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平成20年5月20日

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

オクノベル錠 150 mg オクノベル錠 300 mg オクノベル内用懸濁液 6% 2.1 第 2 部目次 ノーベルファーマ株式会社

新しい経口抗凝固薬 薬剤部 鮎川英明

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

プラザキサ服用上の注意 1. プラザキサは 1 日 2 回内服を守る 自分の判断で服用を中止し ないこと 2. 飲み忘れた場合は 同日中に出来るだけ早く1 回量を服用する 次の服用までに 6 時間以上あけること 3. 服用し忘れた場合でも 2 回量を一度に服用しないこと 4. 鼻血 歯肉出血 皮下出

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前回処方薬のワーファリン錠からリクシアナ錠に切り替えることについて 処方医から患者に休薬期間の指示はなかった また 患者に PT-INR について確認したが分からないという返答であった PT-INR 等が治療域下限以下になった上での切り替えであるか不明であるため疑義照会を行った 疑義照会の会話例 患

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ASSAF-K 登録用紙 記入方法

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要望番号 ;Ⅱ-286 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 33 位 ( 全 33 要望

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

日本医薬品卸勤務薬剤師会平成 25 年度 研修会 基本的に後者を中心にお話しします 血栓症とは 血栓症の研究をはじめた理由血栓症とは 血管内に過剰に血栓が形成され それによって血管が閉塞する病態です 古くはヒポクラテスをはじめとする古代ギリシャの医師たちによる下肢の静脈瘤についての記載があります し


別紙様式 (Ⅱ)-1 添付ファイル用 商品名 : イチョウ葉脳内 α( アルファ ) 安全性評価シート 食経験の評価 1 喫食実績による食経験の評価 ( 喫食実績が あり の場合 : 実績に基づく安全性の評価を記載 ) 弊社では当該製品 イチョウ葉脳内 α( アルファ ) と同一処方の製品を 200

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診療のガイドライン産科編2014(A4)/fujgs2014‐114(大扉)

Background 日常診療において 手術や手技のために 経口抗凝固療法を一時中断し ヘパリンによるブリッジ療法が用いられることが多々ある しかし ブリッジ療法による血栓塞栓症の予防に対するエビデンスは限定的で 一部の患者群を除き推奨の根拠は乏しいのが現状である

Argatroban

HIT とは Heparin-Induced Thrombocytopenia ( ヘパリン起因性血小板減少症 ) ヘパリン療法のまれな合併症であり 血小板が活性化されることで血小板減少症や 血栓形成促進状態を誘導される病態 デビットソン内科学原著第 1 版医歯薬出版株式会社より一部抜粋

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

データの取り扱いについて (原則)

1)表紙14年v0

第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

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検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

(別添様式)

あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

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リクシアナ錠は 血液を固まりにくくして 血管の中に血栓 ( 血液の塊 ) が できないようにするお薬です リクシアナ錠は 1 日 1 回服用するお薬です 医師の指示通りに毎日きちんと 服用してください しんぼうさいどう 心房細動は 不整脈のひとつです 心房細動になると 心臓が正しいリズムで拍動できな

「心房細動における抗血栓療法に関する緊急ステートメント《

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ピルシカイニド塩酸塩カプセル 50mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにピルジカイニド塩酸塩水和物は Vaughan Williams らの分類のクラスⅠCに属し 心筋の Na チャンネル抑制作用により抗不整脈作用を示す また 消化管から速やかに

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

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要望番号 ;Ⅱ 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 1) 1. 要望内容に関連する事項 要望 者 ( 該当するものにチェックする ) 優先順位 学会 ( 学会名 ; 日本ペインクリニック学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 2 位 ( 全 4 要望中 )

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

CCU で扱っている疾患としては 心筋梗塞を含む冠動脈疾患 重症心不全 致死性不整脈 大動脈疾患 肺血栓塞栓症 劇症型心筋炎など あらゆる循環器救急疾患に 24 時間対応できる体制を整えており 内訳としては ( 図 2) に示すように心筋梗塞を含む冠動脈疾患 急性大動脈解離を含む血管疾患 心不全など

要望番号 ;Ⅱ-183 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者学会 ( 該当する ( 学会名 ; 日本感染症学会 ) ものにチェックする ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 1 位 ( 全 8 要望中 ) 要望する医薬品

第 80 回福岡徳洲会病院倫理委員会会議の記録の概要 開催日時 : 平成 29 年 12 月 21 日 ( 木 ) 18:00-18:55 開催場所 : 看護部ミーティングルーム 委員の出欠 ( 敬称略 ) 氏名 出欠 氏名 出欠 氏名 出欠 委嘱 田中経一 出 辻本章 出 藤村直美 出 藤野昭宏

医薬品の基礎研究から承認審査 市販後までの主なプロセス 基礎研究 非臨床試験 動物試験等 品質の評価安全性の評価有効性の評価 候補物質の合成方法等を確立 最適な剤型の設計 一定の品質を確保するための規格及び試験方法などの確立 有効期間等の設定 ( 長期安定性試験など ) 医薬品候補物質のスクリーニン

日経メディカルの和訳の図を見ても 以下の表を見ても CHA2DS2-VASc スコアが 2 点以上で 抗凝固療法が推奨され 1 点以上で抗凝固療法を考慮することになっている ( 参考文献 1 より引用 ) まあ 素直に CHA2DS2-VASc スコアに従ってもいいのだが 最も大事なのは脳梗塞リスク

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

TTP 治療ガイド ( 第二版 ) 作成厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 血液凝固異常症等に関する研究班 ( 主任研究者村田満 ) 血栓性血小板減少性紫斑病 (thrombotic thrombocytopenic purpura:ttp) は 緊急に治療を必要とする致死的疾患である

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

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日本血栓止血学会誌 第18巻 第6号

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(別添様式1)

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

対象と方法 本研究は 大阪医科大学倫理委員会で承認を受け 対象患者から同意を得た 対象は ASA 分類 1 もしくは 2 の下肢人工関節置換術が予定された患者で 術前に DVT の存在しない THA64 例 TKA80 例とした DVT の評価は 下肢静脈エコーを用いて 術前 術 3 日後 術 7

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「             」  説明および同意書

岸和田徳洲会病院 当院では以下の研究に協力し情報を提供しております この研究は 国が定めた指針に基づき 対象となる患者さまのお一人ずつから直接同意を得るかわりに 研究の目的を含む研究の実施についての情報を公開しています 研究結果は学会等で発表されることがありますが その際も個人を特定する情報は公表し

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

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10 糖尿病患者における抗血栓療法の出血リスク. 図 1 心房細動患者におけるワルファリンの強度と虚血 出血イベント ( 文献 1 改変 ) プロトロンビン時間の INR(international normalized ratio) が2.5の場合をレファレン スとしたイベント発症のオッズ比を示す


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ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

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エントリーが発生 真腔と偽腔に解離 図 2 急性大動脈解離 ( 動脈の壁が急にはがれる ) Stanford Classification Type A Type B 図 3 スタンフォード分類 (A 型,B 型 ) (Kouchoukos et al:n Engl J Med 1997) 液が血管

がん登録実務について

未承認の医薬品又は適応の承認要望に関する意見募集について

試験デザイン :n=152 試験開始前に第 VIII 因子製剤による出血時止血療法を受けていた患者群を 以下のい ずれかの群に 2:2:1 でランダム化 A 群 (n=36) (n=35) C 群 (n=18) ヘムライブラ 3 mg/kg を週 1 回 4 週間定期投与し その後 1.5 mg/k

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

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ロミプレート 患者用冊子 特発性血小板減少性紫斑病の治療を受ける患者さんへ

複製 転載禁止 The Japan Diabetes Society, 2016 糖尿病診療ガイドライン 2016 CQ ステートメント 推奨グレード一覧 1. 糖尿病診断の指針 CQ なし 2. 糖尿病治療の目標と指針 CQ なし 3. 食事療法 CQ3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士に

医師主導治験 急性脊髄損傷患者に対する顆粒球コロニー刺激因子を用いたランダム化 プラセボ対照 二重盲検並行群間比較試験第 III 相試験 千葉大学大学院医学研究院整形外科 千葉大学医学部附属病院臨床試験部 1

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例 vs 28 例で有意差なかったが 二次エンドポイントの mrs 例 vs 24 例と有意差を認め た この研究は倫理的問題のため中止となっている AHA のガイドラインでは局所動注療法は 全体として予後改善の効果があるが静注療法と治療成績に差はなかった 静注療法と局所動注療法を比較

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3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

要望番号 ;Ⅱ-24 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 8 位 ( 全 33 要望中

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

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5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

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臨床評価とは何か ( 独 ) 医薬品医療機器総合機構医療機器審査第一部方眞美

DRAFT#9 2011

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第 1 章 抗血栓治療の種類とその実際 A 抗血栓薬の種類と使用の実際の概説 : 欧米との比較における本邦の特徴 日本人の死因の第 1 位は悪性腫瘍である 1). 悪性腫瘍を免れた集団の多くは心筋梗塞, 脳梗塞などの血栓性疾患により死に至る. 死因の 1 位が血栓性疾患である心臓病である米国に比較して, 本邦の血栓性疾患のインパクトが低い理由の 1 つである. 昨今, 抗血栓薬に関する情報が急速に本邦にも伝達されるようになった. 経口薬, 経静脈的投与薬, 抗凝固薬, 抗血小板薬いずれにおいても, 欧米における抗血栓薬開発熱が高いことは日本にいても実感できる. 開発された抗血栓薬に関する情報も速やかにわが国に伝達される. それでも, われわれは欧米人ほど新規抗血栓薬に熱狂しない. 死因の第 1 位が悪性腫瘍であるわが国で恐るべき疾病はやはり がん なのであろう. 血栓性疾患の脅威が強調されても, わが国の血栓性疾患の有病率, 発症率は欧米ほど高くない 2, 3). われわれが欧米の抗血栓薬開発成果を比較的冷静に観察でき, 抗がん剤の領域ほど drug lag などが叫ばれないのは, 賢明な日本国民がわが国における疾病の実態を感覚的に理解しているためと思われる. 欧米における新規抗血栓薬の開発と普及は経静脈的抗凝固薬の領域において著しかった 4 6). わが国では基本的な医療実態として, 経静脈的抗凝固薬としては未分画へパリンが現時点でも広く使用されている. 未分画へパリンは単一物質ではないため ( 図 1), 吸収, 代謝に個人差がある, などの問題

2 1 章抗血栓治療の種類とその実際 1 (Jeske W, et al. Pharmacology of heparin and oral anticoaglants. In: Loscalgo J, Schafer AI, editors. Thrombosis and Hemorrhage. Baltimore: Williams and Wilkins; 1998. p.1194 より改変 ) 未分画へパリンは糖鎖よりなる. 中心に存在する 5 つの糖からなる部分が血漿中のアンチトロンビン III に結合して抗凝固活性を発揮する. はある. しかし, 日本のように深部静脈血栓症の発症リスクが一般に低い国では緻密なモニタリングは必ずしも必要ない. 実際, 未分画へパリンの化学的特性は大きな問題とは認識されていない. 深部静脈血栓症, 肺血栓塞栓症の有病率, 発症率が著しく高い欧米諸国ではこれらの疾病の予防, 治療における経静脈的抗凝固薬には確実な有効性が期待される. そこで, 未分画へパリンの欠点である吸収, 代謝の個人差の問題を解決すべく膨大な努力が払われた 4, 5). 未分画へパリン中でも, 抗凝固機能を有する部分は特定されている ( 図 1). そこで, 未分画へパリン中から薬理機能を有する部分を含みながら分子量が均一な部分のみを抽出して低分子へパリンを作成した 4). 低分子化により, 抗トロンビン作用よりも抗 Xa 作用が大きくなった. それ以上に分子量が均一化したことにより, 吸収, 代謝, 排泄が均一化された. 一定量を皮下注射するだけで, 多くのヒトに対してほぼ均一の抗凝固効果を期待することができるようになった 7). 低分子へパリンは深部静脈血栓症, 肺血栓塞栓症の予防, 治療に広く普及した. さらには急性冠症候群に対するインターベン

1 章抗血栓治療の種類とその実際 3 ション治療にも使用されるようになった 8, 9). 未分画へパリンの作用メカニズムをさらに検索すると, 有効性は生体内のアンチトロンビン III への結合と, その後のアンチトロンビン III の高次構造変化に依存していることが明らかにされた 5). アンチトロンビン III と結合する部分は合成可能なペンタサッカライドである. そこで, ペンタサッカライドを合成して作成した薬剤がフォンダパリヌクスである 5). 低分子ヘパリン同様一定量の皮下注射によりほぼ均一な有効性を期待できるとして欧米では広く使用されるに至った 6). 急性冠症候群のカテーテル治療においてもフォンダパリヌクスの有効性が検証されている 10). しかし, カテーテル血栓が多いなどの問題も明らかにされた. ヘパリンはアンチトロンビン III を介して間接的に抗凝固効果を発揮する薬剤である 11). アンチトロンビン III の局所濃度が減少する病態では有効性を期待できない. また, 免疫原性の疾病であるヘパリン惹起血小板減少 / 血栓症の病態では, 抗血栓薬であるヘパリンが血栓原性を亢進させるとのジレンマに陥る. 直接的な抗トロンビン薬として本邦ではアルガトロバンが開発され, ヘパリン惹起血小板減少 / 血栓症治療に使用されている 12). アルガトロバンはトロンビンとの結合解離が早い. 欧米諸国では, より抗凝固効果の非可逆性を追求したヒルログが angiomax として, 急性冠症候群の血栓予防, 治療薬としても使用されている 13). 未分画へパリン, アルガトロバン以外の薬剤 ( 低分子へパリン, フォンダパリヌクス ) も本邦でも認可承認されているが欧米ほど広く普及していない. これらはヘパリンと同様の構造を有するためヘパリン惹起血小板減少 / 血栓症には使用できない. 経静脈的抗血小板薬としては, 世界初の分子標的薬として GPIIb/IIIa 受容体阻害薬が開発され注目された 14). 欧米では冠動脈インターベンション後の血栓イベント予防薬として広く使用されるに至っている. 一方, 本邦では, 急性冠動脈疾患への適応取得を目指して臨床治験が行われたものの, 出血性合併症の増加を上回る有用性を示すことができず 15), 本稿執筆の時点で使用可能な GPIIb/IIIa 受容体阻害薬はない. 経口抗血小板薬としてアスピリンは古い歴史を有する 16). 心筋梗塞再発予

4 1 章抗血栓治療の種類とその実際 防を中心に欧米ではアスピリンは広く使用される薬剤である 17). 欧米では, 冠動脈疾患, 脳血管疾患, 末梢血管疾患の症例に対してアスピリンとクロピドグレルの有効性 / 安全性を比較検討した CAPRIE 試験の結果に基づき 18), クロピドグレルも広く使用されている 19). 日本ではクロピドレルの前世代のチクロピジンの用量を欧米の半分以下の 200 mg/ 日として, 本薬の安全性の問題を解決していたこともありクロピドレルの認可承認は遅れた. 結局, 脳梗塞症例を対象としたチクロピジンとクロピドレルの比較試験の結果 20) に基づき脳領域から使用が開始された. 冠動脈ステント留置後のステント血栓症の予防にチクロピジン, クロピドグレルなどのチエノピリジン系薬剤の有効性が広く知られていたため, 本邦の循環器内科医からもクロピドグレルの早期認可承認の要請はあった. しかし, 日本人の急性冠症候群約 800 例を対象としたチクロピジンとの比較試験では有効性, 安全性において差を出すことはできなかった (PMDA homepage より ). それでもグローバル的な標準化を重視してクロピドグレルの認可承認がなされたのは欧米より約 10 年遅れることになった. クロピドグレルはプロドラッグであるため, 薬効に個人差がある. そこで個人差の問題を解決すべくプラスグレル, チカグレロルなどの薬剤が開発された. それぞれ,TRITON TIMI 38 21), PLATO 22) という大規模臨床試験を施行して, クロピドグレルとの比較における優越性を示し, 本稿執筆時点にて複数国にて使用が開始されている. しかし, 本邦は TRITON TIMI 38, PLATO いずれにも参加していない. 特に, 日本の宇部興産が物質を開発し, 臨床開発に第一三共が主体となったプラスグレルの臨床開発が欧米諸国に遅れたことは日本における臨床開発の問題点を明示している. 臨床試験が遅れることは, すなわち, これらの薬剤の本邦での使用も欧米諸国に大きく遅れることになる. この遅れが, がん領域にて声高叫ばれる drug lag ほど問題として認識されることがないのは, 実態してクロピドグレル使用下での本邦のステント血栓症の発症リスクが低いためであろう 23). 貿易立国である日本が, 自国で作成した薬剤に 臨床試験の結果 という付加価値をつけられない現状は, 国家の生き残り方策として真剣に議論される必要がある.

1 章抗血栓治療の種類とその実際 5 経口抗凝固薬としてはワルファリンが唯一の選択肢であった. 強力な抗凝固薬であるワルファリンの使用には緻密な薬効モニタリングが必須である. 日本ではかつてトロンボテストを用いて, 薬効モニタリングを国内的に標準化していた. 各種病態におけるトロンボテスト上の最適値は国内的に十分なデータに基いて決まっていた. しかし, トロンボテストは欧米には普及しなかった. 欧米にて普及していたプロトロンビン時間はばらつきが大きく信頼性の低い検査法であった 24). 試薬の強さを国際的に標準化した International Normalization Ratio: INR は, プロトロンビン時間よりはましな程度である. INR を算出する論理的根拠も乏しい. ばらつきの大きな検査法であるとの欠点を抱えた INR はなぜか国際的には普及した 25). グローバル化の波に飲み込まれて本邦でも蓄積されたトロンボテストの情報を廃棄して,INR による用量調節という道を選択した. 欧米人では INR 2 3 への調節により非弁膜症性心房細動症例の血栓イベントを低減し, 頭蓋内出血などの出血イベントも増えないとのデータが示された 26). 日本人の臨床家にとっては INR 3 などとんでもない, が実感であろうがこれもまたグローバル化の波の中で若年の心房細動症例では INR 2 3 への調節が推奨されるに至った. ワルファリンは血液凝固因子第 II, VII, IX, X 因子の機能的完成を阻害することにより抗凝固効果を発揮する 27). ワルファリンの効果は個人差が大きく, また同一個人であっても併用薬により薬効が大きくばらつくとの問題を有していた. これらの問題を解決するために経口投与可能な選択的抗第 II 因子薬, 抗 Xa 因子薬が複数メーカーにより開発された. ワルファリンを INR 2 3 に調節すると重篤な出血性合併症が 3%/ 年程度起こることが欧米中心の大規模治験にて示された 28). 筆者は日本人の至適 INR は 2 3 よりも低いと想定するし, 日本の今の医療の実態はワルファリン服用者の年間の重篤な出血イベント発症率 3% とはかけ離れた安全な状態にあると理解している. しかし, 予め個体差を無視して INR 2 3 がワルファリンの至適治療と定義してしまえば, 年率 3% の重篤な出血性合併症を対照とした新薬の臨床開発が可能となる. 患者集団について至適用量を設定する とワルファリ