elisa による 重力波コスモグラフィーと Hubble パラメータ問題 理化学研究所 ithes 久徳浩太郎共同研究者 : 瀬戸直樹 ( 京大 ) Kyutoku, Seto MNRAS 462 2177-2183 (2016) Kyutoku, Seto arxiv:1609.07142 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 1
目次 1. Hubble tension(hubbleパラメータ問題 ) 2. 連星ブラックホールからの重力波とeLISA 3. 重力波コスモグラフィー 4. 将来展望とまとめ 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 2
1. Hubble tension 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 3
Hubble tension? 近傍天体観測 vs CMB で 3.4sigma~9% の差 Riess+ (2016) CMB 近傍天体観測 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 4
CMB を変更する立場 Dark radiation? dark baryon dark matter dark energy dark radiation 慎重な検討が必要 Riess+ (2016) 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 5
ボイド? 低密度領域にいれば膨張は速く見えていいが z>0.1 まで見てこれほどの影響とは考えづらい 2013 年時点の tension Marra+ (2013) Wojtak+ (2014) 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 6
近傍宇宙の距離測定 : 距離梯子 100Mpc くらいの観測なら Ia 型超新星爆発や Tully-Fisher など銀河に対する経験則を用いる 信頼性? http://www.daviddarling.info/images/distance_ladder.jpg 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 7
本研究の目的 Hubble 定数を近傍宇宙の天体観測で知るには ( 光度 ) 距離 - 赤方偏移の比較が基本的な手段 D z cz/h 0 電磁波での観測では光度距離を求めるために距離梯子が必要になり 系統誤差は非自明 重力波によって独立な検証を行う手段の提案 - 近傍宇宙での標準音源 standard siren 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 8
2. 連星ブラック ホールからの重力波とeLISA 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 9
重力波の初検出 :GW 150914 http://apod.nasa.gov/apod/ap160211.html 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 10
GW 150914 のパラメータ 重力波観測からは質量 光度距離がわかる ( この赤方偏移は concordance cosmology から ) LIGO&Virgo (2016) 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 11
連星ブラックホールの性質 1. ブラックホールが今までの理解より重い GW 150914 は (29 + 36) 太陽質量 低金属量? - GW 151226 は (14 + 7.5) 2. 合体レートが高い 9-240 Gpc^(-3) yr^(-1)? LIGO&Virgo (2016) 質量分布やレートは 今後わかってくるだろう 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 12
elisa / LISA 100 万 km 程度の腕を持つ宇宙重力波検出器 mhz 帯に感度 デザイン 観測期間は検討中 Klein+ (2016) https://www.elisascience.org/ files/images/elisa_orbit.jpg 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 13
多波長重力波天文学? Sesana (2016) 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 14
多波長重力波天文学? Sesana (2016) 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 15
合体しない連星 合体しないで延々回っている連星が多数見える - ( 準 ) 単色波近似がよく通用する - 検出数は概ね チャープ質量 に対しM 10/3 3 年以内に合体多波長 Kyutoku-Seto (2016) 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 16
elisa の利点 Q. 宇宙で見るメリットはあるのか? A. ある 距離の決定精度がいい 検出器の較正精度が LIGO より上がる ( 予定な ) ので 振幅の決定精度が高く 距離も決まる 方角の決定精度がいい 地上検出器は複数台のネットワークを用意して到来時刻の差を比較する (<10,000km) 宇宙検出器は自身の運動による Doppler シフト 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 17
LIGO の位置決定精度 複数検出器の間の到来時刻差から決めている 母銀河を決める どころの話ではない 今後改善しても O(10) 平方度程度 http://ligo.org/detections/images/localization-comparison-gw150914-gw151226.jpg 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 18
3. 重力波 コスモグラフィー 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 19
重力波による距離測定 観測される重力波波形は大雑把には h t = F θ, φ, ı, ψ M5/3 f 2/3 cos Φ t D Φ t 2π ft + ft ሶ 2 /2 + ሶ f = 96/5 π 8/3 M 5/3 f 11/3 位相を見ると質量など系の物理量がわかる 振幅を予言できるので 距離 D が決まる ただし方角 連星の向きと相関する : F 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 20
問題 : 赤方偏移との縮退 赤方偏移 z からの信号は f/ 1 + z に伸びる 一般相対論にはスケールがないので t t 1 + z, M M 1 + z, D D(1 + z) と変換すれば振幅 位相とも不変になってしまう 重くて遠い連星 = 近くて軽い連星 光度距離は読み取ることができる 赤方偏移は原理的にわからない - 中性子星連星では縮退を解きうる ( 省略 ) 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 21
母銀河からの赤方偏移決定 赤方偏移は電磁波観測で母銀河から抜き出すどうやって母銀河を当てるかが問題 [Schutz 1986] 重力波観測で位置決定精度を出す宇宙検出器だとそれなりに可能かもしれない! 電磁波対応天体を見て位置を絞る中性子星を含む連星はGRBとかキロノヴァとか恒星質量ブラックホール同士の場合は 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 22
過去に提唱された elisa 宇宙論 超大質量ブラックホール同士の合体 z>1からの信号が主なターゲット ( 不定性大 ) 銀河が一緒に合体するので電磁波で光りうる 超大質量ブラックホール+ 恒星質量天体 z>0.1からの信号が主なターゲット ( 不定性大 ) 銀河は統計的に処理する ( クラスタリング ) 100Mpc くらいの距離を調べられるものはない 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 23
予想される elisa での決定精度 Takahashi-Seto 2002のFisher 解析に基づく 7mHz 100Mpcだと信号雑音比はρ~20 (BH 質量 観測期間 検出器デザインに依存 ) ΔD 1 D 0.1 ρ 20 ΔΩ 3.6 10 4 str ρ 20 2 f 7mHz 2-1 平方度くらい ( 地上検出器は O(10) 平方度 ) 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 24
母銀河探し 光度距離 D を元に赤方偏移カタログから探す z = H 0 D/c 光度距離測定の統計誤差 ΔD D 2 H 0 を ( 一時的に ) 仮定する誤差 D 1 銀河の特異速度による誤差 σ/h 0 D 0 とりあえず簡単のため両端だけを考える 大きめの特異速度 σ = 1000km/s を使って ΔD total = ΔD 2 + σ/h 0 2 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 25
位置がよく決まる銀河の数 M = 28M, R = 100 Gpc 3 yr 1 を仮定 ~15 ~60 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 26
Hubble 決定に伴う誤差 母銀河が大きめ (M > 10 9 M ) のとき 60 個くらいの連星に対して母銀河が決まる距離の統計誤差やショットノイズは問題なさそうボイドの影響は受ける (cosmic variance) 2-3%? - これは今回見たい効果だと考えてもよい 母銀河が小さめ (M > 10 7 M ) のとき 15 個くらいしか使えないので諸々厳しくなるただし連星の母銀河を調べること自体はできる 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 27
連星ブラックホールの母銀河 低金属量のものは軽い銀河が多いという話も - 典型的な母銀河 - ブラックホールの出自これら自体も重要で elisaで答える問題 [e.g., Nishizawa+ (2016)] Lamberts+ (2016) 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 28
4. 将来展望と まとめ 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 29
将来展望 もう少し具体的なHubbleの決定精度は? - 母銀河を一つに絞り込めなくても統計的処理もっと遠くの連星まで使って数を稼げるかも [ 樽屋さんの話 see also W. Del Pozzo and A. Sesana (in prep.)] Hubbleパラメータを測る以外の使い道は? - 連星ブラックホールの母銀河探査だけ見ても ( 地上検出器では不可能な ) 目標ではある - bulk flowなどは測れるかもしれない 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 30
まとめ 重い恒星質量ブラックホールは elisa などの宇宙重力波検出器でも観測できる 現実的な観測時間内に合体するものよりはほぼ単色の連星がたくさん検出されるだろう elisa は 3 次元的な位置決定精度がいいので 独力で母銀河を推定可能かもしれない 重力波で測る光度距離を銀河の赤方偏移と組み合わせれば ~100Mpc での Hubble 定数を新たに測れるかもしれない 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 31
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Appendix 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 33
距離梯子 Riess+ (2016) Riess+ (2016) 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 34
過去に考えられてきた重力波源 超大質量ブラックホールの連星 超大質量ブラックホール+ 恒星質量天体 系内の連星白色矮星 ( ノイズにもなる ) 宇宙論的起源 etc. 今まで 系外の恒星質量ブラックホールの連星 は基本的に考えられてこなかった ( 系内の連星ブラックホールはSeto 2016) 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 35
単色波近似 パラメータ依存性が見えやすい 例えば 検出期待数も かなりよく再現する ( 合体するもの除く ) Kyutoku-Seto (2016) 分布を考えると検出数は M 10/3 に sensitive 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 36
位置決定 エラーの推定はTakahashi-Seto (2002) に基づく母銀河が一つに絞れる可能性がある - BH-BHに対しては地上からはまず無理 Kyutoku-Seto (2016) 各振動数でのベストケース 銀河の数密度は典型的に 0.01Mpc^(-3) と言われることが多い 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 37
離心率によるシナリオ判別 球状星団などで作ると離心率が大きくなるので 100 個も見れば統計的には十分に判別できそう 分布のモデル依存性 縦軸 : オッズ比の対数 Nishizawa+ (2016) Breivik+ (2016) 観測した連星ブラックホールの数 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 38
LIGO のキャリブレーション 振幅のエラーが ~10% 距離に系統誤差 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 39
銀河の質量関数 近傍ではよく測られている = 今は概ね十分 軽い方は incomplete? GAMA サーベイ Baldry+ (2012) 2016/11/26 第 5 回観測的宇宙論ワークショップ 40