Microsoft Word - basic_21.doc

Similar documents
本日の内容 HbA1c 測定方法別原理と特徴 HPLC 法 免疫法 酵素法 原理差による測定値の乖離要因

概要 クロマトグラフィとは LCの分離モード 分離のパラメータ 分離の調整 高速 高分離技術 ppendix 逆相系分離でのイオン性物質の分離 シラノール 逆相カラムの使用方法 2011 Nihon Waters K.K. 3 クロマトグラフィとは 分離手法のひとつである 分離後検出器で検出し定性

サイズ排除クロマトグラフィー SIZE EXCLUSION CHROMATOGRAPHY TSKgel SuperMultiporeHZ シリーズ 細孔多分散型有機系セミミクロ SEC カラム 特長 主な対象物質 技術資料 細孔多分散型充塡剤を用いています 合成高分子 オリゴマー S/R 較正曲線の

高速液体クロマトグラフィー(HPLC)

サイズ排除クロマトグラフィー SIZE EXCLUSION CHROMATOGRAPHY New TSKgel UP-SW3000 高性能水系 SEC カラム 特長 主な対象物質 技術資料 微粒子充塡剤 2μm のため たんぱ く質 抗体 酵素などの生体高分子 の 迅 速分析 15 cm カラム 高

【技術資料】 GPC 法 (SEC 法)入門講座

島津ジーエルシー総合カタログ2017【HPLCカラム】

細辛 (Asari Radix Et Rhizoma) 中の アサリニンの測定 Agilent InfinityLab Poroshell 120 EC-C µm カラム アプリケーションノート 製薬 著者 Rongjie Fu Agilent Technologies Shanghai

研究報告58巻通し.indd

IC-PC法による大気粉じん中の六価クロム化合物の測定

Microsoft PowerPoint - 薬学会2009新技術2シラノール基.ppt

Microsoft PowerPoint - MonoTowerカタログ_ 最終.ppt [互換モード]

Microsoft PowerPoint - PGC-MSアタッチメントアプリノートWec New原稿.pptx[読み取り専用]

(Microsoft Word - QP2010\223\374\216D\216d\227l\217\221\201i\215\305\217I_)

キャピラリー液体クロマトグラフィーの開発 岐阜大学工学部竹内豊英 1. はじめに高速液体クロマトグラフィー (HPLC) におけるキャピラリーカラムの導入は, 液体クロマトグラフィー (LC) の高性能化を図る上で有力な一手段であり, 環境保護の観点からも追い風を受けている 通常サイズの分離カラムを

2009年度業績発表会(南陽)

Taro-試験法新旧

はじめに 液体クロマトグラフィーには 表面多孔質粒子の LC カラムが広く使用されています これらのカラムは全多孔質粒子カラムの同等製品と比べて 低圧で高効率です これは主に 物質移動距離がより短く カラムに充填されている粒子のサイズ分布がきわめて狭いためです カラムの効率が高いほど 分析を高速化で

内容 1. セミ分取 HPLC システム 応用例 留意点 2. 超臨界流体クロマトグラフィー (SFC) を使用した分取の紹介

ソバスプラウトのフラボノイド・アントシアニン分析法

Mastro -リン酸基含有化合物分析に対する新規高耐圧ステンレスフリーカラムの有用性について-

中面 2 Hot News Vol 可能性 拡がる Nexera コアシェル リンク 3.6μmのコアシェルを用いれば アセトニトリル 水系で背圧10MPa 程度でご使用頂けます 1.7μm 2.6μm 3.6μm UFLC Prominence メソッド移管性

PowerPoint プレゼンテーション

目次 ODSA-P2 1.SGC センサガスクロについて 1)SGC の測定原理 2)SGC の特徴 3) 硫化水素定量方法 4) データ解析方法 p.3 2. 硫化水素測定器 ODSA - P 2の基本性能 1) 測定精度 2) 再現性 3) 硫化水素以外のガスの影響 p.6 3. 精度よい測定の

表 1. HPLC/MS/MS MRM パラメータ 表 2. GC/MS/MS MRM パラメータ 表 1 に HPLC/MS/MS 法による MRM パラメータを示します 1 化合物に対し 定量用のトランジション 確認用のトランジションとコーン電圧を設定しています 表 2 には GC/MS/MS

金属イオンのイオンの濃度濃度を調べるべる試薬中村博 私たちの身の回りには様々な物質があふれています 物の量を測るということは 環境を評価する上で重要な事です しかし 色々な物の量を測るにはどういう方法があるのでしょうか 純粋なもので kg や g mg のオーダーなら 直接 はかりで重量を測ることが

氏名垣田浩孝 ( 論文内容の要旨 ) 糖質は生物科学的にも産業的にも重要な物質群であり 簡便かつ高感度な分析法の開発が求められている 代表的な糖質分析手段として高速液体クロマトグラフィー (HPLC) が用いられているが 多くの糖質に発色団や発蛍光団が無いため 示差屈折計による検出が一般的である し

untitled

Microsoft PowerPoint - LCテクノ ポスター 塚本

14 化学実験法 II( 吉村 ( 洋 )) クロマトグラフィーのはなし 内容 クロマトグラフィーのはなし...1 クロマトグラフィーというもの...1 多数回の分離操作の組み合わせによる分離...1 クロマトグラフィーにおける分離のモデル...3 保持容量 保

すとき, モサプリドのピーク面積の相対標準偏差は 2.0% 以下である. * 表示量 溶出規格 規定時間 溶出率 10mg/g 45 分 70% 以上 * モサプリドクエン酸塩無水物として モサプリドクエン酸塩標準品 C 21 H 25 ClFN 3 O 3 C 6 H 8 O 7 :

資料 イミダゾリジンチオン 測定 分析手法に関する検討結果報告書

5989_5672.qxd

Microsoft Word - TR-APA

抗体定量用アフィニティークロマトグラフィー

本品約2g を精密に量り、試験液に水900mLを用い、溶出試験法第2法により、毎分50回転で試験を行う

医療用医薬品最新品質情報集 ( ブルーブック ) 初版有効成分ベンフォチアミン B6 B12 配合剤 品目名 ( 製造販売業者 ) 後発医薬品 品目名 ( 製造販売業者 ) 先発医薬品 効能 効果用法 用量添加物 1) 解離定数 1) 溶解度 1 ダイメジンスリービー配合カプセル

資料 2-3 ジエタノールアミンの測定 分析手法に関する検討結果報告書 - 1 -

Microsoft Word - 101_有機酸.doc

食安監発第 号 食安基発第 号 平成 19 年 11 月 13 日 各検疫所長殿 医薬食品局食品安全部監視安全課長基準審査課長 ( 公印省略 ) 割りばしに係る監視指導について 割りばしに残留する防かび剤等の監視指導については 平成 19 年 3 月 23 日付け食安

Chromatography for “Dummies”

PowerPoint プレゼンテーション

日本食品成分表分析マニュアル第4章

HPLCによるUSP関連物質分析条件のUPLC分析への移管と開発

Agilent A-Line セーフティキャップ : 溶媒蒸発の抑制 技術概要 はじめに HPLC および UHPLC システムの移動相は 独特なキャップ付きの溶媒ボトルで通常提供されます ( 図 1) 溶媒ラインは移動相から始まり ボトルキャップを通った後 LC システムに接続されます 溶媒ボトル

研究22/p eca

アプリケーションに最適なバイオイナート LC ソリューションで ワークフロー効率を最大化 Agilent InfinityLab バイオイナート LC ソリューションは バイオ分析の信頼性を高めます 腐食耐性のあるチタン送液システムとメタルフリーのサンプル流路が すべてのアプリケーションおいて生体分

有害大気汚染物質測定方法マニュアル(平成23年3月改訂)

感度に関するトラブル 2013 Nihon Waters K.K. 3 感度低下の原因分類と確認方法 標準品 保存中の分解 再調製 試料注入 注入正確性の低下 注入量を変えて測定 ( レスポンスの直線性を確認 ) 試料残量の低下 試料量を増やす LC/MS システムにおける分解 UV で分解 熱分解

<4D F736F F D B82C982C282A282C482512E646F63>

5989_5672.qxd

Microsoft PowerPoint 分析展濡れ水100%.印刷用ppt.ppt

HPLC UPLC JP UPLC システムによる 注入回数 3000 回以上 のルーチン製剤分析の実現 分析スループットの向上と使用溶媒量の削減 分析効率の向上 日本薬局方 (JP) は 薬事法第 41 条第一項の規定に基づき医薬品の品質を適性に担保するための公的な規範書であり 多くの医薬品の分析


島津ジーエルシー総合カタログ2017【HPLCカラム】

ト ( 酢酸 ) を用いた ( 図 1) 各試薬がすでに調合されており操作性が良い また この分析方法は有害な試薬は使用しないため食品工場などでの採用が多く ISO などの国際機関も公定法として採用している F-キット ( 酢酸 ) での測定は 図 1の試薬類と試料を 1cm 角石英セル に添加し

よくある指摘事項(2)

技術2本文.indd

目次 1. はじめに 目的 捕集および分析方法 (OSHA Method no. 34 改良 ) ブランク 破過 脱着率 誘導体化条件の検討 検量線... -

環境調査(水系)対象物質の分析法

Microsoft Word - basic_15.doc

Chromatography Stage 4 案の趣旨等について 平成 29 年 7 月 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 規格基準部医薬品基準課 今般 Chromatography に関する日米欧三薬局方国際調和案 (Stage 4 案 ) のご意見募集を開始するにあたり 本国際調和案の作成の背

4,4’‐ジアミノジフェニルメタン

JASIS 新技術説明会 最新の高速GPCシステムHLC-8420GPC EcoSEC Eliteの紹介

<4D F736F F F696E74202D204C435F B F8CF897A C C CC8A4A94AD8EE896405F F6E2E B8CDD8AB B83685D>

5989_5672.qxd

表紙.indd

LC/MS/MS によるフェノール類分析 日本ウォーターズ株式会社 2015 Waters Corporation 1 対象化合物 Cl HO HO HO フェノール 2- クロロフェノール (2-CPh) Cl 4-クロロフェノール (4-CPh) HO Cl HO Cl HO Cl Cl 2,4

Microsoft Word - 3_資機材試験新旧140328

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

2 試料採取方法及び分析方法 2-1 試料採取方法 LVによる浮遊粒子状物質 (SPM) の採取 石英繊維ろ紙 (110mmφの円形にカット) をLVに装着し 毎分 20L の流 量で大気を 14 日間連続吸引し ろ紙上に SPM を採取した ろ 紙 アドバンテック東洋社製 QR-100

札幌市-衛生研究所報37(調査報告05)

Microsoft Word - p docx

Microsoft Word - _博士後期_②和文要旨.doc

els05.pdf

JASIS 2016 新技術説明会

: 固相抽出法によってサンプル前処理を効果的に行うためには 目的物質の化学的性質 と 現 在の系に使用されている溶媒 の 2 つの情報を把握することが必要です 以下に例を挙げて 固相抽出法における前処理メソッドを確立させる過程の概念を示します 例えば 目的物質が右図のような化学構造であるとします こ

センサガスクロマトグラフ

設備供用パンフ(表紙)

究極のHPLC用C18カラムの開発を目指して

目次 Agilent GPC/SEC カラム...3 InfinityLab PL Multisolvent...4 PL aquagel-oh SEC カラム...7 PL Rapide Aqua カラム...10 PL aquagel-oh 分取 SEC カラム...11 Agilent Pol

P TOYOPEARL TOYOPEARL DEAE-650S, M, C TOYOPEARL CM-650S, M, C TOYOPEARL SP-650S, M, C TOYOPEARL SuperQ-650S, M, C TOYOPEARL QAE-550C TOYOPEARL

DualPore OPEN使い方のコツ

資料4-3 木酢液の検討状況について

HPLC-ICP-MS 法による食品中の水銀のスペシエーション アプリケーションノート 食品分析 著書 Sébastien Sannac, Yu-Hong Chen, Raimund Wahlen, Ed McCurdy Agilent Technologies Manchester, UK 概要

2-3 分析方法と測定条件ソルビン酸 デヒドロ酢酸の分析は 衛生試験法注解 1) 食品中の食品添加物分析法 2) を参考にして行った 分析方法を図 1 測定条件を表 3に示す 混合群試料 表示群試料について 3 併行で分析し その平均値を結果とした 試料 20g 塩化ナトリウム 60g 水 150m

化学変化をにおいの変化で実感する実験 ( バラのにおいからレモンのにおいへの変化 ) 化学変化におけるにおいは 好ましくないものも多い このため 生徒は 化学反応 =イヤな臭い というイメージを持ってしまう そこで 化学変化をよいにおいの変化としてとらえさせる実験を考えた クスノキの精油成分の一つで

改正RoHS指令の動向と新規対象物質の分析方法について

1 2

Regulations for Manufacturing Control and Quality Control of Ethical Extract Products in Kampo Medicine (Oriental Medicine) Formulations

Microsoft PowerPoint - 多核NMRへの応用_提出版.pptx

JAJP

木村の理論化学小ネタ 熱化学方程式と反応熱の分類発熱反応と吸熱反応化学反応は, 反応の前後の物質のエネルギーが異なるため, エネルギーの出入りを伴い, それが, 熱 光 電気などのエネルギーの形で現れる とくに, 化学変化と熱エネルギーの関

(Microsoft PowerPoint - LC\227n\224}\203p\203\223\203tFFWK\221\3461\224\ pptx)

EN.qxd

食品中のシュウ酸定量分析の検討

8.1 有機シンチレータ 有機物質中のシンチレーション機構 有機物質の蛍光過程 単一分子のエネルギー準位の励起によって生じる 分子の種類にのみよる ( 物理的状態には関係ない 気体でも固体でも 溶液の一部でも同様の蛍光が観測できる * 無機物質では規則的な格子結晶が過程の元になっているの

参考資料 3 放射性物質の分析方法について 1. 放射線の種類放射線とは 荷電粒子 (α 線 陽子 重イオン等 ) 電子(β 線 ) 中性子等からなる高エネルギー粒子線と γ 線や X 線の波長の短い電磁波を総称したものである 一般には 物質を通過する際にその相互作用により物質を直接あるいは間接に電

Microsoft Word - re92_Q&A5_2004年12月.doc

Microsoft PowerPoint ダイオフロック営業資料.ppt [互換モード]

Transcription:

分析の原理 21 高速液体クロマトグラフの原理と応用 概要 高速液体クロマトグラフ (HPLC) は 液体の移動相をポンプなどによって加圧してカラムを通過させ 分析種を固定相及び移動相との相互作用 ( 吸着 分配 イオン交換 サイズ排除など ) の差を利用して高性能に分離して検出する (JIS K0124:2011 高速液体クロマトグラフィー通則に記載 ) 分析方法です HPLC は ガスクロマトグラフ (GC) と同じ分離分析装置ですが 溶媒に溶解できる物質ならそのまま測定ができ 分析目的以外に天然物成分や化学合成品などの分離精製するための分取装置としても用いられています 本編では HPLC の装置構成, 分離や検出の基本原理などについて解説し 医薬 食品 環境分野における応用例と化学分野で広く用いられるゲルパーミエーションクロマトグラフィー (GPC) を紹介します 1. はじめに高速液体クロマトグラフィー (High Performance Liquid Chromatography) とは JIS K 0124:2011 高速液体クロマトグラフィー通則 によると 液体の移動相をポンプなどによって加圧してカラムを通過させ 分析種を固定相及び移動相との相互作用 ( 吸着 分配 イオン交換 サイズ排除など ) の差を利用して高性能に分離して検出する方法 また高速液体クロマトグラフ (High Performance Liquid Chromatograph) とは 高速液体クロマトグラフィーを行うための装置 と定義されており いずれも HPLC と略されます HPLC はガスクロマトグラフ (GC) と同じく分離分析装置ですが 分析目的以外にも天然物成分や化学合成品などを分離精製するための分取装置としても用いられています 2. 高速液体クロマトグラフの原理クロマトグラフィーとは 物質が固定相とこれに接して流れる移動相との親和力 ( 相互作用 ) の違いから一定の比率で分布し その比率が物質によって異なることを利用して各物質を分離する方法で 移動相が液体の場合が液体クロマトグラフィーです 図 1 に HPLC の基本構成を示します 図 1 HPLC の基本構成 1/5

HPLC で用いる移動相は溶離液とも呼び 分離に重要な役割を果たします 移動相には 水やこれにいろいろな塩類を添加した水溶液 メタノール アセトニトリル ヘキサンなどの有機溶媒を単独であるいは混合して用います 移動相は小型パルスモータにより駆動する送液ポンプにより一定の流量 ( 例えば 1mL/min) で成分分離を行うカラムに送られます 送液ポンプの流量範囲は 分析用で~10mL/min 分取用で~150mL/min 程度で 高い流量安定性や耐圧性が求められます 従来 分析用ポンプの耐圧は 40MPa 通常用いる流量は 0.5~2mL/min 程度でしたが 最近では以下に述べる充填剤の微細化やカラムのダウンサイジングの進展により 100MPa 以上の耐圧性能や低流量 (μl/min やそれ以下 ) での送液安定性をもったポンプも開発されています カラムには 分析用で粒子径 2~5μm 分取用で 5~30μm 程度のシリカゲルや合成樹脂などでできた充填剤を 分析用で内径 2~8mm 分取用で内径 10~50 mm 程度の主としてステンレス製クロマトグラフィー管に充填したものを用います 最近では 粒子径 2μm 以下という高性能充填剤が開発され 従来の 1/5~1/10 という短時間で高分離が得られるようになってきました これを超高速液体クロマトグラフィー (UHPLC) と呼びます 一方 カラムサイズから見ると 内径を 1~2mm と細くしたミクロあるいはセミミクロカラムと呼ばれるものも普及してきており 内径 0.3 mm 程度のキャピラリーカラムも使用されています これらカラムのダウンサイジングは 試料の微量化 質量分析計との結合 (LC-MS) 溶媒消費量の低減などの点で注目されています 充填剤は各相互作用に応じて 分析種に適したものを選択します 固定相は充填剤自体であったり 充填剤表面に結合した種々の官能基であったりします 現在主流となっているのは シリカゲル表面にオクタデシル基 ( いわゆる ODS カラム ) などの炭化水素系官能基を固定相として化学結合させた充塡剤で この種の充塡剤を用いた逆相法 ( 分配の一種 ) が最も広く使われます なお カラムオーブンは HPLC においては GC のように必須ではありませんが 分析精度や分離効率向上のために用います 分析する試料は適切な溶媒に溶解させて 試料導入装置から数 μl~ 数十 μl 程度をカラムに注入します 試料導入装置には手動式のマニュアルインジェクターと自動式のオートサンプラーがありますが オートサンプラーが主流となっています オートサンプラーには精度良く試料を注入することが求められますが 近年の LC-MS の普及に伴い キャリーオーバーの極小化がポイントとなっています カラム内で分離された各成分は 順次カラムから溶出し 検出器でその濃度が測定されます 代表的な検出器には 吸光光度検出器と蛍光検出器があります 吸光光度検出器は分析種に適した波長の紫外可視光 (190nm~800nm) を照射し その光吸収量を測定するものです 多くの有機化合物がこのような波長域で吸収をもつため この検出器は HPLC で最も汎用的に使用されています 蛍光検出器は光照射により分析種を励起状態にして 再び基底状態に戻る際に発せられる蛍光を測定します 蛍光検出器は発光量を測定するため 一般に吸光光度検出器より高感度検出が可能であり また分析種固有の励起波長と蛍光波長で測定するため高い検出選択性が得られるのが特徴です 反面 発蛍光性物質が限られますので 汎用性は低くなります この他 示差屈折率検出器 電気化学検出器 電気伝導度検出器 蒸発光散乱検出器など様々な原理に基づく検出器があり 分析種や目的に応じて選択します 検出器により測定された信号は データ処理装置に送られ 信号処理が行われて分離結果 ( クロマトグラムと呼ぶ ) や定量計算値が表示されます 図 2 に HPLC における分離の様子 ( 模式図 ) を示します 2/5

図 2 HPLC における分離の様子 3. 高速液体クロマトグラフの応用 HPLC は 1960 年代終わりに誕生して以来 めざましい発展を遂げてきました このような HPLC 発展の要因としては ハードウェアやカラムテクノロジーの進歩などに加えて その応用性の広さが挙げられます 特に 医薬品 食品 生化学分野で扱う成分は 熱に不安定あるいは熱分解するため GC では分析が困難な場合が多く これらの分野を中心に HPLC が発展してきました 医薬品分野における HPLC の貢献は大きく 原料中不純物 製品中有効成分 代謝成分の分析など広範囲に用いられています 図 3 は水溶性ビタミン類 8 成分の分析例 ( クロマトグラム ) です ビタミン類は熱に不安定ですので HPLC による分析が製品開発 品質管理に活躍しています 図 3 水溶性ビタミン類の分析例 食品分野においても 栄養成分 機能性成分 食品添加物 残留農薬 残留医薬品 かび毒などの分析に幅広く用いられています 図 4 はうなぎ蒲焼中合成抗菌剤 ( 標準添加 ) の分析例です エンロフロキサシンはわが国では養殖魚への使用が認められていない合成抗菌剤です 3/5

図 4 うなぎ蒲焼中合成抗菌剤 ( 標準添加 ) の分析例 生化学分野では タンパク質や核酸関連物質をはじめとする生体由来成分などの分析に不可欠です 環境分野では 水道水 環境水 大気 土壌中の成分などが分析されます 図 5 は河川水中ビスフェノール A( 標準添加 ) の分析例です ビスフェノール A は内分泌系への影響が懸念される物質であり 微量分析が求められます 図 5 河川水中ビスフェノール A( 標準添加 ) の分析例 一方 化学工業分野において HPLC は高分子化合物の分析にも欠かせません これはサイズ排除の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー (GPC) という方法で 高分子化合物の分子量測定に用います GPC は分子の大きさに基づく分離方法であり 試料を溶媒 ( 例えばテトラヒドロフラン ) に溶解して注入するだけで 簡便に合成樹脂などの分子量測定ができます 分子量測定は分子量既知の標準ポリマー ( ポリスチレンなど ) により校正曲線 ( 溶出時間と分子量のグラフ ) を作成し データ処理装置のソフトウエアで各種平均分子量 ( 数平均分子量 質量平均分子量など ) を計算します 図 6 に GPC による分子量測定方法 ( 模式図 ) を示します 4/5

図 6 GPC による分子量測定方法 ( 模式図 ) HPLC はこの他電子分野 エネルギー分野など幅広い分野で欠かせない分離分析装置あるいは分取装置として応用されています 三上博久 (( 株 ) 島津製作所 ) 5/5