられる 5. 魚介類に対する殺菌効果次亜塩素酸水や亜塩素酸水の食品に対する殺菌効果については すでに食品添加物として指定される際に確認されている 魚介類にこれら殺菌料を使用した試験においても 一般生菌や食中毒菌が減少する結果が得られている (1) 次亜塩素酸水 次亜塩素酸水は次亜塩素酸水生成装置により生成し 直ちに流水洗浄に用いる 次亜塩素酸水には3 種類あり いずれも同様の殺菌効果があると確認している 実 際に強酸性次亜塩素酸水と微酸性次亜塩素酸水で処理し 殺菌効果を検証した結果 処理前や水道水での洗浄と比べると 殺菌効果が得られている 1 強酸性次亜塩素酸水 ( 参考 6) 試験方法 : それぞれの検体を容器に入れ 強酸性次亜塩素酸水 (ph2.2~2.7 有効塩素濃度約 30mg/kg) を 1~4L/ 分で注入しオーバーフロー ( 流水撹拌 ) 等した処理と次亜塩素酸ナトリウム溶液 (ph8.5~8.7 有効塩素 100ppm) に 10 分間浸漬した処理について 拭き取り試験により一般生菌数を処理前 後で比較した 殺菌試験結果 : 品目ごとの処理方法及び一般生菌数は以下のとおり 品目 次亜塩素酸水一般生菌数 (CFU/10cm 2 ) 処理方法処理前次亜塩素酸ナトリウム次亜塩素酸水 イカ 流水撹拌 60 秒浸漬 600 秒 6.6 10 4 9.7 10 2 4.4 10 1 ホタテ 流水撹拌 120 秒 9.9 10 1 7.6 10 1 4.5 10 1 アサリ 流水撹拌 120 秒 2.1 10 3 7.0 10 1 3.6 10 1 ブリ 流水手洗 10 秒 5.3 10 3 2.3 10 3 3.0 10 2 アジ 流水 30 秒 5.8 10 5 1.4 10 4 1.5 10 4 マグロ 流水 30 秒 1.6 10 3 データなし 6.4 10 2 3

2 微酸性次亜塩素酸水 ( 参考 6) 試験方法 : サンマを洗浄機に入れ 水又は微酸性次亜塩素酸水を4L/ 分で 注入し オーバーフローさせながら 10 分間処理し 拭き取り試験により一 般生菌数を確認し それぞれの処理方法による効果を比較した 殺菌試験結果 : それぞれの試験水による処理後の平均菌数は以下のとおり 無処理 水道水 微酸性次亜塩素酸水 有効塩素濃度 - 0.3ppm 10ppm 22ppm ph - 7.51 6.43 5.40 菌数 ( 個 /50cm 2 ) 10 3.90 10 3.22 10 2.63 10 2.21 (2) 亜塩素酸水 ( 参考 5) 試験方法 : 生菌数が 10 8 個 /g になるように調整した菌懸濁液を検体に噴霧し 各濃度の亜塩素酸水に浸漬して殺菌効果を検証した 同時に品質に対する影響 も確認し 殺菌効果と品質に対する影響を考慮して有効濃度範囲を確認した 試験結果 : 品目ごとの処理方法及び殺菌効果については以下のとおり 品目 菌 処理方法 亜塩素酸水の濃度 (ppm) 100 200 300 生鮮サンマ 一般生菌 浸漬 30 分 ~ 腸炎ビブリオ 6 時間 ホタテ貝柱 一般生菌 大腸菌 浸漬 1 時間腸炎ビブリオ 紋甲イカ 一般生菌 大腸菌 浸漬 3 時間腸炎ビブリオ ( 菌数が 10 個 /g 未満となることが確認された場合 殺菌効果がある ( ) と評価 ) 品質に影響を与えない濃度範囲で 各種品目について問題となりうる菌の殺 菌できる条件を設定することができている 6. 水素イオン濃度調整剤としての塩酸の使用について ( 参考 2-3, 7) 次亜塩素酸含有水溶液の殺菌効果を有する分子種はいずれも次亜塩素酸であるが 次亜塩素酸は ph に依存してその存在状態が異なる そのため殺菌効果は 溶液の ph により変わり 次亜塩素酸の濃度に強く依存するとされている ( 次亜塩素酸の方が次亜塩素酸イオンよりも殺菌効果は高い ) 遊離有効塩素の化学平衡と ph の関係 4

現在 生食用鮮魚介類等の加工時に使用が認められている次亜塩素酸ナトリウムは 通常の使用濃度に希釈された場合の溶液は弱アルカリ性 (ph8~10) であるため 次亜塩素酸イオンの存在比率が高くなっている 次亜塩素酸ナトリウムの使用前に塩酸を混合し ph を酸性に傾けることで次亜塩素酸が増え 殺菌力を高めることができる そのため 他の食品においては 使用時に次亜塩素酸ナトリウムと塩酸を混合して用いている実態がある 塩酸は食品添加物として指定されており 使用基準に対象食品や使用量は定められていないが 使用制限として 最終食品の完成前に中和又は除去しなければならない とされている 7. まとめ 次亜塩素酸水及び亜塩素酸水は 現在生食用鮮魚介類等の加工に使用が認められている次亜塩素酸ナトリウムと同等以上の殺菌効果が期待できる 生食用鮮魚介類等は その食品の本質から 食品の加工にあたり添加物の使用は必要ないものであるが 加工時の衛生確保の観点から 食品添加物として使用が認められている殺菌料等を使用することは公衆衛生上有益である 上記の理由などから 食品添加物として使用が認められている次亜塩素酸水及び亜塩素酸水については 生食用鮮魚介類等の加工において使用を認めることとする また 生食用鮮魚介等の加工時においても 塩素系殺菌料の水素イオン濃度を調整するために塩酸を使用前に混合して使用することを認めることとする 8. 今後の対応 ( 案 ) 亜塩素酸水及び塩酸については 食品衛生法第 11 条第 1 項に基づく規格基準 ( 案 )( 資料 2) を設定することについて 食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼する その後 次亜塩素酸水とともに規格基準改正のための所要の手続きを進めることとする なお 今後も他の殺菌料が食品添加物として指定若しくは既存の食品添加物の使用基準の改正が行われ 鮮魚介類への使用が認められることが想定される その際は 殺菌料の食品添加物の使用基準検討時に 鮮魚介類に対する効果を示すデータが提出され 問題ないとされた場合は 食品添加物の指定又は改正手続きと共に 生食用鮮魚介類等の加工基準も同時に改正することとし 本部会へは その結果を報告することとする 5